割と平和な遊戯王   作:乾燥海藻類

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第34話 交流戦3戦目

控え室で三沢の試合を観戦していた十代は呆然とその結果を眺めていた。

 

「三沢が1ポイントも削れねぇなんて……。あの万丈目ってヤツ、スゲーな!」

 

十代は震える拳でモニターを眺めている。初めてカイザーのデュエルを見た時と同じくらいの衝撃と昂揚を感じていた。

その隣で、明日香はゴクリと唾を呑み込んだ。

 

普通に考えれば、これから自分が闘う相手は、この万丈目よりも上手(うわて)のデュエリストだろう。

自分が強い緊張の中にいることを改めて自覚する。

 

「これで1勝1敗か。明日香、シメは頼んだぜ!」

 

十代のまっすぐな瞳が明日香を射抜く。それを受けて、明日香は両手で自分のほほを叩いた。

 

「行ってくるわ」

「お、おう。気合い入ってるな。頑張れよ!」

「ええ」

 

明日香は胸の高鳴りを感じながら、デュエルリングへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュエルアリーナの盛り上がりは最高潮だった。

大歓声の中、最終戦の幕が下りる。

 

 

『デュエルッ!!』

 

 

デュエルは明日香の先攻で始まった。

 

「私のターン、ドロー! 手札の《竜輝巧(ドライトロン)-ルタδ(デルタ)》をリリースして《竜輝巧(ドライトロン)-バンα(アルファ)》の効果発動。このカードを手札から守備表示で特殊召喚するわ。その後、デッキから《サイバー・エンジェル-弁天-(儀式モンスター)》を手札に加える。そして弁天をリリースして、墓地の《竜輝巧-ルタδ》の効果発動。このカードを守備表示で特殊召喚。その後、手札の《流星輝巧群(儀式魔法カード)》を見せることで、1枚ドロー!」

 

「すでに儀式魔法を握っていたのね」

 

竜輝巧(ドライトロン)はレベルではなく攻撃力を参照して儀式召喚する特殊なカード群だ。雪乃も新デッキの候補として考えていたため、動きは大体理解できる。

 

「リリースされた弁天の効果で、デッキから2枚目の弁天を手札に加えるわ。儀式魔法《流星輝巧群(メテオニス・ドライトロン)》を発動。フィールドの2体をリリースして、手札から《竜儀巧-メテオニス=QUA》を儀式召喚!」

 

天上より最高位の竜儀巧が光臨する。

 

「墓地の《流星輝巧群》の効果発動。《竜儀巧-メテオニス=QUA》の攻撃力を相手ターン終了時まで1000ダウンし、このカードを手札に戻すわ」

 

竜儀巧-メテオニス=QUAは守備表示のため、攻撃力を下げたところであまり影響はない。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

天上院明日香 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ1

 

Q:竜儀巧-メテオニス=QUA 守備力4000

■:伏せカード

 

■□□□□

□□Q□□

 

□□□□□

□□□□□

 

藤原雪乃 LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。苦労して呼び出したところ申し訳ないけれど、早々に退場してもらうわ。手札の《黄金卿エルドリッチ》の効果発動。このカードと《黄金郷のワッケーロ》を墓地に送り、《竜儀巧-メテオニス=QUA》を墓地に送る」

 

「それはどうかしら。リバースカード《墓穴の指名者》を発動。墓地の《黄金卿エルドリッチ》を除外して、その効果を無効にする!」

 

黄金の輝きが次元の穴へと消えていき、その力が消失する。

 

「そこを止められるとキツいわね。まあいいわ。永続魔法《呪われしエルドランド》を発動。ライフを800払い、デッキから《黄金郷のコンキスタドール》を手札に加える。カードを3枚伏せてターンエンドよ。そしてエンドフェイズに墓地の《黄金郷のワッケーロ》を除外して、《紅き血染めのエルドリクシル》をセットするわ」

 

藤原雪乃 LP3200 手札1 モンスター0 伏せ4

 

呪:呪われしエルドランド

■:伏せカード

■:伏せカード

■:伏せカード

■:伏せカード

 

呪■■■■

□□□□□

 

□□Q□□

□□□□□

 

Q:竜儀巧-メテオニス=QUA 守備力4000

 

天上院明日香 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

ドローしたカードを手札に収め、明日香は相手のフィールドを見渡す。

 

(あの伏せカードのうち2枚は《黄金郷のコンキスタドール》と《紅き血染めのエルドリクシル》。そのコンボを使えば、QUAを破壊できるはず……)

 

竜儀巧-メテオニス=QUAは相手の魔法・罠カードの対象にならない耐性を備えているが、《黄金郷のコンキスタドール》は対象を取らない破壊だ。

また竜儀巧-メテオニス=QUAは起動効果で相手の魔法・罠カードを全て破壊することができる。

 

(大将を務めるような()が効果を見落とすなんてありえない。だとすればこれは……罠!)

