謁見の間
純「・・・とまあ、豫州の黄巾党は平定しました。」
純は、華琳に黄巾党討伐の報告をしていた。
華琳「そう、良くやったわ。」
純「はっ。」
華琳「純。官軍の指揮官は誰だったのかしら?」
純「はっ。張遼です。彼女は董卓将軍の配下です。」
華琳「そういえば、この前の山中の食糧庫を陥とした時の戦、共同作戦だった事にして欲しいと手紙を送ってきた中郎将がそんな名前だったわね。」
それに燈は
燈「あれは皇甫嵩将軍の任務でしたから、それででしょう。皇甫嵩将軍と董卓殿は、同じ閥に属していたはずでしたから。」
そう答えた。
華琳「董卓というのは、どういう人物なの?あの時は恩を恩と解する人物のようだったから引き受けたけれど・・・その口ぶりだと、知っているのでしょう。燈。」
燈「もちろん。董卓将軍は地方豪族の出ですが・・・」
燈「公明正大な人物で、怪異蠢く朝廷の数少ない良心の1つと言えるでしょう。」
燈「そちらに手紙を送ってきた際も、贈り物はほんの手土産程度だったのではない?」
華琳「ええ。大量の賄を持ち込んだなら突き放すつもりだったけれど、手紙の文面も礼を尽くした物だったし、土産の趣味も悪くなかったわ。」
燈「恐らく、その文面で感じた通りの人物よ。ただ、そんな性格だし、朝廷では苦労しているようだけれど。」
純「俺には無理な場所です。息が詰まります。」
香風「・・・賄賂を沢山送った人が、強い。」
華琳「官軍の動きも妙だったし、今後はあちらを援護する場面も増えるでしょうね。純同様。」
純「そうかもしれませんね。」
華琳「ええ。ああ、そうだわ、純。今回の討伐の恩賞だけど・・・」
純「それでしたら、俺の部下にお与え下さい。」
華琳「分かったわ。皆には、相応の恩賞を与えるわ。」
純「ありがとうございます。」
華琳「それでは、他に何か報告すべき意見はある?」
桂花「いえ。朝廷の動きは、私の知人を通じて探らせておきます。」
燈「あちらの監視は、私に預けてもらって構わなくてよ。香風さんも色々知っているだろうし。」
香風「んー。あんまり頼りにされても、困る。」
桂花「結構よ。こちらはこちらでするわよ。」
と桂花は燈に対抗心むき出しだった。
華琳「・・・競いすぎてお互い尻尾を掴まれないようになさい。上に睨まれてもつまらないわ。」
桂花「お任せ下さい!」
燈「ええ、心得ていますわ。」
華琳「黄巾党はこちらの予測以上の成長を続けているわ。官軍は当てにならないけれど・・・私達の民を連中の好きにさせることは許さない。いいわね!」
季衣「分かってます!全部、守るんですよね!」
華琳「そうよ。それにもうすぐ、私達が今まで積み重ねてきた事が実を結ぶはずよ。それが、奴らの終焉となるでしょう。」
春蘭「・・・どういう事でしょうか?」
華琳「いずれ分かるわ。・・・それまでは、今まで以上の情報収集と連中への対策が必要になる。」
華琳「民達の血も米も、一粒たりとて渡さないこと。以上よ。」
そして、その日の軍議は解散となった。
関所
香風「華琳様は、シャン達が見えてる景色が違うんだろうね。」
秋蘭「我々には及びもつかん事を考えていらっしゃるお方だからな。仕方ないさ。」
香風「純様は、華琳様の考えている事を理解できてるのかな?」
秋蘭「純様は、華琳様の考えを理解していないはずだ。あのお方は、そういうのは苦手だからな。」
秋蘭「だが、純様は常に仰っていた。『俺達に出来るのは、分かろうとする事と姉上を信じる事だけだ。だったら俺は、姉上の道をこの武で切り開く』とな。」
香風「・・・凄いね。」
秋蘭「あのお二人は、互いに互いを信頼し合っておられる、ある意味理想の姉弟関係なのかもしれないな。」
