そいつキケンです   作:Reqa

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その男天才です

 

 

 

俺はバレーの事ならなんでもやった。だから、県大会は勝ち進み、地方大会も勝ち進み…全国にもいけた。でも全国大会の決勝戦で…

 

 

()()てしまった。

 

ダーン!!!

 

男子更衣室で、俺は無意識にロッカーを殴っていた。拳がジンジンする。静寂の中、俺は呟いた。

 

 

「すまない。俺が最後に…」

 

「誰も…お前の所為じゃねえって分かってる!」

 

「SもMBもリベロも完璧だった。俺にWSは、向いてなかっ「エースっていうお前がその肩書きを持ってんのにそれをお前が言っちゃあ…おしめえだろ」確かに…な。」

 

 

「自分を攻めるより、エースばっかりを頼りにしてた俺らを責めてくれよ。」

 

 

「高校、最後のバレー。あと一歩で敗北って、青春してるって感じしないか?また…社会にでてもバレーは出来るんだし、あんまり気に病むなよ。」

 

 

 

 

こうして、俺は高校最後のバレーの幕を閉じた。

 

 

あの試合の夜。俺はバレーを始めたキッカケを思い出していた。

 

 

ボールを触るのが楽しかった。それなら、野球やバスケとかで良いだろってなるけど、俺はあの小さいコートで6対6の信頼でできるゲームに憧れた。

 

高くジャンプして相手の上から打つスパイク。

 

スパイクサーブが決まる瞬間。

 

相手のスパイクを綺麗にレシーブする達成感。

 

こう振り返ってみると、本当に高校でできるバレーは終わったんだと認識した。

 

俺は、そのまま眠りについた。明日にある学校に備えて。

 

 

 


 

 

目を覚めると、知らない人が俺を上から微笑みながら見つめていた。その異常さに慌てて体を起こそうとした。

 

が、動けない。

 

 

「ギャーーーーオギャーーー」

 

「可愛いでちゅね〜」

 

「俺の…子!」

 

どこからか赤ん坊の声がする。嫌な予感がして腕を見る。

 

 

小さい。小さかったのだ。つまり、その声の発生端は、この俺なのだ。

 

 

…これが、転生なんだと認識した。

 

 

 

それから、9年が経った。つまり、小学3年生。

 

 

俺の両親がバレー好きだったようで、俺にボールを3歳の頃から触り始めさせていた。俺にとっては願ってもない事だったので、有難く触らせて頂いた。

 

今世もバレーで全国をとる。

 

 

俺がバレーやりたいと言うと積極的に手伝ってくれた。なんと、小学生のバレークラブがあるらしい。リトルスパダンというクラブ名。

 

俺はそこに入った。

 

 

「髪しろい!カッコいいな!」

 

「神田黄賢(きけん)です。よろしく…お願いします。」

 

 

クラブの先生に確かにキケンだなと言われた。よく分からないが、失敬な先生だ。

 

 

「得意な事はなんだい?」

 

「スパイク」

 

「なるほど、確かに良さそうなスパイクを打ちそうだ」

 

1人の子が俺にトスをあげた。俺はそれを目で追いつつ、地を蹴り上げ助走をする。

 

 

あの位置…

 

あれが俺の最高打点。そこに落ちた瞬間。

 

両足で踏切り、コートを真下に押す。

 

 

ドーーンッ!!

 

 

小学生が鳴らして良くない音を鳴らした。一瞬、銃声かと思ったその音は黄賢が飛んだ時に発生した音だった。

 

 

「跳んだ…飛んだ?お手本のような空中の姿勢だ…」

 

 

右腕を振り落とす。ボールに当たる。

 

バゴーン!!

