恋姫無双〜黄鬚伝〜(リメイク)   作:ホークス馬鹿

117 / 149
102話です。


102話

江陵

 

 

 

 

 

 

江陵では、出陣の準備をしていた。

その数は20万。兵士達が掲げるのは、槍、矛、弓・・・。それは空から降り注ぐ太陽を弾き、さながら鉄刃の海原のようだった。

ただ、一つだけ違いがあった。それは、将兵全て白装束を着ている事だった。

そして、純も白き羽織と籠手、そして武骨な軍靴を身に纏い、腰に太刀を帯びながら歩いてきた。

勿論彼も、白装束を着ていた。

それを見た20万の将兵は、ズレる事無く揃って跪き拱手した。

皆、純の言葉を待っていた。

 

純「皆、よく聞け。」

 

その声と同時に、兵達は己の武器を構え直す。続けざまの金属音が、連なり響く後に生まれた光景は・・・切っ先の揃えられた完璧な凪の稲原だった。

 

純「お前達も聞いただろう・・・陸口での凶報を。」

 

純「その中には、お前達の友、兄弟がいたはずだ。皆、俺にとってかけがえのない友であり、家族だった。」

 

純「俺は、身が裂かれるような思いだった・・・」

 

最初は、静かに演説が始まり、純の言葉に全将兵が涙を流した。

 

純「そんな大切な者達を、孫尚香は奪い殺した!」

 

純「それは・・・俺にとって半身を失ったも同様だ!俺は決して許しはしねー!」

 

純「必ず・・・仇を討って、その首を陸口に散っていった三千の将兵の御霊に捧げる!」

 

純「良いかテメーら!例え孫尚香や以下将兵が降伏を口にしても決して許すんじゃねー!!一人も逃がすな!!全て皆殺しにしろ!!」

 

純「俺達は虎だ!!それも獰猛で野蛮な虎だ!!虎らしく、その肉も一緒に食らい尽くしてやろーじゃねーか!!」

 

純「奴らが一体誰に喧嘩を売ったのか、思い知らせてやろーじゃねーか!!」

 

純「剣を取れ!槍を取れ!気勢を上げろ!目の前の敵を、食って食って食いまくろうじゃねーか!!」

 

そう涙を流しながらも覇気に溢れた大声を上げて太刀を天に突き上げた。

次の瞬間

 

「「「うおおおっ!!!!!!」」」

 

20万全ての将兵が、剣や槍を天高く突き上げて涙を流しながら地鳴りの如き雄叫びを上げた。

 

純「風。留守を頼むぞ。」

 

風「はい~。存分にお暴れ下さいませ~。」

 

純「ああ!」

 

そう風に声をかけた純は馬に颯爽と乗り

 

純「出陣だー!!」

 

そう馬上にて高らかに声を上げ、出陣したのだった。

 

 

 

 

 

 

建業

 

 

 

 

 

 

孫策「何ですって!?」

 

孫尚香の独断での陸口占領。この知らせを聞き、孫策は驚きのあまりいつもより大きな声を上げた。

 

周瑜「事実だ雪蓮。小蓮様が、勝手に軍を動かして長沙郡の陸口を攻め、そこを占領した。」

 

これに、周瑜は眉間に皺を寄せながらそう答えた。

 

孫策「あの子は・・・一体何をしてるの!!そんな事したら・・・曹彰に江東平定の良い大義名分を与えるのも同様よ!!」

 

孫策は、頭を痛そうに抑え

 

孫策「とにかく、急いでシャオを連れ戻さないと!」

 

そう焦るように言い、兵の準備をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

陸口

 

 

 

 

 

 

その頃陸口では

 

孫尚香「フフンッ!こんな小城なんか、シャオ様にかかればあっという間ね!」

 

孫尚香が陸口を陥落させた事を誇らしく言うと

 

周泰「しかし小蓮様。これは雪蓮様を無視した独断での出陣ですよ。もしもの事があれば、雪蓮様ご自身の問題では済まされないですよ。」

 

彼女の傍にいる周泰がそう言うが

 

孫尚香「何言ってんの!そんなの、シャオが曹彰を討ち取れば良いだけの話よ!」

 

孫尚香「この陸口でも分かるように、曹彰の軍はとっても弱い事が分かったでしょ!だったら、雪蓮姉様も分かってくれるわよ!」

 

孫尚香は聞く耳を持たなかった。

 

周泰「しかし小蓮様。曹彰は必ずや本隊を率いてこの陸口を取り返しにやって来ます。その軍は百戦錬磨の猛者揃い。とてもですが今の我らの軍勢では到底無理です。」

 

それでも、周泰は諫言したのだが

 

孫尚香「ああ、もう!そんなの、シャオ一人で充分だって言ってるでしょ!こうやって城も手に入れたし、敵の実力も分かったんだからそれで良いじゃない!」

 

孫尚香「本当に強いんだったらこんな簡単に落ちる筈ないわ!それはつまり、曹彰の軍は数頼みの軍だって事!」

 

孫尚香「その数が少ないと結果は丸分かりよ!このまま一気に曹彰もけちょんけちょんにしてあげるわ!」

 

孫尚香は頑として聞かなかった。

 

周泰「小蓮様!陸口の守備兵は確かに三千と少なかったですが、皆曹彰が手塩にかけて育てた兵の内の一部であり、皆精鋭揃いです。現に、非常に頑強に抵抗されていたではないですか!」

 

周泰「そんな我らが勝てたのは、奇跡に等しい!しかし、将兵の精強さでは我らとは格が違います!何度でも言いますが、我らでは到底無理です!」

 

しかし、それでも周泰は諦めずに諫めた。

その時

 

「申し上げます!青の旗色に曹の旗印!曹彰の軍が現れました!その数、凡20万かと!」

 

