本陣
凪「純様。楽進隊、布陣完了致しました。」
純「ああ、ご苦労。」
真桜「大将。布陣完了したで。」
純「ああ、ご苦労。」
沙和「純さん。布陣終わったの。」
純「ご苦労。」
そして、純は腕を組んだ。
暫くして
剛「純様。黄鬚隊、布陣完了しました。」
純「ああ。」
香風「純様ー。夏侯淵隊、準備できたー。」
季衣「夏侯惇隊も準備完了ですっ!」
純「分かった。」
華琳「なら、行くわよ。」
そして、華琳は純と春蘭に目配せをした。
純・春「「御意!」」
純「銅鑼を鳴らせ!鬨の声を上げろ!追い剥ぐことしか知らぬ盗人と、威を借るだけの官軍に、我らの名を知らしめてやれ!」
純「総員、奮闘せよ!突撃ぃぃぃぃっ!」
純の覇気の籠もった声で、曹操軍は奮い立つ。
純「楽進隊は前に出よ!李典隊、于禁隊は後方にて、打ち零れた敵兵を殲滅せよ!」
凪「はっ!」
真桜「了解や!」
沙和「了解なのー!」
純「黄鬚隊も前に出ろ!この戦で、俺達の隊の強さを知らしめるのだ!」
「「「おおーっ!!」」」
純「剛も、思いっきり暴れてこい!そして、お前の強さを知らしめるのだ!」
剛「御意!」
そう言い、剛は大剣を豪快に振るい、黄巾の賊を斬り殺していった。
それから暫くが経ち、砦内
春蘭「おりゃああああああああっ!」
季衣「てりゃああああああああああああ!」
春蘭「ちっ。やるな、季衣!」
季衣「春蘭様こそ!でも、今度こそ負けませんよーっ!」
春蘭「それはこちらの台詞だ!あの時の勝負は純様のお声で水入りになったが、今度こそカタを付けてくれる!」
春・季「「やああああああああああああっ!」」
純「おりゃあああ!!」
剛「でりゃああああ!!」
純「剛!何人斬り殺した?」
剛「そんなの、覚えてませんよー!」
純「はっ!奇遇だな、俺もだ!だが、まだまだ俺は強くなる!」
剛「それは俺もですよ!」
純・剛「「はああああああっ!!」」
そういうやり取りをしながら、純と剛は果敢に敵に突っ込んだ。そして、二人の通った道には死体の道が出来ていた。
凪「華侖様!はああああああああっ!」
華侖「・・・へっ!?」
その時凪は、華侖に後ろから襲いかかろうとしている黄巾兵に向かって、気弾を放った。
華侖「あ・・・っ。」
柳琳「ね、姉さんっ!!」
黄巾党A「うわぁあぁぁぁぁぁぁぁあ・・・っ!」
そしてそれは、華侖の脇を抜け、黄巾兵を吹き飛ばしたのだった。
凪「大丈夫ですか、華侖様!」
華侖「ほへー。びっくりしたっす・・・。」
すると凪は、城壁の上を見上げて、
凪「よし、絶対に私が一番になってみせる!」
そう呟いた。その横で、
柳琳「もぅ・・・姉さん、危ないからやめてって言ったのに!」
華侖「大丈夫っすよー。柳琳は心配性っすねぇ。」
柳琳「心配もするよぅ!」
華侖と柳琳はそう言ったやり取りをしていた。すると、
華侖「それより凪!今の何すか?」
華侖「ばーってなって、ずばーってなって、どかーんって・・・、とにかくすごかったっすー!あれ、どうやるんすか?あたしにも出来るっすか?」
凪「ええっと、その・・・それは・・・。」
妹の心配を余所に、華侖は凪が放った気弾に興味津々だった。
香風「うーん。」
真桜「やっぱ、上手くいかへんなー。」
一方香風と真桜は、どうやったら空を飛べるのか、考えていた。
純「よう、お前ら。」
沙和「あ、純さん。お疲れ様なのー。」
純「ああ。沙和と栄華は大丈夫だったか?」
沙和「ん、平気なのー。」
栄華「私も大丈夫ですわ、お兄様。」
沙和は少し疲れた顔に見えたが、すぐに笑顔を見せたのであった。
純「そっか。」
栄華「ところで、剛さんは?」
純「あいつなら、今頃屋根の上辺りに行ってるだろう。」
栄華「そうですの。」
すると、
秋蘭「火を放て!糧食を持ち帰ること、まかりならん!持ち帰った者は厳罰に処すぞ!」
