好きなウルトラマンに転生したけど、トレーナーやっています!   作:断空我

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遅くなったうえに話の長さから前後編に分割するという。

待っている方達がどのくらいおられるかわかりませんが、読んでくださりありがとうございます。

ウルトラ投票、メカ部門の結果に驚き、でも、知名度でいったら納得という事でもあるんですよねぇ。




ロンリーナリタタイシン(前編)

「よぉ」

 

「なに?アンタ、暇なの?」

 

ナリタタイシンというウマ娘の出会いは事故だった。

 

ウマ娘と人がぶつかればまず只では済まない。

 

ウマ娘の力は強く、人は比べると弱い。

 

トレーナーはウマ娘が暴走した場合、すぐに逃げるか食われるかの二択となる。

 

俺の場合、一人になりたい時があって、人が寄り付かない場所に向かったら彼女と出会った。

 

出会ったタイミングがとにかく事故だった。

 

一部のウマ娘から虐められているナリタタイシン。

 

いや、いがみ合っているウマ娘の場面に出会ったというのが正しいかもしれない。

 

「一人になりたい時があるだろ?そんな感じだよ」

 

「あっそ、邪魔したら蹴るから」

 

「ここにいる事が邪魔だから蹴るとかなしだぞ?」

 

ちらりと見てからそっぽを向くナリタタイシン。

 

俺は買ってきたカフェオレと菓子パンを……。

 

「あれ、菓子パン」

 

「いただいたよ」

 

漫画雑誌を読みながら俺が買ってきた菓子パンをもふもふと食べるナリタタイシン。

 

前よりも遠慮がなくなったなぁ。

 

まぁ、嫌いじゃないけど。

 

「そーいえば、アンタ、チーム作ったんだよね」

 

「作ったのは大分、前だけどな。今はオグリやクリーク、タマ、タキオンが頑張ってくれているよ」

 

「……そう」

 

ちらりと雑誌から目を離してこちらに近付いてくるナリタタイシン。

 

「どうした?」

 

真剣な表情でこちらを見上げてくるナリタタイシンの姿に俺は戸惑う。

 

「ねぇ、アンタは宇宙人って、信じる?」

 

彼女が告げた言葉にとりあえず、俺は首を傾げるしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、宇宙人をみた!?」

 

「声が大きい!」

 

大きな声を上げる勝人君に俺は注意しながら話を続ける。

 

「このニュース、知っている?」

 

「うん。少し前から起こっている失踪事件」

 

俺と勝人君は携帯端末を覗き込む。

 

少し前から近隣で発生している失踪事件。

 

人が何もないところで次々と消えていくというもの。

 

警察が捜査に乗り出しているが難航しているらしい。

 

「この世界は怪獣や宇宙人における専門家がいないからなぁ」

 

怪獣対策について政府が何か検討しているらしいけど、果たしてどうなるのかはまだわからないし。

 

「それで、えっと、ナリタタイシンさんが宇宙人を見たって」

 

俺は勝人君に聞いた話を伝える。

 

数日前、こっそりと外に抜け出して練習をしていたナリタタイシンはサラリーマンが何もないところで消える場面を目撃したという。

 

咄嗟に携帯電話を構えて撮影をしていると遠くからみている怪しい存在を見つけた。

 

その姿が人ではなかった。

 

人じゃない=宇宙人とナリタタイシンは判断したようだ。

 

「その宇宙人の姿とかは」

 

「パニックを起こしそうになるのをこらえるのに必死であまり覚えていないらしい。ただ、不気味な声や音みたいなものは聞いたそうだ」

 

「不気味な音や声?それだけだと判断は厳しいよね」

 

勝人君の言葉に俺は頷く。

 

宇宙人はいろいろな人がいる。

 

音で会話する者もいれば、発声機能がなく他者を代わりにして話をする者もいる。

 

ナリタタイシンの情報だけだと判断が厳しい。

 

そもそも、人を誘拐しにやってきた宇宙人は何をしたいのだろうか?

