好きなウルトラマンに転生したけど、トレーナーやっています! 作:断空我
「ふぅ、これで感謝祭の準備は完了か?」
「そうだな」
俺はナリタブライアンと共に感謝祭の準備の最終見回りをしていた。
本来なら生徒会が行う業務なのだが、人手が足りないとエアグルーヴに頼まれた。
彼女達は暴走しているゴルシを成敗するために忙しいらしい。
「しかし、感謝祭というのはそれほど大事なものなのか?」
「ナリタブライアンは感謝祭、初めてだっけ?」
「そうだな」
感謝祭というのはいつもレースやウイニングライブを見に来てくれているお客様へ日頃のお礼を込めてトレセン学園へ招くお祭りみたいなものだ。
「俺は二回目だが、感謝祭はウマ娘が一般の人と触れ合い、楽しむことだ」
「触れ合いねぇ」
「大食い大会とかもあったな」
「お前のところだけだろ。そこに参加するなんて」
「そうかもなぁ」
実のところ、オグリも感謝祭は初参加。
大食いイベントについては教えていない。
教えたら嬉々として飛びついてくるだろう。
それだけなら参加させてもよいのだが。
「オグリは今、ダイエット中だ」
「ダイエット?」
「そう、ここのところ食べ過ぎで体重が無視できない状態になっている。トレーナーとしてこれ以上、太らせるわけにいかないので大食いイベントの事は教えていないし、しばらく食事についても制限している」
「それは、大丈夫なのか?」
「……」
実のところ、ヤバイ。
少し前にタマをたこ焼きと間違えて食べようとしたし、クリークの母性に賭けて赤ん坊のコスプレをしたばかりか、タキオンのお弁当を食べて激怒した彼女と戦争を起こした。
あの出来事でガレージの一角に大穴が開いて俺は説教を受けてしまう。
「まぁ、それは置いておくとして」
「おいていい問題ではないと思うが」
「ナリタブライアンは感謝祭で何をする予定なんだ?」
「何もない、そういえば、生徒会がダンス舞踏会とやらを企画していたな」
「ダンス舞踏会?」
「滅多にない機会だから生徒会長が企画していた」
「へ~」
そういえば、シンボリルドルフの家は裕福で由緒ある家だったな。
ダンスとか日常的にあったのだろうか?
「しかし、ウマ娘のダンス舞踏会ねぇ、申し込む、申し込まれるとか、大変だろうなぁ」
「興味ないな」
ぷぃっと視線を逸らすナリタブライアンと最終確認を終えると解散した。
翌日。
トレセン学園の感謝祭がスタートした。
「すっげぇ、人だな」
レースの指導関係は本日、休みの為、トレーナーは見回りする事を除けば好き勝手動いていいことになっている。
チームを率いているトレーナーの中にはウマ娘と一緒に行事参加している者もいた。
「ところで、アイツらはどこにいったんだろうな?」
チームガレージにいるかと思ってきてみたもののそれらしき姿はない。
彼女達は思い思いにトレセン学園の感謝祭を楽しんでいるんだろうな。
「さて、そこでこそこそと何をしているのかな?」
「これは失礼。これをかけるタイミングを見逃しておりまして」
茂みが揺れて黒いスーツ姿の男が現れる。
見た目はなんというか山●●●っていう俳優と似ているかな。
「私はこういったものです」
男はそういうと名刺をこちらへ差し出してくる。
「これはどうも」
ポケットから名刺入れを取り出して相手に渡す。
「郷に入っては郷に従え。私の好きな言葉ですので」
名刺を見て納得。
この人が何者かわかった。
「一応、聞いておくけど、何をしにこの星へ?メフィラスさん」
「警戒されるのは仕方のないことだと理解しているよ。赤い巨人、いや、ここではウルトラマンマックスと呼ぶべきかな?」
「そうだな。では、マックスと。呼び捨てで構わない」
「それではこちらも呼び捨てで、どういうわけか、キミのような存在にさん付けされる事は慣れていない」
「そうか、では、メフィラス。キミの来訪の目的は?」
「残念ながらそれを教えることはできない。ただ、キミとは敵対したくない。こうして挨拶へ来たのさ。マックス」
メフィラスと名乗った宇宙人はニコリと微笑む。
「オグリ~、その腹の音なんとかならへんのか?」
「すまない」
「私が用意したお腹のならない薬はどうしたのかな?」
「すまない、なくなってしまった」
「おかしいな。あれは一か月分あったと思うのだが?」
「お腹の音がうるさいと注意を受けるたびに飲んでいたら、なくなってしまった」
「薬の効力がもたなかったのか、それはそれで興味深い」
「あらあら」
トレーナーが一人の宇宙人と出会っていた頃、オグリキャップ、タマモクロス、アグネスタキオン、スーパークリークの四人は感謝祭を満喫していた。
初めての感謝祭にいつもと変わらぬオグリに見えるが、その目はキラキラしている。
「オグリちゃん、行けませんよ?」
ふらふらとたこ焼きへ向かおうとしたオグリをクリークがやんわりと止める。
「し、しかし」
「トレーナーさんから食事制限を設けられていますからね~?目的の場所までは我慢しましょう~」
にっこりと微笑みながら遠ざけられるオグリキャップ。
その顔は絶望に染まる。
「感謝祭で食事させへんようにって、トレーナーがうちらをつけるわけや」
「正しい判断だ。ここはオグリに対する誘惑が多すぎる」
そんなことを話していると山盛りの焼きそばを持って、法被姿のゴールドシップがやってくる。
「あれ~、トレピッピはいないのか?」
「トレーナーとは会っていない」
「オグリ、会話するか涎を垂らし続けるかどちらかにすべきや」
