許都
霊帝「丞相。朕は決めたぞ。」
華琳「何をでしょうか?」
霊帝「大将軍に文を送りたい。良いだろうか?」
霊帝が、純に文を送りたいと言ってきた。
華琳「・・・恐れながらお聞きします。何故、我が弟に文を?」
霊帝「ちょっと大将軍が気になってね。丞相の手を煩わせる事はしないわ。」
華琳「・・・そうですか。宜しいかと存じます。」
すると、華琳はあっさり許可を取ったので
霊帝「そ、そうか・・・!では、すぐにしたためて送ろう。」
最初は驚いたが、すぐに切り替え、文をしたために下がった。
華琳(恐らく・・・純に撤退させる為の文というよりは勅命をしたためた文を送るつもりね・・・)
華琳(フンッ・・・そうはさせないわ。)
霊帝の企みにすぐ気付いた華琳は、すぐに屋敷に戻り文を自らしたため
華琳「誰か!」
「はっ!」
「この文を、今江東にいる純に送りなさい。」
「御意!」
それを兵士に渡し、行かせたのだった。
桂花「華琳様。」
華琳「あら、桂花。」
すると、桂花が現れ
桂花「今、兵が出て行かれましたが・・・」
華琳にそう尋ねると
華琳「純に文を送ったのよ。天子も同じ時期に送ったと思うから、同時期に到着すると思うわ。」
華琳は、そう桂花に言った。
桂花「・・・何故、陛下は純様に?」
華琳「恐らく、撤退の勅命をしたためた文よ。」
これには
桂花「何と!?」
桂花は驚きを隠せなかった。
桂花「・・・そこまでして我らを・・・純様を御するおつもりでしょうか?」
華琳「天子様らしいやり方ね。けど、私は何者の下に収まるつもりは無いし、あの純を御する事なぞ、出来はしないわ!」
これに、華琳は覇者に相応しい笑みを浮かべながらそう言ったのだった。
曹彰軍本営
純「秋蘭。美咲に、和戦の両方で対応できるように言ってくれ。」
秋蘭「御意。」
純は、本営にて秋蘭にそう話していた。
その時
稟「申し上げます。孫策が、反対意見を退け抗戦を宣言したとの知らせが入りました。」
稟が入ってきて、孫策らが宣戦布告したと知らせてきた。
純「孫策・・・病と聞いたが。」
稟「病だと思われますが、あの孫策の事です。この状況に寝ていられないと思ったのでしょう。」
純「成程・・・」
稟の言葉に、純は得心したように言った。
すると
「申し上げます!陛下より使者が文を携えて参られました!」
「申し上げます!曹丞相より使者が文を携えて参られました!」
霊帝と華琳からの遣いの者が同時に来た。
純「陛下と姉上の文が同時に・・・これは一体?」
そう疑問を浮かべたが
純「分かった。会おう。秋蘭、皆を集めろ。」
秋蘭「御意。」
会おうと即決した。
暫くして、皆が集まり、外にはその中央にはまず
「陛下から文を携えて参りました。」
霊帝からの遣いの者がおり、そう言い文を出した。
それを見た純は、秋蘭に視線を送ると、秋蘭は遣いの者から文を受け取り、純に恭しく差し出した。
それを広げ、目を動かし読んだ。内容は
『これ以上の進軍は不要のため、和睦し許都に引き揚げ、陸口にて散っていった将兵の御霊を鎮めるように』
との勅命の文だった。
「陛下は、大層大将軍を気にしておいでです。故に、このような文を大将軍に。」
遣いの者はそう純に言った。
そして、読み終えると文を戻し
純「・・・使者ご苦労だった。下がって休め。決めた後、呼ぶ。」
「御意。」
そう遣いの者に言うと、遣いの者は拱手しその場を後にした。
その次に
「曹操様より文を携えて参りました。」
華琳からの遣いの兵士が現れ、そう言い文を差し出した。
先程同様、秋蘭は文を受け取り、それを純に差し出した。
それを広げ読む純。内容は
『天子の勅命を気にする必要は無い。あなたは将兵を好きに動かせる特権を与えられている。今まで通り、あなたは自分の思い通りに好きに軍を動かし、江東を平らげ、陸口にて散っていった将兵の無念を晴らしなさい』
といったものだった。
読み終えた純は
純「・・・ご苦労だった。下がって休め。」
「御意。」
そう遣いの兵士に言うと、兵士は拱手し下がった。
稟「純様。陛下と曹操殿からどのような文を?」
そして、早速稟は純に文の内容を尋ねた。
純「・・・陛下からはこれ以上の戦は不要の為、和睦し許都に引き揚げ陸口にて散っていった友を、家族の御霊を鎮めるようにとの謂わばほぼ勅命の文だった。」
純「姉上からは、これまで通り好きに将兵を率い動かし、江東を平定し陸口にて散っていった家族の無念を晴らすようにとの文だった。」
これを聞いた稟は
稟「・・・成程。」
ただ一言、そう呟いた。
春蘭「純様!いくら天子様の勅命とはいえ、全軍将兵を好きに動かしても良いといった特権を与えられたのです!ここは、華琳様の文の通り、江東を平定し陸口にて散っていった仲間の無念を晴らしましょう!」
