恋姫無双〜黄鬚伝〜(リメイク)   作:ホークス馬鹿

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52話です。


52話

冀州

 

 

 

 

郭図「袁紹様は四つの州に君臨され、兵糧や資金も充実。兵は百万。将は多数。今こそ、曹操を討伐し、大業を成す絶好の機会です!」

 

郭図「しかし、曹操を討つのは、天子や朝廷の為では無く、あくまでご自身の大業を成す為です。」

 

そう、郭図は今すぐ曹操を討つべきだと進言した。

すると

 

田豊「麗羽様。公孫賛を倒し、幽州を平定しましたが、戦を終えたばかりの兵馬は疲れ果てております。加えて近年、戦続き故、諸州は焼け野原と化しており、民は窮しております。」

 

田豊「郭図殿は、兵糧や資金が十分と申しましたが、それは帳簿の上の数字です。軍用とすべく物資を備蓄するには、少なくとも後三年から五年は要します。」

 

田豊「従って、今は兵を休め、民を養い、国力の回復後に曹操を討つべきと存じます。」

 

田豊は反対し、今は派兵せずに力を蓄えるべきだと進言した。

 

郭図「袁紹様。今の話は、書生の弁です。目下、我が軍は勢いがあり、士気も盛んです。袁紹様のご威光と士気があれば、曹操を討つなどいとも容易い。例えそれは、曹操の弟であり、『黄鬚』呼ばれし猛将曹彰であっても同じ。」

 

郭図「今すぐ挙兵するのです。良いですか、躊躇されてはなりません。」

 

しかし、郭図は怯む事無く挙兵すべきと進言した。

 

田豊「麗羽様。無謀とはまさにこの事です。古より、大業を成した者は、軍備の大きさや城や領地を得る事を誇ってはおりません!大切なのは国力と民力。どれ程豊かな土地と多くの民を持つかが大事なのです!」

 

田豊「戦にあたり必要なのは、国力と民力です!麗羽様は、冀州、青州、幽州、并州を治めておられます。曹操は苑州と淮南の一部のみ。麗羽様の半分にも及びません。」

 

田豊「麗羽様。今は富国強兵に力を注ぎながら静観なさり、三年後に挙兵すれば、その時には泰山が寄せるが如く曹操を圧倒できます!それは、例え『黄鬚』曹彰がいても同じ結果になるでしょう!」

 

それは田豊も同じで、挙兵せず今は力を蓄えるべきと進言した。

 

郭図「袁紹様。今袁紹様は、河北四州を治めておられ、天下におられる諸侯の頂点にお立ちなのです。一方曹操は、力は及ばずとも、他を寄せ付けぬ勢いがあり、『黄鬚』曹彰の存在で謂わば上り調子です。」

 

郭図「更に発展していく為に安定を必要としている時期。袁紹様。もし我らも民力を養えば、上辺は優勢に見えるでしょう。」

 

郭図「しかし本当に有利なのは曹操です!何故なら曹操は、発展するための時間を袁紹様より多く要するのですから。」

 

郭図「袁紹様。今こそが敵と我らの実力差が最も大きな時なのです!これぞ天から賜った絶好の機会!」

 

郭図「よもや袁紹様が、決断を先延ばしにし、静観なさるならば、曹操はその力を増し、果ては袁紹様と肩を並べるでしょう!」

 

郭図「袁紹様。その時には、袁紹様はかつて無いほどの大敗を喫し、滅ぶでしょう。」

 

それを聞いた袁紹は

 

袁紹「決まりましたわ!華琳さんを討ちますわ!今すぐにですわ!」

 

華琳の討伐を決めた。

 

袁紹「良いですわね!雄々しく、勇ましく、華麗に進軍ですわよ!」

 

袁紹「おーっほっほっほ!おーっほっほっほ!」

 

そして、袁家特有の甲高い笑い声が響いたのだった。

 

 

 

 

 

許昌

 

 

 

 

 

 

華琳から袁紹が動いたとの報告を聞いていた霊帝は、その場にいる文武百官に意見を求めた。

 

霊帝「袁紹が、70万の兵馬を率い進軍を開始したわ。そこで聞くわ。皆の者、如何にすべきだと思うかしら?」

 

すると

 

董承「陛下。袁紹は勢いも兵力も絶大です。当面は戦を避け和睦し、機を見て変を待ち、謀をもって制すべきかと。」

 

