恋姫無双〜黄鬚伝〜(リメイク)   作:ホークス馬鹿

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64話です。

今年最後の投稿です。

どうぞ。


64話

華琳の屋敷

 

 

 

 

 

 

華琳「純。今回の麗羽との戦、本当にご苦労だったわ。」

 

純「ありがたきお言葉。しかし、先程も申したように、全ては皆のお陰です。俺はただ、この太刀を振るったに過ぎません。」

 

そう、純は腰に帯びている太刀を取って華琳に言った。

 

華琳「そう・・・河北四州全て平定したら、次は南よ。今後とも、その軍才と武勇を頼りにしてるわ。」

 

純「はっ!」

 

華琳「今日は、ゆっくり休みなさい。」

 

そう言い、華琳は優しい笑みを浮かべながら背伸びして純の頭を撫でた。

 

純「あ、姉上・・・いくら何でもこれは・・・!」

 

華琳「構わないじゃない。あなたは私にとって、いつまでも可愛い弟よ・・・」

 

純「・・・分かりました。」

 

そう言い、純は暫く身を任せた。

そして、一通り堪能した華琳は、純を帰したのだった。

そのまま一人になった華琳は

 

華琳(フフッ・・・何だか・・・昔を思い出すわ・・・)

 

まだ父の曹嵩が存命だった時の事を思いだした。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

この日、曹嵩自ら軍を率いて出陣し、賊を討伐した。

その際、賊の中で一部の幹部を裏切らせ、その者の策のお陰で戦に勝てた。

加えて、この頃純の異名である『黄鬚』が定着し始めていた時期であり、純の暴れっぷりを見た賊が戦意喪失したほどだった。

 

「「「曹嵩様。此度の勝利、誠におめでとうございます!!!」」」

 

曹嵩「うむ。これも皆のお陰だ。」

 

その時

 

デク「おい曹嵩様よう~。この俺がいなかったら、賊の平定など、無理だっただろうよう~。」

 

投降した賊の一人のデクが、ぞんざいな言葉遣いで曹嵩に言った。

 

これには、春蘭や秋蘭、華侖に柳琳と栄華は眉間にしわを寄せていた。

 

華琳「・・・。」

 

華琳は、それらとは対照的に冷静な表情を浮かべていた。

 

曹嵩「うむ。お主のお陰で、此度賊を討ち滅ぼせた。」

 

デク「俺の手柄を忘れんじゃねーぞ。」

 

曹嵩「分かっておるわ。さあ、下がって休め。」

 

そう言い、デクを下がらせた。

 

純「・・・。」

 

その際、純はぞんざいな言葉遣いをしたデクを誰よりも怒りの目で見ていたのだった。

下がった後も、デクの態度は崩れなかった。

 

デク「フンッ!あの曹嵩ときたら、随分と甘いな・・・。」

 

デク「確かに今回の勝利はこの俺様のお陰だ。しかし、俺みてーな賊を許し、褒美を与えるなど、どこまでも馬鹿な奴なんだ。」

 

それどころか、酒を飲みしたたかに酔っ払った状態で曹嵩の悪口を言っていた。

 

チビ「や、やめた方が良いですぜ兄貴!この事が耳に入ったら、殺されちゃいますぜ!」

 

これには、この賊の仲間であろうチビが止めていたが

 

デク「フンッ!何ビビってんだよ!あの程度の爺、俺でも殺せるぜ!」

 

デク「加えて、曹嵩の身内ときたら、スッゲえ美人だし・・・!あの女どもを片っ端から物に出来るんだぜ!」

 

聞く耳を持たなかった。

すると、この話を偶然聞いていた者がいた。

 

純「・・・。」

 

その者は純で、後ろの兵を手で抑え

 

純「行くぞ。」

 

馬を走らせた。そして

 

ビシッ!

