背後を襲おうとした劉備軍を撃退したとの知らせは、純にも届いた。
純「ほお?俺達の背後を襲おうとした劉備らを、華侖が撃退したと。」
これに
春蘭「おお!流石華侖だ!!良くやったな!!」
春蘭は自分の事のように喜んだ。
純「はは。お前は華侖を可愛がってるからな。」
春蘭「はい!!」
霞「しかし劉備の奴、油断も隙もあらへんなぁ~。」
稟「いえ。これは諸葛亮の考えも汲んでいるかと。」
剛「諸葛亮の?」
稟「はい。恐らく我らを襲い純様を討ち取って、その勢いで許都を攻め、曹操殿を討ち天子様を自らの手に取り、大業を成すお考えです。」
秋蘭「何と・・・!?」
楼杏「臥龍と謳われた諸葛亮とは思えない随分と杜撰な策ね。」
哲「そうだな。」
風「稟ちゃん。諸葛亮さんの策を読んでいたのでは~?」
風の質問に
純「そうなのか?」
純は尋ねた。
稟「はい。なので、撃退を考えておりましたが、華侖様が良くやりましたね・・・」
これに、稟は怜悧な顔を崩さずに眼鏡を指でクイッと上げて言った。
風「おお~!稟ちゃんが誰かを褒めるなんて、珍しいですね~!」
稟「失礼な!私だって褒める時は褒めますよ!」
霞「いや稟。お前・・・普段滅多に褒めないって兵の間でももっぱらやで。」
純「まあ。お前は『鉄の軍師』って兵達から恐れられてるからな。」
稟「じ、純様まで!」
純「ははは!さて、これで麗羽との戦に集中できる。官渡まであと少しだ!気合入れてけよ!」
「「「はっ!!!」」」
稟「その際ですが皆さん、私に策があります。耳をお貸し下さい。」
この時、稟は皆に何か話し合っていた。
そして、遂に純率いる曹彰軍と麗羽率いる袁紹軍が向かい合ったのだった。
官渡
馬上で、純は目を瞑っていた。
その時
秋蘭「純様!」
秋蘭が馬を駆け現れ
秋蘭「申し上げます。官渡までの距離は二十里。袁紹軍は既に山腹に陣を構えています。」
そう伝えた。
純「麗羽の軍はどっちを向いてるんだ?」
秋蘭「西を向いております。」
この回答に
純「・・・。」
純は西日を見た。
そして
純「稟。」
稟「はっ!」
純「お前から聞いた例の作戦を実行させて貰うぞ。」
稟「はっ!」
稟にそう言った。
純「秋蘭。」
秋蘭「はっ!」
純「俺はこれから茶を振る舞っとくから、陣を敷け。」
秋蘭「はっ!」
秋蘭「姉者!霞!」
春・霞「「おう!」」
秋蘭「急いで鉄騎四万を率いて、後方から奇襲を掛けろ!」
春蘭「うむ!!」
霞「了解や!!」
秋蘭「凪!真桜!沙和!」
凪「はっ!」
真桜「はい!」
沙和「はいなのー!」
秋蘭「発石車と共に中軍を守れ!」
凪「御意!」
真桜「了解や!」
沙和「なのー!」
秋蘭「剛!哲!」
剛・哲「「ここに!!」」
秋蘭「長槍隊と盾隊を率い、先鋒へ!」
剛・哲「「はっ!!」」
秋蘭「楼杏殿!」
楼杏「はい!」
秋蘭「私と共に弩弓隊を率い、敵の前線を狙います!」
楼杏「ええ!」
秋蘭「出陣!!」
そして、秋蘭の号令の下、皆それぞれ兵を率いて行動を開始した。
暫くして、戦場の中央にて、純が椅子に座りくつろいでいた。
その姿を
袁紹「純さん・・・何をやってますの?」
郭図「私にもサッパリ・・・」
文醜「あたしもさっぱりだぜ・・・斗詩~。」
顔良「私に分かるわけ無いでしょう・・・」
袁紹軍の面々は首を傾げていた。
すると、純の兵が袁紹軍に向かって馬を駆け
曹彰軍兵士A「曹彰様が、『お茶をご一緒に』と申しております。」