 

明日香の読みは当たっていた。雪乃が伏せたカードの1枚はカウンター罠の《大革命返し》。竜儀巧-メテオニス=QUAが効果を発動すれば、無効にされた上に除外されていた。

 

「墓地の《竜輝巧-バンα》の効果発動。手札の弁天をリリースして、このカードを守備表示で特殊召喚。その後、デッキから《竜儀巧-メテオニス=DRA》を手札に加える。そしてリリースされた弁天の効果発動」

 

(QUAの効果を発動する気配はない。弁天であの厄介なカードを持ってこられる前に使うしかない!)

 

雪乃はここしかないというタイミングで伏せカードを開示する。今ならQUAの破壊時効果も不発にできる。

 

「リバースカード《黄金郷のコンキスタドール》を発動。さらにチェーンして《紅き血染めのエルドリクシル》を発動」

 

チェーンの逆順処理により、まずはデッキから《黄金卿エルドリッチ》が特殊召喚され、続けて罠モンスター《黄金郷のコンキスタドール》が特殊召喚される。

 

「《黄金郷のコンキスタドール》の効果で《竜儀巧-メテオニス=QUA》を破壊するわ」

 

「私は弁天の効果で3枚目の弁天を手札に加えるわ。まだまだいくわよ。墓地の《竜輝巧-ルタδ》の効果発動。手札の弁天をリリースして、このカードを守備表示で特殊召喚。その後、手札の《竜儀巧-メテオニス=DRA》を相手に見せることで1枚ドロー。そしてリリースされた弁天の効果で、《紫光の宣告者(バイオレット・デクレアラー)》を手札に加えるわ」

 

明日香は雪乃が警戒したカード、罠カードの発動を無効にする《紫光の宣告者》を手札に加えた。

 

「いくわよ! 儀式魔法《流星輝巧群》を発動。フィールドのαとδをリリースして、手札から《竜儀巧-メテオニス=DRA》を儀式召喚!」

 

ドライトロンの双璧を成す1体、攻撃型の機械竜が翼を広げる。

 

「続けて《極超の竜輝巧(ドライトロン・ノヴァ)》を発動。デッキから《竜輝巧-エルγ(ガンマ)》を特殊召喚。バトルフェイズに入るわ。 DRAは特殊召喚されたすべてのモンスターに攻撃できる。行きなさい!」

 

「リバースカード《黄金郷のガーディアン》を発動!」

 

「無駄よ! 手札の《紫光の宣告者》と《イーバ》を捨てて、その発動を無効にして破壊するわ。そして墓地に送られたイーバの効果発動。弁天2体を除外して、デッキから《緑光の宣告者(グリーン・デクレアラー)》と《紫光の宣告者》を手札に加える。攻撃続行よ!」

 

機械仕掛けの竜翼から放たれた閃光がエルドリッチとコンキスタドールを粉砕する。

 

「竜輝巧-エルγでダイレクトアタック!」

 

続けてエルγの一撃が雪乃のライフを削った。

 

藤原雪乃 LP3200 → 1200

 

「バトルフェイズを終了して、墓地の《流星輝巧群》の効果を発動するわ。エルγの攻撃力を1000ダウンし、このカードを手札に戻す」

 

エルγはエンドフェイズに破壊されるので、デメリットはないに等しい。

 

「ターンエンドよ」

 

「エンドフェイズに墓地の《黄金郷のガーディアン》を除外して効果発動。デッキから《紅き血染めのエルドリクシル》をセットするわ」

 

天上院明日香 LP4000 手札5 モンスター1 伏せ0

 

D:竜儀巧-メテオニス=DRA 攻撃力4000

 

□□□□□

□□D□□

 

□□□□□

■□□■呪

 

