俺の運命は最弱メモリのようです   作:一般メモリユーザー

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昔と今のゆるふわ風都生活です。


回想だ。

 入院中のことだ。メモリの毒素が残っていた影響か、かつて最も体調が悪かった時の夢を見た。

 

 空中でヘリが爆発し、街にメモリがばら撒かれた数時間後。

 風都タワーで、俺は死にかけていた。視界は霞み、身体は思うように動かない。俺だけかもしれないが、エターナルのマキシマムを使われると、適合率100%だとこんなことになるのか。

 テレビでは、大道克己がジョーカーメモリ捜索のため10億を出すと言っている。要は、AtoZの事件が起きているのだ。

 

「行かなきゃ……」

 

 どうなるかは分からない。ただ、やれるだけのことはやっておくというか、発生するだろうイベントは回収しておかないとという感覚だ。壁に手を付けて、体重を預けるように歩く。一般市民がミュージアム製メモリを手に10億が手に入らないかと詰め寄っているのを無視し、克己の方へ辿り着いた。

 

「鳴海探偵事務所に、T2ジョーカーがある……」

 

 この言葉で、俺の話を聞かざるを得なくなるはずだ。事実、克己はこちらに注目を向けている。

 

「確かに、最後のメモリはJだな。情報の提供感謝する」

 

 そうして泉京水よりおっぱいが小さい女──ヒートの人に目配せした。名前何だっけ。トリガーとヒートの人は名前がうろ覚えというか、京水と克己とメタル堂本のインパクトが強い。

 

「聞いて……」

 

 まだこちらに興味が向けられている。それならあと一言、伝えるだけの気力は持つだろう。なんで知っているかと言われれば、まあサイコメトリーとか未来予知とか言っておけばいい。超能力は存在するからそんな感じだと思ってくれるだろう。

 

「焼けたハーモニカ。ミーナは……生き、てる……」

「……誰だ?」

 

 ……過去は消えたみたいだ。まあ分かっていた。過去が消えていくから、明日を求めていたのがNEVERだ。特に何か変わることはないか。

 

「まあいい。持ってきたのが現物ではないとはいえ、有力な情報だ。まずは2億出そう。現物が確認でき次第3億も支払う」

 

 2億ゲット。まあ、その後に体の力が抜けて、貰ったトランクケースに座り込んで気を失ったが。

 


 

 そんなことを思い出しつつ。

 風都タワーが再建され、ミュージックの事件からだいたい半年が過ぎた。 この半年、様々なことがあった。幽霊になったり竜巻を起こしたり分裂したりと多彩な能力を持った『アップグレードシャーク』だとか、過剰適合イエスタデイの暴走で起きた『左翔太郎と繰り返される一日』事件とか。アップグレードシャークの方は、元ジーンの映画監督──川相くんが役に立っていた。サメ映画の記憶も統合されていたのは笑う。

 そして、今は旧組織(ミュージアム)壊滅から一年。これが意味することはつまり、仮面ライダーWの最終回ということだ。

 一般風都市民ならいいことだと思うだろう。なにせ海外留学中ということになっているフィリップが探偵事務所に戻ってきて、またにぎやかさを取り戻すのだから。

 ただ俺は、検索されるとまずい事になるのでお祈りタイムが始まる。フィリップの興味がそうした過去の事件に向くと俺の罪がカウントされてしまうので遠慮願いたい。

 

 

 さて、翔太郎からある人物について知らないかと言われたのだが……

 

「青山唯……?」

 

 そう。本編最終回だ。俺にとって恐怖の一言である「君のことは検索済みさ」をフィリップが発する回でもある。この時は依頼者の青山晶が検索されていたが、フィリップの自我自体は割と早くに回復していたはずだ。俺のことが知られている可能性もないとは言い切れない。本についてはよくわかっていないが、状況によっては一ページ目から"マスカレイドメモリに100%適合している"とか書かれている可能性も存在する。そうなると詰みだ。罪を数える羽目になる。

 

「誰かは知らないけど、高校生が廃工場でたむろしてるって噂は聞いたことある」

 

 ついでにやるか。ネタバレ。

 

「それと、ペットショップに通ってるみたいだけど……冷やかし?」

 

