綺麗な言峰とか呼ばれ始めた奴 作:温めない麻婆=ちゃっぱ
それはもう、全てが始まる前のこと。
ようやく捕まえた愛しい我が子が、自力で這い上がって行ってしまった。それを奇跡的に────見知らぬ流星がイシュタルにぶち当たる確率でティアマトは数多ある我が子の中から一人を見つけた。
自らの全てを吐き出し、外へ行ってしまった我が子を認識した。
我が子は男であった。生きている人間ではなかった。
しかし、人間にしてはたった一つの何かに執着しているようだった。
その執着の先を見れば、彼は帰ってくるかもしれない。
母よりも大切なものを取り込み、帰ってくることを願った。
言峰の麻婆を泥に混ぜたのは、母から去った我が子を望んだから。
だがしかし、それはやってはならないこと。水に麻婆が入ればそれは汚染されたも同じ。
例えティアマトであっても、汚染は進み続ける。
それを、その麻婆をティアマトが望んだと世界に認識されてしまったこと事態がいけなかった。
言峰は決して多くを望まなかった。
人を殺したいとか、世界を抹消したいとかそういうことじゃない。愉悦すら考えていない。
言峰が望んだのはただ一つ。
────麻婆が食べたい、という純粋な願い。
ティアマトは止まらない。どこまでも逃げる彼を追いかけ続けていく。
「行くよマシュ。パンケーキの準備は充分?」
「はい先輩! カルデアから出張してくださいましたエミヤ先輩を中心に、ざっと300枚のパンケーキが用意されました!」
『ここまで来たらもうパンケーキの家が建つレベルだよね!?』
「パンケーキの家となると壁や柱などの強度が足りなさそうですが……」
「ドクターの言うことは気にしないでマシュ! 今はただやるべきことだけ考えて動こう!! 早くしないと赤い牛若丸勢力が勝っちゃう!!」
「は、はい!」
なんだか嫌な予感がした。それはきっと言峰さん由来の麻婆泥のせいだと藤丸は考える。
「とにかく麻婆聖杯を探さないと……ダ·ヴィンチちゃんかドクター、何処にあるのか分かる!?」
『うーん、探してはいるけどこんな状況だからねぇ』
『いや待って! 反応ありだ! 嘘だろ!!?』
ドクターの驚く声に藤丸は急かす。
早く言峰に会いたかった。話をしたかった。戻ってきて欲しかった。
またあのココアをいれてくれた時間に戻りたかったから。
ドクターから告げられた場所に、藤丸は目を見開いた。
「えっ? 待ってドクター……もう一回言って?」
『言峰はここにいるんだ! ウルクの中央────天草四郎と出会った、あの麻婆の店に!!』