よろず屋ハヤテちゃん   作:絡操武者

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 この作品は、原作のワールドトリガーのキャラクターやトリガーの種類や専門用語などをある程度知っていないと理解出来ない点が有りつつも、今作の独自解釈や独自設定と言ったモノが含まれる事により、原作をある程度知っていても理解出来ない事がある様なパラレル要素もある作品になっている日常系と言えなくもない様なところを目指しつつ、決して原作と比較して重く正確に捉えて欲しくはないが、個人的に息抜きリハビリがてら書いてみるか的な見切り発車的な気持ちで書き始めたものの2話目である。




まーじゃん

 

 問題児というのはどこにでもいるものであります。どの国でも、どの業界でも、どの集まりであってもそれは変わらないでしょう。このお話に登場するボーダーという組織であっても勿論変わりません。寧ろ問題児が多い組織と言っても差支えないのかもしれません。そんな問題児たちが目立ってしまうのは、まともに仕事や作業を行っている人たちがいるからです。

 問題児だけの集団であれば、『なんだあいつらは、近づかない方がいいだろう』となりますが、まともな組織の中に多少問題児がいたとしても、まともな人に仕事や相談事を持って行ったり、まともな人が問題児を注意し育てて行くことになり、その組織は体裁を保ちつつサイクルしていくことになるでしょう。

 ボーダー組織の中でも、まともで仕事も出来て後輩たちからも信頼厚く、背中で語りつつも指導するところは指導するそんな絵に描いたような理想的なリーダーがいます。その中の一人が風間蒼也という男です。そんな蒼也の下に本日も問題児がやってまいりました。

 

「兄上ー! 兄上はいらっしゃいますかー!」

 

 風間隊の時間のあるメンバーで本部長である忍田から充てられた書類仕事をしていると、蒼也の義妹のハヤテの声が本人とともに隊室に入ってきました。蒼也と一緒に仕事をしていたオペレーターの三上歌歩と隊員の歌川遼は微笑まし気に視線は書類のままに手を動かし続けますが、蒼也は仕方ないと言った面持ちで溜息を吐き、声の方向へ顔を向けました。そこには札束を持っているように見える義妹がいて困惑の顔を浮かべています。これにはいつも冷静沈着な蒼也も流石に動揺してしまいました。

 

「な、何があったハヤテ……」

「おわっ! さ、札束!?」

「ハヤテちゃん!?」

 

 珍しく狼狽えてそうな隊長の声色に歌川と三上も自然と視線を向けると、蒼也が見ている光景と同じモノが目に入ってきました。パッと見でハヤテの手には1万円札が数十枚は掴まれていそうです。

 風間隊は遠征にも行くことがあるA級上位の部隊です。普段貰っている給与や戦功といった賞与により別に大金に驚くことはありませんが、小学校低学年のハヤテが大金を持っていることには驚愕ものです。

 

「違うのです兄上ー……鞄の中にも……」

 

 これだけではないとハヤテは首を振りながら手に持っている札をテーブルの上に置き、背負っている鞄の中から更に封を切っていない札束を何冊も取り出していきます。

 

「ぅぉぉぉ……」

 

歌川は普段の冷静さを欠きつつ目の前の少女が何か巨大な闇を抱えてしまったのかと映画のような想像をしてしまいます。

 

「『詳しくは知らんが小さい国なら買えるかもな』と言われました……ハヤテは女王にならなくてはいけないのでしょうか? ハヤテは日本が好きです。外国語シャーベレマセーン」

 

 いや、違うそこじゃない。何で最後エセ外国人になった。

 さて、鞄に入っていた札束も9冊に留まりました。9百数十万では国どころか家の新築一戸建ても買えないでしょう。

 

「あ! 隊長、これ……」

「……なるほど」

 

 三上が何かに気づき1枚の札を蒼也に渡すと、蒼也は納得しました。福沢諭吉は微笑みを浮かべ数字は1億円を表記していました。子供銀行券と言われるおもちゃですね。934億円分あるみたいです。確かにこれほどの金額なら破綻している国など手に入るかもしれませんね。良く知りませんが。

 

「良く出来てるなー最近のおもちゃは。俺が知ってるのは小さいサイズのチョコレートのオマケみたいなやつですよ。ちょっと厚紙だったかな」

「あー見たことある。他のお札の種類もあるやつだよね」

 

 歌川と三上が自分たちが今よりも更に子供の頃を思い返すように懐かしんでいる中、蒼也は既に推理へと思考を移しています。推理とは勿論ハヤテにこのイタズラを仕掛けた人物は誰なのかということです。目的は一体何なのか。その思考を進めるために鞄に意識を向けます。

 

