好きなウルトラマンに転生したけど、トレーナーやっています! 作:断空我
次回の繋ぎの為、ウマ娘の話がメインとなります。
メインというより、クリークエピソード的な感じです。
「はぁ、またか」
チームのガレージ。
入口に貼られている紙をみて、俺はため息を零す。
一枚、一枚剥がしながら丸めてゴミ箱に投入する。
「オグリの時の比ではないにしろ、まぁ、暇な人が多いものだ」
先日、スーパークリークが俺の担当になり、チームに加入した。
トレーナーは基本的に一人のウマ娘と二人三脚でレースに挑むが実績を上から認められ評価されたトレーナーは複数のウマ娘を指導するチームを結成することが出来る。
チームに加入してより多くのレースに勝利すればそのウマ娘だけでなくチームの名声もあがっていく。
あがっていくのだが、俺の場合、過去に色々あった事から評判が良くない。
白い稲妻やアイドルウマ娘に加えてスーパークリークまで参加したという事でやっかみを受けてしまっている。
まぁ、オグリの時程ではないが、酷くなるようであれば理事長に相談しないといけない。
「見せられないよな」
気付かれないようにすべての張り紙を撤去してガレージの中に入る。
作業をしているとドアがノックされて一人の女性が入ってくる。
「たづなさん、どうしました?」
「トレーナーさん、今、よろしいですか?」
駿川たづな。
この学園の理事長秘書をしており、トレーナー達のまとめ役でもある。
そんな彼女がここに来たという事は。
「まさか、チーム解散!?」
「ひ、飛躍しすぎです!そういうこともありますけど、今日は違います!」
あたふたしているたづなさんは「こほん!」というと。
「スーパークリークさんがチームへ加入された事で色々と大変かもしれませんが、前のようなことが起こっていないか様子を見に来たんです」
「あぁ、そういうことですか。大丈夫ですよ。オグリの時程酷いことは起こっていないです」
視線をゴミ箱から逸らした事で「はぁ」とため息を吐かれる。
「どうやら、オグリキャップさんの時程ではないにしても、やっかみは受けているようですね」
「いやぁ、申し訳ありません」
「トレーナーさん、貴方が悪いわけではありません。あれは、その」
「いえ、気付けなかった俺に落ち度がありますから」
気付いていれば、こんなことになっていなかったわけだし。
「チーム加入者も順調のようですが、無理はしないようにしてくださいね」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ。こうみえて体は頑丈ですから」
「オグリキャップ、少し良いだろうか」
「生徒会長?なんだ?」
廊下を歩いていたオグリキャップはシンボリルドルフに呼び止められる。
「その、聞きたいことがあったんだ」
いつもの佇まいらしくない姿にオグリキャップは首を傾げる。
「と、トレーナー君の事だ」
「トレーナーの事?」
さらにオグリキャップの頭の中で?が浮かび上がる。
生徒会長がどうしてトレーナーを気にするのだろうか?
「その、彼は元気にやっているだろうか」
「トレーナーは元気だ。風邪もひかない」
「そういう……あぁ、いや、何でもない」
「話はそれだけか?」
「あぁ、うん。そうだな。キミ達の活躍を期待しているよ」
「あぁ」
去っていくルドルフの背中をみてから歩き出すオグリキャップ。
「難儀やなぁ~」
「タマ?盗み聞きか」
廊下の角から頭の後ろで腕を組んだタマモクロスがいた。
「失礼なこというな!聞こえてきたんや」
いつものコントをしながらもタマモクロスは去っていくルドルフの背中をみる。
「しかし、生徒会長は優しいな」
「は?」
「私達だけでなくトレーナーの健康まで心配してくれる」
「オグリ、ほんまにそれを言うてるんやったら、大間違いやで」
「違うのか?」
「オグリの恋愛レベルは1も良い所って感じやな」
「む、私だって前から成長している。恋愛漫画も読む」
タマモクロスの言葉にムッと眉間へ皺を寄せながら抗議する。
「ウチも人の事言えへんけど、そろそろトレーナーも来るし、準備運動しとこうか」
「む、そうだな……そういえば、クリークは?」
「トレーナーさん、いいこいいこ~」
「だから、不意を突くように後ろから抱き着いて撫でようとするんじゃない!」
グラウンドへ向かおうとしていた俺は背後から現れたクリークから逃れる。
「えぇ、いいじゃないですかぁ、疲れているトレーナーさんにいいこいいこしたってぇ」
「俺はそんな年じゃありません!そういうことは小さな子供かタマにやれ!」
この場にいたらタマモクロスに蹴り飛ばされたかもしれないが生贄は近いものを差し出せば安全は確保しやすい。
まぁ、生前を含めたら百は軽く年齢を超えてしまって年長者であるわけでまぁ、少しばかり罪悪感はあるが、
「うーん、タマちゃんにしようとすると逃げられるんですよ。それに、やるならトレーナーさんがいいって」
訂正、罪悪感は消しとんだ。
アイツ、まさか俺を生贄にしていたとは!
