他のものを書いていて一段落したため投稿を再開致しました。
展開は速く、出来も悪いのでそれでもいい方はこれからもよろしくお願いいたします。
今回の依頼は単純明快。
廃墟ビルにて武器の取引が行われる。それを阻止して、敵を殲滅。武器を回収するだけ。
最強のリコリスと謳われる千束と、卓越した射撃能力を持つたきなにとっては簡単な依頼ともいえる。それに加えて、今はスパイダーマンもいるのだから、依頼が失敗する未来など誰も考えていなかった。
声色の変わらないクルミの声が聞こえる。
『今回の敵は五人だ。二人には簡単な依頼かもな。ピーターはいらないんじゃないか?』
『ちょっとそれ酷くない!?』
少しの機械らしさと、雑音が混じった二人のやり取りが耳に響く。その二人が施したやり取りに、千束は笑いを溢し、彼女に比べてたきなは呆れた表情を浮かべていた。
「二人共集中してください。その油断が命取りになるかもしれませんよ」
クルミのやる気のない「分かった」と、ピーターの反省の色を滲ませた声色が重なる。生死がかかる仕事ではあるが、いつまでも気を張っていては心身共に保たない。ピーターの軽口やクルミの戯言は、今までの気を紛らわせるには良いのかもしれない。だがしかし、仕事は真剣にこなす必要はある。
「ねえねえピーター」
空を見上げながら、千束がピーターを呼ぶと、彼の応答がインカムから聞こえ、ふと思った疑問を呟いた。
「
『そうだよ。僕の宇宙が他の宇宙と繋がった時は、他にスパイダーマンが二人いたよ』
名前こそ似ていたが、姿や生い立ち、これまでの戦いなどはそれぞれ異なったスパイダーマン──ピーター・パーカー。
一人は大人びているピーター。
一人はアメイジングなピーター。
色々な部分が違ってはいたが、根本的な大部分はまったく同じのピーター・パーカーだった。
あくまでもあの時に重なってしまったのは三つの宇宙で、皆の記憶を消さなければ、無数の宇宙から敵が襲来する可能性があった。もしかすれば、その無数の宇宙にも他のスパイダーマンいる可能性は高い。
「それじゃあさ! 私やたきなも他の宇宙にいるかもしれないってことだよね!?」
可能性としてはあり得る。
「ピーターの世界には錦木千束っていなかった?」
『うーん……僕は日本に行ったことがなかったから、ちょっと分からないかな』
その言葉に、千束は答えを分かっていながらもがっくりと肩を落とす。そんな彼女の姿が想像できたピーターは『でも』と言葉を繋いで、一人の女性の姿を思い浮かべた。
『僕の世界……というか、アベンジャーズにロシアの女スパイはいたよ』
「──女スパイ!!」
ピーターが発した単語に反応して、千束は大声を響かせる。突然発せられた大声にたきなが驚き、誰にも聞こえないような小さい声で訥々と「うるさい……」と呟いた。
『直接話したことはないけど、凄く強い人だったよ』
初めて出会ったのは、アイアンマンに誘われて空港にいった時。あの日はトニー・スタークに誘われた嬉しさで胸が一杯になり、周りのことについていくので必死だった。
今考えてみると、あそこにいた面子は豪華なんて言葉では足りないほどに豪華だった。
「千束、ピーター、もう現場はすぐそこですから、雑談はそこまでにしてください」
たきなに指摘されて、二人はやる気のないような「はーい」と返事が重なる。そしてクルミのドローンからの情報を得ては、廃墟のビルへと三人は足を運んだ。
敵の数は五人、武装はライフルだが問題はない。スパイダーマンがビルの上階に降り立ち、敵にバレることなく天井や壁を這って目視で確認していた。
『誰かの誕生日パーティーでもやるのかな?』
ピーターの軽口がインカムから聞こえ、武装した敵の部屋の前まで来ていた千束とたきなが弾倉を確認。そして「それじゃあ派手にお祝いしてあげないとね」と言った千束の言葉が、戦闘開始の合図となり、扉を蹴破ると同時にスパイダーマンが飛んだ。
千束とたきなの同時発砲。一瞬の閃光と共に耳を聾する発砲音が、空白に描かれた廃墟ビルの空間に響き渡る。音が聞こえたと同時に、複数の弾が相手に撃つ暇も与えず二人を撃ち抜いた。
千束の非殺傷弾は相手の腹部に命中。たきなは正確無比な命中精度で肩を撃ち抜いた。
残った三人が千束たちに気が付いて慌てて銃口を向ける。舌打ちが鳴り響いて、引き金が引かれる瞬間──天井から飛び掛かったスパイダーマンが一人に拳を振るい、更にはウェブの塊がもう一人へと放たれた。
射出されたウェブは通常のウェブよりも強力な衝撃を与え、敵を紙のように吹き飛ばし、更には壁に激突した瞬間──動きを封じられ、壁に貼り付けられた。
そして、残り一人。