「そういえばハヤテ、この鞄もお前のじゃないな」

「これはアゴヒゲから『手だと持っていけないだろう』と、この鞄に詰めて渡されたのです。あ、誰がとは言えない契約になっているのでこれを渡した人は言えないのですが」

 

 いや言った。今言ったよ犯人の名前。

 というかちょくちょく頑張って渋めにモノマネしていたのはアゴヒゲの事だったみたいですね。

 直接的ではなくてもそれが誰を示しているのかこの部屋の中の人は(またアイツか……)と把握しました。

 そして、どうせアホな事ではあろうとは言え、ハヤテに約束を破らせるわけにはいかないとも思い、問い詰めずに推理という形で話を聞くことにしました。

 

「ハヤテ、今日は何をしていたんだ?」

「はい……朝、お茶漬けを食べている時の事でした。もう少し食べられると思い、バナナにも手を出したハヤテは思ったのです。ヨーグルトもいける! 栄養は大事! ですがヨーグルトにかけるいちごジャムの蓋が開か―――」

「よし待て、学校が終わった後からで大丈夫だ」

「かしこま! えーと、ボーダーの本部に着いて、休憩を疎かにしている不届きな開発室の者達へ食堂の方に簡単なお弁当を作ってもらい配り終わった時の事でした。何か開発室でやることは無いかとモトキチ様に聞こうと室長室に向かうと、冬島さ……あ」

 

 あ、冬島も関与してるな……とまともな3人は勘づきましたが、話を進めさせました。勿論名前を挙げずに話を続けさせていく方針は崩しません。

 

「ふむ、お弁当を配ったんだな偉いぞ。それで? 誰だか聞こえなかったが、そこで会った誰かとどうしたんだ?」

「あ、はい! そこで会った人と罠トリガーの話をしてると、東さんが来て、『今日は行けなくなった』と冬し……その人に伝えると、そこに、あ……もう一人来て、私も一緒に、す……タバコの人の部屋に行くことになって……」

「なるほどな……」

「え、隊長もう分ったんですか?」

 

 話に出てきた登場人物の中で、ハヤテが持って来た札束に関係しそうなのは【アゴヒゲ】【冬島】【タバコの人】の3人の様です。名前を何とか言わない様にと、ハヤテが言い淀みながらの文章を再構築してみると、

前回のお話でも出てきた【アゴヒゲ】=【太刀川隊の隊長、太刀川 慶】

【冬島】=【冬島隊の隊長、冬島 慎次】

名前が『す』から始まる【タバコの人】=【諏訪隊の隊長、諏訪 洸太郎】

 この人物たちを指している事が分かります。

 途中で、【東さん】が出てきましたが、これは勿論【東 春秋】でしょうけど、彼はこの3人とは無関係な別行動だったようです。

 ハヤテが冬島と話している時に東さんが来て一言で去って行き、次にやって来た太刀川と3人で諏訪隊にの隊室に行ったそうです。これで分かる方は蒼也と同じ答えを導き出しているのかもしれませんが、蒼也の男らしさを見るチャンスなのでもう少し様子を見てみましょう。

 

 

「―――多分な。ハヤテ、今日何か新しい遊びを教えてもらったんじゃないか?」

「え!? あ……うー……まーじゃんというモノを教わりました。ごめんなさい兄上! で、ですが、知らなかったのです! 四角いモノを集めて倒していただけで、途中で大人の遊びだと言われて怖くなったのです!」

「あー麻雀か、ってことは」

「東さんは関与してないのね」

 

 ハヤテは明らかに悪いことをしたと理解しているようです。

 

「安心しろハヤテ、麻雀自体は悪いことじゃない」

「で、ですがあんな巨額なお金が動くとは思いもしなかったのです! ハヤテは、ハヤテは女王でありながらマフィアとの抗争に巻き込まれスキャンダラスなことになり、国民を見捨てることに……! そんな女王にはなりたくないのです!」

「安心しろハヤテ、お前はまだ女王じゃないしこのお金も偽物だ」

「偽札!? で、では投獄されてしまいます! 国民の皆様ごめんなさい! すぐに記者会見を開きますごめんなさーい!!」

 

 あーあーと言った表情で歌川と三上は隊長の蒼也を見る。どうするんですかコレ?