「とにかく、俺にそういうことをしなくていいんだって。それよりレースの事で」
「おやおや、その様子ではレースに勝てるのかな?」
面倒な奴が来たな。
振り返るとスーツをビシッと着こなして髪を七三に分け、メガネをかけた如何にもエリートですみたいな奴が立っている。
……見覚えがあるな。
確か、スーパークリークをスカウトして断られていた人だ。
「あらあら?」
「クリークなら大丈夫だ。元の素質が良いからね。後はその能力を十全にレースで引き出してやればいい」
「成程、噂と違ってトレーナーとしての常識は持ち合わせているらしい」
微笑むエリートトレーナーだが、その目は蔑みの感情が含まれている。
実力はあるみたいだけど、人間として問題があるようだ。
「まぁ、そういうわけですので、これから練習に行くとします」
「しかし、口では何とでもいえるだろう」
「何が言いたいんです?」
横切ろうとしたら回り込まれたから少しばかりとげのある言葉が出てしまう。
「模擬レースの誘いだ。スーパークリークに素質ありと判断しているのだろう?」
「えぇ、クリークは実力ありのウマ娘だ。けれど、レースを受けるか決めるのはクリーク自身ですよ」
「成程、一理あるな。スーパークリーク。私の挑戦を受けるか?」
「受けます」
いつものおっとりしたクリークではなく、真剣な表情で答える。
「素晴らしい答えだ。では、当然のことながら、負けた場合、スーパークリークはこちらがもらう」
「随分と乱暴な提案ですね」
「トレーナーとして、自信を持っているのだろう?ならば、勝てばいいだけだ。負けるという事はキミに問題があるという事だね」
「それは一理ある。でも」
――気に入らないな。
目を細めながら俺はエリートさんをみる。
「クリークを物みたいな言い方しないでもらおうか?今は俺の大事な愛バなんでね」
「……その強がりがいつまで続くか楽しみだ。では、勝負は明日。短い時間と彼女と過ごすといい」
エリートトレーナーは足早に離れていく。
手元に塩があれば撒いているところだ。
「すまないな。クリーク。変なことに巻き込んで……クリークさん?」
反応がないから視線を向けると俯いてぶるぶると体を震わせている。
これは、怒らせてしまっただろうか?