 

いや、すくなくとも良い方へ向かう話じゃない。

 

「それで、勝人君に頼みがある」

 

「なんだい?」

 

「俺はしばらくナリタタイシンと一緒に行動をすることになった。だから、しばらくチームの娘達の面倒を見てほしいんだ」

 

「え、でも、葵ちゃんは?」

 

「彼女は数日、実家の用事でチームに来ないから勝人君に任せるしかないんだ。これ、予定表も渡すから」

 

「僕に、出来るかな?」

 

「数日の話だし、勝人君なら安心して俺の愛バ達を任せられる」

 

「大丈夫!僕に任せて!」

 

なんかおだててしまったような感じはするけれど、彼なら任せられる。

 

それくらい頼りになってきているからな、サブトレーナーとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たんだ」

 

「外出届は?」

 

「ちゃんと出した。本気でついてくるの?」

 

「心配だからな。宇宙人がナリタタイシンを狙うかもしれないからな」

 

「バカじゃないの。本気で信じるなんて」

 

ぷぃっと視線を背けて歩き出すナリタタイシン。

 

「……………ありがとう」

 

ぽつりと呟いた彼女の言葉はちゃんと俺の耳に届いていた。

 

だが、ここで余計な事を言えばナリタタイシンに蹴り飛ばされるだろう。

 

そんなバカなことはしない。

 

外出届を出しているとはいえ、門限はある。

 

その時間内に調査をしなければいけない。

 

侵略者なことは間違いないとはいえ、目的は何だろうか?

 

「なに?」

 

「いや、熱心に探すなと」

 

「……自分のみた物が本当か嘘か確認しただけ。アタシは嘘つきじゃない」

 

最後に呟いた言葉は通報したけれど、信じてもらえなかった事だろうな。

 

彼女と親しいウイニングチケットやビワハヤヒデに聞いた話だと、今回の事件のせいでナリタタイシンは嘘つきと言われ、色々な悪評が広まっているらしい。

 

まるで少し前の俺みたいだな。

 

しばらく目撃した周辺を歩き回ってみたが宇宙人らしき存在の影も形もない。

 

こちらの動きを察知しているのか、それとも、別の場所で動いているのか、どちらだろうか?

 

「ナリタタイシン、少し休憩しよう」

 

「別に、まだ、いけるから」

 

真剣に周囲を探すナリタタイシン。

 

焦りで視野が狭まっているな。

 

あれは、無理やり。

 

声を掛けようとした俺は近づいてくる気配に立ち止まる。

 

「こんばんは、マックス」

 

「こんばんは、メフィラス」

 

真っ暗な街の中、俺とメフィラスは対峙していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミは鼻が良いらしい。外星人、いや、宇宙人の存在を嗅ぎ分ける能力が」

 

「悪いけど、そんな素敵な能力は俺にない。強いていうなら、この星に長く居た事で俺と同じように息を潜んで生活している者達の存在を感じ取れるというものだよ」

 

「この星で言う心霊的なものだな。私の苦手とするものだな。マックス」

 

「一応、確認だが、この場で会ったのは偶然っていう事でよいんだよな?それともアンタが何か関わっている?」

 

「今回は偶然だとも、マックス」

 

彼の態度を見る限り、嘘ではなさそうだ。

 

ちらりとメフィラスは周囲を探っているナリタタイシンを見た。

 

「キミの担当ウマ娘かな?」

 

「残念ながら違う。友人ってところかな?」

 

「異種族の友人か、いや、この場合、宇宙人と原星人の友情か。興味深い事をするものだ。光の星の連中とキミは違うらしい」

 

「メフィラス、アンタが出会った光の星の住人がどういうものか俺はわからないが、俺はこの星の種族を愛している」

 

「愛しているか、興味深い」

 

メフィラスは微笑む。

 

ちらりと空を指さす。

 

「ケムール星」

 

「なに?」

 

「ここより先の未来に存在する星だ。彼らはある装置を用いてこの星の若者を狙っている」

 

「……どうして、その情報を俺に教える?」

 

