割と平和な遊戯王   作:乾燥海藻類

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第24話 新しい旅が始まる

バトルシティは原作通り、武藤遊戯の優勝で幕を閉じた。

というより神のカードを3枚所有しないと、王の記憶的にマズいのだろう。

 

(となると、神のカードが生まれてくるのは必然だったのかもしれんな)

 

そう思わなくもないが、やはりカードが無から発生するのは、いかんともしがたいモヤモヤとしたものを感じる。

これはレンがこの世界の住人になりきれていない証拠かもしれない。

 

(結局、神のカードがどこから来たのかは、分からずじまいだが……)

 

イシズ曰く、気がつけばそこに在ったらしい。

ともあれバトルシティは無事に終わり、レンはアメリカへと帰国した。そこでレンは役員に振り分けることの出来ない仕事に従事していた。

エジプト政府との折衝である。

墓守の一族はエジプトでも中核をなす存在であり、(まつりごと)には関与していないが国の重鎮のようなものである。

 

この世界のマリクは世界的な犯罪組織(グールズ)首領(ドン)ではなく、愚連隊の(ヘッド)のようなものだが、相手が悪かった。

世界的な企業である海馬コーポレーションの主催する大会を荒らし、I2社の社長にも迷惑をかけた(と思っている)とあっては、彼らが焦りを見せるのも無理からぬことであろう。

 

海馬はすでに一切不問(どうでもいい)と回答しており、現在はI2社と交渉している。海馬のように一刀両断できぬ回答をしたレンにエジプト政府も不安を感じてるのだ。このあたりはレンの落ち度であった。

最終的にはマリクの被害を被った者たちの救済を命じて場を治めた。

原作ほどではないが、マリクの被害者は多い。これから彼の贖罪の旅が始まるだろう。

 

(そもそもマリクを罪に問うというのが、かなり無理筋な気がする)

 

それを立証するためには、まず「洗脳」について証明しなければならない。

 

問.どうやって洗脳しましたか。

答.千年錫杖(ロッド)を使用しました。

 

(法律には詳しくないが、通るのかこれ?)

 

しかもエジプト政府は千年アイテムを秘匿する方向で話を進めようとしている。さらに一番の被害者である(かどうかは分からないが)遊戯が罰を与えるよりも罪を償うべきというスタンスなのだ。

 

(あれ? 最初の頃は嬉々として「罰ゲーム!」とかやってたような……)

 

初期のことは言ってやるな。

 

(まあ千年ロッドが証拠物件として警察機関に押収されるのも(ファラオ)的にマズいってのもあると思うが……なんにせよ軟着陸に成功してよかった)

 

レンにとってもこの問題を騒ぎ立てて遊戯の怒りを買うのは得策ではないのだ。それだけならまだしも、(ファラオ)の邪魔をすればあの男(・・・)が出張ってくる可能性だってある。

それだけは避けたいレンだった。

 

(今頃は記憶編あたりか……。KCグランプリもやるかどうか……)

 

さすがにバトルシティから一ヵ月も経たぬうちに世界規模の大会を開くつもりはないようで、噂すら聞こえてこない。

 

(とりあえずは落ち着いたということか)

 

この後、遊戯と王の「闘いの儀」を持って物語は完結を迎える。遊戯たちの道はこれからも続いていくだろうが、その未来(さき)はレンの与り知らぬことである。

 

「レン」

 

と。

 

呼びかけられ、レンは思索を止めた。顔を横に向けると、眠りから覚めたペガサスがこちらをのぞき込んでくる。

 

「最近頑張りすぎじゃないのか? 別にカードデザインは急ぐ必要もないぞ」

「溢れ出るインスピレーションをそのままにはしておけないのデース。思いついた瞬間にラフスケッチくらいは済ませなければなりまセーン」

 

それを聞いて、レンは小さくため息をついた。この職人気質なところは昔から変わっていない。

ふたりはいま車中にいた。海馬ランドUSAのプロモーションを兼ねたジュニアのデュエル大会を観戦するために、ラスベガスのデュエルスタジアムに向かっているのだ。

 

「海馬ボーイに会うのも久しぶりデスね。バトルシティでは惜しいところでシタ。アナタもね」

「そうか?」

 

準優勝という結果だったが、レンとしては満足のいくものだった。勢い切って挑んだものの、どうにも遊戯に勝つというビジョンが浮かばなかったのだ。

 

(そもそも俺が勝ってたらどうなってたんだろうな? 色々と台無しになっていたような気がする)

 

意図せずして破滅への引き金を引いていたのかもしれないと考え、レンは小さく身震いした。

 

「そういえば聞きまシタか? 海馬ボーイはデュエリストの養成所を造る計画を立てているようデスよ」

「らしいな」

 

この世界ではスターターデッキの販売や、初心者向けのデッキレシピの公開など、入り口を広くしているためデュエリストのレベルはそれなりに高い。

だが海馬から見ればまだまだなのだろう。

 

(まあ原作でも描写がないだけでスターターデッキや構築済みデッキも販売していたのかもしれないが)

 

と考えるも確かめるすべはない。そもそもこの世界はプレイ人口が桁違いだ。デッキを持ってない人間を探す方が難しいレベルである。

 

I2社(ウチ)も負けていられまセン」

「そうだな」

 

ペガサスはデュエリスト養成所の構想を語った。

 

(デュエルアカデミア・アメリカ校か。面倒なことにならなければいいが)

 

「レンにはぜひそこの校長を務めていただきたいのデース!」

「……ああ、そのために夜行と月光を俺に付けたのか」

 

これからはあのふたりがI2社を支えていくだろう。レンは社長から校長になる。ペガサスはそこまで計画していたのだ。

 

「相変わらず食えんやつだ」

「社長の椅子にそこまで執着はしていないのでショウ?」

「まあな」

 

ペガサスはいたずら好きではあるが、本気で嫌がることはしない。校長の件についても、レンが本気で拒否すればおとなしく引き下がるだろう。

だがレンは断るつもりはなかった。

 

(どうせならアメリカ校ではなく、サティスファクションスクールとでもしてやろうか)

 

レンは苦笑した後、かぶりを振った。

今まで厄介事も多かったが、それなりに楽しんでもいたのだ。

 

「受けてもらえマスか?」

「まぁ、それも面白いかもしれんな」

 

レンは小さく肩をすくめた。

 

 

 




というわけで完結です。
評価、誤字報告、感想を下さった方々に感謝を。
最後までおつき合いいただきありがとうございました。

最後にちょっとだけ主人公の設定を。
主人公は、精霊は見えないけれど好かれる体質です。
GX編のトム少年みたいなタイプですね。(ジェリービーンズマンに好かれていた少年。DM編のトムとは別人)

王国編でバクラにまとわりつこうとしていたり(捕食植物)、バトルシティ編で闇マリクの攻撃を防いで弱めてくれていたり(ワイトファミリー)、要所要所で頑張ってくれています。
精霊を認識できるオリ主は多いですが、こういう系統の主人公はあまりいないかなと。
あと主人公はころころデッキを変えるので、特定の精霊と契約?すると自由度が減るというメタ的な理由もあります。
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