綺麗な言峰とか呼ばれ始めた奴   作:温めない麻婆=ちゃっぱ

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今回は閑話みたいな感じです。





第二十二話 元凶を押し付けよう

 

 

 

 

 言峰は女神たちの攻撃から逃走し、藤丸達から離脱した。

 その後、麻婆まみれで倒れていた鬼娘によって何が起きたのかについて理解した。

 

 どうにも自分が作り上げた麻婆が神秘の域に達してしまい、女神やら敵勢やらに多大な被害を与えてしまったらしい。その話を聞いただけで愉悦できたので満足した。

 しかし一番問題なのは、それが自分自身のせいだと思われている件についてだ。

 

 

「ん? なんだ、お主のせいではないのか?」

 

「私はただ麻婆を作っていただけだ。ウルクを麻婆の海に沈めようとしてやったわけではない」

 

「むっ……せめて麻婆ではなく菓子であったならよかったというに……」

 

「ウルクが菓子まみれならハロウィンのような惨事になっていただろうな。いやそれも面白そうだが……」

 

「面白いとは何だ! 美味いの言い間違いだろう!」

 

「どちらでもいい」

 

 

 

 話し終わった後、麻婆から逃れてやると森の中に入っていった鬼娘────茨木童子と別れ、これから先どう動こうか考える。

 なんせ現状自分がやらかした元凶だとカルデア勢力に勘違いされているからだ。

 

 ────いや、自分が動いた結果ああなったのだから、まあ元凶と言われたら否定しきれないなという思いはあるが。

 どうせ元凶になるならもっと愉悦しやすい計画を立てて、藤丸立香達をより苦しめるようなやり方にしてやりたかった。それでもって、敵側を裏切りカルデアの味方をして、まあいろいろと満足した後に消える予定だったのだ。

 

 サーヴァントなのだからこのままみっともなく生き延びるつもりはない。

 それは本物の言峰の思考に影響を受けてしまった『彼』が結論付けたこと。

 

 カルデアは自分を裏切り者だと思っている。いや実際そういうものだ。麻婆を作っただけなのに裏切り確定と思われているのは少し癪だが……と、言峰は思考を回す。

 

 

「……そういえば、キングゥは何処だ」

 

 

 あのラフムの群れの中にキングゥはいなかった。何処に行ったのかと思ったが、すぐに分かった。

 茨木童子が逃げた方向とは真逆の森の奥から爆発音やら鎖が鳴るような音が響いているので、おそらくはあちらで戦っているのだろう。

 

 キングゥに近づき助けるべきか……見殺しにしてもいいが、ここでそれをやって面白いことなんてあるのかと言峰は考える。

 すでに麻婆のせいで自分が知っている原作とはかけ離れた存在になっていそうな気がするから、キングゥが倒れると大変な状況になる可能性もあった。

 

 それにしても、やけに身体に力が漲るのはなぜだろうか……そう思いつつ歩いていた時に出会ったのは、一匹のラフム。

 

 

「…………」

 

 

 白いハンカチを手に付けたラフムが、こちらをじっと見つめる。

 警戒しているのかそれとも何かを言いたいのだろうか。

 

 言峰はその一匹だけで大人しいラフムが何かを探している様子に気づいた。

 

 

「……キングゥを探しているのか」

 

「っ────」

 

「しかしその怪我では……」

 

 

 なんとなくこれもまた原作乖離かと、言峰は考える。

 自分がいるせいでこのラフムは傷ついた。おそらくはそのせいでこいつは消えるだろう。

 

 そうした結果、キングゥが消滅する未来があることを察した。

 麻婆のせいで世界が滅びる可能性も視野に入れた。

 

 それはそれで面白いが、結果としては楽しくない。

 確かに武器(麻婆)の引き金を引いたのは自分だが、それを悪化させたのはおそらく元凶たるティアマトだろうからと、言峰は考えていたからだ。

 

 ラフムは何も言わない。だが、その言いたいことは理解した。

 ボロボロで消えそうな身体。同類のラフムにやられたのだろうか。所々真っ赤だが、少しいい匂いがするのは麻婆のせいか。

 

 

「……助けたいか?」

 

 

 ラフムは何も言わない。

 しかしその空気は、自身が発した問いに対して、肯定を意味していた。

 

 ────ならばと言峰は考える。

 

 自分がラスボス枠に入ってもいいが、それはなんだか単純すぎて面白くない愉悦になり得そうだと思っていた。

 もっともっと、状況を面白おかしくしてやりたい。

 

 

「……いいだろう。お前の願い。その意志を受けとろう」

 

 

 その白いハンカチを付けたラフムを背負い、言峰は森の中を駆けた。

 行く先は当然キングゥがいる場所。

 

 それは、元凶を押し付けて自分は味方で裏切ってないという計画が始動した証でもあった。

 

 

 

 

 

 

 





余談だが、言峰はまだ服を身に着けていないので腰布タオルな状況。つまりほぼ全裸である。



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