許都
霊帝「ねぇ、丞相。」
華琳「はい、陛下。」
霊帝「今、大将軍は江東を平定しようとしているそうね。」
霊帝の問いに
華琳「はい。愚かにも陸口を襲い、三千の将兵を殺した卑劣な賊を討伐する為です。」
華琳「故に、我が弟は目下江東に侵攻し、賊を討とうとしておられるのです。」
華琳はそう答えた。
霊帝「しかし丞相。何とか大将軍を止められぬか?」
華琳「・・・何故でしょうか?陛下は既に、我が弟に軍を好きに動かしても良いという特権を与えたはずでは?」
霊帝「確かに朕はそうした。しかし・・・もう既に陸口は奪還したわ。これ以上軍を進める必要は無いと思うんだけど・・・」
しかし、霊帝は陸口を奪還した以上、これ以上の軍事行動は必要無い為、侵攻を中止すべきではと言った。
劉協「私も陛下の意見に同感です。これ以上の進軍は不要では?」
それは、劉協も同じ意見だった。
華琳「陛下。殿下。既に江東の孫一族は、越えてはならない一線を越えてしまいました。」
華琳「陸口の三千の将兵を卑劣にも襲い殺しただけでなく、陛下より大将軍大都督の位を賜り大陸の為民の為に命を懸けて戦っている我が弟を怪我させた。」
華琳「これ即ち、陛下に弓引くも同様。加えて、我が弟は手のつけられない程気性が激しく、一旦腹を立てると目の前の敵を全て斬り殺すまで止まりません。」
華琳「それに、弟配下の全軍将兵は、弟と生死を共にする同志であり、友であり、家族の如く強い絆で結ばれております。その者達は、例え誰であっても弟以外の命には従わず、弟の為ならば、たとえ火の中水の中でも喜んで飛び込む覚悟を持ってるのです。」
華琳「もし進軍を止めるならば、その怒りはどちらに向けるが良いでしょうか?」
これに、華琳はそう二人に言うと
霊帝「そ、それは・・・!」
劉協「・・・!」
二人は何も言えなかった。
華琳「陛下。殿下。ここは万事、弟にお任せ下さい。必ずや、大業を成し遂げましょう。」
そう、華琳は拱手しながら言った。
霊帝「・・・。」
最早霊帝は何も言えず
劉協「うぅっ・・・」
妹の劉協も同様だった。
建業
孫権「・・・そうか。」
太史慈「ええ。雪蓮と小蓮様の首が必要だと仰っておりました。」
建業に戻った太史慈は、詳細を孫権に報告していた。
孫権「・・・包は?」
太史慈「幾らか落ち着きました。とはいえ、私もかなりきました・・・」
太史慈「何か、心の臓を思い切り掴まれた感覚でしたし、少しでも気を抜いたら倒れそうでした。」
太史慈「ちょっと、今まで見た事無い覇気でしたよ。」
この報告に
孫権「・・・そうか。」
孫権は、ただそれしか言えず
孫権「どうしたら良い、冥琳?」
周瑜にそう尋ねた。
周瑜「江東の先を考えれば、雪蓮と小蓮様の首を向こうに送らざるを得ませぬ。」
周瑜「しかし・・・仮に送って解決できたとしても、別の土地へ移されるでしょう。」
周瑜「そうでなくても、この江東を治めるのは・・・最早不可能かと。」
周瑜は眉間に皺を寄せてそう言った。
孫権「これまで姉様が豪族達を苛烈に粛清した代償か・・・」
この孫権の呟きに
周瑜「はい・・・加えて、曹彰率いる軍は一騎当千であり、これまで多くの戦を戦ってきた百戦錬磨の猛者が揃っており、それを率いる曹彰は、まさに生まれながらの英雄豪傑。」
周瑜「それは、かの古の覇王項羽を凌ぐ程でしょう。」
周瑜は純をそう評した。
孫権「・・・もう手はないのか。」
周瑜の言葉に、孫権は頭を抱える他無かった。
周瑜「・・・一つだけ手はあります。」
この言葉に
孫権「・・・何かしら?」
孫権はそう反応すると
周瑜「曹彰の軍は確かに精強です。しかし、それはあくまで陸での話。水軍の扱いは慣れておりません。」
周瑜「もしこの戦に勝つなら・・・そこを突くしかありませぬ。」
周瑜は、水軍に慣れてないという弱点をつく事が唯一の勝機だと言った。
孫権「・・・それしか無いか。」
孫権の言葉に
周瑜「・・・今の現状を打破するにはこれしかありません。」
周瑜は苦い表情で答えたのであった。