割と平和な遊戯王   作:乾燥海藻類

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第33話 交流戦2戦目

「ツァンは負けたようね」

「慎重になりすぎたな。時には果敢に攻め込むことも必要だ」

 

控え室でモニター観戦していた雪乃と万丈目は率直な感想を零す。

 

「でもそれは結果論でしょ。伏せカードを警戒するのは当然のことだわ」

「仮にあの伏せカードがミラーフォースのような逆転のカードでも、モンスターを破壊していれば総攻撃する必要もなかったんだ。師範とザンジを守備表示にして、紫炎とイロウでライフは削り切れた。そうすれば身代わり効果も使えたしな」

ウェーブ・フォース(デッキバウンス)の可能性もあったわ。それに収縮のような攻撃力を下げるカードならリーサルを(のが)していた。伏せカードがなにかなんて分かるはずないんだから、慎重になるのも間違いではないわ。結果論だけでものを語るのは二流よ」

「……ふん。行ってくる」

 

水掛け論になると悟った万丈目は、話を切り上げて控え室の扉を押し開いた。

 

「負けたら慰めてあげるわ」

「……嫌味な女だ」

 

それが雪乃流の激励であることは、さすがの万丈目も気づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交流戦、第2戦。万丈目の相手は黄色の制服に身を包んだ偉丈夫だった。

 

「キミが俺の相手とはな、万丈目。運命を感じずにはいられないよ」

「……どこかであったか?」

 

対戦相手から熱い視線を向けられるが、万丈目には覚えがない。

 

「やはり覚えていないか。いや、仕方がない。ならば今日、俺の名前を憶えて帰ってもらおう。この三沢大地の名前をな!」

 

ジュニア時代から表彰台の常連だった万丈目と、いつもそれを下から眺めているだけの三沢には大きな差があった。

だが進んだ学園(みち)は違えど、研鑽を怠ったつもりはない。

 

「ではこれヨーリ、交流戦2戦目を開始するノーネ!」

 

 

『デュエルッ!!』

 

 

「俺のターン、ドロー。《牛頭鬼》を召喚!」

 

先攻を取った三沢は、大槌を持った地獄の獄卒を呼び出す。

 

「牛頭鬼の効果でデッキから《屍界のバンシー》を墓地に送る。そして墓地のバンシーを除外して効果発動。デッキから《アンデットワールド》を発動する」

 

フィールドがおどろおどろしい雰囲気に包まれる。

 

「続けて《おろかな埋葬》を発動。デッキから《死霊王 ドーハスーラ》を墓地に送り、カードを2枚伏せてターン終了だ」

 

三沢大地 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2

 

牛:牛頭鬼 攻撃力1700

■:伏せカード

■:伏せカード

ア:アンデットワールド

 

■□□□■

□□牛□□ア

 

□□□□□

□□□□□

 

万丈目準 LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズに、墓地の《死霊王 ドーハスーラ》の効果発動。このカードを墓地から守備表示で特殊召喚する」

 

(ヤツのデッキはアンデットか。あいつのデッキとは少し違うようだがな)

 

ドーハスーラはアンデット族の効果が発動した場合に効果が発動する。それだけならどうということはないが、フィールド・墓地のモンスターをアンデット族に変更するアンデットワールドとの組み合わせで凶悪なコンボとなる。

 

「フィールド魔法《闇黒世界-シャドウ・ディストピア-》を発動。フィールドのモンスターはすべて闇属性となる」

 

おどろおどろしいフィールドが、さらに暗雲に包まれる。

しかしこのカードの恐ろしいところは属性変更ではない。自分フィールドのモンスター1体の代わりに相手フィールドの闇属性モンスター1体をリリースできる、というところにある。

 

「《死霊王 ドーハスーラ》をリリースし、《牛頭鬼》を対象に、《受け継ぎし魂》を発動」

 

「くっ、チェーンして《針虫の巣窟》を発動する。俺のデッキの上から5枚のカードを墓地に送る」

 

「墓地肥やしか。構わん。受け継ぎし魂の効果で、牛頭鬼を墓地に送り、デッキから《トライホーン・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

万丈目のデッキから3本角の悪魔竜が出現する。

 

「墓地に送られた牛頭鬼の効果発動。《ゴブリンゾンビ》を除外し、手札から《九尾の狐》を特殊召喚する」

 

(九尾の狐か。あれは確か……)

 

現れた白い体毛のもののけを前に、万丈目は思考を巡らせる。

 

(受け継ぎし魂のデメリット効果により、このターン俺はモンスター1体でしか攻撃できん。そしてあれは破壊された場合、2体のトークンを残す。そして次のターンに蘇る。いや、そのコストに使わずとも、トークンは利用できる)

 

万丈目はわずか数秒の思考で、戦闘を放棄することを選んだ。

 

「モンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズに「シャドウトークン」1体が特殊召喚される」

 