すると、春蘭が早速華琳の文に従って江東を平定し陸口の守備兵の無念を晴らすべきだと言い
翠「しかし春蘭!どのような特権を与えられたとしても、純殿は臣下だ!勅命を軽く見てはいけないだろう!」
春蘭「翠!お前は純様に忠誠を誓ったのではないのか!」
翠「確かに、私は純殿に従うと決めた!しかし、勅命もあるんだぞ!甘く考えてはいけない!」
翠は、勅命を軽く見てはいけないと言い
楼杏「翠さんの言う通りよ!純さんは全軍将兵を好きに動かす特権を与えられたわ!私達はいつ如何なる時も純さんの命に従う!けど、どのような立場でも純さんは臣下!それが道理よ!」
楼杏も翠の意見に同意した。
霞「ウチは惇ちゃんの意見に賛成や!例え勅命でも、純はこの全将兵のてっぺんに立っとるし、特権も貰うておる!ここは江東を平定して陸口の守備兵の仇を討った方がええと思う!」
すると、霞は春蘭の意見に同意し、意見は二つに割れ、それを純は目を閉じ腕を組みながら聞いていた。
剛「・・・どう思う、哲?」
哲「どちらも正しいし、道理があると思う。」
剛「そうか・・・実は俺もそう思っている。」
剛と哲は、どちらも正しいと思っていた。
その時
秋蘭「皆、静まれ!ここは、純様に決めて貰おう!」
秋蘭がそう言うと
春蘭「・・・そうだな。」
翠「そうだな・・・純殿に任せよう。」
霞「ああ・・・妙ちゃんの言う通りや。」
楼杏「私達は純さんと一心同体。例えどのような道でも、共に進み、共に死ぬ同志よ。」
剛「そうだな・・・」
哲「うむ。」
皆は落ち着いてそう言った。
秋蘭「純様!私達以下将兵は、どのようなご決断をされたとしても従います!右に向けと言われたら右に、左にと言われたら左に!火の中水の中に飛び込めと言われたら喜んで飛び込みましょう!死ねと言われたら喜んで死にましょう!」
秋蘭「我らは、永久に純様と共に!!」
そして、秋蘭は純の前に跪き拱手してそう言うと
「「「永久に純様/さん/殿/閣下/と共に!!!」」」
他の皆も同様の行動を取り、拱手し声を揃えてそう言った。
純「・・・お前達の言葉、よく分かった。」
純は、閉じていた目を開けると
純「俺には分かっている。勅命を重く受け止めるにしろ、姉上に従い進軍するにしろ、陸口にて散っていった友を、家族を思っての主張!どのような黄金にも勝る程大切な家族だからこそだという事を!」
純「だが・・・俺の心中は既に決してある!」
純「それは・・・この先どのような困難が待っていようとも、決して揺るがねー!」
皆にそう言うと、二つの文を取り、宙に投げると太刀を抜き
ズバッ!!
一つの文を斬り落とし、もう一方の文を手に取り
純「進軍する!!俺達は江東を平定し、大義のため、孫策と孫尚香を討つ!!」
純「皆、もう一度俺と共に力を合わせて互いに支え合い、友の、家族の仇を討ち、江東を平定するぞ!!」
そう強烈な覇気を前面に押し出し、江東を平定し、仇を討つと改めて宣言した。
「「「御意!!!我らは、永久に大将軍閣下と共にあり!!!」」」
これに、皆拱手し声を揃えてそう答えた。
こうして、曹彰軍はまた更に強固に、そして一つに纏まった。
解散した後、秋蘭は幕にて机の上にある水に浮かんである小型の船を見て考え事をしていた。
するとそこへ
稟「秋蘭様!!秋蘭様!!」
稟「今日は私の人生で最も嬉しい日です!!あははは!!」
稟が普段見せない明るい表情と雰囲気を見せながら現れ、最後に笑い声を上げた。
それを見た
秋蘭「稟。斯様なお主は初めて見るな。」
秋蘭は、稟にそう言うと
稟「嬉しいです!!嬉しいのです!!」
稟はそう返して
稟「純様は、益々見事な大将軍になりました!!僅かな言葉で、分裂しかけた皆さんの心を改めて一つにし、江東を平定するように導かれたのです!!」
秋蘭に弾んだ声で続けた。
秋蘭「無論純様は見事であった。これでまた一つに纏まり、更に強固になった。私も長年仕えてきて、あの様に益々立派なお姿を見ると非常に嬉しい気持ちだ。」
これに、秋蘭もそう稟に返した。
稟「はい!!」
秋蘭「だが、今我が軍は、美咲に頼んで水軍の調練をさせているが、船の扱いでは江東の方が遙かに上だ。」
秋蘭「加えて、江東全軍の大都督は周瑜だ。あの者の統率力と知謀は並外れておる。我が軍の弱点を気付かぬ筈が無い。」
稟「また、孫策も復帰しました。病身か否かは別として、彼女が軍中にいると、士気が違ってきます。」
秋蘭「ああ。決して、気を緩められないな。」
しかし、油断は出来ないと秋蘭がそう言い引き締めると、稟もいつものクールな表情に切り替わり、秋蘭と一緒に机の上にある小型の船を見たのであった。