 

「落ち着けハヤテ、俺が全て片付けて来るからここで待っていろ」

「あ、あにうぇ~~~! うっでぃ~兄上がマフィアに殺されてしまう~!」

「大丈夫だよ隊長は強いから」

「歌歩ちゃん~!」

「大丈夫大丈夫♪」

「行ってくる。後は任せたぞ」

 

 鞄にさっきの札束を詰め込み蒼也は隊室を後にしました。その後ろ姿をハヤテはその目に焼き付けます。

 マジカッケー。流石ですお兄様。と、ハヤテはまるで映画でも見ているかのように感動しつつ大興奮です。歌川と三上は残務を押し付けられた形になりましたが、やれやれといった具合にハヤテを微笑まし気に見やり作業を再開しました。

 

 

 

 この後、蒼也が当事者たちを集め問題はすぐさまあっさり解決するわけですが、少し遡って見てみると、ハヤテの発言や持っていたモノに不思議な内容が含まれていました。ついでですので少しだけ確認をしてみましょう。

 

 おもちゃとは言えハヤテは札束を持って蒼也のもとにやって来ました。仮の話ではありますが、札束を持って帰ってくる人物とはある意味、【勝利者】と言えるでしょう。では、おもちゃとは言え札束を持ってやってきたハヤテは勝者なのではないでしょうか。

 そして、『四角いモノを集めて倒していただけ』とハヤテは言っていました。それはどういったものだったのでしょう?

 

 

 

 素人、しかも女児に現金をかけさせる程、麻雀バカな彼らは腐ってはいません。最初は本当に単なるテーブルゲームとして、ドンジャラ的な意味で教えてみようと彼らは考えました。彼らなりの暇つぶしの一種で、かつハヤテと遊ぼうと考えての割と良心的な発想です。

 最初は簡単なルールとゲームの進め方を教えられ、いざ実践。ハヤテは初心者向けの麻雀教則本を片手に、手付きこそ不慣れですが1局なんとか終わらせると……

 

 

 

 

 

 2局目からはサイドエフェクト全開になりました。

 ちなみに、ハヤテのサイドエフェクトは『凄く勘が良い』というザックリとしたものですが、ほとんどの隊員には知らされていない不確定のモノも含まれています。それが『運がいい』というモノです。運は流石に数値化などが難しく、今後の積み重ねで認められる可能性がありますが、今回はこの運の良さも垣間見えることでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーチです」

 

 ハヤテは千点棒を麻雀マットに垂直に突き立てるようにリーチを宣言します。それに対し、3人は「おーやるなカエデ」「ちゃんと揃ってんのかぁ?」「点棒は倒しておくんだぞぉ?」とにこやかに新人さんに優しく教えてくれる良いお兄さん的な感じでした。ですが……

 

「一発ツモ。2000・4000」

「ま、満貫……だと?」

「や、やるじゃん」

「親っ被りなんだが?」

 

 

 

 素人が勝って経験者が負けるなんてことはよくある事です。運の要素も大きくなるモノだとそれも多々ある事でしょう。ですが教えたい気持ちが加速していた彼らは意地になっていきます。

 

 

「り、リーチだ!」

「ロン12000」

 

 一人。

 

「ロン、16000素直すぎる打ち方ですね」

「ぐぬぬぬぬ……」

 

 また一人と刈り取られていきます。何か覚醒でもしているのかと言えるほどに只管相手を刈り取るハヤテの麻雀に男たちは感覚が麻痺していきます。

 

 

「御無礼、ツモりました16000オール。全員トビましたね」

「ご、御無礼だとぉ……!」

「つ、次だ!」

 

 

 

 

 そして、もう終わるかというところで誰かがポツリと呟きました。「大人の遊びでここまでやられるのか……」

 その言葉でハヤテは『大人の遊び! 兄上に怒られることをしている!』と認識しました。

 

「も、もうハヤテ帰る!」

 

 いきなりビビり始めたハヤテの雰囲気や感情など読み取れないほどボコボコに負かされた男たちはただでは返さぬと語弊がある感情そのままに、お遊びで買って結局使ってない、使う用途もないおもちゃの札束を鞄に詰め込みハヤテに渡した。

 

「手だと全部持っていけないだろうからこの鞄をやろう。(これが本物の額なら)詳しくは知らんが小さい国なら買えるかもな……ははは」

 

 乾いた笑いを浮かべ太刀川はハヤテを送り出します。

 

「あ、俺たちと麻雀してたことは内緒だぞー約束だぞー」

 

(言ったらハヤテ殺害される!)

 

 

 

 

「兄上ー! 兄上はいらっしゃいますかー!」

 

 

 

 

 





よろず屋らしき事を無理やりさせてみる。

ちなみにではあるけど、イメージとして
冬島と太刀川と合流した時に、無理やり諏訪隊の隊室に連れて行かれたわけではなく

「東さん来ねーのか……麻雀って気分だしなー……カエデ新しい遊びやるか?」
「新しい遊び!」
「おい、まずくないか?」
「なーに、ドンジャラだよドンジャラ」
「ドンジャラァ!(分かってない)」

って感じで連れてこられた諏訪も最初は不安気に麻雀が始まりました。





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