恋姫無双〜黄鬚伝〜(リメイク)   作:ホークス馬鹿

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25話です。


25話

洛陽・朝廷

 

 

 

 

買駆「ほら、月。急いで!もう軍議、始まってるよ!」

 

董卓「ま、待ってよ・・・詠ちゃん。」

 

買駆「ただでさえ月はアイツに覚えが悪いんだから。・・・多分、言い訳も聞いて貰えないよ。」

 

董卓「でも、豫州からの報告だよ。ちゃんと聞いておかないと。」

 

買駆「そうだけど、理屈が通じる相手じゃないでしょ。」

 

董卓「それは・・・。・・・あ。」

 

その視線の先には

 

朝廷役人A「・・・おのれ、成り上がりの肉屋風情が。天子様のお気に入りだからと言って、あの態度・・・いい加減目に余るわ。」

 

朝廷役人B「全くだ。とはいえ、今の都で生き残るにはあれに睨まれてはどうにもならん。・・・次は賄の額を増やすしかあるまいて。」

 

朝廷役人A「如何ともしがたいが・・・。だがこれ以上税を増やせば、足元もうるさくはならんか?」

 

朝廷役人B「なに・・・その時は何と言ったか、あの黄色い布を巻いた」

 

朝廷役人A「黄巾党とか呼ばれておる連中か。そうだな、こういう時にこそあれらに責を押し付ければ良いか。」

 

朝廷の役人達がとある人の陰口等を話していた。

そこへ

 

董卓「・・・ご機嫌よう。」

 

董卓が挨拶した。

 

朝廷役人A「お、おお・・・これは董仲穎様。買文和殿まで連れて、どうなされた。」

 

董卓「これから、中郎将の軍議がありますので。」

 

朝廷役人B「さ・・・左様か。・・・あの、先程の言。」

 

董卓「はて。私は何も聞いておりませんが?」

 

朝廷役人B「そ、そうであったの。・・・いやはや、そうであった。では、我々はこれにて。」

 

そう言い、役人達は逃げるように去って行った。

それを見た買駆は

 

買駆「まったく・・・腐りきった連中だね。どうせこの後、僕達の事も散々陰口を叩くんだよ。」

 

そう言ったのだった。

 

董卓「構ってても仕方ないよ。ほら、早く行こう。」

 

 

 

 

 

董卓「申し訳ありません、遅くなりました!」

 

何進「何をしていた、董仲穎。」

 

董卓「はい。ちょうど豫州に出した部隊からの報告が届いておりまして・・・大将軍の何進殿のお耳にも入れるべき事かと。」

 

何進「そのような田舎の些事と、此度の軍議とどちらが大切か。」

 

この言葉に

 

買駆(何だよ、豫州に出兵するよう指示したのはアンタだろう・・・)

 

買駆は怒りを覚えた。

その時

 

??「・・・傾、構わぬ。」

 

何進「・・・はっ。」

 

ある者が何進を止めた。

 

董卓「え・・・?」

 

買駆「ちょっと、どういう事・・・!?どうして・・・どうして・・・」

 

何進「ほれ、貴様ら。もう良い、早く席に着かんか。」

 

その者は

 

何進「天子様の御前であるぞ。」

 

霊帝「・・・」

 

霊帝だった。

 

董卓「どうして天子様が・・・このような、中郎将の集まりに。」

 

董卓のこの疑問に

 

何太后「妾がお誘いしたのよ。たまには、貴女達がどのような働きをしているかを見るのも良いでしょう?ねぇ、空丹様?」

 

霊帝「・・・うむ。」

 

何太后「それを姉様にお話ししたら、快く聞いて下さいましたの。」

 

何皇后がそう答えた。

 

何進「うむ、可愛い瑞姫の頼みだからな。聞かぬわけにはいくまいて。」

 

何太后「さ、妾達の事は気にせず、軍議とやらをお続けになって下さいまし。そちらの貴女達も、気を楽にね?」

 

買駆(天子様がご覧になる会議で気を楽になんて、そんなの出来るわけないでしょ・・・!)

 

これに、買駆は心の中でそう思っていた。

 

皇甫嵩「さ、董卓殿。こちらに。」

 

董卓「ありがとうございます、皇甫嵩殿、蘆植殿。」

 

蘆植「私も報告は受けなければならなかったのに、ごめんなさい。」

 

董卓「いえ、構いません。・・・それで、お話はどこまで?」

 

何進「うむ。各地の黄巾党の動きと対応について話していたのだ。そちらはどうだ、董卓。」

 

買駆(だから、その報告を受けてたんだよ・・・)

 

董卓(詠ちゃん、抑えて・・・)

 

何進「董仲穎!」

 

董卓「・・・はっ。現在、豫州南部に派遣した私と蘆植殿の合同軍は、作戦を遂行中。間もなく豫州から、予定通り揚州北部に賊を追い出せる見込みです。」

 