と袁紹に伝えた。
袁紹「我が軍の勝利は確実。恐らく純さんは、私に大切な事を伝えようと思い、あのように席を用意したはずですわ。」
袁紹「私は行きますわ!全軍、くれぐれも攻撃なさらぬように!」
そう言い、袁紹は純のいる場所へ向かった。
近付くと、純は立ち上がり
純「麗羽。息災で何よりだ。」
と端整な顔に笑みを浮かべた。
袁紹「お気遣い、感謝致しますわ。日を追うごとに、健やかになっていきますわ。」
純「そうか。」
袁紹「純さんこそ、ご活躍を耳にしますわ。相変わらずお強いですこと。」
純「どうも。」
すると、純は席の埃を払い
純「麗羽。どうぞ。」
袁紹に先に座るよう促した。
袁紹「純さん。あなたは王師の総帥ですわ。あなたが先にお座りなさいな。」
これに、袁紹はそう純に先に座るよう促すが
純「はは。良いんだ。お前は俺と姉上の一つ上だ。年長者を敬うのは当然だろう?さあ。」
そう、純は袁紹を促した。
これに
袁紹「分かりましたわ。」
袁紹は先に座った。
それを見た純は、盃に茶を入れ向かい合って座った。
純「俺らも随分、なげー付き合いだ。幼い頃から姉上と共に親密だった。」
純「お前はよく俺と一緒に姉上に連れられ、洛陽中を遊び回ったな。」
純「昼は俺が主導して鷹狩りに興じ、夜は騒いで、本当に痛快な日々だったな。」
純「お前は言ったな。『このままずっと、子供のままなら楽しいはずですわ。』と。」
すると、純はかつての思い出を袁紹に言った。
袁紹「・・・そうですわね。」
これには袁紹も、少し感慨深い表情を浮かべていた。
純(ああ・・・早く戦をしてー。戦場のあの匂いを嗅ぎてー。けど稟の策に従わねーとなんねーんだよなあ・・・。ああ・・・メンドクセー。)
この際、純は早く戦がしたくうずうずしていた。
袁紹「純さん、何か言いたそうですわね。構いません、仰いなさい。」
これを見た袁紹は、純に発言を促した。
純「・・・麗羽。今この時期に70万の兵を率いてきたのは、本当に賢いな。」
袁紹「あら?突然なんですの?」
純「いや。この戦があと五年遅かったらよ、必ず俺達が勝つと姉上が言ってたんだ。」
袁紹「フフッ・・・五年も待てませんわ。」
すると
袁紹「純さん。悪い事は言いませんわ。降伏なさって下さいな。私は、あなたの命を奪う事は致しませんわ。」
そう、袁紹は純に降伏を促した。
純「麗羽。俺は曹軍の全将兵の思いを背負っているんだ。その思いを無駄にしたら、アイツらはどうなる?」
しかし、純は降伏を拒否した。
袁紹「純さんらしいですわ。けど、華琳さんはどうですの?」
純「姉上は、お前に和睦を求めていたぞ。」
袁紹「あら?私とですの?」
純「ああ。だが俺は反対した。和睦するなら、いっその事一暴れしてからが良いと思った。」
純「だが俺は武人だ。武人は主の命には従うしかねー。」
そう、純は苦い顔をした。
純「それでな、俺は姉上に言われたんだ。麗羽にこう伝えろと。」
袁紹「何ですの?」
純「もし撤退したら、苑州だけを手元に残し、その他の領地をお前に差し出すとな。」
純「また今後とも、お前と二度と争わねーともな。」
これに
袁紹「・・・そうですの。」
袁紹は完全に信じ切った顔を浮かべていた。
この二人の会談を
郭図「フッ・・・『黄鬚』曹彰も、所詮は噂か・・・」
郭図「あのように諂うなど・・・姉の曹操同様、袁紹様の敵では無いわ・・・」
