俺の運命は最弱メモリのようです   作:一般メモリユーザー

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最終決着回までの構想ができたので、投稿を再開します。投稿ペースは未定ですが、もしよろしければまたお付き合いください。

新たな風都生活です。


開場だ。

 繰り返しの生活にやることもなかった俺だ。モンラドのイベントにちょくちょくゲストで呼ばれるようになったり、表の活動もそれなりに順調。割と先にはなるが、2月10日の風都の日──蒼炎群が暴れる回の日に『cod-E~Eの暗号~』を初披露しようと耳コピと楽譜起こしをしている。こうして音楽関係のことをしていると、ミュージックメモリを思い出す。

 さて、これからの方針だが、ひとまず裏風都とはいい感じに距離を置く。ボーンズ関連で技術というかデータは取らせたし、ビゼルもあと一回を除いて使うことはない。現金はもう十分に持っているし。

 ので、夜神月リスペクトの二重底引き出しにしまっておく。開け方を間違えればガソリンに引火するアレだ。燃え尽きてくれるかは分からないが、万灯が機能停止処理してくれるだろう。いや、するか?なんかしない気がする。

 ままいいか。工作はマスカレイドの知識が関わらないのでかなり手間取ったが、事故を起こすことなく施工することができた。

 

 ──そして、街に魔女の噂が流れ始める。

 

「魔女……?」

 

 いつものようにビリヤードをしていると、翔太郎が魔女について知らないかと聞いてきた。顔色を見る限り、調査としては初動の段階。つまり、第一話が始まって間もないということだろう。だったらここで情報を渡したくない。とはいえ、俺としても探偵に嘘を吐くなんてリスキーにもほどがある。

 

「ごめん、見たことない」

 

 幸い、現在の翔太郎は探し人のときめが記憶喪失だということも、裏風都から来たことも知らない。だからいつもの人探しの要領で素性を探っているはずだ。そうすると、答えるべきは見たことがあるかないかの二択で問題はない。魔女について知っているか、なら知っていると答えざるを得ないが、素性だけなら知らないで通る。

 

 さあ、なんだっけ。あの大きい噴水がある公園。幸運にも翔太郎からは夕凪町という単語が聞けた。あとはそこの体を洗えるくらい大きい噴水の公園を見張れば流れを追える。……ときめが体を洗っているのは知っているから、覗き行為みたいになるけど、この体は生物学的に女の子だからノーカンに……なればいいな……こんな罪を数える羽目になりたくない……

 

 すずかぜ公園だった。ビルに囲まれていてそれなりに広く、周囲に遊具もない大きい噴水の公園なんて、探せばすぐに見つかる。夕凪町に限定すればなおさら。

 というわけで、早朝と夜──人がいないだろう時間に木々に隠れて噴水を見張っている。仕事は一週間ほど休んだ。あんな事件があったんだから、少しのわがままくらいなら許されるのも大きいだろう。無事に休暇は取れた。

 誰もいない公園を見てから学校に行って、学校終わりに誰もいないところで服を変えて夜遅くまで公園を見張る。時々体を洗っているときめを見て、翔太郎が来てないから進捗はまだだと把握する繰り返し。

 そして──

 

「翔太郎が来た」

 

 着替えが終わるまでそっちを向いてない優しさとか、翔太郎らしいな。なんか話してて……驚いてる。記憶喪失だって聞いたんだろう。それで、手を掴んだ。壊れたジョーカーメモリを見て、真相は理解できたっぽい。ということはそろそろ……来た。反社会人の奴ら。犯人のサングラスかけたヤツもちゃんといるな。そうじゃないと、なんのためにここ数日張り込んだか分かったものじゃない。

 

 聞き耳を立てて、翔太郎の推理を聞く。よく考えてみれば、俺の事件の時は俺が被害者でもあったから推理パートを聞けてないんだよな。

 

 ロードメモリの持ち主はときめじゃなくてこの中にいると推理を突きつけると、犯人のグラサンが銃底で白スーツの社長を殴りつけた。自白というか、理性の限界を迎えた彼は、メモリを使ってドーパントに変貌する。

 あ、翔太郎がロードを蹴った! 目の前で誰かが被害に遭うのを見過ごせないのが翔太郎だよな。信じてた。それに、エンジン音が聞こえる。

 

 リボルギャリーだ! こうして間近で見たのは初めてかもしれない。スカルギャリーなら、我が兄がマンモスドーパントになった時に見かけたが。

 

 リボルギャリーからフィリップが降りてきて、隣に並び立つあの構図になる。互いにメモリを取り出して──

 

「「変身!」」

 

 風都探偵の初変身だ! 生で見れた! やったー!