純率いる20万の軍が現れたという知らせが入った。

 

孫尚香「フフン!噂をすればってやつね!すぐに行くわ!」

 

これに、孫尚香は笑みを浮かべながら言うと

 

孫尚香「あっ!それと・・・フフッ!良い事思い付いた!ねえ!あれも連れて来ようっと!」

 

何かを連れて来ようと思い付いたのだった。

 

 

 

 

 

 

曹彰軍

 

 

 

 

 

 

純「陸口に着いたか・・・」

 

秋蘭「そうですね・・・」

 

純「桃地に孫・・・これは確かに孫尚香の旗なんだな?」

 

稟「はい。情報通り、あれは孫尚香の旗です。」

 

すると

 

純「孫尚香・・・よくも兄弟を・・・!」

 

純の身体から更に覇気が溢れ、目が怒りに染まり益々血走っていった。

その時

 

秋蘭「純様!城門が開いて、敵の将が出て来ました!」

 

陸口の城門が開き、孫尚香が出てきた。

それを確認した純は

 

純「俺が出る。お前ら、いつでも動けるよう支度しろ。」

 

そう言い、馬を前に出した。

 

純「・・・テメーが孫尚香か?」

 

孫尚香「ええそうよ!我が名は孫尚香!江東の虎、孫堅の末娘よ!」

 

純「そうか・・・このような事して・・・テメーはタダで済むと思ってんのか?」

 

孫尚香「何?それは脅しかしら?弱いクセして、格好つけたいから『黄鬚』なんて異名付けて、オマケに髭なんて生やしちゃって・・・格好付けてシャオを脅すなんて100年早いわよ!!」

 

孫尚香は、そう純を馬鹿にした。

 

純「・・・だとしたら、どうする?」

 

これに対し、純はそう答えると

 

孫尚香「そんなの、決まってるでしょ!」

 

孫尚香は城に合図を送った。すると、城から一匹の大きな虎が現れた。その虎は、通常の虎よりも一回り大きい虎だった。

 

純「ほお、随分デケー虎だな・・・。」

 

孫尚香「ふふん・・・そうでしょ?アンタなんか、この子に食い殺されちゃいなさい!」

 

そして

 

孫尚香「行きなさい!!」

 

そう虎に命令した。すると、虎は純達めがけて走り出した。

 

純「ふんっ!」

 

しかし、純はそれに動じる事なく馬から降り虎目掛けて駆けた。

 

孫尚香「馬鹿ね!この虎は普通の虎よりも大きく、力も強いのよ!人の身で敵うはずないわ!」

 

それを見た孫尚香は、鼻で笑いながら言った。

そして、虎は純目掛けて襲おうとしたその時

 

純「うおおおっ!!」

 

ドシャアアアア

 

純は虎の右の前足を取り、そのまま背負い投げをして倒してみせた。

 

孫尚香「・・・え?」

 

それに、孫尚香は呆けた声を出した。

しかし

 

「ガアアアアッ!!」

 

虎はすぐに立ち上がり再び純を襲おうとしたが

 

ギンッ!

 

純に一睨みされ

 

ドスウゥン!

 

虎は動きが鈍くなり、そのまま泡吹いて気絶し倒れてしまったのだった。

しかし、気絶したのは虎に限らなかった。

 

「お、おい・・・どうしたんだお前・・・!?」

 

「こっちもだ!急に泡吹いて倒れちまったよ!」

 

孫尚香率いる一部の兵も、泡吹いて気絶し倒れてしまっていた。

 

孫尚香「な・・・何よ・・・何よこれ・・・!」

 

周泰「小蓮様・・・お気を確かに・・・!!」

 

孫尚香と周泰は、泡吹いて気絶はしなかったが、少しでも気を抜くと倒れてしまう程の状態で、孫尚香に至っては腰が抜け顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら尻餅をついてしまっており、一部が濡れていた。

 

稟「これは驚きですね・・・」

 

秋蘭「あれくらい当然だ。」

 

春蘭「うむ!」

 

楼杏「何て愚かな子・・・」

 

霞「流石やで、純ー!!」

 

翠「ざまぁねーぜ!」

 

剛「流石閣下!」

 

哲「そうだな、剛!」

 

「流石閣下だぜ!!」

 

「閣下の膂力を舐めて貰っては困るぜ!!」

 

「まさに『黄鬚』だ・・・!」

 

その一方で、純率いる将兵全て、皆賞賛の声で満ち溢れた。

そんな中

 

純「どうした?もう終わりか?」

 

純が、更に強烈な覇気を剥き出しに獰猛な笑みを浮かべ孫尚香に言ったが

 

孫尚香「あ・・・あ・・・」

 

孫尚香は恐怖のあまり声が出なかった。

 

純「今更になって怖じ気づいたか、江東の虎の末娘!」

 

そう言うと純は

 

純「フンッ!!」

 

ドシュッ!

 

虎の背中に手刀を叩き込み、それが背中に深々と突き刺し

 

ジュバッ!

 

手を引っこ抜くと、その手には虎の心臓が握られていた。

 

純「テメーら全員、この虎と同じ目に合わせてやる!」

 

そう言うと、純は自陣に戻り、馬に乗ると

 

純「テメーら、攻撃開始だ!仲間を、家族を手にかけたらどうなるか・・・その報いを受けさせてやれ!!」

 

強烈な覇気を身に纏いながら太刀を掲げ総攻撃の命令を下した。

 

「「「おおおーっ!!!」」」

 

これにより、20万の全将兵は揃って雄叫びを上げ、陸口へ総攻撃を開始した。

この時になって、孫尚香は後悔した。

 

「誰に対して喧嘩を売ったのか。それはどれ程愚かな事だったのか。」

 

と。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。