綺麗な言峰とか呼ばれ始めた奴 作:温めない麻婆=ちゃっぱ
ラフムが溢れただけで終わったのなら、ここまで女神たちが怒るわけがない。
いや、ラフムがいるという惨状もなかなかのものだし、トラウマになるぐらいには嫌なものをみてきた。マシュが怒り、自分すら激情するぐらいには、あいつらがやったことは許し難いものだと藤丸は認識していた。
ラフムを消せばいいのか。
それとも聖杯を奪っていったラフムがたどり着いた場所────今もなおこちらへ向かって近づこうとしているティアマトを殺せばいいのか。
いや、全て違う。
そもそも現状ティアマトは一定の距離までは近づけるがそれ以上は無理なのだ。
だからラフムは男を探す。
ティアマトは悲しそうな音色を奏でるが、ケイオスタイドはウルクに溢れることはない。いや、今のところはといえるだろうか。
まるで、ケイオスタイドの川が流れている場所に麻婆と化したあの泥が、ダムのごとく怒涛に流れ川の流れを押し出すように。
一定の防波堤になっていたのだ。ケイオスタイドよりもただ一定に愛し、純粋に願った男の感情がティアマトの力に勝ったというのか。まさかの麻婆聖杯がウルクを救うというのか。
しかしそれも時間の問題。
ケイオスタイドと麻婆の泥が混ざり合い大変な状況になるかもしれない。
それに別の原因悪化となる可能性があった。
「このままじゃ特異点は解消されない。それどころかウルクの事象がそのまま正史になり、未来が狂う可能性が高い……分かるかい? それはつまり、僕たちの敗北だ」
「うむ。それなる問題については我が命じよう! まずはあの麻婆聖杯をどうにかして奪うことだ」
「ま、麻婆聖杯を? 言峰さんから?」
ギルガメッシュ王の言葉に藤丸は呆然とする。
それは言峰さんを殺すことになるのではと藤丸は恐れているから。
しかし王様は笑った。また笑死するかと思うぐらいには爆笑し、そうして言うのだ。
「麻婆なる辛さがウルクに浸透し、ラフムにすら影響を与えるものだ。その根幹を揺らがすことが出来れば弱体化はあり得るであろう。……ただし、麻婆聖杯が力を失うことすなわちウルクへの攻めに転ずるものとする。────やるべきことは二つだ! エレシュキガル、冥府の準備はどうだ!」
『まだかかるのだわ。……何故かは知らないけれど、麻婆の匂いがするガルラ霊が元気いっぱいで予定よりすぐ終わりそうですけど……本当に理不尽なのだわ……』
鏡から聞こえてきた不満そうな声にギルガメッシュ王は噴き出す。
「フハハハハハ! それが麻婆を願ったあの愚かな男に共鳴したガルラ霊の末路というものよ! さて次だ。藤丸立香!」
「は、はい!」
「迅速に言峰を殺せ。麻婆の信仰心。その息の根を止めてやれ」
「ま、麻婆の息の根……?」
「あれらを流行らせたのは言峰だ。まあ我もあの泥を食い止めるのに使えると分かってからは早急に流行らせたが……」
言峰を殺す、という言葉に藤丸は視界が揺らぐ。
感情に何か重たいものがのしかかるのだ。きっとそれは王様からの重圧。言峰さんを殺さなきゃいけないという絶望。
でも、ここまで来たからにはやらなくてはならない。
それがカルデアの人類最後のマスターとしての責任感だと分かっていた。
だから藤丸は、まず決めたのだ。
「まずは麻婆をウルクから根絶する。ティアマトの前哨戦だよ、マシュ!」
「はい、先輩!」
元気よく頷いたマシュに藤丸は笑った。
そうして、隣にいる男を見た。
「……協力してくれるよね、天草」
「ええ、もちろんですとも」
「でも、先に言っておくけど麻婆聖杯はあげないよ?」
そんな声に、天草はただ微笑むだけだった。
麻婆があるからギャグが続くのだと気づきました(知らない方が幸せだった心理)
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