1話
華琳「こら純!待ちなさい!」
純「嫌ですよー!」
満天にどこまでも広がる青空の下、洛陽の街の真ん中で一人の少女が少年を追い掛けている。
少女の名は曹操、字は孟徳、真名は華琳である。彼女はあの三国志の英雄の曹操である。
真名とは、その人の誇りで相手が許可しない限りそれで呼ぶことが許されない名前である。
その華琳に追い掛けられている少年の名は曹彰、字は子文、真名は純である。彼は華琳と同い年だが、一日違いの弟である。
華琳「待ちなさいと言っているのが聞こえないのかしら!」
純「待てと言われて待つ馬鹿がどこにおりますか!」
ちなみに何をしているのかというと、それは純が通っている私塾をサボり、それがバレてしまい怒った姉の華琳が追い掛けているという状態だ。
純(全く・・・ちょっと私塾を無断欠席しただけだってのに、何でこうも目くじらを立てんのかねー?)
純「そんなんだから、背も伸びねーんだし、胸も小さ・・・っ!」
そう小声で言ったその時、純は何か危険な気配を感じたので避けると、鎌が飛んできた。
純「っぶねー!いきなり絶を投げないで下さいよ!」
そう言い、純は立ち止まり腰の太刀に手を掛けた。
華琳「あなた、私に対して失礼な事を考えてなかったかしら?」
すると、華琳が良い笑顔でそう言った。
純「いえ、何も!それより危ないじゃないですか姉上!俺じゃなく、普通の人だったら間違いなく死んでましたよ!」
華琳「だからよ。あなたぐらいの実力だったらこの程度は簡単でしょ?」
純「全く姉上は・・・」
そう言い、純は構えを解いた。
華琳「それより、どうして私塾を無断欠席したの?」
その問いに
純「・・・何度も言ってるじゃないですか。俺は衛青と霍去病のような将軍になりたいんですよ。机の上で書き物をして、博士になりたいのではありません。」
純「それに・・・難しくてよく分かんねーもんは姉上に任せますよ。」
純は真っ直ぐな目でそう答えた。
華琳「・・・そう。確かにあなたは私以上に戦に長けているし、武芸も他の誰にも負けない腕があるし、人を惹き付ける魅力を持っているわ。」
純「そりゃあ買いかぶりすぎですよ。」
華琳「そんな事無いわよ。この前の戦で、あなたは大活躍だったらしいじゃない。皇甫嵩殿から聞いたわよ。」
華琳「あなたの八面六臂の活躍で、多くの賊が斬り殺されたって。」
純「あれは皇甫嵩殿のお陰ですよ。あのお方が俺を支えてくれたからこその勝利です。」
華琳「それでも、あなたの実力は確かなものよ。その力、いずれ私の大望成就のため、振るってもらうわよ。」
純「御意。」
華琳「今回の私塾の無断欠席は、私から先生に言っておくわ。」
それを聞いて
純「おおーっ!流石姉上!器が大きい!」
純は嬉しそうな顔を浮かべながら言った。
華琳「調子に乗らないの!」
それを聞いた華琳は、つま先立ちで純の額にデコピンしたのだった。
純「イテー!何するんですか!」
華琳「私を困らせた罰よ。全く・・・しょうがないんだから。」
それを見て、華琳は笑みを浮かべつつ純と一緒に屋敷に帰ったのだった。
曹家屋敷
華侖「純兄ー!今日私塾に行かずにどこに行ってたんすかー?」
柳琳「もう、姉さんったら食べ物を口に入れたまま喋るのはやめて。」
栄華「柳琳の言うとおりですわ。はしたないですわよ華侖さん、お兄様が困っているではありませんか。春蘭さんも。」
春蘭「ふが?」
秋蘭「姉者・・・。」
純「ちょっと遊んでた。」
華侖「そーなんすか?」
純「ああ、そうだぞ。」
それを聞いて
栄華「はあ・・・お兄様・・・またですか・・・?」
秋蘭「純様・・・。」
栄華と秋蘭は顔に手を当て呆れ顔を浮かべた。
純「だって・・・俺机の上で書き物なんて性に合わねーし。」
栄華「お兄様!」
華琳「そのくらいにしなさい、栄華。」
栄華「しかしお姉様・・・」
華琳「栄華。」
栄華「・・・はい。」
華琳「純。明日は寝ても良いからちゃんと私塾に出なさい。あまり秋蘭と栄華を悲しませては駄目よ。」
純「はあ・・・御意。」
華琳「ええ。それで良いわ。」
そして、曹家一門は仲良く夕食を食べたであった。