香風「・・・間違っていない事は、大体分かる・・・。」
秋蘭「ふっ。そうだな。」
その時
純「何の話してんだ、お前ら。」
純が現れた。
秋蘭「純様、いえ、何でもありませんよ。」
純「そっか・・・。しかし、俺も国境警備の視察か・・・。まぁ、それが正しく行われてんのか確かめるんだけどな。」
秋蘭「はい。しかし、苑州は他より厳しくないはずなんですけどね。」
旅人A「こんにちは、お役人様。」
香風「こんにちはー。」
旅人B「どうも、ごきげんよう。お役人様。」
秋蘭「うむ。」
純「ああ。」
そうやって暫く視察をしていた時だった。
兵士A「捕まえてくれ!関所破りだ!」
という声が聞こえた。
純「秋蘭!」
秋蘭「はっ!!」
それを聞いた秋蘭は、馬にくくり付けていた弓をひょいと取り上げ、つがえた矢を素早く引き絞った。
秋蘭「・・・無理に関など破らねば、この場にいる純様は貴様を受け入れて下さったものを。」
そう言って、秋蘭は関所破りに向けて矢を放った。
関所破り「がっ!?」
その矢は、関所破りの肩にまるでそこに最初から決まっていたかのように吸い込まれていった。
純「おおーっ。お前また腕上げたな。」
それを見た純は額に手をかざしながらそう言った。
秋蘭「いえ、まだまだ純様には遠く及びません。それに聞いたことがあるでしょう、長沙の辺りにはこの倍の距離でも外さない弓使いがいることを。」
純「確かに聞いたことがある。けど、俺の中ではお前が一番だよ。」
秋蘭「ありがたきお言葉。・・・さて、肩ならば致命傷になっていないはずですが。」
そう言って、純達は関所破りに近づいた。
関所破り「うぅ・・・痛ぇ・・・。」
香風「純様、この人・・・。」
純「ああ。しかし、関所に払う金がねーのか、後ろめたいと思う気持ちがあったのだろうな。まあその分、救いようがあるんだがな。」
そう言って、純は関所破りを見ていると
純「ん?」
懐に何かを発見した。
秋蘭「どうかなさいましたか?」
純「こいつの懐に何か入ってる。・・・何だこれは、手紙か?」
そう言って、懐から取り出し、広げて見てみた。
純「これは・・・!」
秋蘭「純様?」
純「これを見てみろ。」
そう言い、純は秋蘭達に見せた。
秋蘭「これは!いきなり情報が転がり込んで来ましたね。」
純「ああ。おい、連れて行け。」
兵士A「はっ。ご協力、感謝致します。」
そう言って、兵士は関所破りならぬ、黄巾党の連絡兵を連れて行った。
純「大手柄だな、秋蘭。」
とその時純は秋蘭の頭を撫でそう直接褒めた。それを聞いた秋蘭の頬は緩みに緩んでおり、非常に幸せそうな表情だったと、後に香風は語っていた。
謁見の間
華琳「大手柄ね、秋蘭。」
秋蘭「・・・はっ。」
桂花「連中の物資の輸送経路と照らし合わせて検証もしてみましたが、敵の本隊で間違いないようです。その後、凪と沙和を偵察に向かわせましたが・・・。」
凪「はい。張三姉妹と思われる三人組も、見受けられました。」
華琳「間違いないのね?」
沙和「うん。三人があの歌を歌って、黃巾の兵士達がみんなでそれを聞いてたの。すっごく楽しそうだったの。」
華琳「・・・楽しそうだった?」
沙和「なの!」
華琳「分からないわね・・・何かの儀式?」
凪「詳細は不明です。連中の士気はやたらと上がっていたようでしたので、戦意高揚の儀式かもしれません。」
華琳「そう・・・。ともかく、この件は一気にカタが付きそうね。」
華琳「動きの激しい連中だから、これは千載一遇の好機と思いなさい。皆、決戦よ!」
そして、皆は出陣の準備をしたのであった。