 

デク「うわっ!?」

 

デクが乗っていた馬の尻を叩き、落馬させた。

立ち上がると、その近くには純が怒りの表情を浮かべており

 

デク「この匹夫が!何をしやがる!」

 

これに、デクはそう怒鳴った。

 

純「テメーみてーなクソ野郎は、我が軍に相応しくねーんだよ!」

 

純もそう言うと

 

デク「我が軍に相応しくないだと?曹嵩に聞いてこい!この俺様がいなかったら、テメーみてーな猪武者が今回の戦に勝てたかどうか!」

 

デクもそう返した。

すると

 

純「よく聞け。また父上と俺の大切な人の暴言を吐いてみろ・・・その首を刎ねてやるぞ・・・」

 

純は馬上でそう脅した。

 

デク「はっ!何をぬかしやがる!テメーみてーな猪武者など話になんねー!曹嵩を呼んでこい!」

 

デク「後ついでに、先程一緒にいた者達も一緒にだ!皆の前で、頭を下げさせてやる!」

 

デク「それとも、俺様の首が欲しいのか?」

 

そう言うと

 

デク「やれるもんならやってみやがれ!腕に自信があるなら刎ねてみやがれ!テメーの父親に褒美が出るぞ!」

 

デク「ほら!度胸があるならやってみろ!」

 

首を差し出して挑発した。

 

デク(フンッ・・・どうせビビって斬れねーよ・・・)

 

そう思ったその時、純は太刀を抜き

 

純「フンッ!!」

 

デク「っ!?」

 

ズバッ!

 

デクの首を刎ねた。

 

純「このクソ野郎が・・・」

 

そう、純は首を見て言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

曹嵩「此度の純は、実に見事じゃ。『黄鬚』という異名に相応しい。」

 

華琳「はい。私など、足元にも及びません。」

 

華侖「ねえ柳琳、『こうしゅ』って何すか?」

 

柳琳「『黄鬚』っていうのは、虎髭を生やした勇者っていう意味よ。」

 

華侖「おお!!つまり純兄は、虎みたいに勇敢で強いって事なんすね!」

 

柳琳「ふふっ・・・そうよ。」

 

春蘭「はは!流石純様だ!私も負けてはおれん!」

 

これには、華侖と春蘭は目を輝かせた。

 

秋蘭「・・・。」

 

栄華「・・・。」

 

しかし、秋蘭と栄華は少し憂いの表情を見せた。

 

春蘭「ん?どうしたのだ二人とも?」

 

華侖「どこか具合が悪いっすか、栄華?」

 

秋蘭「いや・・・大丈夫だ姉者。確かに純様はその異名に相応しい力を持っている。私は常に純様と共にいたからな。」

 

栄華「私も、お兄様の実力は知っておりますわ。ただ・・・」

 

曹嵩「お主達が気にしておるのは、純の気性の荒さじゃろう?」

 

秋蘭「・・・はい。」

 

栄華「そうですわ・・・曹嵩様。」

 

曹嵩「確かに、彼奴は血の気が多い。すぐにカッとなって剣を抜いてしまう事もある。血気盛んと血の気が多いは大いに違う。あの気性を上手く抑えれたら、勇猛果敢な全軍の総帥になれるはずじゃ。」

 

華琳「そうですね・・・以前私塾で私達を侮辱した者を、純は怒りに身を任せ、殴りに殴って怪我をさせましたから。」

 

華琳「もし私が止めなければ、今頃あの者は死んでおりました。」

 

曹嵩「うむ・・・」

 

そう考え事をしていると、純が布に包まれている物を持ってきて現れた。それは、一部が血で染まっていた。

曹嵩の前に立つと、純はそれを投げ捨てた。

 

曹嵩「純よ、また問題を起こしたのか?」

 

これに、曹嵩はそう尋ねると

 

純「コイツは父上の温情で命を救われ功を立てたにもかかわらず大勢の前で父上やこの場にいる皆を侮辱しました!黙らせようとしたら首を刎ねてみろと挑発してきたのです!故に、一太刀に斬ってやりました!斬らねば我が名が廃ります!」

 