 そういえば、ペットショップの店員の名前分かってないんだよな。最終回で戦った敵のはずなのに。ということで情報を渡して出番終了。まあ、どのみちエナジー関連がどうなったところでフィリップは帰ってくるだろうし問題ないだろう。後は待っているだけで話は進むが……

 ……本編最終回の戦闘、生で見たいな。いや、リスクということは分かっているが、フィリップ復活の感動的場面を見過ごしていいのか。それをしないなら、風都タワーで克己に話しかけるはずもない。それと、照井の本編最後の活躍が、ユートピアに丸焼きにされただけというのも悲しい。ちょうどEXEが"ミュージアムを継ぐ者"なんて名乗っているし、やられ役としてマスカレイドドーパントを生成するか。不自然には思われないだろう。

 ということで、周囲に建物が無く、正面から風都タワーを見ることができる場所を特定して、近くで眺めることにした。服装をパーカーに変えて、フードを目深に被る。探偵が来ないうちにマスカレイドに変身して、ちょっと遠くの電灯の上に座った。で、すぐに変身解除。都市迷彩柄の服だから、少しは隠密の成功率上がってると思いたい。

 

「こっち来ないで、エクストリーム鳥……」

 

 メモリブレイク後遺症ガチャから半年ぶりのお祈りタイムだ。

 ……ペットショップの店員確認。翔太郎と話して、エナジーに変身した。で、エナジーが翔太郎を撃って……

 

 鳥ィ! エクストリーム鳥が庇ってフィリップが復活。こっちを……見ない! 一歩離れて様子を見ている照井夫妻も……ヨシ! じゃあ待機させておいた中の人がいないマスカレイドドーパントを照井に突撃させる。

 で、Wとアクセルが並んで同時変身。エナジーはサイクロンジョーカー、ヒートメタル、ルナトリガーと基礎コンボ三種でボコられて、マキシマムドライブでメモリブレイク。「さあ、お前の罪を数えろ」で本編最終回のオチまで進行した。アクセルの方もマキシマムドライブですべてのマスカレイドを消滅させたみたいだ。

 いやー、よかったな。探偵たちもこの場を去ったし、帰るか。幸いにも俺が見物していたのはばれてないようだし、跳躍力の必要な登りと違って降りるだけならうまく受け身を取れば無傷だ。服もちょっと厚めの物にすれば衝撃も和らげられるだろう。

 これから先というと、Vシネアクセル経由してから風都探偵か。Vシネの方は特にすることもない。『指名手配犯:照井竜』の報道を眺めるくらいだな。まあちょっと遊べるというか、もしもの時のために底上げブーツといつもの照井竜ファッションで外を出歩くくらいはしようか。警察の前に少しだけ後姿を見せて歩き去れば、そっちに注目が集まるだろうし。あとは服装を変えて「その人なら向こうに」って駅の方角を指してやれば、照井は駅から逃げるつもりだろうと誤認するだろう。

 マネージャーよろしく、円滑な舞台のために裏方を務めようか。さて、詩的なことを言うのであれば、これにて本編の舞台は終了。これからはちょっとした話と、裏風都との争いがメインになるだろう。

 


 

 家に帰る。高校の課題も終わらせ、食事を終えて自動食洗器に皿を入れた後のこと。

 

「ジョーカーメモリ単体の脅威を把握するのに、君は素晴らしい働きをしてくれた。本来のメモリでなかったことは残念だけどね」

 

 家で一人本を読んでいると、背後から声が掛かった。内心すごくびっくりしているが、この体はそれを表に出さない。

 

「……どこから『落ちてきた』の?」

「私の場合はね、そうは言わない。……『降って来る』のさ」

 

 なるほど……やっぱり来たかぁ……。とりあえず、服装をNEVERのジャケットに変える。

 

「どこの『番地』から?」

「そうは言わない。『街』さ。ここと隣り合う、ね」

 

 続いて、服装を財団Xの白服に。後ろにいる彼は元々系列会社にいたはずだし、なじみのある服だろう。

 

「あなたの名前は?」

 

 俺が自衛しないのは勝手だ。けど、そうなった場合、ここに来た彼に対抗できない。そう──

 

「万灯だ。万灯雪侍」




ようやく万灯構文の展開に追いつきました。
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