庭の中央で、秋蘭の指示によって糧食が集められ、火をかけていた。
沙和「あーあ。やっぱり、もったいないの。」
栄華「まったくですわ・・・。これだけの糧食があれば、我が軍が何日食べ繋げる事か。」
純「気持ちは分かる。俺だって焼きたくなかったさ。恐らく姉上も。けど、こうするしかねーよ。」
沙和「みゅうう・・・。」
栄華「それを理解するのと、もったいないと思うのは別問題ですわ。お兄様も、思うところはあるのでして?」
純「まあな。今の俺達だって、ただでさえ糧食が足んねーんだからな。」
沙和「もしかして、食料が足りないのって村の人の所に色々置いてきちゃったからなの?沙和がもっと出せませんか、って聞いたから・・・。」
栄華「あれは、あの場では必要な行いでしたわ。それにそれを責めるなら、三日分は置いて良いと判断した私の責任でしてよ、沙和さん。」
そう、栄華は沙和に優しく声をかけたのであった。
栄華「さて、屋根の上の勝負もそろそろ終わりの頃合でしょうし、本陣に戻りましょう。」
純「栄華はともかく、沙和は参加しなかったんだ。」
沙和「うん。沙和達はもう、城壁の所に全部立てちゃったの。」
純「そっか。」
栄華「ずっと気になっておりましたが、そういうお兄様は何処に立てましたの?」
純「正殿天井のちょっと下辺りだ。投げたらそこに刺さった。」
沙和「・・・え?」
栄華「そ、そうですの・・・。」
そして、最終的に一番高い所に旗を立てたのは、季衣であり、二番は意外なことに凪であり、春蘭は三番、剛は四番であった。
そして、純達が本陣に戻ると、沛から急な知らせが来たのだった。
本陣
華琳「沛の城が襲われたですって?」
沛国兵士A「はい。黄色の布を巻いた集団が大軍を率い、我らが沛国の都を・・・」
沛国兵士A「包囲が完了するまでの僅かな時間で、自分は陳珪様の命を受け、この地に出陣しておられる曹孟徳殿と曹子文殿に助けを求めるようにと出されたのです。」
純「分かった。ひとまず、お前は控えていろ。向こうに飯と寝床を用意させてある。」
沛国兵士A「・・・感謝致します。」
そう一礼し、不眠不休でここまで来たのかふらつく足取りで、その場を後にした。
華琳「しかし・・・大変な事になったわね。」
純「はい。しかも、陳登もちょうど沛に戻っているはず。状況としては最悪ですね。」
真桜「けどさっきの遣い、陳留やのうて出陣しとるこっちに行くよう言われたて、どないなっとんの?沛の都からここと陳留じゃ、方角が全然違うで?」
真桜の疑問に
桂花「こちらの動きは把握済みだったんでしょ。あの女狐の事だから、それくらいの情報収集はしてても不思議でもなんでもないわ。」
桂花はそう答えた。
栄華「もっとも、それを知られるのは向こうにとっても本意ではないはず。・・・それだけ余裕がなかったとも取れますわ。」
稟「しかし、罠の可能性もあります。」
桂花「そうね。」
風「嘘とも言い切れませんが、かといって本当のことだとは言い難いです。」
秋蘭「どうなさいますか、純様。沛に向かうのですか?」
純「ああ。陳珪には借りも多いし、陳登はこれからの陳留に欠かすことの出来ねー人材だからな。」
華琳「ええ。純の言う通りだわ。」
桂花「反対です。我が軍は既に連戦に連戦を重ね、疲弊の極みにあります。何より行軍に必要なだけの糧食がありません。」
稟「私も桂花の意見に賛成です。一度陳留に戻り、準備をしてから出陣すべきかと。」
風「風も同じ意見です~。」
栄華「私も、お三方の意見に賛成ですわ。」
桂花「陳珪は朝廷との癒着の証拠も多く見つかりましたし、罠の可能性も否定出来ません。ここから無理に兵を動かす事も計算の上で、どこかで待ち伏せている可能性すらあります。」
春蘭「・・・まさか、黄巾党と戦っている官軍と結託しているなどとは言わんよな?」
