好きなウルトラマンに転生したけど、トレーナーやっています! 作:断空我
タイトルでメインウマ娘について、バレていますが、
~~現代~~
「え、オグリキャップと出会った時の話?」
いつものようにガレージで仕事をしようとしていた時、後輩の桐生院に尋ねられる。
「いえ、あのマイペースといえるオグリキャップを先輩はどのように勧誘したのかと思いまして」
「少し違うなぁ」
あの時の事思い出しながら俺は苦笑いを浮かべる。
「どうしました?」
「俺がスカウトしたんじゃなくて、逆スカウトされたんだ」
「え!?つまり、先輩をトレーナーにしてくれとオグリキャップが?」
「そういうこと」
驚いている桐生院に笑いながらベンチに腰掛ける。
「そんな驚くような事か?」
「だって、あそこまでマイペースな娘なんですから」
「自分を貫くってとても大事なんだぜ?」
それがあったからこそ、オグリはあの誘惑をはねのけることができたんだろう。
俺は昔を思い出す。
宇宙人にとっては一瞬のような出来事、けれど、忘れることが出来ないオグリキャップの強さを見た時の物語。
~~過去~~
「何をしているんだ?」
担当になったタマモクロスと共にグラウンドへ向かおうとしていた俺は右往左往している一人のウマ娘を見つける。
芦毛のウマ娘で、学園のジャージ姿であることから学園に属している。
困っているのなら助けてあげようという気持ちで俺は声をかけたのだった。
「何度やってもグラウンドへ辿り着けないんだ」
「そうなのか?じゃあ、俺がグラウンドへ案内しようか?」
「いいのか?」
「あぁ、俺もグラウンドへ行くつもりだし」
「助かる。何度も何度も同じ場所へ戻ってきてしまうんだ。同じようなところが何カ所もあるのだろうか?」
「そんなことはないよ。もしかして、この学園ははじめてなのか?」
「先日、カサマツから来た」
「へ~。遠路はるばるやってきたか」
他愛のない話をしながらグラウンドへ到着する。
「遅かったやないか!トレーナーって……オグリやん。どないしたんや?」
と先に来ていたタマモクロスが声をかける。
「なんだ。タマ、知り合いか?」
「ルームメイトって奴や。オグリはどうしてトレーナーと?」
「何度やってもグラウンドに辿り着けず困っていたところをこの人に助けてもらったんだ。とても感謝している。ありがとう」
そういいながらオグリというウマ娘はグラウンドに向かっていく。
「なんや、トレーナーもオグリを狙っとるんか?」
「狙う?何のことだ?個性的なウマ娘だとは思うけど」
タマモクロスの言葉が気になって俺は尋ねる。
彼女の説明によるとカサマツからやってきたウマ娘、オグリキャップという事なのだが、
地方のレースで多くの勝利を勝ち取ってきた彼女を中央が声をかけたという。
「彼女の走りを見て多くのトレーナーがスカウトしているらしいんや」
「声をかけられているのに担当が決まっていないのか?」
「せや、オグリに聞いてみたらなんかピンとこんということらしいで」
「成程、直感は大事だろうな」
少し離れた所で歓声が聞こえる。
視線を向けるとグラウンドで走っているオグリキャップの姿。
その姿は一陣の風。
同じように練習しているウマ娘達をぐんぐんと抜いていく。
真剣な表情で走っているオグリキャップ、人を魅了させる姿だ。
何より俺がもっと気になったのは彼女の目。
真剣な顔でありながらその瞳は走ることの楽しさで満ち溢れている。
「良いな」
彼女の姿に強く惹かれるものを感じる。
走り終えた彼女にわらわらと集まってくるトレーナー達。
「おーおー、スカウトの嵐だな」
「せやろ?で?ウチのトレーナーはいかへんのか?」
「ん~~、走る姿に魅力を感じるけど、スカウトするつもりはないかな?」
「そうなんか?」
驚いた表情をするタマモクロス。
確かに彼女は人を魅了させる走りがあるし、鍛えればどんどん強くなるだろう。
だが、
