綺麗な言峰とか呼ばれ始めた奴   作:温めない麻婆=ちゃっぱ

15 / 29
第十四話 事の発端

 

 

 

 

 まさに疾風怒濤のごとくというべきか。藤丸達は流れるようにエルキドゥと呼ばれた人からマーリンに助け出され、ウルクへと向かうことになった。

 マーリンと名乗った男がフォウにぶっ飛ばされた一面もあったし、アナと呼ばれた少女がマーリンの事を冷めた目で見ていた場面もあった。けれどそれは、まだほのぼのとしたマシな方だったらしい。

 

 彼らは話す。

 ウルクで何があったのを。

 

「まあ、何かあったと言っても簡単な話さ。麻婆教が誕生してしまってね」

 

「なんて?」

 

 

 カルデアから来た関係者。麻婆を愛する男が麻婆をウルクにて開発した。しかしそれは予想外の方向へ行ってしまったのだ。

 裏切りそうな敵対勢力の匂いがするサーヴァントに対し、放っておけと言ったギルガメッシュ王。しかし予想外の方向に進んだ彼にギルガメッシュ王は爆笑し死にかけた。冥府の谷に落ちそうになったけれどすぐ這い上がってきたらしい。

 

 ウルクの王すらも間接的に殺しかけた麻婆は、それだけで終わらなかった。

 なんせ麻婆をこの時代に再現するというのは至極困難なこと。それをやり切った男は偶然────麻婆の辛み成分としてあるモノに目を付けた。

 

 それこそが神秘。

 毒をも満たすもの。依存性が高く、全ての元凶となったもの。

 

 

「やってはいけない薬的なやつ?」

 

「いや、そういう君たちの時代にとってタブーな薬は使われてないよ。使われたのは複数……ギルガメッシュ王の持つ宝具の中に眠ってた食材と、イシュタルからかっぱらってきたものを料理を作る道具として使い、今はもういない忍び系のサーヴァントから香辛料を手に入れた。そしてその中にある刺激物も入れてしまったんだよ彼は……」

 

「あの、ちょっと待って。その麻婆を作ったサーヴァントってもしかして……」

 

「察してくれたようだし一言でまとめよう! 煌びやかな食材、豪華絢爛なキッチン道具! 素敵な香辛料もいっぱい! けれど神父系サーヴァントは間違えて余計な物も入れちゃった! それは────」

 

 

 何を入れたのかを言う前に、管制室で様子を見ていたらしいロマニ・アーキマンの声が響く。

 

 

『ちょっと待って導入がなんだか昔懐かしパワーパフ的なあれなんだけど!? マーリンってそう言うの見るのかい!?』

 

「マギ☆マリにも書いてあることだからね!」

 

『マギ☆マリにそんなこと書いてあるわけないだろう嘘つけ────って思ったらあった!? はぁ!?』

 

「ツッコミどころはそこではないと思います、ドクター! あと少し落ち着いてください!」

 

 

 何だかギャグっぽくなっていくテンションにマシュは目を白黒させる。

 そんな後輩の様子を見た藤丸は小さく溜息を吐いて、そうしてマーリンを見た。

 

 マーリンの雰囲気が一変する。

 いや、ずっと楽しんでいるような感じは変わらずだけれど、藤丸立香自身の事を期待しているように見えた。

 

 

「……もう単刀直入に言うね。カルデアから来た関係者って言峰さんでしょ」

 

「ああ、あたりだよ」

 

 

 満足げに笑った彼に、藤丸は目を伏せた。

 

 本当に言峰さんがここにいる。

 カルデアから逃げて、ここに来たということか。いやでもキャスターたちの話だと強制的にレイシフトされたようなものっていってたしな、と。藤丸立香は考える。

 

 藤丸はまだ希望を持っていた。

 だってまだ、言峰さんと出会っていないから。まだ話もまともにしていない。自分が立ち止まりそうになった頃の、あの言峰さんのおかげでどうにかできた全てを────希望の光を忘れたくはないからと。

 

 もしも人理を滅ぼす側だというのなら、自分は止めなくてはならないということも藤丸立香は理解していた。覚悟していた。

 

 だってそれが、彼に対する恩返しになると思ってもいるから。

 カルデア職員全員の心をきちんと救ってくれた言峰さんだからと────。

 

 

「ねえ教えて。……言峰さんは本当にウルクを滅ぼしに来たの? 言峰さんは……最初から私たちを裏切ってたの?」

 

「せ、せんぱい……」

 

 

 不安そうな顔をするマシュの背中を撫でた藤丸はマーリンを見た。

 彼はとても面白そうな顔でまだ見えぬウルクの方角へ顔を向ける。

 

 

「いや、それはどうかな? 彼はどちらかというとうっかり属性の強いサーヴァントだ。僕はうっかりなんて属性は持っていないけどね。……心配しなくてもいい。彼は裏切らないさ。なんてったって花の魔術師マーリンお兄さんは彼の性根をバッチリ理解しているからね────そう、僕と同じタイプだとね!」

 

 

 

 ドヤ顔のマーリンに対し、アナはゴミでも見るかのような目になり鼻で笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 





この作品が面白いと思ってくれた方、期待してくれた方は高評価や感想などしていただけたら嬉しいです。やる気補充のためによろしくお願いいたします。


一応書いておくと藤丸立香がマーリンと会っているときは過去の出来事で、言峰にとっては泥から這い上がってきた時点が先(未来)の話となります。

つまりこれはまだプロローグ部分です。分かりにくくてすいません。もしかしたら削除するかもしれないです。

追記
感想にてご指摘を頂き、第十三話の最初の部分を少し追加しました!アドバイスありがとうございます!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。