収縮の処理は一見簡単そうだけど複雑だぜ!
簡単に言うとガーゼットのように「召喚時に攻撃力が決定する」タイプのカードは収縮の効果を受けます。(攻撃力は0になり、ターン終了時も0のまま)
逆にカオス・ネクロマンサーなどの「永続的に攻撃力が決定され続ける」タイプのカードは収縮の効果を受けません。
また妥協召喚した神獣王バルバロス(攻撃力1900)に収縮を発動した場合、攻撃力は950になり、ターン終了時には3000になります。
まあこのあたりはWikiを見てもらった方が早いし分かりやすいと思います。
「……疲れた」
こうなることは教師陣も予想していたので、今日は休日である。1日中ベッドと戯れたところで、誰も文句は言わない。
だが雪乃の妙なプライドが邪魔をした。いつも通りの時間に起きて、食堂で朝食をとった。意外にも生徒が多かったのは、この後張り出される結果を見ずにはいられないのだろう。
気もそぞろに朝食を胃に収め、大掲示板の前に向かう。
結果を見て訪れた感情は、歓喜よりも安堵だった。
雪乃は幾ばくか軽くなった足取りで中庭に向かい、ベンチに腰を下ろしていた。
今日は陽気も良く、気を抜けば居眠りでもしてしまいそうだったが、静寂を切り裂いて隣の茂みからひとりの少年が飛び出して来た。
「ん? なあ、ここにオニヤンマが飛んでこなかったか?」
「……この辺りはオニヤンマの生息域ではありませんよ。ヨハン先輩」
「え? マジ? う~ん、じゃあ見間違えたかな」
藍髪の少年、ヨハン・アンデルセンはポリポリとこめかみを掻いた。
「……随分と元気ですね」
「え? なにが?」
ヨハンは雪乃の言葉の意味が分からなかった。
「いえ、スペシャルズにヨハン先輩の名前がなかったもので」
掲示板に張り出されたスペシャルズの一覧にヨハンの名前はなかった。故に消沈していると思ったのだが、本人はそれほど気にしている様子はなかった。
「ああ、それか。いやぁ、一般科目で赤点取っちまってなぁ。
この学園では、一般科目で赤点を取るとスペシャルズの資格を失う。文武両道に達してこそ真の決闘者にふさわしいということだ。
そしてヨハンは、自分がケロリとしていることで雪乃が不機嫌になったことを感じ取った。
「気に入らないか? 成績にこだわらない俺が」
「いえ、随分と余裕だなと」
自分でもトゲのある言い方だなと雪乃は思った。
「ああ、キミもプロを目指しているクチか。ま、ここの生徒のほとんどはそうだからな。俺は、プロを目指すのを止めたんだよ。それが影響しちまったのかもなぁ」
「……そうなんですか?」
「俺がプロになりたかった理由は、いろんな強いやつとデュエルしたかったからだ。でもこの間、校長と話して、それだけが理由ならプロにはならない方が良いって言われちまってな」
雪乃は何も言わず、ヨハンの言葉の続きを待った。
「プロは色々としがらみの多い世界らしい。俺はお金とか名声とかには、あんまり興味ないからな。デッキに口出しされるのも嫌だし……校長はそういうとこを見抜いたんだろうな」
「ヨハン先輩から見て、校長先生はどういう方に見えますか?」
雪乃は何とはなしに訊いてみた。
「そうだなぁ。俺以上に
(さりげなくモテ自慢が入ったのかしら?)