万丈目準 LP4000 手札1 モンスター3 伏せ2

 

セ:セットモンスター

ト:トライホーン・ドラゴン 攻撃力2850

シ:シャドウトークン 守備力1000

■:伏せカード

■:伏せカード

闇:闇黒世界-シャドウ・ディストピア-

 

 □■□■□

 □セト□シ闇

 

 □□九□□

ア□□□□■

 

九:九尾の狐 守備力2000

■:伏せカード

ア:アンデットワールド

 

三沢大地 LP4000 手札1 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズに、墓地の《死霊王 ドーハスーラ》を特殊召喚する。《堕ち武者(デス・サムライ)》を召喚して効果発動」

 

「連動してドーハスーラの効果を発動するつもりだろうが、そうはさせんぞ。九尾の狐をリリースし、《弩弓部隊》を発動。ドーハスーラを破壊する」

 

九尾の狐がトークンを残すのは、戦闘・効果で破壊された場合だ。リリースされては発動できない。

 

「やってくれる。俺は堕ち武者の効果でデッキから《馬頭鬼》を墓地に送る。そして馬頭鬼を除外して効果発動。ドーハスーラを特殊召喚する」

 

「チェーンして《転生の予言》を発動。貴様の墓地の《光の護封霊剣》と《死霊王 ドーハスーラ》をデッキに戻す」

 

「な、なにっ!?」

 

馬頭鬼の対象となったドーハスーラがデッキに戻り、効果は不発になる。

 

(光の護封霊剣にも気づいていたか。どうも思い通りにならない。ジュニア時代の万丈目に引きずられすぎたか)

 

三沢の知る万丈目はドラゴン族のサポートカードを巧みに使い、力押しで相手を攻め立てる戦術だった。ゆえに、種族をアンデットに変更することで、そのサポートカードを無力化しようと考えたのだ。

 

(まさかこんなトリッキーな戦術に変化していようとはな。彼も進化しているということか)

 

「だが臆するわけにはいかない。ひとまず数を減らす。堕ち武者でシャドウトークンを攻撃だ!」

 

兜だけになった怨念が黒い影に激突する。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ。シャドウ・ディストピアの効果で、シャドウトークンが俺のフィールドに特殊召喚される」

 

「エンドフェイズに《砂塵の大嵐》を発動だ。貴様がいま伏せたカードと《アンデットワールド》を破壊する」

 

(くっ、いやまだだ。俺にはあの伏せカードが残っている)

 

三沢大地 LP4000 手札0 モンスター2 伏せ1

 

堕:堕ち武者 攻撃力1700

シ:シャドウトークン 守備力1000

■:伏せカード

 

 ■□□□□

 □堕□シ□

 

闇□□トセ□

 □□□□□

 

ト:トライホーン・ドラゴン 攻撃力2850

セ:セットモンスター

闇:闇黒世界-シャドウ・ディストピア-

 

万丈目準 LP4000 手札1 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。手札の《闇黒の魔王ディアボロス》を捨て、《トレード・イン》を発動。カードを2枚ドローする」

 

新たに2枚のカードをドローし、万丈目の目が鋭く光る。

 

「セットモンスターをリリースし、《聖夜に煌めく竜》をアドバンス召喚!」

 

「なっ、1体のリリースでレベル7のモンスターをアドバンス召喚だと!?」

 

「セットモンスターは《霊廟の守護者(ダブルコストモンスター)》だ。さらに俺のフィールドの闇属性モンスターがリリースされたことで、墓地の《闇黒の魔王ディアボロス》も特殊召喚できる!」

 

光と闇、2体の竜が万丈目のフィールドに現れる。とはいえ、フィールド魔法の効果ですべて闇属性へと変更されているが。

 

「そして聖夜に煌めく竜の召喚時効果で、貴様の伏せカードを破壊する」

 

「バ、バカなっ!?」

 

三沢の切り札である《波紋のバリア -ウェーブ・フォース-》が、聖なる息吹(ブレス)によって破壊される。

 

「バトルだ。聖夜に煌めく竜でシャドウトークンに攻撃。ダメージステップ開始時に効果発動。相手モンスターをエンドフェイズまで除外する」

 

しかしトークンは除外できないため、その場で破壊される。

 

「そしてこの効果を使用した場合、続けて攻撃できる。堕ち武者に攻撃。聖煌波導(ホーリー・シャイン・ソニック)!」

 

闇に染まった聖なるブレスが堕ち武者に降り注ぐ。

 

「続けてトライホーン・ドラゴンとディアボロスでダイレクトアタック!!」

 

「……ちく……しょぉ……」

 

2体の闇竜のブレスが三沢を直撃した。

 

 

 




ツァンは普通に負けてました(笑)
変なこだわりですけど「このカードを発動していたのさ!」はあんまりやりたくないんですよね。その方がストーリー的には盛り上がるのかもしれませんが。
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