綺麗な言峰とか呼ばれ始めた奴 作:温めない麻婆=ちゃっぱ
この作品が面白いと思ってくれた方、期待してくれた方は高評価や感想などしていただけたら嬉しいです。やる気補充のためによろしくお願いいたします。
昨日今日と連続ですが、また麻婆を食べました。感想で頂いたアドバイスの通りいろいろ気を付けつつ、でもなんといいますか、言峰憑依主の気持ちになって食べてみたいなと馬鹿なことを考えて本格的な麻婆を食べようと思い行動しました。山椒が苦手になりました……。
次はアドバイスの通り美味しいものを食べようと思います。後掛けの香辛料で調節しつつ、美味いと思える配分が見出せるよう頑張りますね。いろいろとアドバイスを頂きありがとうございます。
これは、藤丸立香が言峰と対峙する前の話。
言峰が泥に飲み込まれたあと。這い上がってくるより過去────。
マーリンから言えば、プロローグとも呼ぶべき状況下にあった。
「ふーん……カルデア、ねぇ? じゃあなに、アンタたちもあいつと同じくウルクを滅ぼしに来たとかそういうことなの?」
「えっ?」
────事の発端はウルクにレイシフトした後のこと。
その時代は、ほとんど詰んでいると言っていい状況らしい。いや、ギルガメッシュ王の采配によってなんとかまだ滅んでいない状況なだけ、ともいえるだろう。そう藤丸立香は認識している。
何が起きたのかと言えば、最悪なことだった。
それを知ることが出来たのは、ウルクにレイシフトした直後。突然天空から落ちてきたような女神、イシュタルと少しだけ会話をしてから分かったこと。
イシュタルは何か用事でもあって急いでいるのか、それとも探し物でもあったのかあまり藤丸立香達に興味を抱かなかったようだが、とある言葉を聞いてその意識が変わった。
カルデアと聞いて、イシュタルは顔をしかめていた。
無反応から、興味の対象────そうして、敵対反応ともいえる何かに切り替わる。
そんな彼女の反応に困惑する藤丸達だったが、急に攻撃される可能性を感じ取ったマシュにより盾を装備したまま構えた状態で会話をしようと試みる。
ウルクを滅ぼしに来たと言われたら、それは違うと断言できるのだ。────だって藤丸達は人理を救済するために行動している最中。つまり国を滅ぼそうとする側はいつだって敵対していたソロモン────レフ達によるものだった。
彼らは国を救うために動く。それがカルデアの現状。
国を滅ぼすためにレイシフトしたわけじゃないのだから。
「わ、私達はウルクを滅ぼしに来たわけじゃありません!」
「はい、先輩の言う通り私たちはこのウルクの時代における特異点を修正するため、ギルガメッシュ王はウルクを収める英雄王であるなら、私達と敵対するはずが────」
「カルデアの者っていうなら、私にとって味方だなんていえないってだけよ────あいつと仲間だっていうならね」
「……あの、あいつって誰ですか?」
藤丸立香の問いかけに、イシュタルは答えない。
ただ鼻を鳴らして「これでも忙しいの。アンタたちに構ってられる暇なんてないわ」とどこかへ去っていく。藤丸達が止めようとしても彼女は反応しない。
あいつって言われて思い至ったのは、とある男性だった。
でもそんなわけがない。そう藤丸立香は否定する。否定して希望を持とうとする。
とにかく話をしなければと上を見上げたが、女神はもう空の彼方に消えていた。
「……行っちゃいました」
「うん。何だったんだろうね。マシュ」
「はい。……ここに、カルデアのことを知っている人がいるのでしょうか?」
「ちょっと違うよ。カルデアの関係者がこのウルクにやってきているんだ。君たちより先にね」
不意に背後から話しかけてくる声が聞こえたので藤丸達は振り返った。
そこにいたのは中性的な人。緑色の綺麗な髪をロングヘアーにした、見知らぬ生き物。
人間と全く同じ姿をしているけれど、何処か人とは違う雰囲気を感じる。
「あの……貴女は一体……」
「まずはここから離れよう。話はそこで……ここは獣が多い。安全とは呼べないからね」
名前は言わずに「こっちだよ」とどこかへ案内する。それに藤丸はマシュと一緒に顔を見合わせた。
罠だろうか。それとも本当に安全を配慮してのことだろうか。
「……どうしますか、先輩」
「うん、ここに居ても何も分からないし……ついていこう。それにあの人はカルデアの関係者について何か知ってるかもしれないから……」
「はい! 了解しました、マスター!」
藤丸達は緑色の髪をした人についていくことに決めた。
このウルクが今までの特異点とは違い、最悪な方向へ向かっているとも知らずに────。
その男はただ楽しんでいただけだった。
自分自身の感情を優先し、何があろうとも運命として受け入れるつもりでいた。
だから理解していなかったのだ。
彼はある意味、言峰綺礼から愉悦を見出された存在。
ポンコツな部分が残る、ちょっぴり愉快な男であったから。
それを知るのは『彼』に身体を託した言峰綺礼のみ。もしかしたらギルガメッシュ王も知っているかもしれないが、英雄王はそれを進んで誰かに話そうとはしない性格。だからこうなるのも仕方がなかったのだろう。
男は行動した。自身の愉悦のために。
男は受け入れた。自分自身の感情のために。
そうして、事態は意外な方向へ進んでいく。
彼は少しだけ自由奔放に動いただけだというのに。彼が何か意図してやらかしたことなんて、麻婆だけだというのに。
────バタフライエフェクトとして、それは始まる。