「ケムール人が邪魔なのさ。マックス」

 

ポンポンとメフィラスは肩に手を置く。

 

「利害の一致、私の好きな言葉でね。彼らは自分達が長生きするために若い者の肉体を欲している。適度なパーツ交換をして自分達を保たせようとしている。醜いと思わないか?」

 

「どうだろうな。彼らが必死と判断すればいいのか、そこまでして生にしがみつくのが正しいか。それを判断するのは巻き込まれた当事者達だろう」

 

「成程、原住星人の判断にゆだねるというわけか、マックス。そして、彼らがケムール人を敵と判断したら助けると?」

 

「俺は何でもかんでもこの星の人達を助ける為に協力するわけじゃない」

 

ウルトラマンは人類だけの味方というわけじゃない。

 

人類に誤りがあるからといって、彼らの為に戦うことが正しいというわけじゃない。

 

嘗て、ウルトラセブンが超兵器を開発した人類に「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」といって非難したように、間違いを間違いのまま進ませることを良しとしない。

 

ただ、最後の判断を人類に委ねてきた。

 

ウルトラマンは人類の選択にまで干渉しない。

 

その時が来るまで俺はわからない。もしかしたらいつか、その日はやってくるかもしれない。

 

「俺はウルトラマンだ。どちらかが宇宙の正義に反することをするなら止める。その時がくるまで」

 

「興味深いな。キミは」

 

メフィラスは歩き出す。

 

「今回も私は傍観させてもらおう。マックス」

 

メフィラスと入れ替わるようにナリタタイシンがやってくる。

 

「今の人、知り合い?」

 

「そんなところ」

 

「その割にはギスギスしていたようにみたけど」

 

「……そう見える?」

 

コクンと小さく頷くナリタタイシン。

 

正直、俺とメフィラスの関係は敵対者と言われると少し違う……と思う。

 

けれど、その答えを急いで出すことも違うのではないかなと思っている。

 

「そろそろ門限だから帰ろう」

 

「わかった」

 

渋々という形で歩き出すナリタタイシンと一緒に続こうとした。

 

本能的に俺はナリタタイシンの肩を掴んで引き寄せる。

 

「ちょっと、何を」

 

「動くな」

 

鋭い目で俺は彼女が進もうとした先を睨む。

 

普通の人は見えないかもしれないが、地面にある液体が零れている。

 

メフィラスの言葉が真実だと証明するものだ。

 

ケムール人の持つ消去エネルギー源が広がっている。

 

これを踏んでしまったら触れた人を消滅させ、ケムール星へ転送される仕組みだ。

 

「え、なに?どうしたの」

 

戸惑うナリタタイシンの肩をしっかりと掴んだまま、周囲へ意識を集中する。

 

ケムール人の存在を探るも、既に逃走した後なのか何も感じない。

 

何かあった時の為に用意していたライターでタバコに火を点けて落とす。

 

いきなり地面が燃え出した事に驚くナリタタイシン。

 

水ですぐに消化してから彼女に告げる。 

 

「ここは危険だ。すぐに離れよう」

 

ナリタタイシンの腕を掴んで消去エネルギー源がないか警戒しながらトレセン学園へ戻る。

 

しばらく、彼女が狙われないよう傍にいた方がいいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、トレセン学園の廊下を歩く。

 

ケムール人は俺の存在を警戒しているのか気配を感じない。

 

それでナリタタイシンが安全という保障があるわけじゃない。

 

可能な限り彼女へ被害がいかないように注意する必要がある。

 

探しているとウイニングチケットと話をしている彼女を見つけた。

 

「ここにいたのか」

 

「あれ、トレーナーさん!もしかして、もしかして、タイシン!!」

 

目をキラキラさせてウイニングチケットは俺とナリタタイシンを交互にみる。

 

「スカウトなの!?タイシンをスカウト!?」

 

「うるさい、そんなんじゃないから」

 

「実は、それもある」

 

「ぇ?」

 

目を見開くナリタタイシン。

 

これは前から考えていた事だ。

 