董承は今は戦を避け、機を見て動くべきと言った。

他の皆も、董承の意見に追随した。

しかし

 

純「我らには、陛下がおられます。陛下のおられるこの許都を襲おうと賊が迫っているのです!何の機を見るべきと?」

 

純「陛下を襲う逆賊を今討たずして、いつ誰が討つのです!俺達が賊に屈するなど、ありえねー事!今すぐに、決戦を挑むべきです!」

 

純「よもや、アンタらは数の多さに恐れをなし、賊に屈するとお考えなのですか!!」

 

純は対照的に徹底抗戦を唱えた。

それは、気持ちが昂ぶり、つい素の感情が出てしまう程だった。

すると

 

「「「戦おう!!!」」」

 

「「「そうだ!!我らが賊に屈するなど、あり得ぬ!!!我らこそが正義だ!!!」」」

 

その場の空気が、和睦から抗戦へと傾いた。

 

華琳「我が弟の言う通りです。我らにこそ大義があります。ただ座して待つだけでは駄目です。今すぐに、逆賊袁紹を討ちましょう。」

 

華琳「弟が、いつでも出陣の準備を終えております。」

 

これに、華琳はそう霊帝に言った。

 

霊帝「それで曹彰。どのくらいの兵を揃えたのかしら?」

 

この質問に

 

純「7万で十分です。」

 

と言った。

これには

 

文官A「7万だと!?」

 

文官B「袁紹の兵は70万と号しているのだぞ!それでは少なすぎる!」

 

殆どの者はざわめいた。

 

霊帝「曹彰。何故それだけなのかしら?」

 

純「陛下。戦で決まるのは数にあらず!兵は数より質であり、将は勇も必要ですが智も必要!将兵の数を競うなら、永遠に袁紹には敵いません!」

 

純「だが、強さで競うなら、麗羽が三人いようとも、この俺には敵いません!精鋭を以て、戦を制すべきです!」

 

と、純は切れ長の目を更に鋭くしながら言った。その際、無意識に少し覇気が出た。

 

霊帝「な、成程・・・素晴らしいわね。」

 

これに、霊帝は少し身体を硬直した。

 

霊帝「なら、三日以内に出陣しなさい。」

 

華琳「では、我が弟に全てお任せ下さい。」

 

その時

 

王子服「曹操殿、お待ちを。あなたの弟君の曹彰殿ばかりに負担をかけさせるのは申し訳ない。ここは、他の者に総帥を任せ、曹彰殿を副将にすべきかと。」

 

王子服がそれに待ったをかけた。

 

霊帝「では、誰が良いと?」

 

王子服「私は、徳が高く忠義に溢れた人物がなるに相応しいかと存じます。」

 

これに

 

華琳「ふっ、徳が高い人物ですと?」

 

華琳は鼻で笑った。

 

呉子蘭「曹操殿。何が可笑しいのです!今の発言が、間違いだとでも?」

 

これに、呉子蘭はそう反発した。

 

華琳「良いですか?逆賊の討伐を、祭祀と勘違いしておりませんか?袁紹は徳が高い相手なら手加減するとお考えか?」

 

呉子蘭「我らは袁紹と比べて弱い!なら、徳の高く忠義が厚い人物が兵を率い、結束を強めてこそ勝算があります!」

 

王子服「呉子蘭殿の言うように、そういった人物で無いと駄目です。董車騎将軍は徳が高く、忠誠心も厚い。董車騎将軍こそ此度の総帥に相応しいかと。」

 

華琳(コイツら・・・)

 

これに、華琳は顔を少し歪めた。

 

霊帝「誰か他に意見のある者は?」

 

朝廷文官A「賛成です。曹彰殿ばかり負担をかけるのは惜しい。ならば、徳が高く忠義が厚い董車騎将軍こそ相応しいです。」

 

霊帝「情勢は急を要するわ。一刻の猶予も無い。」

 

霊帝「なら、こう定めましょう。董車騎将軍に命じる。」

 

董承「はい。」

 

霊帝「そなたに軍の統率を命じるわ。曹彰、あなたは副将として董車騎将軍を支えなさい。呉子蘭と王子服も将として参加せよ。皆で力を合わせ、見事逆賊を討伐しなさい。」

 

これに

 

董承・王子・呉子「「「承知致しました。」」」

 

董承と王子服、そして呉子蘭は拱手した。

 

純「・・・。」

 