「俺はタマモクロスの担当だ。その娘を育成途中なのに他の娘に目移りって良くないと思うんだよ」
「……なんや、嬉しいこと言うてくれるやん!次のレースに向けて頑張るで!!」
「おう!」
次のレースに対してのやる気を見せてくれるタマモクロスに微笑みながらちらりと俺はオグリキャップの方をみる。
彼女の周りにはたくさんのトレーナーが今も勧誘をしていた。
視線を外して俺はタマモクロスの指導をはじめる。
その日の夜。
タマと別れて夜道を歩いていた俺は右往左往しているオグリキャップの姿を見つける。
「迷子か?オグリキャップ」
「キミはタマのトレーナーか?」
「そうだよ」
俺の姿に気付いたタマモクロスは困ったという表情をしている。
「寮へ戻りたいんだが、どうしても同じ道へきてしまう。もしかして、これは迷子なのだろうか?」
「そうだな。寮へ案内してやろうか?」
「すまない。助かる」
とことこと着いてくるオグリキャップ。
「貴方はタマのトレーナーなのだな?」
「あぁ、俺がタマモクロスの担当トレーナーだ……もしかして、勧誘の件か?」
コクンと頷く。
「私の走りを活かせるとか、キミはG1をとれるとか、色々と言われるんだ。だが、どれもピンと来ないんだ」
オグリキャップをみると本当に悩んでいる様子。
そのままちらりと足元をみる。
「そのシューズ」
「カサマツにいる頃から使っているものなんだ」
「へー、年季入っているんだな」
彼女の言う通り年季は入っているだろう。
だが、ボロボロのシューズをみているとそれだけが理由じゃない。
「脚のパワーが凄いんだな。バネというか、そんな感じで普通のシューズじゃ耐えられないんだな」
「む、そうなのか?」
オグリキャップが驚いた表情を浮かべる。
シューズをみてからオグリキャップはこちらを見上げてきた。
「貴方は変わった人だ」
「困ったことによく言われるよ」
他愛のない話をしていると寮の前に到着する。
「遠くから来てまだ中央の道筋とかなれないだろうけれど、困るなら周りの人を頼るようにするといいぞ」
「あぁ」
そういって学生寮へ入るオグリキャップがみえなくなるまで見送る。
「少し、お節介するかな?」
ぽつりと呟いた俺の頭上で怪しい光を放つ流れ星が落ちていく事に気付かなかった。
翌日、俺は早速、お節介を焼くことにした。
「タマ、これを渡してくれるか?」
「……トレーナー、何やこれ?」
「道に迷う困ったウマ娘の為の目印含めた簡易地図」
俺が告げるとタマモクロスは盛大なため息を零す。
「興味ないいうてたのに、こういうお節介はやるんかいな?トレーナー」
「レースの育成に関して興味はない!いや、嘘、育成したい気持ちはあるけれど、それを決めるのはオグリキャップ自身だ。けど、こういうお節介くらいは焼いても問題……ないよな?」
「ウチにふるんやない!けどまぁ、それあウチのトレーナーの良さやからなぁ。しゃーない、付き合ってやろうやないかい!」
「それはありがたい。早速で悪いんだけど、ついで」
「お節介しまくるつもりやないかーい!!」
タマモクロスの怒声に俺は苦笑いしながらあることを伝えた。
「ほれ、オグリ」
グラウンドで一息ついているオグリキャップにタマモクロスが声をかける。
顔を上げたオグリキャップにタマモクロスは箱を差し出す。
「タマ、これは?」
「ウチのトレーナーからや」
差し出された箱を受け取って中身をみるオグリキャップ。
「これは、シューズ?」
「オグリの履いている奴、ボロボロやろ?気付いたトレーナーがプレゼントや」
「これは……試してみる、タマ」
「そんで、もう一個」
続いてタマモクロスが一枚の紙を差し出す。
「これは?」
「トレーナーから聞いたで、道慣れてないんやろ?そんなアンタの為にトレーナーが用意した道しるべ付きマップや」
「これは、わかりやすいな」
開いた地図には簡易的だがトレセン学園のマップとなっており、生徒が通う要所要所の目印等が記されていた。