ナリタタイシンの末脚はとても興味深い。

 

今は色々と不調が続いていて活かせていないけれど、冷静にレースの流れを感じてタイミングを掴めばきっと、レースで勝てる。

 

それだけの脚質が秘められている、と俺は感じていた。

 

「か」

 

「あ、ヤバ」

 

隣でぶるぶると体を震わせていたウイニングチケットが号泣する。

 

「うわ」

 

「うれしぃよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおタイシンに、タイシンにトレーナーができるなんてぇえええええ!感動だぁあああああああああああ!」

 

「うっさい、アタシは認めたわけじゃ」

 

「残念だな。キミがその気であればこちらとしても良かったのだが」

 

この場にいないはずのウマ娘の声。

 

ウイニングチケットやナリタタイシン、俺は視線を向ける。

 

廊下を歩いてくるウマ娘。

 

シンボリルドルフがやってきた。

 

「やぁ、トレーナー君。割り込み済まない」

 

「急ぎの用事であるのなら、そちら優先でどうぞ」

 

「感謝する。ナリタタイシン、急ぎ、生徒会室まで来てくれるかな?キミに火急の要件がある」

 

「……わかった」

 

「では、失礼する」

 

ちらりと一瞥してから歩きだすシンボリルドルフ、ナリタタイシン。

 

残されたウイニングチケットはあわわと戸惑っている。

 

「と、トレーナーさん!?どうしよう!」

 

「そうだな。用事があるから近くの生徒会室まで行くってどうだろうか?」

 

「え?」

 

「生徒会室の前で聞き耳を立てていて、内容を聞いてしまったでもいいんじゃないか?」

 

「成程ぉ!よし、行こう!」

 

「こらこら、そんな大きな声をあげるとバレちゃうだろう?」

 

きっと、今の俺は悪人みたいな笑顔を浮かべているだろうな。

 

傍から見れば、俺はベリアルに見えるかも。

 

まぁ、ナリタタイシンの為という建前があるのだ。行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンSide

 

「実は、上からキミに退学勧告の話が出ているそうなんだ」

 

生徒会長に呼ばれたアタシに告げられたのは退学勧告だった。

 

理由はいくつかの校則違反、そして、いくつものレースで勝利を掴めず危ない走りをしているからというものだった。

 

目の前の相手が生徒会長でなければ叫んで掴みかかっていただろう。

 

アタシはアタシをバ鹿にした奴らを見返してやりたい。

 

その為に、レースに勝つための努力を必死にやってきた。

 

努力が認められてトレセン学園に入ったのに、退学?

 

トレーナーがついておらず危ない橋をしているから?

 

ふざけるなと叫びたい。

 

アタシを見たトレーナーは体格が小さいからレースは不利だと真っ向から否定するだけだ。

 

誰も、アタシに対してアドバイスしなかった。良いアドバイスも。

 

いや、一人だけ、一人だけいたんだ。

 

 

――その末脚の素質はあるんだから、溜めて溜めて、ここぞというところに走れば勝てるんじゃない?

 

アイツ、藤間カイトとかいうトレーナーだけがアタシにアドバイスをくれた。

 

不思議なトレーナーだった。

 

他のトレーナーとどこか違う。

 

後になって知ったけれど、アイツは昔、何かをやらかして同僚や先輩、下のトレーナーから嫌われ、噂によってスカウトもうまくいっていなかったという。

 

そんなアイツがタマモクロスやオグリキャップ、スーパークリーク、アグネスタキオンと様々なウマ娘とレースに勝利している。

 

羨ましい。

 

アイツの指導を受けたい。

 

もっといえば、

 

「そこで、生徒会から提案がある」

 

「提案?」

 

「レースに勝利すること、キミが無茶な事ばかりをする危ないウマ娘でない事の証明になる」

 

「単純だね。レースに勝利すれば、担当してくれるトレーナーもいないっていうのに」

 

「だが、何もしなければキミは退学になる。残酷な話だが」

 