稟「流石にそこまではないと思いますが・・・せめて、沛城襲撃の裏付けを取ってからの出陣を提案致します。」
華侖「んー。でもそんな事してて、間に合うんすか?」
香風「・・・たぶん、無理。」
華侖「え、それじゃ意味がないっす・・・。」
華琳「意味がないわけではないわ。少なくとも、救出に向かったという事実は出来るもの。・・・間に合うかどうか別としてね。」
純「しかし姉上・・・」
華琳「分かってるわ。ただ、あなたでも分かると思うけど、私達も万能ではないの。届く手の長さは決まっているし、手で掬える大きさにも限りがある。」
そう言って、華琳は少し離れている純に向けて手を伸ばしたが、純の所には届かなかった。
純「姉上・・・。」
純も手を伸ばしたが、指先さえ触れる事は出来なかった。
その時
季衣「なら、華琳様、純様・・・お願いがあります。」
季衣が華琳と純に声を掛けた。
華琳「何?」
純「どうした?」
すると
季衣「僕を、沛国に行かせて下さい。」
そう言った。
春蘭「・・・季衣。お前、またか!」
季衣「あの砦の一番高い所に旗を立てたら、ご褒美があるんですよね?だったら僕、あの人達を助けに行きたいです。」
華琳「・・・。」
純「・・・。」
季衣「華琳様と純様の手が届かないなら、僕が一緒に伸ばします。」
そう言って、季衣は華琳の手を取り、自身も一杯まで手を伸ばし、純に、反対側の手を伸ばしてきた。
季衣「華琳様と純様に掬えないものは、僕もお手伝いします。」
その時、純は季衣に手を伸ばした。すると、季衣はしっかりと純の手を握りしめたのだった。
季衣「ほら。これなら華琳様の手は、純様に届きます。だから・・・」
しかし
桂花「ダメよ。季衣だって、ここに来るまでどれだけ戦ったと思ってるの。それにいくら黄巾の連中が雑魚ばかりでも、季衣一人が行ったところで・・・」
栄華「何より、もう食料がありませんのよ。せめて、こちらに向かっている輸送部隊と合流して、補給を済ませてからでないと。」
桂花と栄華が反対したのであった。しかし季衣は
季衣「それじゃ間に合わないかもしれないんでしょ!それに、その食べ物はあの街の人達のものなんだから。」
そう言ったのだったが、季衣の腹が鳴り
栄華「・・・ほら。今の私達は、その空腹を満たすのが精一杯ですのよ。」
と栄華が言った。
季衣「だ、大丈夫だよ。お腹が空いてるのも、絶対に我慢するから!うぅ・・・お腹なんか減ってない、減ってない・・・。」
華琳「・・・純、あなたならどうするかしら?」
純「俺ですか?」
華琳「ええ。この軍を率いているのはあなたよ。将兵は勿論、私もあなたの命令に従う。あなたの判断に任せるわ。そしてその判断を、私は信じるわ。」
その発言に
純「そうですね・・・。」
純はそう言って、腕を組んで目を閉じた。すると
季衣「純様、助けに行きましょう!」
桂花「ここは公正な判断を・・・純様!」
稟「何とぞ、純様!」
風「・・・。」
栄華「お兄様!」
柳琳「お兄様!」
春蘭「純様!」
香風「純様。」
華侖「純兄!」
皆が一斉に純に目を向けた。
純「・・・。」
そして、純は沈黙の後、目を開き
純「沛国の救援に向かう!皆、強行軍となるから、大至急出撃の準備をせよ!ついて来れなかった者は置いていくぞ!」
そう言った。
全員「「「はっ!!」」」
純「栄華!お前は本隊から先行して、沛国に向かう進路上にある郡や県に声を掛け、糧食を貸して貰ってこい!」
栄華「承知致しましたわ!」
稟「でしたら純様。移動する際、武器鎧は傷めてあるのを装備させて下さい。それの方が、沛国に向かう進路上にある郡や県に声をかけやすくなります。」
純「分かった。お前の策を使おう。なら各自、行動を開始しろ!」
全員「「「はっ!!」」」
そうして、陳珪救出のための準備を始め、出撃したのであった。