割と平和な遊戯王   作:乾燥海藻類

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第26話 渦巻く悪意

身体が動かない。

まず知覚したのはそこだった。身体全体が重く、身動きが取れない。また上下の感覚も曖昧になった。寝ているようでもあり、直立しているようでもある。奇妙な感覚だった。

 

(油断したな。響紅葉やフェニックス氏がまともだったから、いないものと思っていた)

 

眼前で黒い笑みを浮かべていたのは、ミスターマッケンジーだった。マイコ・カトウの次に、教頭の候補に挙がっていた彼と面談をしていて、レンは眩暈に襲われたのだ。

 

「貴様もそれなりのしもべを従えているようだが、使いこなせてはいないようだな」

「……使う?」

「ほぅ、覇気が増したな。面白い。さあ、これで動けるだろう。構えろ。闇の決闘の始まりだ」

 

 

決闘(デュエル)

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

かくして始まった闇の決闘。先攻を得たのはレン。だがその表情は思わしくない。

 

(……悪くはないが、良いとも言えないな。デッキにいてほしいカードが手札に来てしまった)

 

可もなく不可もなくといった手札で、レンは戦略を練る。

 

「《おろかな埋葬》を発動。デッキから《悲劇のデスピアン》を墓地に送り、悲劇のデスピアンの効果で、デッキから《デスピアの導化 アルベル》を手札に加える。さらにデッキから《ブラック・マジシャン》を墓地に送り、《マジシャンズ・ソウルズ》の効果発動。このカードを手札から墓地に送り、《ブラック・マジシャン》を蘇生する。さらに《デスピアの導化 アルベル》を召喚して効果発動。デッキから《烙印融合》を手札に加える」

 

アルベルの道化服から取り出された1枚のカードを手に取ると、レンはすぐさま発動する。

 

「デッキから《アルバスの落胤》と《融合呪印生物-光(光属性モンスター)》を墓地に送り、《烙印竜アルビオン》を特殊召喚。そしてアルビオンの召喚時効果を発動。墓地の《融合呪印生物-光(ブラック・マジシャン)》と《アルバスの落胤(ドラゴン族モンスター)》を除外し、《竜騎士ブラック・マジシャン》を融合召喚する」

 

竜を駆る黒魔術師が暗雲を切り裂いて現出する。

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

高杉レン LP4000 手札3 モンスター4 伏せ1

 

ア:烙印竜アルビオン 守備力2000

ブ:ブラック・マジシャン 守備力2100

導:デスピアの導化アルベル 攻撃力1800

竜:竜騎士ブラック・マジシャン 攻撃力3000

■:伏せカード

 

■□□□□

アブ導竜□

 

□□□□□

□□□□□

 

マッケンジー LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「オレのターン、ドロー。フフッ、派手に動いたものだな」

 

フィールドに並び立つモンスターを見ても、マッケンジーは余裕を見せる。

そして、その内の2体がかき消えた。

 

「なにっ!?」

 

「もう1体だ」

 

さらに2体のモンスターが消失し、溶岩の塊が降ってくる。

 

「カードを3枚伏せてターンエンド」

 

「……クッ、エンドフェイズに墓地の《烙印竜アルビオン》の効果を発動する。デッキから《赫の烙印》を手札に加える」

 

マッケンジー LP4000 手札1 モンスター0 伏せ3

 

■:伏せカード

■:伏せカード

■:伏せカード

 

■□■□■

□□□□□

 

□ラ□ラ□

□□□□■

 

ラ:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 攻撃力3000

ラ:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 攻撃力3000

■:伏せカード

 

高杉レン LP4000 手札4 モンスター2 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

(そう都合良くは引けんか)

 

理想はデッキに1枚しか入っていない《ハーピィの羽根帚》だったが、残念ながら引いたのはそのカードではなかった。

 

「スタンバイフェイズに溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムの効果を受けてもらう」

 

高杉レン LP4000 → 2000

 

「――ッ!? 身体が!?」

 

ダメージを受けたことで、レンの身体が部分的に消失する。

 