郭図は勝利を確信したような笑みを浮かべていた。
そして
袁紹「じゃあ、純さん。華琳さんにお伝え下さい。あなたの条件、全て受け入れると。」
純と袁紹の会談は終わりに向かった。
純「そうか。これで、姉上も民も救われる。」
そう純が言ったその時、純は姿勢を崩した。
純「フフッ・・・ははは!」
これに
袁紹「え・・・純・・・さん?」
袁紹は状況が呑み込めなかった。
それを余所に
純「麗羽。テメーは本当に馬鹿だな!姉上がテメーなら、和睦を求めたりしねー!それは俺も同じだ!」
純「俺達が生きている限り、俺達が必ず勝つからだ!」
そう、純は袁紹に言い
純「ははははは!」
後ろから駆けてきた馬に颯爽と乗り、自らの陣営に戻ったのだった。
その時
袁紹軍兵士A「袁紹様!早くお戻りを!」
袁紹軍の兵が、そう袁紹に言った。
袁紹「何ですの!」
袁紹軍兵士B「今すぐ本陣へ!敵に奇襲を掛けられました!!」
袁紹「何ですって!!」
これに、袁紹は驚き、急いで自らの陣営へ戻った。
陣営に戻った純は
純「これで良いんだな、稟?」
稟にそう聞いた。
稟「はい。実に見事な演技でした。」
これには、稟も素直に純を褒めた。
純「・・・そうか。春蘭も良い時機に奇襲を仕掛けたな。」
稟「はい。純様、皆に号令を。」
純「ああ。」
純「テメーら!待ちくたびれたな!俺も待ちくたびれた!いよいよ戦が始まる!向こうの数は圧倒的だ!けど、奴らは黄巾と同様、ただ数が多いだけの烏合の衆だ!」
純「血と涙に培われた訓練を思い出せ!俺と共に戦ったこれまでの戦を思い出せ!あそこで培われた経験と強さを持ってすれば、この程度の相手に負ける理由などねー!」
純「『黄鬚』曹彰と共に、敵を撃退するぞー!!テメーら、存分に暴れやがれ!!」
そう、純は馬上で太刀を抜いて覇気を前面に押し出して叫んだ。
こうして、官渡の戦いの、河北の覇者を決める決戦が始まった。
純の覇気溢れる力強い声を聞いた秋蘭は
秋蘭「弩弓隊!」
秋・楼「「放てー!!」」
楼杏と共に矢を放つ指示をした。
その声を聞いた弩弓隊は、一斉に弓を構え、矢を放った。
その矢は、西日の影響で袁紹軍の兵士は眩しくて良く見えず
「「「うわーっ!!!」」」
「「「ギャー!!!」」」
一斉に矢の餌食になった。
それでも、曹彰軍の弩弓隊は間髪無く矢を放った。そんな中で
凪「真桜!」
真桜「おう!いつでもええでー!!」
凪「うむ!沙和!」
沙和「了解なのー!みんなー!てーなのー!」
三羽烏率いる発石車も一斉に放ったため、袁紹軍の被害は更に増していった。
文醜「クソー!!こうなったら、突撃だー!!」
これに、文醜は我慢出来ず突撃し
顔良「ま、待ってよ文ちゃーん!」
顔良も慌ててそれに続いた。
秋蘭「盾隊!前へ!」
それを見た秋蘭は、哲率いる盾隊に前に出るよう指示をした。
哲「皆、恐れるな!敵を食い止め、足が止まったら一気に突け!」
「「「おおーっ!!!」」」
そう、哲は指示をした。そして、一斉に袁紹軍が近付くと
「「「ギャー!!!」」」
すぐさま槍を繰り出し、袁紹軍を突き殺した。
袁紹軍の中にも、盾隊を一部突破し
「「「うおおおっ!!」」」
「「「ギャー!!!」」」
「「「う、うわああああっ!!」」」
激戦となったが、兵の質にはやはり差があり、袁紹軍の被害は増していった。
そんな中、春蘭と霞率いる鉄騎四万が袁紹軍の後方に再び現れたのであった。