「だーかーら! それは本当に危険なんだって! マジのマジで!」
「……そんなに声を荒げないでくだサーイ。たかがカードではないデスか」
「
「……ムゥ」
レンのただならぬ様子に、さしものペガサスも動揺を隠せなかった。レンがいま見ているのは神のカードの原案である。テキスト欄が解読不能の文字で埋められている時点で、カードとして世に出すのは問題だろう。
「とにかく、神のカードなんて作るべきではない。常日頃言ってるだろ。カードゲームには平等性を持たせるべきだと。世界に1枚のカードとか必要ないんだ。それとも、その神のカードを大量に刷って一般流通させてもいいのか?」
そんなことをしたらどうなるんだろうか。神のコピーカードを使ったら神罰めいたものを喰らったらしいが、運営が正式な手順で刷ったカードなら大丈夫なのだろうか。神のカードは紙のカードになるのだろうか。
「……アナタがそこまで言うのなら、神のカードは諦めましょう」
「本当だぞ。約束したからな。絶対に作るなよ。絶対だからな!」
念入りに念を押して、レンは叫ぶように約束を取り付けた。
◇
海馬コーポレーションと深く付き合いだしてから、ペガサスは日本に興味を持ち始めた。レンが和物を使っていたり、和食を好んでいたことも多少影響があるのかもしれない。
世界各地で行われているデュエルモンスターズの公式大会、ペガサスが出向くことは滅多にないことだが、日本の大会へは足を運ぶことになった。
いま、ペガサスとレンの目の前では全国大会の決勝戦が行われている最中である。12ターンにも及ぶ激戦を制したのは、眼鏡をかけた小柄な少年だった。
「コングラチュレーション」
「サ、サンキュー」
緊張した様子で羽蛾が優勝トロフィーを受け取る。いつもは小生意気な少年も、I2社のトップの前では借りてきた猫のようにおとなしくなっていた。
続いてレンが副賞のカードを羽蛾に渡す。
羽蛾の名台詞と言えば「こうすればよかったんだ!」が有名だろう。だがそうする前に、彼はこうも言っている。
――僕はずっと考えていたんだ。エクゾディアを倒す戦略を
と。
つまり攻略法を思いつかなかったから強硬手段に出たのだ。原作時点と違って今のカードプールは肥えているから探せばあると思うが、念のために対抗策のひとつを渡しておこうとレンは考えた。
羽蛾に渡した副賞のカード。それを上手く使えるかどうかは彼次第だが。
そもそも海馬と遊戯の一戦が行われるのかが、レンには不明だった。海馬はすでに3枚の《青眼の白龍》を所有しているので、遊戯の祖父から奪い取ることはない。仮に双六が《青眼の白龍》を持っていても、それはウルトラレアの《青眼の白龍》であり、海馬の持つ《
それを無理矢理奪い取るというのは考えにくい。何よりウルトラレアの《青眼の白龍》は、世界に数千枚は出回っているのだ。
遊戯と海馬の因縁が無い場合、羽蛾が遊戯の存在を知るすべはない。
ともあれ、つつがなく大会が終わったことにレンは安堵した。
◇
「大規模なデュエル大会を開催しようと思いマース」
レンはすぐさま決闘者の王国編であることを察した。
「では著名な決闘者には招待状を送っておこう。一般の参加枠は何名ほどにするか……」
「ふむ。まあ3万人ほどにしておきまショウ」
「300人ほどでいいか」
「ナンデストッ!?」
レンはペガサスの提案をバッサリと切り捨てた。
(原作での参加者は確か40人だったか。まあ不正参加者がいたり、プレイヤーキラーがいたりと、カオスでガバガバな大会だったが……)
原作ではペガサスの目的が
だがこの世界のペガサスは純粋に大会を開催するつもりなので、そういった思惑は全くない。
「3万人はどう考えてもキャパオーバーだ。東京ドームの悲劇を忘れてはならない」
「トーキョードーム?」
「いや、何でもない。忘れてくれ。ともかく、管理や調整に手が足りん。そもそも会場は……」
そこでレンは、はたと気付いた。王国編ばかりに気をとられていたが、ワールドチャンピオンシップのように、国内予選から行い、世界大会を中継すれば……。
(いや、ダメだな。やはり手が足りない)
忘れがちだが、I2社はまだまだ新興会社なのだ。急速に成長したがゆえに、色々と脆い部分はある。
「会場の心配はありまセン。この日のために、太平洋の孤島を購入していたのデース。すでにワタシの屋敷も建ててありマース」
「それ無人島だろう? 3万人の生活施設を整えるだけでも一苦労だぞ。やはり300人にしよう。それならギリギリなんとかなる」
レンは原作で主人公一行が野宿している描写があったのを思い出した。会社のイメージというのもあるし、簡易でも宿泊施設は用意すべきだと思った。
まあサバイバルを条件に入れても、参加者は集まりそうだが。
それほどデュエルモンスターズの人気は、拍車をかけたように盛り上がっているのだった。
◇
この時代、まだまだパソコンは高い買い物であり、スマホなんてものも存在しない。携帯電話もひとり1台なんてほど遠い。つまり参加者の募集はネットではなくハガキが主になる。
そのハガキをデータに落とし込み、改めて抽選することになる。
(さて、条件を「日本」に絞り込んで……あった、城之内克也。武藤遊戯の名前は……あった)
その名前を見つけた時、レンは安堵のため息をこぼした。
ここに名前があるということは、ペガサスは
遊戯は大会等に参加する性格ではないが、城之内が妹の手術費用を稼ぐためという理由で参加したはず。だから遊戯も参加しているのは別段おかしいことではない。
海馬が意識不明に陥ってないことから、おそらく遊戯との一戦はなかったはずだ。
ならペガサスが遊戯の存在を知る方法はない。
考えてみれば当たり前のことだった。
(懸念はシャーディーあたりがなんか吹き込みそうだってことか。確かあいつは
原作キャラの中でもトップクラスに行動が読めない男である。それでも彼の中心にあるのはファラオなので、明確に遊戯と敵対しない限りは大丈夫だと思っていた。
とあるゲーム屋での一幕?
「あれ? ジイさんのブルーアイズ、ちょっと光り方が違うなぁ。フフッ、これが『本物』のブルーアイズだよ(チラッ)」
「……ぐぬぬ」