「あらあら、涎がたれておりまちゅよ~」
「彼女のコレは病気かい?」
「深く知らぬ方がいいで、ウチらの身を守る意味で」
「成程……おっと、焼きそばを買おうとするんじゃないよ」
「あれ?もしかして、お前ら大食い大会にでるつもりか?」
「!?」
「大食い大会?」
首を傾げるタマモクロスにゴールドシップはチラシをみせた。
チラシの商品を見たタマモクロスは限界まで目を見開く。
「ウチ、出る」
「え?」
「あらあら、タマちゃん?」
「誰が何と言おうとウチは出るからな!!」
「タマ、キミが出るなら私も出る」
「オグリ!?」
「トレーナーから制限されているとはいえ、全力で走れば痩せるはずだ。頼む、大食い大会に私も参加させてほしい」
真剣な表情でタマモクロスを見るオグリキャップ。
その目はレースに挑むウマ娘と等しい。
「やれやれ、ここは本来なら止めるところだが、あの様子じゃ聞かないだろうね」
「オグリちゃんに、タマちゃん、やる気に満ち溢れていますね。ライバルとして私も参加しようかな?」
「全く、私は見ているだけだ。キミ達程、大食いではないからね」
肩を竦めながら見守るという選択肢をとるアグネスタキオン。
こうしてオグリキャップ、タマモクロス、スーパークリークの大食い大会参加が決定した。
「飲み物はこれで良かったかな?」
「ありがとう」
メフィラスから受け取った紙コップの飲み物を一口。
「マルチバースの地球というのはどれも美味なものばかりだ。とても興味深い」
「そうかもしれない。だが、同じように外敵から狙われることも多い」
「この星は別次元であろうと狙われてしまう。とても悲しいことだ」
「それだけ、この星に魅力があるという事だろうな」
「マックス、キミの口からそんな言葉が出るとは思わなかったよ」
モグモグとホットドッグを食べるメフィラス。
見た目は完全に人だが、その中身は宇宙で最強の一角を担う存在、メフィラス。
俺の知るメフィラスは暴力を嫌い、悪略で地球を支配しようとした。
しかし、その計画は失敗して、ウルトラマンと戦闘。
決着はつかないまま、彼は地球を去った。
その人気はとてつもないものなのだが、二代目のやらかした事は黒歴史に匹敵するだろう。
まぁ、そこは置いておいて。
「キミが俺のいた宇宙ではなく別の宇宙から来たメフィラスだという事はわかった。そのメフィラスはこの星で何をしているんだ?」
「キミは不思議に思わないか?マックス。この星は一つの生命体が君臨するのではなく、二つの知的生命体が共存していることに」
「それは長い宇宙の歴史からすれば、起こりえる事であり、嬉しいことだと俺は思うね」
「光の星、失礼。光の国とやらの考えだ。だが、私や他の知的生命体は異なる。何故、共存しているのか?もしや共存しているように見えて実際は片方の種が支配している可能性もある」
「メフィラス、キミはウマ娘がヒトを支配しているというのか?」
「一つの考えだ、マックス。そう捉える者がいてもおかしくはないという事だ。そして、その可能性に至った者はウマ娘に接触しようとする。そして、その根源を調べ、利用しようと考える」
「その言い方だとキミもその一人の様に感じるな」
「私はこの星の生命体を愛している。キミと同じように」
ニコリと微笑みながらお茶を飲むメフィラス。
その言葉に嘘はない。
「嘘はないんだろう。だが、企みがあるからその言葉が出てきたんじゃないか?」
「どうしてそう考えるのかな?」
「アンタは何か企みがある。そのうえでウマ娘や人が必要なんじゃないか?計画に必要であれば、キミは愛する。ただ機械の様に扱うわけではないから」
「そうである場合、キミはどうする?私の計画を潰すかな?」
「潰すだろうな。その計画でこの星が危機に陥る、彼らや彼女達が危険に陥るなら俺は自分の命を懸けてでもアンタを止める」
「ウルトラマンと同じだな」
「?」
「安心してほしい。私はその計画を実行に移す予定は今のところない。それよりも興味があることができたのでね」
「その興味が続くことを願うよ」
今のところ即座に行動に移す予定はないということだけわかれば満足だ。
「だが、私がやらなくても、この星に多くの知的生命体が訪れるぞ。キミが先日から撃退している連中もウマ娘やこの星に興味を示して訪れているのだから」
「……だとしても、俺は戦うさ」
「何故?キミに縁もゆかりもない星だ。キミが原因で知的生命体が命を落としたというわけでもない」
「……好きだからさ」
「なに?」
俺はにやりと笑う。
「この星に住まう者達が大好きだからさ。メフィラス」
その言葉に呆然としながらもメフィラスは笑う。
「ハッハッ、キミと話せてよかった。とても有意義な時間だ。マックス」
「メフィラス。こちらも楽しかった」
去ろうとする彼の背中に声をかける。
「願うならアンタと戦う事だけは避けたいところだ。本気でやりあうとなると骨が折れそうだ」
「同意見だ。マックス。キミと本気でやりあうことになると苦労しそうだ。何より、私は暴力が嫌いなのでね。その時が来ないことを祈る」
今度こそメフィラスは去っていく。
厄介な宇宙人が地球へ来たものだなと思った。
「トレピッピじゃん、何をしているんだ?」
「そういうゴルシは焼きそばの販売か」
「まぁな~。そういえば、そろそろ大食い大会だぜ」
「そんなイベントもあったな」
「オグリん達も参加するみたいだし、楽しみだな」
そうか、オグリ達がって、何を!?