「良いよ。勝利すればいいならなんとかするから」

 

ぺこりと頭を下げて生徒会室を出る。

 

外に出たら涙を零しまくっているチケットがいた。

 

「タイシィィィィン!」

 

「アンタ、聞き耳立てていたの!?」

 

「違うよぉ、がっつりと話を聞いていたんだ!ねぇ、トレーナーさん!」

隣を見ると苦笑いを浮かべているアイツがいた。

 

この時、アタシは決めた。

 

「ねぇ、アンタさ」

 

「なんだ?」

 

「アタシをスカウトしたいんだよね?」

 

「まぁ、考えてはいる」

勝たなければ、アタシはここにいられない。

 

だったら。

 

「アタシのトレーナーになって」

 

コイツを利用してでも、証明するんだ。アタシは勝てるってことを。

 

「良いよ」

 

迷わずに答えてくれた。

 

これで。

 

「正し、これから行うレースにキミが勝ったら、それまでは仮契約だ」

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナー君」

 

ナリタタイシンと仮契約を結んだ日の夜。

 

ぶらぶらと学園の中庭を歩いているとシンボリルドルフがやってくる。

 

「やぁ、見回りご苦労様、生徒会長」

 

「キミはこんな遅くまで仕事かい?」

 

肩を竦める。

 

一週間後に行われるナリタタイシンの為の模擬レース。

 

その為のレース場申請や参加するウマ娘達のリスト等、やることが山積みなのだ。

 

「少し、話があるんだ」

 

「ナリタタイシンの事だろう?」

 

俺の言葉にシンボリルドルフは目を見開く。

 

「もしかして、わかって引き受けたのか?」

 

「まぁ、あの状況下だからな」

 

ナリタタイシンの目はいつもと違って濁っていた。

 

あの目を俺は知っている。

 

「ならば、断るべきだったんだ。もしかしたら、あの日と同じような事になる可能性だって」

 

「それはない」

 

「何故、キミは断言できる?もしかしたら、また、裏切られるかも」

 

「そうなったらその時だ。それに」

 

俺は星空を見上げる。

 

この世界にない故郷を探すように。

 

「今、抱いている気持ちが何百回裏切られたとしても俺は信じるって決めているから」

 

「キミは変わらないな……」

 

呆れたようにため息を零すシンボリルドルフ。

 

彼女は近づいてくると俺を見上げてくる。

 

「だが、トレーナー君。私はもし、彼女が、ナリタタイシンがキミを裏切ったその時は、容赦しない」

 

「怖いな、おい、すべてのウマ娘の幸せを願う生徒会長のセリフか?」

 

「私は、私は、キミを傷つけるウマ娘だけは絶対に許せない。キミと契約することができないなりに、私は私のやれることをするのさ、トレーナー君」

 

シンボリルドルフはそういって、俺の指に触れる。

 

「キミの元愛バとして、それくらいは許してほしいね」

 

 

――その事はもう忘れた方がいい。

 

 

前に伝えた言葉をなぜか、俺はその場で言うことが出来なかった。

 

言っていたらあんな事にならなかったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その存在は酷く、苛立っていた。

 

何故なら自分の思っている通りに計画が進んでいないからだ。

 

これもすべて、あの男が邪魔をしている。

 

優秀な駒を得たと思っていたら余計なおまけがついてきた。

 

あの男が現れてから計画がうまくいっていない。

 

だが、チャンスが舞い込んできた。

 

その日がくるまで辛抱強く待つことにした。

 

何故なら、その日に我々の目的が達成されるのだから。

 

闇の中でその存在は不気味に笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

模擬レース当日。

 

「眠たい」

 

「なんや、トレーナー、寝不足かいな?」

 

芝生の上に座り込んでいる俺の傍にタマがやってくる。

 

体操着姿のタマも同じように座ってきた。

 

「トレーナーはほんまにお節介やな」

 

「理解しているよ。ただ、放っておけなかった」

 

「ウチの時と似たような話やな。まー、それがトレーナーの良さや」

 