 

 

まともや、小学生が鳴らしてはいけない音を鳴らした。

 

 

「予想通りというか…予想を超えたな。やはり、あの覇気を纏ってただけある。威圧感が半端ないな。」

 

 

「す、すげー!かっけえ!」

 

「羽ついてたみたいだったー!」

 

 

 

どうやら、好評だったらしく、周りがはしゃいでいる。俺は安堵した。

 

 

 

「おいおい、お前んとこのガキ。予想を超えてきたぞ。ありゃあ、天才だ。小学生なのに、あの身体能力ヤバすぎるぜ。」

 

「だろ〜?流石、俺の子供だ!やっぱり、俺が天才だっ「じゃあな。こいつは俺が育ててやるよ」………天…才…」

 

 

コーチが電話してる。どうやら、俺の父とバレーをやっていたチームメイトだったらしい。

 

 

「黄賢。今日からお前は、俺らのチームで活動することになる。よろしくな!」

 

 

俺は、はいと返事した後、練習前のウォーミングアップを始めた。

 

 

その後は、レシーブやサーブ、スパイクなどの基本を練習した。

 

 

 

 

それから3年がたった。

 

 

小学生で最後の公式の試合。県内で一位を決めるクラブの大会がある。

 

観客も居るらしい。主に保護者の人だが。

 

 

第1回戦 隣町にあるクラブ。そこそこ強いらしい。

 

だが、結果は圧勝。

 

2回戦も圧勝。

 

そのまま順調にいき、決勝戦。

 

 

相手は優勝候補。

 

 

『お願いします!!!』

 

開始の笛が始まると同時に両チームが号令した。

 

 

始めのサーブは俺になった。

 

 

ここにくるで、俺はジャンプフローターサーブしかしなかった。

 

だけど…今日は攻めてみようか。

 

 

ビリッ!!

 

 

(アイツのサーブ…ジャンフロしかしねえんだよな?しねえんだよな?!)

 

と、不安がるのは相手チームの選手。

 

 

コチラを睨みつけている訳でもないのに、あのサーブの姿勢から出てくる威圧感に冷や汗が止まらない。

 

 

本当に小学生なのかと疑問に浮かぶ。

 

 

黄賢のサーブの鋭い視線に足が竦む。

 

 

観客も息を呑んでいる。これから起こる事がとんでもないものだと認識する。

 

 

ピィーーー!!

 

 

笛の音が鳴った。

 

 

ボールを縦に回すのを止め、ボールを上げる。

 

それと同時に助走をする。

 

 

ボールの高さ…

 

ボールの回転…

 

 

()()()に落ちる()()()

 

なら、俺の最高打点は…

 

 

あの()()

 

 

ダンッッッ!

 

 

爆音が鳴った。

 

 

 

(は?スパイクサーブ?いや…スパイクサーブと見せかけてジャンフロだよ…な?)

 

その願いは粉々に砕け散った。

 

 

右腕を振り落とす。

 

あぁ。

 

やっぱり、ボールを打つのは……

 

 

楽しい!!

 

 

バゴーン!!

 

 

ピッ!

 

「こ、こいつは……とんでもねえ天才だな。」

 

それを呟いたのは、相手のクラブの先生。

 

ボールは、レフト側のラインギリギリに落ちるが、誰の手にも触れずそのまま着弾。

 

 

「なあ、あの白髪がサーブ打つ時の顔を見たか?」

 

「ん?いやあ、打つ時の姿勢が綺麗で魅入ってたが…それがどうしたんだ?」

 

 

「すげえ………楽しそうだったんだよ」

 

「バレーが楽しいからじゃねえのか?」

 

「いやあ…そうなんだろうけど、それと同時に鳥肌がたっちまった。怖ぇ、天才ってのは…」

 

「よく見えてたな。流石メガネをつけてるやつは一味違う。」

 

「今すぐに、全世界の眼鏡をかけてる人に謝れ。」

 

 

決まった。俺のスパイクサーブが決まった。めっちゃくちゃ嬉しい。だが、相手は子供で俺は精神年齢だけ大人。

 

 

探偵事務所でも建てようか。

 

 

そんな馬鹿げた事は置いといて、次も俺のサーブか。

 

 

ダンッッッ!

