純達に木っ端微塵にやられた孫軍。
その総大将である孫策は、すっかり憔悴しきった表情だった。
周瑜「・・・」
程普「・・・」
その孫策の姿を、周瑜と程普は何とも言えない表情で見ており
孫尚香「うっ・・・ぐすっ・・・」
程普の傍にいる孫尚香は、ずっと涙を流すだけだった。
その時
太史慈「雪蓮!」
太史慈が現れ
孫策「梨晏・・・曹彰の追手は?」
孫策は、純達が追ってきてるかを太史慈に尋ねると
太史慈「何とか撒いたけど、追い付くのも時間の問題だよ。」
そう答えたので
孫策「・・・冥琳。残った兵馬の数は?」
周瑜にどれだけ兵が残ってるのかを尋ねた。
周瑜「・・・脱走する兵が後を絶たず、今は千足らずだ。」
これに、周瑜は眉間に皺を寄せながら答えた。
それを聞き
孫策「・・・そう。」
孫策は、いつものハキハキとした口調では無く、ただ弱々しくそう呟くだけだった。
周瑜「雪蓮。今は取り敢えず建業に引き揚げ、何とか体勢を立て直して曹彰に挑むほか無い。」
周瑜は、孫策にそう言い
孫策「・・・分かってるわ。皆、もうすぐ建業だ!後もう少しの辛抱よ!」
孫策は、兵を鼓舞したのだった。
その頃、純達曹彰軍は
純「そろそろ孫策達に追い付くな。」
秋蘭「そうですね。」
進軍を続けており
翠「やっぱり陸路は良いぜ!二本の足で歩けるのもそうだが、こうやって馬に乗れるってのはとても良いぜ!」
霞「船の上じゃ、青い顔しとったもんなぁ・・・」
翠「む!お前だって・・・」
霞「ウチ、船の上平気やもん。」
翠「・・・むぅ。」
霞「つーか、ゆらゆら揺れるなら馬の上かて似たようなもんやろ?」
翠「いや、全然違うぞ。あんな所で平気な顔していられる方がおかしいんだ!」
霞「まあ、翠は馬と共に育ったからなぁ・・・」
翠が船から解放されてスッキリした表情を浮かべており、それを霞がちょっと指摘していた。
純「まあ、それはさておき・・・孫策達を斬るのはあと少しだ。気を引き締めろよ。」
純がそう皆に言うと
「「「はっ!!!」」」
全軍そう返事をした。
稟(恐らく・・・もうすぐ孫策は建業に到着するはず・・・)
稟(しかし、今の建業は既に降伏派の連中で固められてる。)
稟(今回の敗北で、江東の豪族はもう殆ど孫策らに見切りを付けたから味方する者はおらず、いたとしても残り僅か・・・)
稟(フフッ・・・ここまで至るまで殆ど、私の思い描いた通りですね・・・)
そんな中、稟は己の策謀で皆が自身の掌で踊ってくれる事に内心冷徹な笑みを浮かべながら呟いていた。
実を言うと、今回の江東平定は、全て稟が頭の中で思い描いていた策謀だったのだ。
これは、荊州の新野が秋蘭の手によって平定されてからに遡る。
回想
稟「ここの城の守備兵の数は・・・この位で良いでしょう。」
風「ぐぅ・・・」
稟「寝ないで下さい!」
風「おお~!」
稟「全く・・・」
この時、稟と風は、それぞれの城の守備兵を入れる数を話していた。
それらを全て副都督に就任した秋蘭に報告し、最終決定を純に委ねるという流れになっている。
すると
稟「・・・」
稟はある地点をジッと眺め始めた。
風「稟ちゃん。陸口を眺めてどうしたんですか~?」
これに、風がそう尋ねると
稟「・・・ここは、江東との境目ですね。」
稟がそう呟いた。
風「・・・そうですね~。ちょうど国境ですね。」
この風の言葉に
稟「なら・・・ここの守備兵の数は五千いや、三千で良いでしょう。」
稟は、陸口の守備兵を三千にすると言った。
風「稟ちゃん。いくら何でもちょっと少なすぎるのですよ~。」
これに、風はそう指摘したのだが
稟「いいえ。これで充分です。」
と返されたので
風「・・・稟ちゃん。一体何を企んでるのですか~?」
風は、少し目を鋭くしながら聞くと
稟「江東の連中に攻めさせる為です。」
稟「荊州を平定した今、後は江東の孫策のみ。しかし、私達には江東を攻める大義名分がありません。」
稟「なので、他よりも少ない兵で守備すれば、血の気の多い者が必ず反応するはず。」
稟「私の隠密から得た情報だと、それに最も該当するのは孫尚香。彼女は母である『江東の虎』孫文台と姉『小覇王』孫策に勝るとも劣らない勝ち気な性格。例え周りが止めたとしても、彼女は守備兵の情報などを聞けば、必ず反応し攻めてきます。」
稟は、自身の策を風に言った。
風「しかし稟ちゃん。秋蘭様がこの兵の数を見て止めると思いますけど~?」
風の指摘に
稟「それはご心配なく。そこの守備隊長には、純様と長年の付き合いであるこの人に任せるつもりです。」
稟は竹簡に書かれてある名前を指差し
稟「この方は、純様の下で多くの戦に出てる歴戦の将です。故に、任せます。」
稟「念の為に、彼とは口裏を合わせてあります。」
稟「『栄光ある大将軍閣下である純様の為に、この地を守り抜きなさい。純様は、あなたをとても信頼している。』と。」
稟「そう言えば、彼はそこの守備隊長を引き受けました。」
稟「この方は、実直で決めた事は例え何があっても覆さない性格なので。」
そう冷静に言った。
稟「そして、攻め落とされたら、その情報は間違いなくこちらに届きます。それを聞いた純様は悲憤するでしょう。将兵思いのあのお方なら尚更。」
稟「純様の怒りは自然と全軍将兵に伝播します。加えて彼らは、純様の為ならば、たとえ火の中水の中でも喜んで飛び込む覚悟の者達です。この力を上手く利用すれば、必ず江東を平定出来る。」
それを聞き
風「・・・稟ちゃんの頭の中は本当にどうなってるんでしょうね~。」
風は、飴を舐めながらそう答えたのだった。
回想終了
稟(唯一の誤算は、純様が毒矢に侵されてしまった事・・・)
稟(あれで少し見通しが狂いましたが、修正範囲内でした・・・)
稟(全ては、この大陸の為・・・そして私の夢の為・・・)
稟(純様・・・)
そう馬上で自身の手を胸に当て、純の思慕を更に強くした。
秋蘭「・・・」
その様子を、秋蘭が密かに見ていたのであった。