大会開始からしばらく経ち、城之内はようやく初戦に乗り出した。
相手は招待選手ではなく、自分と同じく抽選に受かって参加した選手故、実力はそれほどでもなかったが、初心者に毛が生えた程度の城之内は苦戦を強いられた。
遊戯の助言により辛くも勝利した城之内だったが、勝利の実感は薄かった。
(このままじゃダメだ……)
遊戯がそばにいることで甘えが出てしまう。これではダメだと思った城之内は、意を決して遊戯にある提案をする。
「なあ遊戯。これから別行動にしねぇか?」
「え? 城之内くん……?」
「なに言ってんだ城之内! おまえが遊戯のアドバイスなしで勝てるわけねぇだろ!」
唖然とする遊戯と、チャチャを入れる本田。城之内は本能的に感じていたのだ。このままでは決闘者として成長できないと。
その意気を感じ取った遊戯は、無言で首を縦に振った。
「遊戯! 俺はこの大会で強くなる! 次は本戦で会おうぜ!」
「うん。城之内くん、お互い頑張ろう!」
ガシッと握手を交わし、遊戯と城之内は反対の方向に歩き出した。
「
本田は迷ったあげく、城之内についていくことにした。遊戯は海の方へ、城之内たちは山の方に向かって歩き出した。
「まったく、おまえはカッコつけだけは一流……って、もしかしておまえ、震えてんのか?」
「へっ、こりゃ武者震いってやつよ。おっしゃー! やってやるぜ!」
意気揚々と歩き出す城之内たちの前に、人影が見えてきた。
「おっ、早速相手が見つかったぜ。って、なんかちっちぇな。う~ん、どうすっか……」
テンションの上がっていた城之内は、どうせやるなら強いやつがいいと思っていた。だが視界に飛び込んで来た少年は陰気な雰囲気を纏っており、どうにも強者のオーラが感じられない。
「ん……あっ、あいつはっ!?」
「知ってんのか本田ァ!?」
「ああ、全国大会のベスト8に残ってたやつだ。確か名前は……ゴースト骨塚だ。たぶん」
「え? ゴ、ゴースト……?」
上がったテンションが一気に下がっていく。
「やめとこうぜ。強いってのもあるが、おまえ幽霊とか苦手だったろ。相性が悪いって」
「だ、誰が幽霊が苦手っていう証拠だよ!」
「そういうとこだよ」
本田が呆れたようにため息をこぼす。
「くっ、おばけなんていねぇ。寝ぼけたヤツが見間違えただけさ。この程度でビビってちゃあ、静香に合わせる顔がねぇ!」
本田の制止を振り切り、城之内はゴースト骨塚にデュエルを挑む。もちろんスターチップは
『デュエルッ!!』
(クククッ、カモがネギしょってやってきたゾ)
このバトル・ボックスに設定されたフィールド魔法は《荒野》。ゴースト骨塚の使役するアンデット族の攻守を上げる効果を持っている。
「オレの先攻だゾ、ドロー! モンスターをセット。カードを1枚セットしてターンエンドだゾ」
ゴースト骨塚 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ1
セ:セットモンスター
■:伏せカード
□□■□□
□□セ□□
□□□□□
□□□□□
城之内克也 LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー! 《切り込み隊長》を召喚して、さらに切り込み隊長の効果で《戦士ダイ・グレファー》を特殊召喚。さらに永続魔法《連合軍》を発動するぜ」
《切り込み隊長》 攻撃力1200 → 1600
《戦士ダイ・グレファー》 攻撃力1700 → 2100
「バトルだ! えっと――」
ここで城之内は判断に悩む。切り込み隊長から攻撃した方が、その後のダイレクトアタックで相手のライフを半分以上削ることができる。
だが切り込み隊長の攻撃力は1600とそこまで高いものではない。
「ええぃ、セットしたってことはそう大したモンスターでもないだろ。切り込み隊長で攻撃だ!」
切り込み隊長が剣を振り降ろし、セットモンスターに攻撃を加える。カードの影から《ピラミッド・タートル》が姿を現した。
「よし! 守備力は1400だ。破壊できるぜ!」
「甘いゾ。ピラミッド・タートルはアンデット族だから、フィールド魔法《荒野》の効果を受けて攻守が200アップするゾ」