「おい、オグリ達が大食い大会に参加!?」
「そうだぜ。いやぁ、流石、アイドルウマ娘、アイツの参加って話でよりお祭り騒ぎだ!」
「マズイ、マズイマズイマズイ!」
俺は急いでオグリ達のいる大食い会場まで向かうことにした。
「待ちな」
だが、ゴルシに阻まれる。
「離せぇ!ゴルシぃ!」
「悪いが行かせられねぇなぁ、トレピッピはゴルシちゃんと焼きそば完売まで付き合ってもらうぜぇ!」
「己、ゴルシィィィィィ!」
焼きそば完売に二時間も費やしてしまった。
俺がたどり着いたとき、大食い大会は終了していた。
優勝者はなんとタマモクロスだった。
あの小柄で大盛ラーメン三十杯を食べきったという。
僅差でオグリが二位、三位がクリーク。
我がチーム頑張ったと褒めてあげたいところだけど、肝心の三人のお腹が制服から覗いてしまっている。
「真面目に断食とか考えた方がいいかな?」
「難しいところだね~。オグリが耐えられるかどうかという所だろう」
「タキオン、なんで止めなかった」
「一度は止めたさ。だが、景品が欲しくてエンジンが入ったタマを止めることなど、私に不可能だ」
「景品?」
司会者から景品を受け取って満面の笑顔のタマモクロス。
その顔と景品の正体を見ると怒る気がうせてしまった。
「はぁ、弟妹達の為か」
「どうやらわかったようだね。モルモット君。まぁ、流石に注意はしておいた方がいいんじゃないかな?」
「当然だ。タキオンも同罪で一週間、弁当抜き」
「え!?それはあんまりだよぉ!モルモット君!」
俺が設置会場に向かうとこちらに気付いた三人が気まずい表情を浮かべる。
「と、トレーナー、これはその!?」
「色々と言いたいことはあるけれど、優勝おめでとう。タマ」
不安に揺れているタマの頭を優しく撫でる。
「お、怒ってないんか?」
「最初は叱ろうかと思ったけど、それ、弟妹たちの為だろ?そうだとわかったら、怒る気は失せたよ」
「お、おおきにぃ~」
「良かったな、タマ」
「そうですね。タマちゃん」
怒られないという事で安心する三人。
しかし。
「その腹を一週間以内に引っ込ませられなかったらマジで断食とか考えるからそのつもりで」
「なん、だと!?」
「あらあら、それは大変です~」
「ウチとクリークはなんとかなるが……オグリ」
青ざめるオグリ。
断食は処刑宣言と同じだろうな。
まぁ、頑張るしかないな。
「まぁ、それらはすべて明日だな。今日は感謝祭を楽しもう」
おまけ
「あ、お兄様」
「遅くなって申し訳ない」
メフィラスの姿に気付いた一人のウマ娘が嬉しそうに駆け寄る。
「お話は終わったの?」
「えぇ、とても有意義な時間でした。ライス、キミは楽しんでいるかな?」
「うん!トレセン学園ってすごいね」
「来年からはキミも通うことになるんだ。今のうちに色々と調べておくといい」
「ライス、頑張るね!」
にこりと微笑む彼女の姿に自然とメフィラスも笑みを浮かべた。
最後の相手は誰なんだろうなぁ。
次回から新キャラが登場します。
少し悩んでいるので意見としてアンケートを取ろうと思います。
感想を頂けるのはとても嬉しいです。
不定期ですが、返信もしてきます。
よろしくお願いします。
チーム最後の一人、誰になると思う?(ちなみに未登場のウマ娘は今後出る可能性あり)
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ナリタタイシン
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シンボリルドルフ
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ゴールドシップ
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ライスシャワー
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サイレンススズカ
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トウカイテイオー