 接近戦で圧倒するWに、ロードドーパントは煙で目晦ましして人質を取ろうとする。腕を掴んだみたいだけど、それはルナに換装して伸ばした仮面ライダーの腕だった。

 こんなに詳しく見ているのは、ちょっとした実利もある。ロードが逃げようと裏風都への道を開く瞬間を見計らっているのだ。

 よし、ときめが反応した。このタイミングでビゼルを使って裏風都への道を開く。バイクでの追跡──W-G-Xが流れたあのチェイスシーンを見るにはこうする他ないからだ。そして、これが俺のビゼル最後の仕事になる。

 

 まあ当然といえば当然だが、ロードがすぐに追いつかれて終わりというわけでもなく、看板を叩き落したりとWの妨害を行う。対するWはルナメモリで腕を伸ばして回避したり、ルナトリガーで飛来物を撃ち落としたりして着実に距離を詰めていた。つまり、アニメで放送されていた迫力のバイクアクションだ。残念ながら遠目で見るしかなかったが、それでも実写の迫力が伝わってくる。

 そして、ロードはその能力で新たに道を作って上へと逃げていく。これは、終わったな。

 バイクの上に立ち、マキシマムスロットにジョーカーメモリを挿し込む仮面ライダー。二人で一人の彼らは吹き付ける風に乗って上昇し、半分に分かれてキックを繰り出した。ロードドーパントも撃ち落そうと車輪を上へ投擲するが、風と蹴りの勢いに弾かれてメモリブレイクを許してしまう。

 風都に戻るとともにドーパントは爆発。犯人は気絶し、事件は……おっと、まだ解決していないんだった。依頼人が盗まれたバックには購入したメモリが入っていたんだっけか。

 まあ、俺が見れる範囲はここまでだ。ビリヤード場から上階の様子をある程度伺えはするけど、実際に見ることはできない。せいぜいが、近くにパトカーが止まっていると分かるくらいだ。依頼人が逮捕され、ときめも窃盗で警察へ。

 

「新時代というか、第二幕?」

 

 令和は2019年の7月26日から*1だったから正確には違うけど。令和でも連載が続いているから、実質新時代だろう。

 ビリヤード台に乗った玉は全てポケットに落ちた。

 

 


 

「翔太郎。ぼくがいなかった間に解決した事件の閲覧は完了したよ」

 

 ときめの──魔女探しの依頼が持ち込まれる前夜。フィリップは翔太郎にそう告げていた。

 

「ビリヤード場の彼女──九凪水香の事件は、ぼくも思うところがある」

 

 メモリの被害者であり、加害者になりかけた少女。自分が過去にメモリ製造に関わっていたことから来る罪悪感と、メモリを無理矢理使用させていたマネージャーへの義憤。それと。

 

「あの時、君に任せてよかったよ」

 

 『僕の好きだった街をよろしく。仮面ライダー、左翔太郎!』そう遺したメッセージの通り、翔太郎は仮面ライダーとして事件を解決した。それも、街に──彼女に涙を流させる前に。鳴海荘吉から続く事件ということもあり、報告書と地球の本棚で事件の全貌を把握するまでは少し不安ではあったが、引きずるどころか自分なりに答えを出したらしい。

 

「ありがとう。翔太郎」

 

 そうフィリップが伝えると、言葉を受け取った本人はバツが悪そうにコーヒーを少し飲んでから答えた。

 

「任されてたからな。応えるさ、相棒」

 

 ──ただ、安堵の他になにか違和感があった。破壊されたメモリではなく、事件そのものに対しての見落としというか。鳴海荘吉から続く因縁や翔太郎の覚悟、アイドルが被害者であるといった無数の派手さで気づいていないなにかがあるような……

 そんな予感に、夜通しで彼は検索を続けていた。その少し後には魔女探しや関連するメモリ、ときめの素性についてなどの検索で地球の本棚を当たらなければならないことが多く、漠然としているだけの違和を具体化するのは後回しになってしまったのだが。

 

 ビリヤードの音が、聞こえた気がした。

*1
4月30日




原作13巻到達前の内容で完結する予定です。
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