ピラミッド・タートルが強固な頭部で切り込み隊長の剣を弾き返す。
「クソッ、ならダイ・グレファーで攻撃だ!」
続けて突撃した戦士の一撃がピラミッド・タートルを両断する。
「ククッ、ピラミッド・タートルの真価は戦闘破壊された時に発動するゾ。デッキから《龍骨鬼》を特殊召喚するゾ」
地面から這い出るように出現したのは、全身に髑髏を纏ったおぞましき龍であった。
「ぎぃやぁぁぁ! な、な、な、なかなかリアルじゃねぇか!」
「城之内! 泡吹いてる場合じゃねぇぞ!」
「泡なんて吹いてねぇ! 俺はカードを2枚伏せてターンエンドだぜ!」
城之内克也 LP4000 手札1 モンスター2 伏せ2
切:切り込み隊長 攻撃力1600
ダ:戦士ダイ・グレファー 攻撃力2100
連:連合軍
■:伏せカード
■:伏せカード
連■□□■
□切□ダ□
□□龍□□
□□■□□
龍:龍骨鬼 攻撃力2600
■:伏せカード
ゴースト骨塚 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「オレのターン、ドローだゾ。《ゾンビ・マスター》を召喚して効果発動。手札の《ゴブリンゾンビ》を墓地へ送り、《ピラミッド・タートル》を蘇生するゾ。さらに永続魔法《奇跡のピラミッド》を発動。これでオレのアンデット族は、相手モンスターの数×200ポイント攻撃力がアップするゾ」
《ピラミッド・タートル》 攻撃力1400 → 1800
《ゾンビ・マスター》 攻撃力2000 → 2400
《龍骨鬼》 攻撃力2600 → 3000
「バトル! 龍骨鬼で切り込み隊長に攻撃するゾ!」
「ぐぁっ!」
城之内克也 LP4000 → 2600
「続けてピラミッド・タートルで戦士ダイ・グレファーに攻撃だゾ!」
「自爆特攻で効果を使う気か! だが代償は払ってもらうぜ。罠カード《アームズ・コール》を発動。デッキから《最強の盾》を手札に加え、《戦士ダイ・グレファー》に装備するぜ!」
《戦士ダイ・グレファー》 攻撃力1900 → 3500
天から降ってきた盾剣を掴み取り、連撃でピラミッド・タートルを葬り去る。
ゴースト骨塚 LP4000 → 2100
「ぐっ、このダメージは想定外だゾ。だけどピラミッド・タートルの効果で、2体目の《龍骨鬼》を特殊召喚するゾ!」
「うぎゃぁぁぁ! また出たぁぁぁ! って、攻撃力はダイ・グレファーの方が上だ。ビビるこたぁねぇぜ!」
「それはどうかな。龍骨鬼でダイ・グレファーに攻撃するゾ!」
「な、なにぃ!?」
相手の意図が読めずに困惑する城之内だったが、その結果はすぐに分かった。
「龍骨鬼が戦士族・魔法使い族とバトルした時、ダメージステップ終了時に相手モンスターを破壊するゾ。続けてゾンビ・マスターでダイレクトアタックだゾ!」
「ぐぉっ!?」
ゾンビ・マスターのダイレクトアタックで城之内のライフが大きく削られる。
城之内克也 LP2600 → 600
「オレはこれでターンエンドだゾ」
ゴースト骨塚 LP1400 手札2 モンスター2 伏せ1
ゾ:ゾンビ・マスター 攻撃力2000
龍:龍骨鬼 攻撃力2600
奇:奇跡のピラミッド
■:伏せカード
奇□■□□
□ゾ龍□□
□□□□□
■□□□連
■:伏せカード
連:連合軍
城之内克也 LP 600 手札1 モンスター0 伏せ1
――――――――――――
(ククッ、この勝負もらったゾ。これでオレは本戦出場だゾ)
永続魔法《奇跡のピラミッド》の効果により、相手がモンスターを展開すればするほどゴースト骨塚のアンデット族モンスターは攻撃力を上げる。
守備モンスターで時間を稼ごうとすれば、伏せカードの《メテオ・レイン》を発動するだけだ。
「くっ、俺のターン、ドロー!」
窮地に立たされた城之内は望みをかけてドローするが、手中にこの状況を覆すカードはない。
「罠カード《凡人の施し》を発動。カードを2枚ドローし、手札の《魔物の狩人》を除外するぜ」
新たに2枚のカードをドローするも、逆転のカードは引き込めない。
(だがこの手札なら次のターンを凌ぐことはできる。まだ勝負は分からねぇ!)