 

バゴーン!!

 

 

俺のサーブは10回連続ノータッチエース。11回目で、相手がレシーブした。そのレシーブは虚しくも、後方へと吹き飛んでいく。

 

ワンセット目は俺のサーブだけで終わった。

 

 

全てサービスエースではない。15回目から相手がレシーブできるようになったが全てネットを超える。それを叩き落とすのが前衛にいるチームメイト。

 

 

そのまま順調にいき、決勝戦も圧勝で終わった。

 

 

クラブと小学校を華やかに卒業し、中学校へ通うようになった。そこは、雪ヶ丘中学校。

 

 

バレーに入部しようと思ったが、女バレしかない。

 

中学校で顧問の先生に教えられながらもっと成長しようと思ったのに……これから、どうすれば…

 

「ねえ…あの人って小学生のバレーで天才って呼ばれてた人だよね!」

 

「本当だ!てか、めっちゃイケメンじゃない?貴族って感じ!」

 

「でも、可哀想だよね。ここには女バレしかないから…」

 

 

いつの間にか周りに女子が群れている。その中にオレンジ色の派手な色をした男の子が俺をガン見している。

 

まず、ここから脱出しなげれば。

 

 

「あ、どっか行っちゃった〜追いかけよ!」

 

 


 

 

まけたか?まさか、また女子に追われる身になるとは…それより、何故かあのオレンジ頭が頭から離れない。

 

これからの人生で俺に影響を与えるような…運命的な存在を感じる。

 

 

「なあ!お前って、あの噂になってる天才だろ!?ってうわー?!」

 

俺は、反射的に後ろにいた人物を背負い投げした。

 

「いたたた…なにすんだお前!」

 

「すまない…驚かされたから反射的に投げた。」

 

「………反射神経いいな!お前!」

 

「俺は神田黄賢。なんの用だ。オレンジ頭」

 

「オレ…オレンジ頭?!俺は日向翔陽!俺と一緒にバレー入ろう!うん!それが良いー!」

 

 

「その身長で…?ポジションはリベロ?」

 

「んだとぉ!俺は跳べる!!どんな高い壁でも俺はぶち抜く!」

 

「その言葉、気に入った。共に頑張ろう。」

 

 


 

そして、2年がたった。

 

 

その間は、部員が2人だったという事で、試合はできなかった。女バレが例年より物凄く多いということで、何人か貸してもらって合同試合などをやったりした。

 

 

3年になるまで新規部員が来てくれなかったが、今年になって、漸く部員が集まった。そして……明日は日向にとって初めての公式戦。

 

 

「翔陽、明日だな。緊張してるか?」

 

「きききき緊張なんてしてねえ!」

 

「そうか。明日は……勝つぞ」

 

 

日向は、「勝つぞ」その言葉に対して感極まっていた。今まで、何も興味が無さそうな無頓着な顔だったのに。そんなやつが「勝つぞ」それを聞いた日向は燃える。

 

「あぁ!そうだな!勝って勝って…コートに居続ける!」

 

 

 

ー翌日ー

 

 

 

「でけえ!エアサロンパスの匂い!」

 

「翔ちゃん。ちょっと緊張しすぎじゃない?」

 

「お上りさんかよ」

 

「だ…だって、ちゃんとした大会、初めてだから!3年目にしてやっと…」

 

「ほーんと。よく出場までこぎつけたよなあ。」

 

「……イズミンもコージも助っ人に来てくれてありがとう。」

 

「お…やめろっ!!」

 

「俺たち…人足先に大会終わっちゃったしね。」

 

「1年生もありがとう!!」

 

 

『キャッ〜!!!』

 

 

「な、なんだ?女子の悲鳴?いや、これは…!」

 

「すまない。トイレから戻っていく最中に女子に絡まれてしまった。」

 

「っ〜!!このモテ男め!けしからん!」

 

「相変わらず、モテモテだなぁ〜黄賢は。」

 

