許都にて今後の指示を仰ぐため、純は書状を送った。
楼杏「純さん。純さんは既に将兵を己の好きなように動かしても良いという特権を与えられましたにもかかわらず、何故指示を仰ぐのですか?」
楼杏のこの質問に
純「確かに俺は、好きに動かしても良い待遇を得た。」
純「しかし、それを笠に俺自身が驕り高ぶるかもしれないんだ。俺は頭が悪いが、そのような特権を得て驕り自滅していった者が過去に存在したのは分かる。」
純「第一、俺は武人だ。姉上に楯突く敵を切り殺し、勝利に導く事が俺の役目だ。そのような特権など、本当はいらねー。」
純「俺たちの務めはただ一つ。姉上を脅かす敵に対し命を懸けて臆する事無く勇猛に戦い、勝つ事に全力を注ぐ事だ。」
純は『黄鬚』の異名に相応しい勇猛な総帥の威厳に満ちた雰囲気でそう言った。
楼杏「成程・・・」
この純の言葉に
霞「せやな。純の言う通りや。」
春蘭「ああ。」
霞と春蘭がそう言うと
秋蘭「純様。私は勿論、全軍将兵は皆、純様のご命令に絶対に従います。」
翠「例え死ねと命じても、あたし達は純殿の命令なら喜んで従い死んでみせるぜ。」
秋蘭と翠はそう迷いのない目でそう言った。
純「・・・分かった。お前達の言葉、しっかり受け取った。」
そして、暫くすると許都から返答の書状が届いた。
その内容は
『荊州にて狩りをせよ。』
といった非常に短いものだった。
純「・・・はは。はっはっはっはっ!」
それを読んで、純は高笑いした。
これに
稟「・・・曹操殿からは何と?」
稟がそう尋ねると
純「見てみろ、稟。」
純は上機嫌にそれを稟に渡した。
読んだ稟は
稟「・・・これはつまり、荊州を平定せよという意味でしょうね。」
そう判断した。
純「そういう事だろうな。」
稟「それに加え、荊州を治めてる劉表は劉備、諸葛亮らの残党を匿っております。」
稟「以前、彼らを引き渡すよう伝えましたが劉表は断りました。」
稟「賊を匿った者を討伐するという大義名分も揃っております。」
純「分かった。皆、兵を整え、出陣の準備をしろ!」
「「「御意!」」」
純の命で、皆それぞれ準備を進めるためその場を後にした。
純「さて・・・荊州に狩りに行くとするか・・・」
この時、純は一人部屋の中でそう呟いたのだった。
こうして純は、荊州平定に向けて出陣したのだった。
荊州
この頃、荊州では劉表が治めていた。
彼は皇族の一人であり、若い頃から儒学の勉強をしており、評判の高い人物だった。
この荊州の統治を朝廷から任された時、当時戦続きだった荊州を上手く治め、善政を行い豊かにしていくなど卓越した手腕を見せた。
しかし、年齢と共にその能力に陰りが見え、判断が下せなくなっていった。
そんな時
「劉表様!曹彰率いる軍がこの荊州を攻めて参りました!」
劉表「な、何じゃと!?」
「その数凡そ30万!益州平定と比べて数は少ないですがそれでも大軍勢です!」
「既に武陵と零陵、そして南郡は平定されました!」
純率いる30万の大軍勢が荊州を攻めてきたとの知らせが入った。
劉表「何と・・・出陣してそんなに日が経っておらぬというに・・・何故そんなに速く・・・!」
「曹彰率いる軍勢は、多くの戦を経験した百戦錬磨の精鋭揃い。加えてそれを率いる曹彰は劉表様もご存じの通り、曹操の弟で『黄鬚』の異名で知られる勇猛果敢な歴戦の名将!我ら荊州の軍勢では立ち向かうのも・・・」
この知らせに
劉表「な、何と・・・!どうすれば・・・どうすれば・・・!」
劉表は狼狽するだけだった。
「劉表様!かくなる上は、劉備、諸葛亮らの残党の首を差し出すのが良いのでは?」
この進言に
劉表「し、しかし・・・あの者らは儂を頼ってきたのじゃ!その者らを差し出すのは・・・」
劉表は躊躇った。
「劉表様!以前引き渡しの使者が参られた際、引き渡すよう命じたのはこのような事態になるのを恐れたためです!」
「断れば、賊を匿ったとして相手に大義名分が生まれるからです!今からでも遅くはありません!すぐにでも引き渡しましょう!」
劉表「し、しかし・・・!」
その時
劉表「うっ・・・!」
劉表が突然胸を抑えて苦しみだし、そのまま倒れてしまった。
「劉表様!」
「誰か!医者を!」
これに、劉表の配下は慌てて劉表の下に集まったのだが、劉表はそのまま息を引き取ってしまい、誰も純率いる大軍を止められず、荊州は殆ど平定された。
しかし、劉備、諸葛亮の残党は残っており、彼らは荊州最北部にある新野に籠もり抗戦の姿勢を見せたのであった。