純も拱手したが、その目は怒りに燃えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

秋蘭「華琳様。純様。お帰りなさいませ。」

 

栄華「お帰りなさいませ、お姉様。お兄様。」

 

華琳と純の帰りを、秋蘭と栄華が出迎えた。

 

純「・・・姉上。俺は少し部屋へ。」

 

華琳「・・・ええ。」

 

そう言い、純は自身の部屋へ向かった。

 

華琳「・・・秋蘭。栄華。」

 

秋・栄「「はっ。/はい。」」

 

華琳「純の傍にいてやって。あの子、相当頭に血が上ってるから。」

 

秋蘭「・・・はい。私が見る限りでは、かなり怒っているご様子。」

 

栄華「私も感じましたわ。」

 

華琳「ええ。郭嘉も連れて行って構わないわ。だから、傍にいてやって。」

 

秋蘭「はっ。」

 

栄華「分かりましたわ。」

 

そう言い、秋蘭と栄華はその場を後にした。

 

華琳(奴らめ・・・本格的に私達を牽制しにきたわね・・・)

 

華琳(けど・・・私も純も、そう簡単に御せないわよ・・・。特に純、あの子は特にね・・・)

 

その時、そのような事を華琳は思っていた。

秋蘭と栄華は、稟を連れて純の部屋の前の扉に着いた。

すると

 

ガシャーン!

 

秋・栄・稟「「「っ!!」」」

 

部屋の中から何かが壊れた音がした。

 

秋・栄・稟「「「純様/お兄様/純様!!」」」

 

それを聞いた三人は、扉を開けると

 

純「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」

 

純が三人を背にしながら部屋の真ん中に立っており、目にした者全てを殺すような目をしながら振り向いた。その右手にはボロボロに壊れた椅子を持っていた。

部屋の至る所ボロボロになっており、相当部屋の中で暴れたことが分かる有様だった。

 

秋蘭「純様!どうか落ち着いて下さい!!」

 

栄華「お兄様!!」

 

稟「どうか、気を静めて下さい!!」

 

それを見た三人は、すぐに駆けつけ、秋蘭は純の背中を抱き締め、栄華は純の右手を、稟は純の左手を握ってそう必死な声で言った。

 

純「・・・お前ら。」

 

これに、純は幾分か落ち着きを取り戻し、右手に持っていた椅子を落とした。

それを見た秋蘭達三人は、ホッとした表情を浮かべた。

 

純「今回の麗羽の討伐、俺は総帥じゃねー。」

 

秋蘭「そんな・・・!?」

 

稟「・・・誰なのです?」

 

純「董承だ。」

 

それを聞いた稟は

 

稟「・・・成程。これは曹操殿と純様らの派閥に対する牽制です。」

 

そう冷静に言った。

 

栄華「稟さん。どういう事ですの?」

 

稟「今、内政面でも軍事面でも実績を残しておられるのは曹操殿と純様です。それらを見て、古くから漢に仕えている董承らの派閥は面白くないのでしょう。」

 

秋蘭「だから、今回の袁紹討伐では、董承を総帥に据えたという事か。」

 

稟「はい。」

 

栄華「しかし、そんな理由でお兄様を総帥に据えないなんて・・・!」

 

秋蘭「余程気に入らぬのだろう。」

 

純「フンッ!ふざけやがって!」

 

稟「純様。お怒りはご尤もです。しかし、今は袁紹との対決前です。そのお怒りは、全て戦場で晴らすのです。」

 

稟「そして、我らにもその怒りを分かち合って下さい。」

 

そう、稟は純に言った。

 

純「・・・分かった。この怒りと屈辱、戦にて晴らしてやる。」

 

すると、純は少し落ち着きを取り戻した。

 

秋蘭「純様・・・」

 

栄華「お兄様・・・」

 

稟「ふぅ・・・」

 

それを見た秋蘭と栄華は、柔らかい笑みを浮かべ、稟はホッとした表情を浮かべた。

 

純「さて。秋蘭、稟。出陣の支度をしろ。栄華、姉上を頼むぞ。」

 

秋・稟「「御意!!」」

 

栄華「はい、お兄様!」

 

そう、秋蘭達は拱手した。

 

凪(純様・・・そのお気持ち・・・私も共有致します・・・)

 

楼杏(純さん・・・私も・・・)

 

その時、扉の前で凪は拳を握り締めながら、楼杏は胸に手を当てながら決意を固めていたのであった。

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