「そーか?ま、ウチのトレーナーが考えたみたいやし、オグリがわかるんやったら喜ぶやろ」
「早速、試してみる」
オグリキャップはシューズを履くと走る準備をはじめる。
地面を蹴る。
「(凄い!今までと全然違う!!)」
力強く地面を踏める感覚にオグリキャップは驚愕しながらも力を入れる。
今までにない感覚にオグリは楽しく感じながらもより強く走る。
あっという間に走り終えた。
「凄い、前のものより力が強く込められる」
オグリはるんるん気分でタマモクロスのところへ向かう。
「最高だ。タマ、これはすごい!」
「アンタの耳と尻尾みたらよーわかるわ。気に入ったみたいやな」
「あぁ、タマのトレーナーに感謝を」
「素晴らしい走りだったぞ!流石はオグリキャップだ!」
二人の会話を遮るようにやってきた男。
胸元についているバッジからトレーナーであることがわかる。
ぞろぞろと他のトレーナーもやってきた。
「キミの脚力を活かしたい!是非とも担当に!」
一人の男を皮切りにトレーナー達が勧誘を始める。
ぞろぞろと集まっていくトレーナー達にオグリキャップは困った表情を浮かべていた。
タマモクロスが追い払おうとするが多勢に無勢で追い払われてしまう。
「こりゃ、大変やなぁ」
「なんという、凄まじいな」
所要で遅れてやってきたトレーナーも目の前の人だかりに驚いている。
「ここまでオグリキャップって人気があるんだな」
「まさにアイドルウマ娘やな」
「ウマイな」
ふと、人込みの中にいるオグリキャップと目が合う。
「すまない、通してほしい」
オグリキャップは人込みをかき分けるとトレーナーとタマモクロスの方へやってくる。
「シューズありがとう」
「その様子だと満足してもらえたみたいで良かった」
「貴方はタマのトレーナーだと聞いている」
「まぁね」
「そのうえで、貴方にお願いがある」
真っすぐにトレーナーを見つめるオグリキャップ。
その様子に嫌な予感がした。
「私のトレーナーになって欲しい」
周りがざわめく。
まさかのトレーナーをウマ娘が逆スカウトするという状況。
トレーナーは目を見開き、隣にいたタマモクロスは「な、な、な」と開いた口が塞がらないようだ。
「どうだろう、か?」
おずおずと尋ねてくるオグリキャップにトレーナーは少し考えて。
「キミからの提案はよくわかった。まずは一週間、お試しでやってみるというのはどうだ?」
「お試し?」
「あぁ、俺はキミの最高の走りが見たくてシューズをプレゼントした。プレゼントでキミを釣った風に思われるのは嫌だし、もしかしたら俺のトレーニングがキミに合わないかもしれない。だから、お試しだ」
一週間、お試しでトレーニングをして決めてもらおうという事だ。
「わかった。それで頼む」
「じゃあ、まずは期間限定だけど、よろしく」
「よろしく。トレーナー」
こうして、オグリキャップは期間限定でトレーナー契約を結んだ。
それが、新たな波乱を呼ぶ事になる等、予想していなかっただろう。
「またか」
オグリキャップと仮契約を結んで二日目。
ガレージに沢山の張り紙がついていた。
「こんな事にエネルギーを回さずにスカウトとかに力を入れたらいいのに」
誹謗中傷の張り紙にため息を零しながら次々と剥がしてゴミ箱へ放り込む。
誰も契約を結べなかったオグリキャップを弱小もいいところのトレーナーが引き抜いたという事で色々なトレーナー達から反感を受けている。
まぁ、それ以前の問題が尾を引いている感じだ。
「その悪い影響がタマやオグリキャップの」
唐突に感じた気配に視線を向ける。
誰もいない。
木々のざわめきだけしか聞こえなかった。
超能力を用いて木々の隙間に目を凝らす。
――いた。
地面を蹴り、その方向へ走る。
「止まれ!」
俺が呼びかけると白いフードを被った人物が腕から蔓のようなものを放つ。
植物星人か?