「…そうかもしれない。」

 

「…?」

 

「……?」

 

「自覚なしっすね先輩…」

 

まったく分からない。だが、皆がそういうのならそうかもしれない。

 

 

「それより、相手の北川第一ってどうなの?」

 

「分かんない。けど、やってみせる!」

 

「うわっ!」

 

 

と、ビックリするのは、泉と関向。

 

一体、どうしたんだと後ろを向くと、そこには俺と同じくらいの身長の連中がぞろぞろと出てくる。

 

「あ、す…すみせまん!ほ、ほら!」

 

「あれが…北川第一。優勝候補らしい。」

 

「そ、そうなのか…勝てんのか…これ?」

 

「もちろんだ。俺がたくさん繋ぐ、皆は触るだけでいい。後は俺に……任せろ

 

その威風堂々したたたずまいに、皆が息を呑み込む。この人なら安心して背中を守ってくれると。

 

それを聞いた金田。

 

「はっ!なんだあいつ……って、あいつ!もしかして!」

 

「どうし……あいつは…あのテレビにでてた天才!神田黄賢じゃねえか!」

 

一斉に会場の全員がコチラを見る。皆が固まってしまってる。ここは…緊張を解くように話を…

 

 

「そのうち慣れる。注目されるのは、まだまだこれからだ。勝って勝って、コート上に居る以上は…仕方がない。」

 

そう言える神田にチームの皆が盛り上がる。

 

「神田がそういってんだぜ!これくらいで怖気付く訳にはいかねえよな!」

 

「確かに。注目されるのは初めてじゃない!」

 

 

皆が和気あいあいと話しているのを見て、安堵した。

 

一人を覗いて…

 

 

「う…うう!腹が腹がぁ!」

 

「……トイレは、あっちだ。」

 

 

翔陽は、人一倍明るい。どんな事にもめげずに頑張ってきていた。だが、そんな彼にも緊張からくる腹痛には、負けてしまうらしい。

 

「だ、大丈夫っすか…キャプテンは?」

 

「あぁ。それと、アップをしてる最中にバレーの説明をする。」

 

「そう!それを再確認しておきたかったんだ!」

 

「キャプテンよりキャプテンしてる…」

 

 

 

 

 

日向が戻ってきた。

 

 

腹が痛いと言っていた日向は、今は見る影もない。トイレに行ってる時に何かあったのだろうか。

 

 

「泉。何かあったのか?」

 

「いやあ…なんか怖い人を怒らせてた。」

 

「なるほど。」

 

 

俺たちは、日向を合わせてアップをとる。

 

「くそ、ちゃんとうめえ…」

 

「あいつ、セッターだったんだ。」

 

「確かコート上の王様って言われてる影山飛雄ってあいつだよな。」

 

「影山飛雄…コート上の王様か。どれくらいの実力だ…?」

 

「神田が興味もってる!珍しい!」

 

「俺は、そんな無頓着ではない…翔陽。それと他の皆。今からいう言葉をしっかり試合の時に思い出せ。これがレシーブする際に役立つ。」

 

「お、おお…分かった。」

 

「▒▒▒▒▒」

 

「え、そんな簡単な事でいいのか?」

 

「簡単だからこそだ。」

 

「よし!▒▒▒▒▒だな!しっかり覚える!!」

 

 

「あの神田先輩からのアドバイス!しっかり頭に刻んでおきます!!」

 

 

ピィーーー!!

 

 

アップ終了の笛だ。

 

 

「皆……」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「よろしく…頼む。」

 

「ああ!こちらこそ頼む!」

 

「頼まれた!!皆気合いいれるぞー!」

 

『オオッーー!』

 

 

いよいよ試合が始まる。翔陽も泉も…全員良い面構えだ。

 

『よろしくお願いしますっ!!!!』

 

 

 





物凄い雑に進めました。幼少期の事は書かなくても良かったと今更思いました。

誤字がある場合は報告お願いします。

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