そう思ったが、敢えて口にはしない。
「ただ一方通行なのが寂しいとこだな。結構相談とかされるんだけど、俺に言われてもできることなんてないからなぁ」
ヨハンは困ったようにほほをかいた。
(一方通行ということは、生徒かしらね。まぁ頼れるお兄さんっぽくは見えるわよね。確かキース先生より若かったはず)
「なんか切っ掛けでもあれば見えるようになるらしいけど、俺にも分かんねぇしなぁ」
(そういえば
友との絆。カードとの絆。
(まぁ愛情も似たようなものよね。校長先生は気づいていて気づかないフリをしているだけかもしれないけど。生徒が相手じゃ、それも仕方ないわよね)
噛み合っているようで噛み合っていない、雪乃とヨハンだった。
◇
そうして月日は流れ、交流戦の日を迎える。
「うわぁ、ホントに火山島なのね」
ヘリの窓から見える孤島を見下ろしながら、ツァンが感嘆の吐息を漏らす。
「アンタたちは驚かないのね」
ツァンが隣に座っていた雪乃と万丈目に視線を向ける。
「テレビやパンプレットでも見たから、そこまでのインパクトはないわ」
「俺は見学に来たこともあるからな。入島するのはこれが二度目だ」
「おおぅ、さすが日本人ね」
日本人のデュエリストなら普通はまず日本校を目指す。また
やがてヘリはアカデミア校舎の屋上に着陸する。
出迎えたのはふたりの教員だった。
「お久しぶりです。鮫島校長、クロノス教諭。今年もよろしくお願いします」
「ええ、こちこそ」
レンと鮫島が和やかに握手を交わす。
「クククッ、元気そうだなぁ。オカッパ先生よ」
「相変わらずの口の悪さナノーネ。全米チャンプの質が疑われるノーネ」
「口の悪さとデュエルの腕は関係ねぇさ」
その隣ではキースとクロノスが軽く拳をぶつけ合っていた。
「では予定通り、交流戦は明日開始ということで。部屋を用意しておりますので、今日はゆっくりとお休みください」
鮫島の言葉は柔和だった。
だがこの校舎全体から発せられるデュエリストの闘気のようなものを、雪乃たちは敏感に
感じ取っていた。
(楽しい交流戦になりそうネ)
雪乃は明日が待ちきれないとばかりに笑みを浮かべた。
◇
場所は移り、アカデミアの食堂。その一席では、4人の生徒が昼食をとっていた。
その中のひとり、
「なんだよ三沢。もしかして今から緊張してんのか?」
その対面に座ってエビフライを頬張っている生徒、遊城十代が揶揄うように声をかける。
「ヘリの音が聞こえたものでね」
「ヘリの音? 聞こえたか? 翔」
「う~ん。分かんなかったッス」
「でもアメリカ校の生徒が到着するのは昼頃だって言ってたから、そうかもしれないわね」
空を眺めて疑問符を浮かべる丸藤翔に続いて、サンドイッチを食べ終えた天上院明日香は、口元を拭いながら答える。
「でもアメリカ校のデュエリストかぁ。どんなヤツだろうなぁ。くぅ~、楽しみだぜ」
昂揚を隠せぬ様子で十代は拳を握る。
「ひとりは多分、みんなも知ってるやつさ。万丈目だ。多分、だけどな」
「……万丈目って誰だ?」
十代のとぼけた返事に、口にした三沢だけではなく、翔と明日香の肩もカクンと揺れた。
「俺たちの世代で万丈目を知らないやつがいることにビックリだよ。大会とかで見たことないか?」
「いや、俺、大会とかあんまり出なかったんだよな。町内のデュエル大会とかに出てたくらいで」
十代は頭をポリポリと掻く。
「
「知らない」
「そうか。まあ、ここにいないってことは、その子もアメリカ校に行ったのかもしれないな」
三沢は自分たちの世代ではそのふたりが二強だったと続けた。
「へぇ~、つまり明日はそのふたりが出てくるかも知れないってことか!」
「確証はないぞ。アメリカ校の層だって厚いだろうからな」
と言いつつも、三沢は万丈目と闘いたいという気持ちがあった。ジュニア時代からの目標のような存在だったから。
「僕は代表になれなかったッスけど、みんなには頑張ってほしいッスよ!」
「任せとけって翔! おまえの分も俺が闘ってやる! まずは先鋒の俺がガツンとかましてやるぜ!」
十代はグッと拳を握り込んだ。