瞬間的に四人を倒したピーターたちにとっては、目を瞑っても倒せる相手。銃弾を避けられる最強のリコリスと謳われる千束、正確無比な射撃を誇るたきな、更には超人的な身体能力を持ったスパイダーマン。
そんな三人を相手にして、並の人間が戦えるはずがない。男も一瞬にして仲間が倒されたことに恐怖を覚え、慌てて背中を向けて駆け出した。
「ねえ、鬼ごっこするつもり? それなら僕たちよりも君の方が向いてるんじゃない?」
スパイダーマンが軽口を叩いた直後──男は積み重なったダンボールの中から一つの武器を取り出した。それは今まで見てきた
「なにあれ! なんかハイテク武器でてきたけど!!」
千束が驚愕で声を荒げ、スパイダーマンとたきなも並んでその目を見開く。向けられた大口径の内側からプラズマに似た青い光が瞬き、慌ててスパイダーマンが跳躍した。
「──まずいっ!!」
男が引き金を引く──瞬間、スパイダーマンの
銃口から雷鳴の如き大音響が響く。撃ち出されたプラズマのような輝きが超高速で迫り、その先には千束とたきなが立ち尽くしていた──だが、命中する直前でスパイダーマンが二人の手を引いて転がり込んだ。
「二人とも大丈夫!?」
地面に投げ出されるように転がった千束とたきなを、スパイダーマンが心配する。二人は痛みを堪えながら即座に銃を構えて頷いた。
「なにあの武器! プラズマ弾みたいなの出てきたけど、たきな見た!?」
「騒ぎ過ぎです。信じ難いですが、この目でしっかりと見ました」
プラズマ弾が撃ち抜いた場所に目を向けると、そこはコンパスで切り取ったようにぽっかりと穴が空いている。もしも命中していたと思うと、背筋が凍った。
「キングピンの手下が持ってた小型の加速器だ」
「あれがそうなんですか? 明らかに武器のように見えますが……」
「あれの他に転化装置が設置されているんだ。あのプラズマ弾をその装置に撃って粒子へと転化させる。そうすることで別次元の扉を一瞬だけ開くんだ」
男がもう一度プラズマ弾のエネルギーを充填。銃口を千束たちに向けたが、撃たれるよりも先にたきなが男の腕を撃ち抜き、スパイダーマンがウェブを伸ばして銃を取り上げ、男の脳天に叩き付けた。
その一撃で男は気絶して倒れる。そして全員を沈黙させた千束たちは、実弾で撃ち抜いた相手の手当てを施しながら、スパイダーマンがウェブで動きを封じ込んで、最後の男が持っていた特殊な武器を千束が手に取った。
「こんな危ない武器が幾つもあるんだねー」
「そうですね。DAに報告しますか?」
「うーん……」
報告をするのが正解なのかもしれないが、その場合どうなるか想像もつかない。これだけ危険な武器が幾つもあり、更には大規模な加速器まで存在しているのが分かれば、DAは本気で探そうとする。そうなれば、ピーターの活動が難しくなる可能性があった。
構造は眺めてもよく分からなかったが、なんとなく叩いていたりすると辺りを散策してきたピーターが帰って来た。
「取り敢えず周りを探して見たけど、加速器はどこにもなかったね。あとから持ってくるのかもしれない」
「ピーターが加速器を見つけたのって、ここの他に何ヶ所あったの?」
「四ヶ所かな……あれ、ちょっと待って……」
突然ピーターが顎に手を置いて顔を顰めた。
千束がピーターの名を呼んでも、彼は何かを訥々と呟く。時折としてスーツの中に存在しているAIに向けて問い掛けていた。
「この場所と、今までで加速器を見つけた場所を線で結んで。そしたらその中心の場所を出して」
「ちょっとピーター、どうしたんですか?」
そういうことか、となにか納得したようなピーターが千束とたきなに向けて問い掛けた。
「ねえ、北押上駅の近くになにかシンボルみたいな建物ってある?」
「でしたら『延空木』があります」
「多分だけど、加速器のある場所が分かったかもしれない」
え、と二人が同時に困惑の声を漏らした。
今までピーターが見つけた小型加速器の場所と、今回の廃墟ビル。その全てを一つずつ結んでいくと五角形が生まれる。そしてその中心には、東京で最も高く新しい建造物──延空木がある。それはまさに東京のシンボルといっても過言ではない。ピーターはその仮設を二人や、ミカたちにも伝えた。
『だがあまりにも突拍子もない発言じゃないか?』
「あくまでも僕の仮説でしかないけど、大型の加速器を中心に小型の加速器で別次元の扉を開き、最後に大型の加速器で巨大な扉を出現させようとしてるんじゃないかな……」
ミカの問い掛けにピーターが自分の仮設を告げる。確かにピーターの仮設も有り得る可能性はあったが、それ以前に最もな疑問があった。
『しかしなんのために?』