振るわれる蔓の攻撃を躱しながら腕を顔の前で交差して意識を集中する。
ウルトラ念力。
マグマ星人、レッドギラス、ブラックギラスの戦いで変身能力を失ったウルトラセブンに残された超能力。
寿命を縮めてしまうというデメリットがありながらも強力な力でマグマ星人を一度、撤退させる程の威力がある。
ウルトラセブン以外にもウルトラマン、ウルトラマンメビウスも使用できることから鍛錬を積めばできるかもしれないと光の国で鍛錬を積んだ結果、習得できた。
ウルトラマンマックスならともかく、憑依もしくは人間に姿を変えた時の戦闘手段として思いついたのがウルトラ念力。
ウルトラ念力によって相手の動きが鈍る。
さらに強く念じようとした瞬間、黄色い粉をふきつけられた。
「グッ!ゴホゴホ!」
激しくせき込んでしまった事でウルトラ念力を解除してしまう。
その間に相手は逃げていく。
追いかけようにも体が痺れてしまって動けない。
「まさか、これは――」
眩暈が起こって、そのまま意識を手放してしまう。
「流石、中央にやってきたってだけはあるな!」
「タマも速いな」
トレーナーが怪しい存在と戦っていた時、オグリキャップとタマモクロスは併走していた。
仮契約を結んだオグリキャップの実力を見る為にタマモクロスと共に模擬レースをしている。
トレーナーによって鍛えられたタマモクロスは勝利するものの、油断すればオグリキャップが勝利してもおかしくはない結果だった。
「凄いな、オグリ~、こりゃダービーで優勝してもおかしくはないで」
タマモクロスの言葉にオグリキャップが照れた時だ。
「そう!優勝してもおかしくはないんだ!」
大きな声が響く。
驚いたタマモクロスとオグリキャップが視線を向けるとトレーナーの集団が来ている。
彼らはオグリキャップを勧誘していた連中だとタマモクロスは気づく。
「キミほどの実力があればダービーを優勝することも間違いない!」
熱血漢を絵にかいたような男の言葉に周りのトレーナー達はうんうんと頷いていた。
「だが、それも優秀なトレーナーが付いてこそだ!」
やっぱりかとタマモクロスは険しい表情を浮かべる。
「あのトレーナーではダメだ!キミにプレゼントして気を引き付けたのかもしれないが、奴は問題がある。前に所属していたウマ娘の将来を潰し、チームを瓦解させた張本人でもある。そんな奴のところにいてはキミの将来を」
「それ以上は許さへんで」
静かな声で話を遮ったタマモクロス。
オグリキャップしか眼中になかったのだろう、このタイミングでタマモクロスの存在に気付いた。
男はタマモクロスが話題にしていたトレーナーの担当バであることを思い出して青ざめる。
「オグリはウチのトレーナーと仮契約を結んでいるんや。それを知ったうえで勧誘するならウチのトレーナーがおる前でやるのが筋や」
「そ、それは」
「それに、ウチらはトレーニング中、これ以上の邪魔は迷惑や。あまりにしつこいなら理事長や生徒会に報告するで!」
タマモクロスの言葉に分が悪いと判断したのだろう
顔を歪めながら男達は去っていく。
「全く、気分最悪や!オグリ、仕切り直しや!」
「……すまないな。タマ」
「気にせんでええよ。オグリが悪いわけやない。まぁ、ウチのトレーナーの悪口を言い出すなんてブッツンしかけたけどな!」
タマモクロスの言葉にオグリキャップ尋ねる。
「タマ、トレーナーは何か過去にあったのか?」
「まぁ~。いつかは聞くことになるんやろうけど、すまんな。これはウチから聞くよりも直接、トレーナーに聞いてほしいねん」
「それは構わないが、何故?」
「周りの話よりもトレーナー本人の話を聞いて、オグリに判断してほしい。ウチはそう思っている。ま、そこまで重たい話やないし、大丈夫」
「タマモクロス!」
練習再開しようとしたところでエアグルーヴが駆け寄ってくる。
「すぐに保健室へ来てくれ!」
「な、なんやねん?急に」
周りに気を配りながらエアグルーヴが小声で伝える。
「お前のトレーナーが倒れた」
「どうすればいいのだろう」
勧誘から解放されたオグリキャップは疲れ切った表情で寮に続く道を歩いていた。
エアグルーヴの知らせを聞いたタマモクロスとオグリキャップは慌てて保健室に向かったのだが、肝心のトレーナーはけろりとしている。
彼自身の口から疲労が蓄積して転倒、運悪くそのまま気絶してしまったという事、らしい。
「疲労の原因は明らかに自分だ」
普段なら迷ってしまうのだが、渡された簡易マップのおかげで真っすぐに寮へ戻ることが出来る。
「トレーナーがいればダービーに出ることも」
先日の並走で生徒会長であるシンボリルドルフから言われた話。
今のままで日本ダービーに出バすることはできず、トレーナーが必要だという事。
このままいけば、彼の体は壊れてしまう。そうならないように別のトレーナーを探さないといけない。
勧誘してくる人達の中からトレーナーを選ばないといけないのだろう。
あの中からトレーナーを選んで、一緒に歩くというイメージが出来ない。
ふと、オグリキャップは腕に抱えているシューズをみる。
自分は彼がトレーナーであることを望んでいる。
しかし、周りは?
