秋蘭に、一連の流れの策について詰められた稟。
稟「・・・何の事ですか?」
最初は惚けた稟だったが
秋蘭「惚けても無駄だ。純様や皆の目は誤魔化せても、私は誤魔化せぬ。」
秋蘭は、そう言い厳しい目で稟を見た。
すると
稟「いつからですか?」
稟がそう秋蘭に聞くと
秋蘭「江東に侵攻したあたりからだ。あの時、私は我が軍は精鋭で、江東の兵馬は江東奪還以来殆ど戦を経験していない故にここまでの速さで進軍できてると思っていた。」
秋蘭「だが・・・長江での戦前から、誰かの掌に動かされてる感覚がした。そこから振り返ると、荊州を完全に平定し、それぞれの城の守備兵の数を纏めた報告書が浮かび、その時思い出した。」
秋蘭「陸口の守備兵の数が、他の城の守備兵の数より少ない事をな。」
秋蘭「そして、陸口の守備兵の情報を僅かに漏らし、それに敏感に反応させて攻め落とさせ、純様を悲憤させて江東平定の大義名分を得る。」
秋蘭「純様が怒れば、その怒りは全軍将兵に伝播し、大いなる力となる。その力を利用し、江東を平定する。そうだろう、稟?」
秋蘭は、己の推理を稟に言った。
それを聞き
稟「お見事です。流石秋蘭様ですね。純様が全幅の信頼を寄せるだけあります。」
稟は観念したのか、微笑を浮かべながらそう言った。
秋蘭「何故そこまでしたんだ?」
秋蘭の問いに
稟「・・・私にとって、純様は最も偉大なる主であり、愛してやまないお方です。」
稟「純様は『黄鬚』と呼ばれし猛将で、天賦の武勇と軍才、そして将兵を虜にして纏める力を持っております。」
稟「その力は、まさに英雄に相応しい。」
稟「だから、私は純様の為にこの脳髄は勿論、髪の毛から足の爪先全てをこの身を捧げようと決めたのです。」
稟「例え、卑怯な手を使ってこの身に血を浴びようとも。」
稟は、真っ直ぐ見据えながらそう答えた。
それを聞き
秋蘭「・・・そうか。」
秋蘭は、少しの間を置きつつ一言呟き
秋蘭「お前の思いは伝わった。この事、他に知ってる人はいるか?」
稟にそう聞いた。
稟「風のみです。あなたは気付きましたが・・・」
秋蘭「純様は当然知らないな?」
稟「勿論です。これらの策は、全て私の独断です。」
秋蘭「・・・そうか。分かった。この件は墓場に持って行こう。」
それを聞き
稟「ありがとうございます。」
稟は、ほんの少し頭を下げて礼を言った。
秋蘭「礼を言われるまでではない。同じ人を好きになった同士、分かち合うのも必要だろう。」
秋蘭は、気遣いする必要は無いと言った。
稟「では、楼杏殿は勿論、霞や凪、ここにいない栄華様と一緒に純様を愛しましょう。」
秋蘭「私もお前も、同じ夢の持ち主だからな。」
稟「ええ。」
秋・稟「「皆で純様と共に生き、一緒に年を取って死ぬ。」」
一緒にそう言い
秋蘭「フッ・・・」
稟「フフッ・・・」
お互い笑ったのだった。
そして、全軍進んで行くと
純「止まれ!」
純が何かを見つけ、全軍停止した。
それを、一人の兵士が拾って
「閣下!これは孫策の令旗です!」
孫策の令旗だと言った。
純「・・・行くぞ!」
「「「はっ!!!」」」
これに純は、そう一言言いながら馬を走らせ、全軍もそれに続いたのだった。
一方孫策達は、呉郡に入ったのだがそこも自身に味方する豪族は誰一人おらず、ただただ彷徨い続け、夜になって廃墟と化している砦に辿り着いた。
その間も、落伍する兵士や脱走する兵士も相次ぎ、残ったのは僅か三百程度だった。
入る頃には、全軍疲れ切っており、そのまま動けない者もいた。
孫策「・・・」
孫策も、すっかりやつれてしまい、建業にて矢を受け負傷した右腕を力無くだらんと垂らしていた。
その様子を
周瑜「・・・」
太史慈「・・・」
程普「・・・」
この三人は何とも言えない表情で見ており
孫尚香「グスッ・・・姉様・・・」
孫尚香も、涙で顔をぐちゃぐちゃにしていた。
すると
孫策「・・・皆、ごめんなさい。」
孫策「私の誤った判断で、こんな目に遭わせてしまって・・・。本当にごめんなさい・・・」
孫策がそう謝った。
孫尚香「何言ってるの、姉様。悪いのはシャオよ。シャオが勝手に兵を動かして、陸口を占領しなければ、こんな事にはならなかった・・・」
しかし、孫尚香は自分が悪いと言うと
孫尚香「けど・・・蓮華姉様と雷火は酷いよ・・・!祭が死んで、雪蓮姉様やシャオ達が負けて大変だったのに、皆をこんな目に遭わせて・・・!」
孫尚香「皆・・・同じ家族や仲間じゃないの・・・何で・・・何でなのよ・・・!」
孫権と張昭の建業での行いを泣きながら非難した。
その時、馬の蹄の音と嘶きが聞こえたので
周瑜「何があった!」
周瑜が聞くと
「大変です!四方を包囲されました!」
砦が包囲されたと言った。
太史慈「曹彰達?」
太史慈の問いに
「真っ暗で、何も分かりません!」
暗くて分からないと言った。
すると
孫策「・・・いいえ。これは曹彰の軍よ。馬の嘶きが高いわ。」
孫策がそう静かに言った。
程普「雪蓮様。この砦は元々廃墟にされていた場所で非常に守りにくい為、曹彰率いる将兵相手では防ぎきれないでしょう。」
程普「曹彰軍の包囲網が完成する前に突破しましょう!」
程普が、孫策にそう進言すると、孫策はふらつきながらも立ち上がり馬に乗って
孫策「行くわよ!」
「「「おおおーっ!!!」」」
そう渾身の力を込めて声を張り上げ、周りの兵も続き、門を開けて突破した。
少し走らせると
周瑜「雪蓮!無事突破したぞ!」
周瑜がそう笑みを浮かべながら言った。
孫策「残った兵馬はどれくらい?」
孫策がそう聞くと
太史慈「十二騎だよ。」
太史慈がそう答えた。
孫尚香「どこ行くの、姉様?」
孫策「・・・この大陸を越え、もっと遠い場所に行くわ。」
孫策は、孫尚香の問いに曖昧ながらもそう答えた。
程普「幸い、上手く撒いたので曹彰達も我らがどこに逃げたのか分からないでしょう。」
程普も、孫尚香に続いてそのような事を言い
孫策「行きましょう!」
馬を走らせたのだった。
その頃
純「止まれ!」
純が砦の中に入り、中を調べていたのであった。