「ククッ、闇の決闘に敗れた者は"魂"を失う。だが心配するな。貴様の身体は、オレが有効に活用してやろう」

 

マッケンジーが舌なめずりをするように酷薄な笑みを浮かべた。

 

「……なるほど、闇の決闘か。《魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)》を発動。デッキから《融合》と《エッジインプ・チェーン》を手札に加える。《融合》を発動。手札の《D-HERO ディバインガイ》と《D-HERO ダッシュガイ》を墓地に送り、《D-HERO デストロイフェニックスガイ》を融合召喚」

 

不死鳥の如き運命の戦士が、黒き翼を広げる。

 

「バトルだ。デストロイフェニックスガイでダイレクトアタック!」

 

「リバースカード《洗脳解除》を発動」

 

「チェーンしてデストロイフェニックスガイの効果発動!」

 

「さらにチェーンして《スキルドレイン》を発動だ」

 

(くっ、ここは無理矢理にでも通すしかない)

 

「速攻魔法《赫の烙印》を発動。墓地の《悲劇のデスピアン》を手札に加え、このカードとデストロイフェニックスガイを素材に、《デスピアン・クエリティス》を融合召喚する」

 

スキルドレインの効果はフィールドにのみ作用する。そのため、すでにフィールドからいなくなったデストロイフェニックスガイの効果は適用されるのだ。

 

「デストロイフェニックスガイの効果で、発動済みの《赫の烙印》とおまえの《洗脳解除》を破壊する」

 

そして永続魔法や永続罠のような、フィールドに残り続けて効果を発動するカードは、フィールドに存在しなくなると効力を発揮できなくなる。

これでレンのフィールドには3体のモンスターが残った。《赫の烙印》の効果で特殊召喚した《デスピアン・クエリティス》は直接攻撃できないが、2体のラヴァ・ゴーレムの攻撃でライフは削り切れる。

 

「除外された悲劇のデスピアンの効果で、デッキから《デスピアの導化 アルベル》を手札に加える。溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムでダイレクトアタック!」

 

「永続罠《強制終了》を発動。スキルドレインを墓地に送り、バトルフェイズを終了する」

 

だがマッケンジーの発動した罠カードにバトルフェイズは強制終了された。

 

「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムをリリースして、《ブラック・マジシャン・ガール》をアドバンス召喚。ターンエンドだ」

 

高杉レン LP2000 手札2 モンスター3 伏せ1

 

ガ:ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力2600

ク:デスピアン・クエリティス 攻撃力2500

ラ:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 攻撃力3000

■:伏せカード

 

■□□□□

□ガクラ□

 

□□□□□

□□強□□

 

強:強制終了

 

マッケンジー LP4000 手札1 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「オレのターン、ドロー。モンスターをセットし、《命削りの宝札》を発動。カードを3枚ドローする。そしてすべての手札を伏せてターンエンドだ」

 

(ドローした3枚全部魔法・罠カードかよ)

 

相手のドロー運に心中で悪態をつくが、どうにもならない。

 

マッケンジー LP4000 手札0 モンスター1 伏せ3

 

セ:セットモンスター

■:伏せカード

強:強制終了

■:伏せカード

■:伏せカード

 

■□強■■

□□セ□□

 

□ラクガ□

□□□□■

 

ラ:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 攻撃力3000

ク:デスピアン・クエリティス 攻撃力2500

ガ:ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力2600

■:伏せカード

 

高杉レン LP2000 手札2 モンスター3 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズに溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムの効果が発動する」

 

高杉レン LP2000 → 1000

 

「《闇の誘惑》を発動。カードを2枚ドローし、《デスピアの導化 アルベル》を除外する。モンスターをセットし、カードを2枚伏せる。これで俺の手札は0。墓地の《D-HERO ディバインガイ》の効果が発動できる。このカードと《D-HERO ダッシュガイ》を除外してカードを2枚ドローする」

 

新たに2枚のカードをドローするも、バック除去のカードは引けない。

 

「バトル。デスピアン・クエリティスでセットモンスターを攻撃」

 