何進「そうか。此度は上手く行っているようだな。結構結構。」

 

董卓「とはいえ今回の作戦は、冀州から戻ってすぐの急な出陣だったため、現時点でも兵の損耗は大きく・・・」

 

何進「・・・何だ?よもや、増援が欲しいと申すか?それとも、今さら作戦の延期をしたいとでも?」

 

これには

 

董卓「そ、それは・・・」

 

董卓は言葉が詰まった。

 

買駆(・・・天子様を呼び出したのはこのためか!くそっ。)

 

これに、買駆は何故霊帝がこの場にいるのか全てを察した。

 

その時

 

劉協「あ、あの・・・」

 

霊帝の隣にいる妹劉協が何かを言おうとしたが

 

何太后「・・・白湯様。今日の妾達は、見学しているだけですのよ。黄のように、大人しくしていらっしゃいませ。」

 

趙忠「・・・ああ、陛下。凜々しいお顔もお素敵です。」

 

何太后にそう言われ

 

劉協「あぅ、あぅぅ・・・」

 

劉協は何も言えなかった。

 

何進「やれやれ、涼州の田舎者と老いぼれではそれが限界か。冀州での汚名をそそげるよう、せっかく余が挽回の機会をくれてやったというに・・・期待外れも甚だしいな。」

 

董卓「・・・。」

 

すると

 

皇甫嵩「何進殿。涼州の田舎者という言い草。私としては聞き捨てなりませんが。」

 

皇甫嵩が何進に対して鋭い目をして言った。

 

何進「おお。そうであったな、皇甫嵩。そういえばお主も涼州生まれであったか。」

 

何進「だが同じ涼州生まれでも、皇甫嵩は苑州州牧の曹なにがしと見事に連携を取り、恙なく賊の拠点を落としたというのにな。」

 

何進「その曹なにがしの弟の『黄鬚』とよく組んで戦で功を上げ、青州でも久方ぶりに再会したというしな。」

 

董卓「・・・。」

 

皇甫嵩「・・・。」

 

何進「冀州では袁本初殿の足を引っ張り、作戦を失敗寸前まで追い込んだというではないか。何か言い逃れの言葉はあるか?」

 

買駆(・・・ッ!)

 

董卓「いえ・・・弁解の言葉もありません。」

 

蘆植「先程の仲穎殿の申し出は取り消しますわ。今ある戦力をもって、見事作戦を遂行してご覧に入れましょう。」

 

何進「当然である。天子様の軍を預かる中郎将として、共同作戦を提案してきた揚州の袁公路殿にも、恥ずかしくない振る舞いをするように。」

 

董卓「・・・はい。」

 

何進「次もしくじれば・・・そうだな、幽州あたりはこれから寒くなると聞くが・・・」

 

董卓「・・・。」

 

その時

 

霊帝「傾。」

 

何進「・・・はっ。どうなさいましたか、天子様。」

 

霊帝「朕はこうきんとう、とやらの話をするというからか顔を出したのだけれど・・・。こうきんとうの話は、いつ出るの?」

 

霊帝が意味分からない事を聞き始めた。

 

何進「・・・は?」

 

霊帝「糖、と言うからには甘い物なのでしょう?黄や瑞姫に聞いても知らないというの。ねぇ?」

 

趙忠「申し訳ございません。」

 

何太后「後宮に入った後の巷の流行りは、とんと疎くて。」

 

劉協「・・・あぅぅ。」

 

何進(黄・・・おのれ、天子様に黄巾党がどのようなものか説明しておけと言っておいたのに・・・!それでは、瑞姫に主上を引きずり出させた意味がないではないか・・・!)

 

霊帝「街育ちの貴女なら分かるでしょう。ほら、早く説明してごらんなさい。」

 

霊帝「後・・・こうしゅ、という変な名前の説明もね。」

 

これには

 

皇甫嵩「・・・ッ!」

 

皇甫嵩は怒りの顔を一瞬浮かべ

 

何進「あの・・・主上。畏れながら・・・」

 

何進は言いづらそうだった。

 

霊帝「何?下々の食べ物が口に合わないというなら、味に期待などしていないから構わないわ。一目見て見たいだけだもの。」

 

趙忠「そうですよ。傾、主上様をお待たせしてはいけませんよ。」

 

何進「そ・・・そうではなくて、ですね。畏れながら、黄巾党というのは、巷を騒がせる賊の名前でございまして。」

 

霊帝「あら、そうなの?何それ。」

 

何進「それで、今もその対策に軍議を・・・」

 

霊帝「ならこうしゅ、は?」

 

何進「『黄鬚』と言うのはですね・・・」

 

その時

 

皇甫嵩「畏れながら陛下。『黄鬚』と言うのは、苑州州牧曹孟徳が弟、曹子文の異名であり、虎髭を生やしたような勇者の称号という意味でございます!軽はずみな発言で、私がお慕いしている者の名を変な名前と言わないでいただきたい!」

 

