凪「・・・はぁ。」
城の上で、凪は一人溜息をついていた。
凪「たまの余暇に、何をしているのだろうな?私は。」
彼女は、ある悩みを抱えていた。それは、自身の主でもある、純の事である。最初は、憧れの人の下に仕える時、歓喜の声を心の中で上げた。その時は、自身の武をこの人に全てを捧げようとし、日々の鍛錬に勤しみ、今や黄鬚隊の指揮の一部を任せられるほどになった。
そして、彼を間近で見て、その思いは敬意だけでなく、次第に愛も加わっていき、彼を目で追うようになっていった。しかし
凪(純様には、既に秋蘭様と栄華様がいる。それに稟様も楼杏様も。そのどれもが私とは違って、綺麗で凜々しい方ばかりだ。やはり、私が入り込む隙などありはしない・・・。)
と思い、諦めようと思っていた。けど
凪(でも、駄目なのだ。どうしても、純様を目で追ってしまう。諦めなきゃならないのに。胸が苦しい。私はどうすれば・・・。)
と思い
凪「はぁ・・・。」
また溜息をついた。するとそこへ
真桜「なーぎー。ここにおったんかー。」
沙和「凪ちゃーん。」
凪「真桜・・・沙和・・・」
真桜と沙和が現れた。
真桜「何をしとるん、こんな所で?」
凪「別に何もしていない。そういう二人は何をしている。」
真桜「ウチも沙和も今日は非番やから、息抜きで散策しとったら、凪がそこで黄昏れていたのを見つけて声をかけただけや。」
沙和「なの!」
凪「・・・そうか。」
真桜「それで凪、大将の事やろ?」
凪「・・・。」
真桜「やっぱりな。大将が気にしとったで。」
これに
凪「な・・・!?」
分かりやすく、顔を真っ赤にして驚いた。
凪「何故、純様が・・・!?」
沙和「朝から晩まで溜息ばかりだと、純様でなくても気にするのー。」
凪「・・・純様は何と?」
真桜「ええー。どうしようかなー?」
沙和「なのー!」
しかし、真桜と沙和は互いに笑顔で顔を合わせ、話さなかった。それを見た凪は
真桜「じ、冗談や凪!」
沙和「凪ちゃーん、ごめんなのー!」
閻王を構えて、いつでも攻撃できるよう構えた。
真桜「全く・・・閻王を構えるとはな・・・。」
沙和「怖かったのー!」
凪「お前達が、からかうようなことばかり言うからだっ!!」
真桜「大将と栄華様が情を交わしたのを知って、苦しいんとちゃうんか?」
沙和「なの。」
すると
凪「な・・・!?」
また凪の顔が真っ赤になった。
凪「何故二人がそれを知っている?」
沙和「そんなの、あんな仲良しの姿を見たら、誰だって分かるのー。稟ちゃんも、純様の事愛してるし、楼杏様もなの!」
凪「・・・。」
真桜「大将はホンマに気にしとった。これまで一緒におって分かったんやけど、大将はホンマに将兵の事を考えとる。」
凪「それが純様なのだ。私達臣下だけでなく、一兵卒のことも大事にしておられる。」
真桜「大丈夫や。凪も充分可愛いで。ウチらが保障したる。」
沙和「なの!凪ちゃん、自信持つの!純様は、きっと凪ちゃんの思いを受け取ってくれるの!」
凪「・・・そうだろうか。」
真桜「そうやで!大将は、人の想いを無下にするような人やないやろ。」
凪「・・・そうか。ここで私が躊躇ったら、意味がない。純様の思いを裏切るのと同じ。今から純様の元へ向かう。済まんな、二人とも。」
真桜「何言うてんねや。ウチらの仲やろ。」
沙和「なのー!困ったときは、お互い様なの!」
凪「ああ!」
そう言って、凪はその場を後にした。そして、凪は純の部屋の前に立ち
凪「純様、凪です。入っても宜しいでしょうか?」
と言った。すると
純「凪か。入れ。」
という声が聞こえたので
凪「失礼します!」
と言い、部屋に入った。
純「それで、俺に何のようだ?」
凪「えっと、そのですね・・・。」
その姿は、いつもの凪にしては珍しくしおらしかった。
凪「純様は、秋蘭様と栄華様に稟様、そして楼杏様をどう思ってますか?」
純「好きだよ。俺にとって、かけがえのない存在だ。」
凪「・・・。」
純「けど、最近もう一人決してなくしちゃいけない人を見つけたんだ。」
凪「・・・それは一体・・・。」
純「お前だ、凪。」
凪「っ!!。」
純「俺、お前のことも好きなんだ。一臣下としてだけでなく、一人の女として。」
すると、凪の目から大粒の涙が零れ落ちた。
凪「純様、それは本当ですか・・・。本当に・・・。」
純「ああ。嘘でもない。お前のことも好きだ。」
凪「純様っ!!」
凪は、純の胸に飛び込み、胸に顔を埋めた。
凪「ずっと、我慢してたんです。」
純「?」
凪「純様には、秋蘭様に栄華様に稟様、そして楼杏様がいる。私はあの四人とは違って、綺麗で凜々しくもなく無骨者ですし、なによりこの傷跡。だから、諦めようと思っていました。けど、そう思えば思うほど、純様への気持ちがどんどん強くなってしまい、どうすれば良いのか分からなくなってしまいました。」
すると
純「お前は無骨者なんかじゃねーよ。」
と純は言った。
凪「えっ?」
純「凪は無骨者なんかじゃねー。凪は、俺には勿体ないくらいの魅力を持った女子だ。だから、そう自分を卑下すんなよ。俺が辛い。」
純「それに、その傷跡は友を、仲間を守った傷なんだろ?だったら、それは勲章ものだ。千金の価値に勝るものだ。もし、その傷跡を馬鹿にする奴は、この俺が許さねー。」
そう言い、純は凪の背中に腕を回して、強く抱き締めた。
凪「本当に、私みたいな女でも・・・?」
純「二度も言わせるな。俺は見た目で判断しねーし、凪が俺を好きだって言ってくれた事が本当に嬉しかった。」
凪「はい・・・。」
純の言葉が恥ずかしかったのか、凪は顔を真っ赤にしたのだが、それが嬉しそうにはにかむように笑った。そして
純「凪・・・。ん・・・っ。」
凪「純様・・・。ん・・・っ。」
二人は静かに唇を合わせ、寝台に倒れ込んだのだった。