保健室で面倒を見るというタマモクロスの話を聞いて一人、練習していたオグリにトレーナーや同じウマ娘からも彼と契約を結ぶことは辞めた方が良いと言われてしまう。
言ってきたウマ娘達はオグリのファンらしく、噂を聞いて心配して善意で伝えていた。
だからこそ、強く否定することができない。
善意で、心配して、そういわれてしまうとオグリは二の句が告げられなくなる。
「私は、どうすれば」
「悩んでいるようだね」
響いた声に視線を向けると白いフードにすっぽりと顔を覆った者が立っていた。
背格好から学園の生徒ではない。
「学園の関係者だろうか?」
「キミは迷っているね?悩み苦しんでいる」
「……凄いな、どうしてわかる?」
フードの人物は掌から花粉を放つ。
花粉を浴びたオグリキャップの瞳から光が消えていく。
握りしめていたシューズが落ちる。
「キミをその苦しみから解き放ってあげよう」
白いフードの人物に誘導されるオグリキャップ。
「案内するよ。楽園へ」
一瞬、フードの中から覗いた顔が人のものから植物に覆われた蔓のようなものだったことにオグリキャップは気づかなかった。
数十分後。
「ほんまに大丈夫なんか?ウチがトレーナーを部屋まで送るで?」
「そんな心配はしなくて大丈夫だよ。少し休んだら回復したし、それよりも指導しないといけない立場の俺が、倒れてすまないな」
「気にすることないって、オグリと並走とかできたし、ただまぁ、アレ、いつまで続くんやろなぁ」
「一番はオグリキャップの口から告げるべきなんだろうけれど、人見知りしているしなぁ」
「まさか、勧誘してあまりしゃべらへん理由が人見知りやったっていうのが驚きや」
「繊細なんだろう。多分」
「そこははっきりというべき……なんや?」
タマモクロスが地面に落ちている運動シューズに気付いた。
「これ、トレーナーがオグリに渡したシューズやないか?」
「そうだな。なんでこんなところに?」
周りを見るとオグリキャップの姿がない。
「もしかして、何回か使用してみて気に入らなかったとか?」
「気に入らなかったとはいえ、こんなところにポイするオグリやないで、何かあったんやろうか?」
俺は周りを調べる。
ふと、オグリのシューズについている粉に気付く。
「なんや、その粉?」
「まずい、もしかして、接触した?」
だとしたら相当まずい。
「なんや?ぶつぶつと」
「オグリが危ない!急いで探そう!」
「あ、ちょ、トレーナー!」
タマモクロスの声を後ろに聞きながら走る。
おそらく奴はまだ近くにいる。
間に合うか?