皇甫嵩が怒りの声でそう霊帝に言った。

 

霊帝「あ、ああ・・・す、すまぬな。」

 

これには、霊帝も少し怯えた表情を浮かべていた。それは霊帝だけではなく

 

劉協「・・・あぅぅ。」

 

妹の劉協も同様だった。

 

何進「・・・皇甫嵩。」

 

皇甫嵩「・・・申し訳ございません何進殿。田舎者故、陛下に対して無礼を働きました。」

 

何進「・・・次はないぞ。」

 

皇甫嵩「御意。」

 

霊帝「そ、そのようなものは貴女達で好きになさい。官軍にも各地にも、腕の立つ者はいるでしょう?」

 

霊帝「ああ、麗羽に言えばきっと何とかしてくれるわ。先程も、名前が出ていたようだし。」

 

霊帝「あれも朕の命なら、喜んで動いてくれるでしょう。」

 

何進「は、はい・・・。既に冀州の袁本初殿からも、八面六臂の活躍で賊を退けているとの報を受けております。」

 

霊帝「そ、そうなのね。なら傾、此度の軍議はここまでだな。」

 

何進「は、はっ。」

 

何進「貴様ら、何をそこでぼうっとしておるのだ!天子様が、軍議はもう良いと仰っておいでなのだ!さっさと下がらんか!」

 

董卓「・・・はっ。」

 

買駆「・・・。」

 

蘆植「では、失礼致します。さ、楼杏さん。」

 

皇甫嵩「・・・はい。」

 

 

 

 

 

買駆「あはははは。いい気味だよ、あの肉屋!」

 

買駆「月や風鈴さん達をあんなに悪く言った報いだよ。」

 

軍議が終わった後、買駆は先程の何進の姿を思い出して笑っていた。

 

買駆「けど・・・楼杏さんがあんなに怒るのは初めてだけどね。」

 

皇甫嵩「・・・ごめんなさい。私はかつて曹彰さんとよく賊討伐で一緒だったのよ。それで仲を深めたのだけど・・・変な名前と言われてつい頭に血が・・・」

 

買駆「成程・・・確かに『黄鬚』曹彰っていったら、ここ洛陽は勿論、涼州にもその勇名は轟いてるものね。」

 

皇甫嵩「それはともかく・・・状況は良くはないわよ。」

 

買駆「ええ・・・分かってるわよ。」

 

董卓「詠ちゃん・・・」

 

買駆「だって、月は悔しくないの?天子様の前であんなに言われて。」

 

董卓「それは・・・」

 

皇甫嵩「それより、もっと二人を上手に庇えれば良かったんだけど・・・ごめんなさい。」

 

蘆植「気にしないで、楼杏。」

 

皇甫嵩「もし私が月さんを助けられる事があったら、遠慮なく言ってね。・・・私が出来る事なんて知れてるでしょうけど。」

 

董卓「そんな事ありませんよ。その時は・・・どうかお願いします、楼杏さん。」

 

皇甫嵩「勿論。何でもするからね。」

 

蘆植「ほら、もうそのお話は終わりにしましょう。それより月ちゃん・・・豫州は大丈夫なの?」

 

この質問に

 

買駆「・・・正直、かなり厳しいよ。国庫も陛下の贅沢で圧迫されてるから、地方に出す軍の戦費なんて真っ先に削られちゃうし。」

 

董卓「うん。ただでさえ冀州から戻る間もなくの転戦だから、装備や糧食も、最低限を補給するので精一杯だったし・・・」

 

買駆「揚州側の動きに合わせろって指示に合わせてかなり急ぎの移動になったから、兵の皆にだいぶ無理させてると思う。いくら霞の用兵でもね。」

 

と厳しい表情でそう答えた。

 

皇甫嵩「せめて増援が出せるなら、恋さんに率いてもらえたのに。」

 

買駆「・・・それは、どちらにしてももう間に合わないわね。」

 

蘆植「大丈夫よ。今回の出陣で何かあったら、責任は全部私が取るから・・・安心して。」

 

董卓「風鈴さん、そんな・・・。だったら私が。」

 

蘆植「月ちゃんも詠ちゃんも、これからの朝廷には絶対に必要な子達だもの。あなた達がいなくなったら、それこそ朝廷はあの人の良いようにされてしまうわ。」

 

董卓「風鈴さん・・・」

 

皇甫嵩「そうだ。豫州なら、この間の手紙に応えてくれた曹操が預かってるはずでしょ。今回も話を持っていけば・・・」

 

買駆「それも出してはいるけど、多分間に合わないと思う。」

 

董卓「本当に急だったものね・・・」

 

買駆「あれは思いつきって言うんだよ。」

 

皇甫嵩「・・・そっか。詠さんもいるんだから、手を打っていないはずがないか。」

 

董卓「霞さんも華雄さんも・・・どうか、無事に帰ってきて下さい。」

 

董卓はただ、そう祈るしかなかったのであった。

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