「強制終了の効果発動。セットモンスターを墓地に送り、バトルフェイズを終了する。そしてフィールドから墓地に送られた《魔犬オクトロス》の効果発動。デッキから《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》を手札に加える」

 

マッケンジーがデッキから最後のラヴァ・ゴーレムを手札に加えた。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「エンドフェイズに《ゴブリンのやりくり上手》、《貪欲な瓶》を発動。さらにチェーンして《非常食》を発動だ。発動した2枚を墓地に送り、ライフを2000回復する。そして墓地の《洗脳解除》、《スキルドレイン》、《命削りの宝札》、《魔犬オクトロス》、《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》をデッキに戻してシャッフル。その後、1枚ドロー。さらにカードを2枚ドローし、1枚をデッキの下に戻す」

 

高杉レン LP1000 手札1 モンスター4 伏せ4

 

ガ:ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力2600

ク:デスピアン・クエリティス 攻撃力2500

ラ:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 攻撃力3000

セ:セットモンスター

■:伏せカード

■:伏せカード

■:伏せカード

■:伏せカード

 

■■■■□

□ガクラセ

 

□□□□□

□□強□□

 

強:強制終了

 

マッケンジー LP6000 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「オレのターン、ドロー。ブラック・マジシャン・ガールとデスピアン・クエリティスをリリースし、《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》を特殊召喚」

 

三度(みたび)、灼熱の巨人が姿を現す。マッケンジーは勝利を確信した笑みを零した。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

「エンドフェイズに《赫の烙印》を発動。墓地の《デスピアの導化 アルベル》を手札に加え、このカードとフィールドの《エッジインプ・チェーン(セットモンスター)》と《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》を素材に融合召喚を行う」

 

「ラヴァ・ゴーレムを素材にするだとっ!?」

 

マッケンジーの顔から笑みが消え、目がカッと見開く。さすがにそれは想定外だったらしい。

 

「召喚条件はカード名が異なるモンスター3体。現れろ、《ガーディアン・キマイラ》!」

 

虚空より現れた3つ首の獣が咆哮を上げる。

 

「ガーディアン・キマイラの効果発動。カードを1枚ドローし、おまえがいま伏せた2枚のカードを破壊する」

 

「バ、バカなっ!?」

 

2枚の伏せカード、《魔法の筒》と《業炎のバリア -ファイヤー・フォース-》が破壊された。

さらに《エッジインプ・チェーン》の効果でデッキから《魔玩具補綴》を手札に加える。

 

「だがラヴァ・ゴーレム1体で十分よ。次のスタンバイフェイズに勝負は決まる!」

 

「それはどうかな」

 

「ふんっ、負け惜しみか!」

 

マッケンジー LP6000 手札1 モンスター0 伏せ0

 

強:強制終了

 

□□強□□

□□□□□

 

□ラ□キ□

□□■■■

 

ラ:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 攻撃力3000

ガ:ガーディアン・キマイラ 攻撃力3300

■:伏せカード

■:伏せカード

■:伏せカード

 

高杉レン LP1000 手札2 モンスター2 伏せ3

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。ドローフェイズにリバースカード《ダメージ・ダイエット》を発動。このターンに受けるダメージを半減する」

 

ラヴァ・ゴーレムのダメージを半分に抑え、レンはギリギリのところで踏みとどまる。

 

「バトルだ。ラヴァ・ゴーレムでダイレクトアタック!」

 

「まだだ! まだ終わらんよ! 手札の《バトルフェーダー》の効果発動!」

 

「チェーンしてカウンター罠《透破抜き》を発動。手札・墓地で発動したモンスター効果を無効にして除外する」

 

「なっ!?」

 

マッケンジー LP6000 → 3000

 

「これで終わりだ! ガーディアン・キマイラでダイレクトアタック!」

 

3つ首の牙がマッケンジーに突き刺さる。

 

「ぐおぉぉ……このオレが闇の決闘で敗れるとは……完全な復活さえしていれば……貴様ごときに……があああぁぁぁっ!!」

 

マッケンジーが倒れ、闇が晴れていく。

それを見届けて、レンは意識を手放した。

 

 

 

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