「あのぉ、クリーぐぉ!?」
最後まで言い切る前に両手を広げたクリークに抱きしめられる。
視界一杯に広がるクリークの顔は笑顔だった。
「とぉぉっても嬉しいです!トレーナーさん!私の事を愛バ!といってくださるなんて!もう、嬉しくていいこいいこだけじゃ我慢できなくなります!私を信じてくれたトレーナーさんの為にも明日の模擬レース。私が勝ちますよ!そしたら、もっと、もっと、甘えさせてあげますからね!」
呼吸せずに一気に告げてくるクリーク。
強く抱きしめられていて若干、痛い。
背中をタップするも反応してくれないから自分の世界に入り込んでいるらしい。
この後、様子を見に来たタマとオグリが来てくれるまでこの状態だった。
役得、以前に体がつぶれてしまうかと思った。
翌日。
「えらい人だかりやな」
「人の口に戸はたてられないってことだろ?」
スーパークリークとエリートトレーナーのウマ娘による模擬レース。
一目みようと大勢のウマ娘とトレーナーが集まっている。
まるでお祭り騒ぎだ。
いや、二人ほど、お祭りとして楽しんでいる奴がいるぞ。
「ゴルシ!焼きそばなんか売ってるんじゃない!オグリ!そんな山盛りを食べるな!」
「むぐむぐ、しかし、トレーナー、おいしいぞ」
「焼きそばよりもクリークの心配をせえ!でも、大丈夫なんか?クリークの実力は信じてるけど、相手もエリートやから相当なもんやろ?」
「まぁ、苦戦するかもってところだな」
接戦になればだが。
「逃げずに来たことは褒めてあげよう」
対戦相手のエリートトレーナーがやってくる。
「別れの挨拶は済んだかな?」
「もう勝った気でいるんですか?勝負ははじまってみないとわかりませんよ?」
この地球で生活する際にモデルにした人間よりも相手は年上だが敬うつもりはない。
俺の言葉にほんの僅かに表情が歪みながらもこちらをみる。
「この勝負に勝てばスーパークリークは私のモノだ」
「そういえば、こちらが勝った時の条件を決めていませんでしたよね?」
「こちらの勝利は揺るがないが……まぁ、聞こうじゃないか」
「次の合宿先、アンタらが使う予定だった場所をもらう」
「フン、勝てたら……な」
「その言葉、忘れんなよ~」
去っていくエリートトレーナーの背中へ声をかけて俺は観客席へ戻る。
戻ると不機嫌なタマがいた。
「なんやねん!ウマ娘を物扱いしやがってからに!」
「同感だよ。まぁ、スーパークリークなら大丈夫だろう」
「トレーナー、クリークに声をかけなくていいのか?」
「今、声をかけに行くと確実に俺の体は潰されるよ」
「「?」」
俺の言葉に二人は首を傾げていた。
「ま、大丈夫だよ。クリークはチームの仲間で」
――愛バの一人だからな。
結果からいうとクリークの圧勝。
今までに見た中で最高の走りで相手のウマ娘を引き離して大差で勝利。
あまりの光景に観客はおろかエリートトレーナー様も言葉がでなかった。
聞けば相手のエース様だったらしい。
負けた事でショックを受けるかと思ったが、よい経験になったとクリークと握手をしている。
「さて」
「トレーナー、クリークが」
オグリの言葉と共に横へ跳――。
「トレーナーさん!」
「しかし、回り込まれた」
ゴルシ、てめぇ!?
逃げようとした俺をがしりと捕まえたゴールドシップによって俺はクリークのハグを受けてしまう。
「頑張りましたよ!勝ちました!トレーナーさんの為に勝利を!」
「いや、それは嬉しいけど、出来れば、勝利はクリークに」
「それは当然ですけど、今回はトレーナーさんが侮辱されたんです!名誉挽回です!」
「まぁ、どうでもいい名誉だけど、腰がめきめきとぉ!?」
「いいこいいこもしたいですけど、こうしてギュッと抱きしめると暖かい気持ちになります」
「ハッ!?クリーク、そこまでや!トレーナーがつぶれてしまう!」
「クリーク、やめるんだ」
気付いたタマとオグリによってハグから解放される。
昨日からクリークは俺を発見するとこうして抱き着いてくるようになった。
これならまだ、いいこいいこの方がマシである。
「もう、残念です。でも、レースで勝利するたびにこうして抱きしめてあげますね!」
勘弁してくれ。
しかし、クリークが勝利してくれたおかげで俺達は夏合宿、良い場所を確保することができた。
「夏合宿が楽しみだな」
他のウルトラマン来訪あり?(来訪アリの場合、昭和、平成から登場予定)
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あり
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なし