「モンスターをセット。カードを1枚伏せてターンエンドだ」
城之内克也 LP 600 手札1 モンスター1 伏せ1
セ:セットモンスター
連:連合軍
■:伏せカード
連□■□□
□□セ□□
□□龍ゾ□
□□■□奇
龍:龍骨鬼 攻撃力2800
ゾ:ゾンビ・マスター 攻撃力2200
■:伏せカード
奇:奇跡のピラミッド
ゴースト骨塚 LP1400 手札2 モンスター2 伏せ1
――――――――――――
「オレのターン、ドロー。そのままバトルに入るゾ。龍骨鬼でセットモンスターを攻撃! そして《メテオ・レイン》を発動。このターン、オレのモンスター全てに貫通効果を与えるゾ!」
「なにっ!? なら罠カード《攻撃の無敵化》を発動だ! このバトルフェイズ中、俺が受ける戦闘ダメージは0になるぜ! そんでセットモンスターは《メタモルポット》だ。リバース効果発動。お互いに手札を全て捨て、カードを5枚ドローするぜ!」
「ぐっ、しぶといヤツだゾ。メインフェイズ2へ移り、《ゾンビ・マスター》の効果発動。手札の《魂を削る死霊》を墓地に送り、《ピラミッド・タートル》を特殊召喚。カードを2枚セットしてターンエンドだゾ」
ゴースト骨塚 LP1400 手札2 モンスター3 伏せ2
ゾ:ゾンビ・マスター 攻撃力2000
龍:龍骨鬼 攻撃力2600
ピ:ピラミッド・タートル 守備力1600
奇:奇跡のピラミッド
■:伏せカード
■:伏せカード
奇□□■■
□□ゾ龍ピ
□□□□□
□□□□連
連:連合軍
城之内克也 LP 600 手札5 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー! いくぜ! 反撃開始だ! 魔法カード《右手に盾を左手に剣を》を発動。フィールドにいるモンスターの攻守を逆転させるぜ」
「チェーンして永続罠《死霊の誘い》を発動だゾ。カードが墓地へ送られる度に、そのカードの持ち主は1枚につき300ポイントダメージを受けるゾ」
「な、なんだとっ!? ならさらにチェーンして《非常食》を発動するぜ。《右手に盾を左手に剣を》を墓地に送り、ライフを1000回復する」
「けど非常食が墓地に送られたため、ダメージは受けてもらうゾ」
城之内克也 LP 600 → 1600 → 1300
《ゾンビ・マスター》 攻撃力2000 → 200
《龍骨鬼》 攻撃力2600 → 2200
《ピラミッド・タートル》 守備力1600 → 1400
(くっ、ゾンビ・マスターの守備力の低さが……だけどこの伏せカードがあれば攻撃してきたところで……)
「《ギャラクシー・サイクロン》を発動。おまえの伏せカードを破壊するぜ」
「げぇっ!?」
しかしゴースト骨塚の頼みの綱は無情にも切断された。
(ん? あんなカードがあるんなら、最初に使ってた方が良くねぇか?)
と、本田は城之内のプレイングに疑問を持った。確かに除去札があるのなら最初に使うのが常道だ。だが2枚の伏せカードがある場合、敢えて様子を見るというプレイングもある。
城之内がそこまで考えていたのかは分からないが。
2枚のカードが墓地に送られたことで、《死霊の誘い》の効果が発動する。
城之内克也 LP1300 → 1000
ゴースト骨塚 LP1400 → 1100
「《鉄の騎士 ギア・フリード》を召喚。そしてこいつをリリースして《拘束解除》を発動。デッキから《剣聖-ネイキッド・ギア・フリード》を特殊召喚するぜ!」
鉄の鎧を脱ぎ捨て、
2枚のカードが墓地に送られたことで、城之内はさらに600のダメージを受けた。
「バトルだ! 剣聖-ネイキッド・ギア・フリードでゾンビ・マスターに攻撃! メガスラッシュ!」
剣が
「そ、そんな……オレの負け……」
「勝った……勝ったぜ本田ァ!」
「おう。かなりギリギリだったけどな」
城之内は勝利を噛みしめながら、親友とハイタッチを交わした。
予選をだらだらやってもしょうがないので次回から本戦に入ります。