綺麗な言峰とか呼ばれ始めた奴 作:温めない麻婆=ちゃっぱ
言峰を殺す、という内容を聞いた藤丸はずっと思い悩んでいた。
言峰が敵だというのならボッコボコに倒して自らのサーヴァントにすると決めていたのに、それは不可能だとギルガメッシュが言ったから。
ギルガメッシュは言う。あの言峰は藤丸立香のサーヴァントにはならぬと。
あの男は手遅れだと言っていた。カルデアにいた頃に藤丸のサーヴァントとして契約していたなら手は有っただろうが、今となっては夢の話。
このウルクに来た時点であの聖杯が発動した。
言峰の願いを聞いた。そうして出来たのが、麻婆だった。
言峰はもう死んだも同じだというのだ。そんなの信じたくないけれど、藤丸はギルガメッシュが嘘をついているようには思えなかった。
だからきっと、次に会う言峰さんは自分の知っている言峰さんじゃないんだと思えたのだ。
「死んじゃった言峰さんは最後まで麻婆のために動いてたとか……ははっ……ほんと、わらえるよね……」
「先輩……元気を出してください先輩。言峰さんは麻婆によってウルク……いえ、三女神同盟の一人たるエレシュキガルさんを倒したんです! ですから、言峰さんは最後まで敵じゃなかった。それだけは救いだと……その……」
「うん。……うん、そうだよねマシュ。ありがとう。言峰さんにいっぱい伝えたいことがあるけれど、それはまた、会ったらにするよ。ウルクにはいないって言ってたけど……いつか会えるかもだから、王様はその時に言峰さんを殺せって言ってたけど……今は思考を切り替えないとだよね!」
「は、はい!」
両頬をバチンと強く叩いて気合いを入れ直した藤丸を見たマシュが、自分もと彼女も同じく自らの頬を叩く。
ギルガメッシュ王はシドゥリに連れていかれて仕事に追われている。
イシュタルはエレシュキガルの一件で麻婆臭くなった身体に湯浴みするとかなんとかでどこかへ行ってしまった。
天草は相変わらず麻婆屋の店主。マーリンはウルク市街の女性を口説き、アナはとある盲目のお婆ちゃんのことを手伝っている。
藤丸達も同じく、ギルガメッシュ王が戻ってきたからという記念でお祭りが行われたがそれに参加した後
そんなウルクに襲撃してきた女神がいた。
彼女はまず、天草が働いている麻婆屋に向かって襲い掛かってきた。それを見た藤丸はすぐさま応戦。言峰が最後に残した店を潰されるわけにはいかないとマシュと共に戦った────が、彼女たちを凌駕するほどの強さ。その勢いはすさまじく店においてある天草が書いたであろう達筆の『麻婆』の木製看板は吹き飛ばされた。
そうして彼女は『麻婆』の看板を踏み潰し、藤丸を見る。
「貴方も麻婆の被害に遭ったのかしら?」
「被害って何? それよりその足をどかしなさい。貴方が潰したそれは────言峰さんが最後に残した大事なものだよ!!」
藤丸の言葉に女神は目を細め悪そうな顔でニヤリと笑う。その歯はとてもギザギザとしていておっかない。
────ついでにだが、天草ももちろん応戦しているので藤丸が怒鳴った言葉に小さく「あれ僕が作って書いたんですがね」と言っていたが聞こえてはいなかった。
「あらあら、麻婆を作りだした元凶の事が大好きなんですネー? ならしょうがないわ。……ここからちょっとはしたなく。肉体言語で語り合いマース!!」
「先輩!」
襲い掛かってきた彼女にマシュの盾で塞がれる。
その背後にアナが武器でもって攻撃するがあっけなく避けて、マシュとアナを同時に蹴り上げ吹き飛ばした。
「強い……!」
「うふふ、ルチャリブレに強さの限界なんてありまセーン! さあ、貴方を正気に戻してあげましょう!」
指をゴキゴキと鳴らし近づく女神が、藤丸に向かって手を伸ばす。
そんな彼女の魔の手から守るように────天草が前へ出た。
「女神というにはいささか乱暴ですが感謝します。これでようやく麻婆屋のスタッフから逃れられる!」
「ちょっと待って天草さん。その言い方はなんかおかしい。あの女神さんの敵なの味方なのどっちなの!?」
「何を言ってるんですかカルデアのマスター。僕はギルガメッシュ王に召喚されたサーヴァント。このウルクを害するのなら敵ですよ……ええ、ウルクを害するのなら、ですがね」
天草のその瞳は少しだけ、不穏な色を宿していた。
聖杯「我が名は聖杯。さあ願いを叶えてやろう。どうせ金が欲しいやら不老不死やらありきたりなものに違いないがな」
言峰「あの素晴らしき麻婆をこのウルクでも再現したい」
聖杯「なん……だと……!?」
言峰(麻婆を作った後にでも、愉悦をするためにどう裏切るか考えるか……)
聖杯「麻婆でいいというのか!? 貴様、正気か!?」
言峰「さて、究極の麻婆を作るか……」
聖杯「馬鹿な、本気だと……!!」
この作品が面白いと思ってくれた方、期待してくれた方は高評価や感想などしていただけたら嬉しいです。やる気補充のためによろしくお願いいたします。