いや、間に合わせる。
「あれ~。トレピッピじゃん。お困りごとか~?」
走り出そうとしたところでどこからかゴールドシップが現れた。
「ゴルシ!怪しい奴もしくはオグリキャップをみなかったか?」
「ん~、みてねぇぞ。もしかして、トレピッピはお困りごとか?」
「至急、オグリキャップがどこにいるか確認したい」
「マジの案件みたいだな。よし、ここはゴルシちゃんに任せな!こんな時のためのゴルシダウジング!」
「ダウジングぅ!?ゴルシィ!ふざけてる場合やないで!」
「チッチッチ、ゴルシちゃんふざける時も全力だが、真面目の時はマジなのだぁ!こっちだぜ!」
「信じて大丈夫かいな?」
「信じて大丈夫……本気でヤバイと感じたらゴルシは協力してくれる」
「は、はぁ」
半信半疑なタマモクロスを伴いながら俺はゴルシの後をついていく。
フードを被った人物とオグリキャップは深い森の中にいた。
「ここは……」
「楽園だよ」
ハッと気が付いたオグリキャップが周りを見ると生い茂った木々の幹にたくさんの人が横になっている。
否、目を凝らしてみると木から延びている蔓に体を巻かれている。
「これは」
「みんな、幸せな顔をしているだろう?」
「幸せ?」
「ここにいる人達は嫌なことがあって楽園へやってきたんだ。見てみなよ。今は幸せなんだ」
オグリキャップは近くのサラリーマンをみる。
満面の笑みを浮かべて幸せそうに木に横たわっている。
学生も、小さな子供まで皆が幸せそうにしていた。
「さぁ、キミもこの楽園の」
「そこまでだ!」
声を遮るように現れる男はオグリキャップが逆スカウトしたトレーナーだ。
「マジかいな。ほんまにたどり着きおった」
「ゴルシちゃんに不可能はないのだ!」
少し遅れてダウジングを携えたゴールドシップとタマモクロスの姿もある。
「オグリキャップ、ここは危険だ。すぐに」
「危険?皆、幸せそうな顔をしているぞ?」
「彼には理解できないのさ。この楽園のすばらしさが」
戸惑うオグリキャップにトレーナーは告げる。
「楽園?ここが?人の意識を吸い上げて個という存在を消し去ろうとしているこんなところが楽園?違う、ここはまやかしだ!」
見たことのない激昂するトレーナーの姿にオグリキャップは驚く。
それはタマモクロスも同じだったようで「と、トレーナー、何、そんな怒ってるんや」と裾を引っ張っている。
「コイツの言っている事は確かに苦しみや辛いことから解放されるだろう。でも、それは個を消し去ることを意味する」
「個を?」
「自分じゃなくなるということだ!」
トレーナーの言葉にタマモクロスは一瞬、理解が遅れた。
少しして、限界まで目を見開く。
「そんなん、あかんやろ!?ウチらをなんやと思って」
タマモクロスが言い切る前にトレーナーが彼女を抱えてその場から離れる。
少し遅れて生き物のように木々から伸びた蔓が彼らのいた場所を狙う。
「キミ達が後を追いかけてきていることはわかっていた」
フードの人物は近くの幹へもたれる。
体から触手のようなものが伸びて木と一体化する。
人の顔だった部分に巨大な蕾が現れて花を咲かす。
「「「「「さぁ、一つになろう」」」」」
一斉に植物と一体化している人の顔が動いて声が響く。
「「「「「痛みも、苦しみも、悲しいことも、何もない。幸せな楽園へ一緒に行こう」」」」」
しかし、聞こえる声は同じもの。
「コイツ、なんなんや!?」
あまりの異常さにタマモクロスの顔は恐怖に染まる。
「タマ!オグリキャップを連れて、すぐにここから逃げるぞ!!」
トレーナーはオグリキャップの腕を掴んで引き寄せる。
「私は、私は……」
「ふざけるなよ!」
戸惑うオグリキャップの腕を掴みながら彼は叫ぶ。
「意識を一つにしてしまえば辛いことから逃げられるかもしれない。でも、そうなったら楽しいと感じることも、感動する事すらなくなるんだ!お前のやろうとしていることはウマ娘達から走りたいという気持ちを奪う。最低な事なんだよ!」
トレーナーの言葉を聞いてようやくオグリキャップとタマモクロスはここまで激怒しているのかわかった。
「トレーナー、教えてくれ」
オグリキャップが震える声でトレーナーへ尋ねる。
「私はこの楽園に入ったら走れなくなるのか?」
「……走りたいという気持ちもなくなってしまうだろう。コイツの言う楽園は一つの存在に意識を集合させることだ。一つの端末が決定権を下し、他はただ従うのみ、従う存在に意識はない。ただ、流されていくだけ……きっと、一つになったら、もう二度とそういう気持ちを抱くことはない」
「そうか」
オグリキャップは小さく頷くと前の植物を見据える。
「私は楽園に行かない」