「それは、まだ分かんないけど……」
一気に自信を無くして肩を落としたピーター。そんな彼を励ますように千束が「まあでも有り得なくはないから!」と彼の肩を叩く。だが、情報がほとんどない今では、仮設を立てて一つずつ潰して行くほかない。
頭を悩ませていた者たちの会話を聞いていたクルミが、淡々とした声色で『ハズレでもなさそうだぞ』と切り出した。
『ここ一ヶ月で延空木の近くに建ってる高層ビルに、同じようなトラックが何十台と入ってる。しかもトラックに書かれてる会社を調べて見れば、そんな会社実在していない』
「じゃあ絶対そこじゃんっ!!」
クルミの言葉に千束が声を上げた。
あとはその場所を調べて、本当に加速器があるか確認する必要がある。偵察や侵入はスパイダーマンの十八番といってもいい。誰にもバレずに侵入するのはお手の物だ。
ようやくピーターの帰れる希望が見出すことができ、千束が手を握り締めた。
「良かったじゃんピーター! ようやく帰れるかもしれないよ!」
「そうかも」
「帰れるまでは、私もたきなも手伝うからさ!」
たきながポツリと「私もですか」と呟いていたが、それでも溜め息を吐いてから僅かに笑みを見せる。そんな二人の姿を見つめて、ピーターは千束の手を握り返してから笑った。
「本当にありがとう、二人とも」
ピーターが感謝を伝えた瞬間──廃墟の扉がぶち破られて、ピーターは慌ててマスクを被り、全員が一瞬にして戦闘態勢を取った。銃口を向け、スパイダーマンは正面を見据えて、腰を低くして構えた。
だが、そこから入って来たのは武装した敵ではなく、千束やたきなと同じ制服に身を包んだ少女だった。
「──え、
「はあ? 千束、なんでお前がここにいるんだよ」
フキと千束に呼ばれた少女は茶色のショートヘアを揺らしながら、その表情に呆れや軽蔑に似た色を滲ませて、鋭く千束を睨んだ。そして隣にいるスパイダーマンへ視線を移してから、隣にいたもう一人の少女が銃を向けた。
「先輩! あれスパイダーマンっすよ!」
「待てサクラ」
ツーブロックが特徴的な少女──サクラがスパイダーマンの名を叫んで引き金に指を掛ける。だが、フキが一歩前に踏み出て、千束へ問い掛けた。
「なんでお前らとスパイダーマンが一緒にいる?」
「そっちこそ、なんでスパイダーマンに銃を向けてんのさ」
質問には答えず、千束も鋭い視線で返す。明らかにサクラとフキからは殺意を感じられる。それは千束やたきなではなく、スパイダーマンへと向けられていた。
フキは舌打ちを漏らして、呆れたように溜め息を漏らしてから頭を掻いた。
「お前ら聞いてねえのか? スパイダーマンは危険人物と判断され、DAから射殺命令が出てる」
「はあ!? 頭おかしいんじゃないの!?」
声を荒げて、ずっと思っていた言葉で罵るが、フキは銃を取り出してサクラと同様にスパイダーマンへ向ける。その瞳に嘘や偽りは感じられない。フキと相棒として活動していた千束もたきなも、彼女が本気であることは直ぐに感じられた。
「スパイダーマンは人を助けてたんだよ!? なんでそれで射殺命令がでんのよ!」
千束の疑問はごもっともだった。
スパイダーマンは市民を守り、悪人だけを捕らえている。それでDAに射殺命令が下る意味が分からなかった。だが銃口をスパイダーマンに向けたまま二人は答えた。
「だからっすよ。スパイダーマンはあまりにも目立ち過ぎてるっす。それにソイツが現れてから東京の犯罪率は増えてるんすよ」
「ああ、それでしかも超人的な身体能力で、
DAにとって危険を排除するよのは自然のこと。スパイダーマンがいま味方でも、敵になる可能性もある。あらゆる可能性を考え、犯罪を未然に防ぐのがDAとリコリスの役目だ。もしもスパイダーマンが敵になれば、甚大な被害が齎される可能性があった。
「まさか、まともにリコリスの仕事をしない奴と、命令違反をした奴が関わってるとはな」
「なんだとコラ。ここでやる気か、あぁん?」
舌打ちを漏らしてから「ああ!」と声を荒げながら頭を掻いた。
「今日は見逃してやる。お前らも関わってると上に報告して、新たな命令を仰ぐ」
流石に分が悪いと感じたのか、フキはそれだけを言い残して踵を返した。最強のリコリスと謳われる千束と、高い実力を持つたきな、更には超人的な身体能力を持ったスパイダーマンが相手となれば、フキとサクラでは勝てる見込みが薄い。
帰って行く二人の背中を見つめて、千束たちはかなりマズイ状況にあるのだとしみじみと感じた。
無理矢理感が否めないですが、もう終盤です。
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