■:セットカード

■:セットカード

呪:呪われしエルドランド

 

藤原雪乃 LP1200 手札1 モンスター0 伏せ2

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。《サンダー・ボルト》を発動」

 

「くっ、手札の《緑光の宣告者》の効果発動。このカードと《紫光の宣告者》を墓地に送り、その発動を無効にするわ」

 

(まあ、ここは止めてくるわよね。というか紫光の宣告者を捨てた? ダブっていたか、他に天使族モンスターが無かったのか)

 

「ライフを800払い、呪われしエルドランドの効果発動。デッキから《黄金卿のコンキスタドール》を手札に加えるわ。そして呪われしエルドランドを墓地に送り、墓地の《黄金卿エルドリッチ》の効果発動」

 

「手札の《D.D.クロウ》を捨てて効果発動。対象のエルドリッチを除外するわ」

 

黒鳥が弾丸のように飛来し、黄金の征服王を次元の穴に叩き落とす。

 

(これで手札は2枚。1枚は《流星輝巧群》で確定。もう1枚が緑光でも紫光でも発動条件を満たせない。妨害はDRAのみ)

 

雪乃は冷静に明日香の手札を見極めていた。

 

「墓地に送られた《呪われしエルドランド》の効果発動。デッキから《黄金郷のワッケーロ》を墓地に送る。続けて《紅き血染めのエルドリクシル》を発動。デッキから最後の《黄金卿エルドリッチ》を特殊召喚!」

 

明日香はこれを静観する。

 

「ここが分水嶺だったのよ」

 

「……え?」

 

明日香は雪乃の真意が分からず困惑する。

 

「ここでDRAの効果を発動すべきだった。でもタイミングを逃したわね。すでに優先権は私に移ったわ。魔法カード《アンデット・ネクロナイズ》を発動。このカードはフィールドにレベル5以上のアンデット族モンスターがいる場合に発動できる。《竜儀巧-メテオニス=DRA》のコントロールをエンドフェイズまで得る」

 

「コントロール奪取!? くっ、チェーンしてDRAの効果発動。墓地のルタδを除外してエルドリッチを墓地に送るわ!」

 

「だけど発動した効果は止まらない」

 

地面から噴き出た蒼炎に機械竜が包まれ、その瞳が赤く変貌する。そしてその炎をまとったまま、雪乃のフィールドに場を移した。

 

「強すぎる力は諸刃の剣。最後はあなたのエースで決めてあげる。竜儀巧-メテオニス=DRAでダイレクトアタック! 流星群殲滅(メテオ・エクスクラメーション)!!」

 

「くっ、きゃぁああぁぁっ!?」

 

蒼炎の流星群が明日香を襲う。その一撃は明日香のライフを根こそぎ奪っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、交流戦は2勝1敗でアメリカ校の勝利で幕を閉じた。

デュエルリングでは最終戦を闘った藤原雪乃と天上院明日香が握手を交わし、お互いの健闘を称え合っている。

その光景を閲覧席から見下ろしながら、鮫島も拍手を送っていた。

 

「さて、今度は我々の出番ですな」

 

視線を隣のレンへと移し、鮫島は言う。その瞳は教育者としての柔和な目ではなく、デュエリストとしての鋭い目つきになっていた。

 

「お手柔らかにお願いしますよ」

「それは承伏しかねますな。今年は私が勝たせてもらいますよ」

 

祭りの最後の催し物。校長同士のエキシビションマッチが始まる。

 

 

 




十代について結構意見があったので、個人的な考えを述べます。(あくまで個人の考えです)
この頃の十代って勝敗は二の次で楽しいデュエルがしたいって考えだと思うんですよね。この試合もあくまで交流戦ですし。
デュエルって突き詰めれば『自分のやりたいことをやる』か『相手のやりたいことをさせない』の二択だと思うんですよ。バランスの良いデッキのそれが5:5くらいだとすれば、十代は9:1とか8:2くらいになってるイメージです。一応エアーマンで伏せカードを剥がしに行ったりと、やりたいことをやるための準備みたいな手も打ってますし。

まあ真面目に授業も受けないのにデュエルは強いってのは、他の生徒からすれば面白くないですよね。逆にメチャクチャ努力しても1番になれない三沢の方が周りの好感度は高そう。人間的にも好まれそうだし。
なのになぜあんなことになってしまったのか。
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