「「「「どうしてだい?こんなに素敵なのに」」」」」
「確かに、辛い事や悲しいことから逃げられるのは皆が望むかもしれない。だが、走れないのなら私に楽園は不要だ。なぜなら、私は」
拳を強く握りしめてオグリキャップは叫ぶ。
「私は走りたいから!」
「よういった!」
「パチパチ~!」
彼女の叫びにトレーナーは頷き、タマモクロスとゴールドシップは破顔する。
「「「「「そうか」」」」」
声に感情というものが消えていた。
「「「「ならば、キミ達はいらないや」」」」」
ズゴゴゴゴゴ!と周囲が揺れ始める。
やがて、地面から巨大な樹木のようなものが現れた。
ただの樹木ではない、手足のようなものがあり、頂きの部分に蠢く口らしきものがある。
――宇宙植物怪獣ソリチュラ。
星に寄生してその生命と一体化する存在。
宇宙警備隊の記録ではソリチュラに支配された星は760を超えている。
「タマモクロス、ゴルシ、オグリキャップと一緒にここから逃げるぞ」
「トレーナー!」
タマモクロスの言葉に振り返ると同時に伸びた蔓が腰や足に絡みつく。
「すぐ助けに」
「奴が動き出したらここは危ない!俺は自力でなんとかするから三人はすぐに逃げるんだ!」
「あかんって!トレーナーも!」
「俺はすぐに脱出するから!急げ!」
「うし、任せたぞ!逃げる!!」
ゴールドシップがオグリキャップをタマモクロスの腕を掴むと走り出す。
最初はもつれながらも二人は徐々にゴールドシップのペースを超える勢いで走っていく。
「行ったか」
彼女達の姿が見えなくなったことを確認して俺は安堵の息を吐く。
あのまま彼女達と一緒にいたら目の前のコイツをなんとかすることができない。
自由な方の手を伸ばして腰のポーチからマックススパークを取り出す。
左腕に装着、眩い光と共に本来の姿であるウルトラマンマックスへ戻る。
ソリチュラはこちらをみると地面から無数の蔓を伸ばしてくる。
伸びてきた蔓を躱しながら一定の距離を保つ。
透視能力でソリチュラを調べる。
根っこはまだ浅く、星と深く融合していない。
今なら焼き切ることが出来る。
だが、幹の下部に捕らわれた人達がいる。
マクシウムカノンを使いたいが威力が高すぎる。
頭頂のマクシウムソードを取り出す。
地面から次々と現れる蔓を高速で回避しながら一気にソリチュラの間合いへ入り込む。
マクシウムソードを一閃。
ソリチュラを両断する。
斬り落とした部分に意識が集中していることがわかり、その部分をマクシウムカノンで焼き尽くす。
光エネルギーによって一気に焼き尽くされたソリチュランは体から青い炎を吹き出して消滅した。
「改めてよろしく頼む。トレーナー」
俺の前でオグリキャップが頭を下げる。
「本当に良いんだな?」
「そうだ。トレーナーのチームに入りたい。私はトレーナーと一緒に頑張りたいんだ」
真剣な表情でこちらを見上げてくるオグリキャップ。
「それから、私の事はオグリと呼んでほしい。タマをタマと呼んでいる風に」
「わかった。オグリ……これからよろしく頼む」
「あぁ!」
ソリチュラン事件から二週間。
攫われた人達は警察によって保護されて病院で検査を受けた。
通報したタマ達も病院で念入りに検査を受ける為、しばらくの間、学業を含めてお休みという事態になりながらも異常なしというお墨付きがでて、退院できた。
退院直後にマスコミに囲まれたオグリキャップは俺のチームで走り続けたいという旨を報告する。
マスコミはオグリの言葉から批判の姿勢から擁護、今後のレースに期待という内容で報道した。
報道のおかげか、俺に絡んできていたトレーナー達は渋々という形で引き下がっていき、いつもの平穏が戻ってきた。
いや、新たな日常というところだろうか。
「オグリ、これからよろしく頼むで!」
「あぁ」
ガシリと握手を交わすオグリとタマ。
うんうん、友情だなぁ。
「色々と負けないぞ。タマ」
「それはコッチのセリフや」
俺の知らないところでバチバチと火花を散らしていることは気づかなかった。
「それにしても」
どうして、立て続けに宇宙怪獣が現れたのだろうか?
何かこの星で異変でも起こっているのか?
心の片隅に抱いた疑問の答えは出てこなかった。
今回はオグリキャップの話。
次の話は構想はできているものの、まだ書きあがっていないので未定。
四人目にするか、トレーナーの過去話にするか。
ソリチュラにした理由としてはそのエピソードが好きというのと、オグリをメインにしたら強くなるオグリがかけるかなーと思ったからです。
他のウルトラマン来訪あり?(来訪アリの場合、昭和、平成から登場予定)
-
あり
-
なし