「ありがとうよ。タマも悪いなレース。協力してくれて」

 

「構わんよ!ウチと同じ小柄で苦労しているウマ娘同士!力になってやりたいだけや」

 

「その気持ちだけでも大変うれしいよ。オグリやクリークも協力してくれる」

 

「けど、本気出してええんやな?」

 

確認するようにこちらを見るタマの目はレースに挑むウマ娘の目だ。

 

「ここで手加減して勝てないようなウマ娘ならこの先、やっていけない。ナリタタイシンに悪いけど、全力でやってくれ」

 

「了解や、白い稲妻の実力、みせたるで!」

 

「オグリやクリーク達にも伝えてくれ」

 

頷いて去っていくタマ。

 

俺は立ち上がり汚れを落とすとゲートの方まで向かう。

 

ゲートの近くで勝人君がいる。

 

「カイト君」

 

「オグリ達の面倒を見てくれてありがとう。レースの件も助かる」

 

「彼女達もやる気満々だ!でも、ナリタタイシンちゃんは大丈夫なの?」

 

勝人君はオグリ達の様子を見て勝てるか不安なのだろう。

 

実際、今回の参加者は猛者だらけだ。

 

ナリタタイシンの挑む模擬レースの相手はオグリキャップ、タマモクロス、スーパークローク、ウイニングチケット、ビワハヤヒデ、その他、レースで実力を見せている猛者たちばかり。

 

この中でナリタタイシンは勝利を掴みとらなければならない。

 

各々が準備を終えてレースが始まる。

 

競い合うウマ娘達。

 

観客のほとんどがオグリやウイニングチケット、ビワハヤヒデ等の強豪を応援している。

 

その後方でナリタタイシンが堪えながらギアをあげるタイミングを今か今かと待っていた。

 

「あぁ、あんなに離れているけれど、大丈夫なのかな?」

 

「むしろ、もう少し離すべきかな?」

 

「え?」

 

「さぁ、勝人君、彼女が歴史に刻まれる瞬間だぞ」

 

俺がにやりと笑みを浮かべた瞬間、ナリタタイシンが駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリタタイシンSide

 

 

「(うぅ、あんなに距離が離れている……でも、アイツから絶対に争いに参加するなって言われたから)」

 

前方で競い合うウマ娘達。

 

普段の自分ならその中に飛び込んでいただろう。

 

だが、仮契約を結んだトレーナーである彼から徹底して言われた事。

 

堪えろ、タイミングを計れ、そして。

 

前に出そうになるタイミングを堪えつつ、観察を続けるナリタタイシン。

 

そして、時は来た。

 

「今!」

 

ナリタタイシンは走る速度を上げる。

 

トレーナーに徹底して教え込まれたタイミング。

 

その指示通りに駆け出したナリタタイシンは後方からぐんぐんと追い上げていく。

 

「な!?」

 

「まさか!」

 

驚くウマ娘達、そして、観客の声。

 

その中には自分をバ鹿にしていた者達もいたかもしれない。

 

そんなことはどうでもいいくらい気分が良い。

 

ナリタタイシンは前方で争うウイニングチケットやオグリキャップを抜き去ろうとする。

 

「やるな、だが!」

 

「負けへんで!」

 

最後の一直線。

 

教えを守りながら走り続けるナリタタイシン。

 

目の前に見えてくるゴール。

 

 

「「「勝つのは」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――アタシ!

 

 

 

――ケイカクドオリ。

 

 

その瞬間を彼は待っていた。

 

 

Sideout




というわけで今回のお話はナリタタイシン。

話の内容はウマ娘のエピソードをモデルにしておりますが、ところどころ違う展開となっております。

後編の完成度は低いですが、連休も近いですから急ぐつもりですので、お待ちいただけると。

チーム最後の一人、誰になると思う?(ちなみに未登場のウマ娘は今後出る可能性あり)

  • ナリタタイシン
  • シンボリルドルフ
  • ゴールドシップ
  • ライスシャワー
  • サイレンススズカ
  • トウカイテイオー
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