純は怒りの表情で曹嵩に言った。

それを、華琳は眉間にしわを寄せながら見ており、他の皆は絶句していた。

すると、曹嵩は立ち上がって

 

曹嵩「この者を斬ったというのか?」

 

と指を指して言った。それに純は、負けじと睨み返した。

 

曹嵩「忘れたか!此奴は此度の戦で殊勲を立てたのだぞ!その者を斬ったのか!」

 

この曹嵩の怒りに

 

純「首を差し上げます!」

 

と言った。

それを聞き

 

曹嵩「よくぞ申した!即刻純の首を刎ねよ!」

 

曹嵩はそう兵に命令したが

 

曹軍兵士A「し、しかし曹嵩様・・・!」

 

曹軍兵士B「曹彰様は我らにとって家族同様・・・!その者の首を刎ねるワケには・・・!」

 

兵士は皆躊躇った。

 

栄華「お待ち下さいませ曹嵩様!お兄様は何度も戦で手柄を挙げて参りましたわ!此度の戦も同じく!これまでの戦功に免じて、どうかお許し下さいませ!」

 

これに、栄華も続いた。

 

曹嵩「ならぬ!この者を斬ったのは軍法上も道義上も許されぬ!早く連れ出し、首を刎ねよ!」

 

しかし、曹嵩は耳を貸さず首を刎ねるよう強く言った。

 

曹軍兵士A「しかし曹嵩様・・・!」

 

曹軍兵士B「どうか・・・どうかお許しを・・・!」

 

春蘭「曹嵩様!どうかお許しを!」

 

秋蘭「曹嵩様!」

 

華侖「曹嵩様!許して下さいっす!」

 

柳琳「曹嵩様!」

 

これには、兵士や栄華の他に春蘭、秋蘭、華侖、柳琳も跪き拱手して助命を求めた。

 

栄華「曹嵩様!曹嵩様!はずみの事だったのです!」

 

純「ちげー!前々から殺したかった!」

 

栄華「何を言っておりますの、お兄様!?」

 

これに、純は怒りでそう栄華に言うと

 

曹嵩「それ見ろ!謀反だ!謀反だ!連れ出せ!此奴の首を刎ねよ!」

 

曹嵩は怒りで物を蹴り飛ばしたその時

 

華琳「お聞き下さい!」

 

華琳が拱手し、大きな声で言い

 

華琳「純は確かに罪はありましょう。しかし私も何度も耳に致しました。全将兵の面前で喚き散らし、許し難い程お父様を貶め、侮辱するこの者の言葉をです。」

 

華琳「かくなる上は、この者を手厚く葬り、純を厳罰に処し、墓前で謝罪させては如何でしょうか?」

 

曹嵩に進言した。

 

曹嵩「華琳。この者は大きな功を立てたのだ。勝利したばかりで、わしがこの者を斬ったとなれば、わしの評判はどうなる?」

 

曹嵩「心が狭いと思うであろう?悪口を言っただけでわしに殺されると思うであろう?」

 

これに、曹嵩は怒りを収めずそう華琳に言った。

 

華琳「決してそのような事はありませぬ。何故ならば、この者の話は全て根も葉もない事を言い放っていたからです。」

 

華琳も負けじとそう言い

 

曹嵩「この者の話が根も葉もない事だとどう証明する?」

 

華琳「私が何とかしてみせます!どうか、全てお任せ下さいませ!」

 

真っ直ぐに曹嵩を見て言った。

それを見た曹嵩は冷静になったのか、納得した顔で頷き純を見て

 

曹嵩「純。お主は此度の戦で大功を立てたこの者を殺した。その罪は許せん。」

 

曹嵩「なれど酔った上での事、死罪は免ずる。本日より、この者の墓前で額づき、許しを請え。」

 

曹嵩「それと、三ヶ月の謹慎処分とする。暫く兵の調練に参加する事を禁ずる。狩りに行く事もだ。良いな?」

 

処分を言い渡した。

 

栄華「お兄様。早くお礼を。」

 

秋蘭「純様・・・」

 

春蘭「純様!」

 

華侖「純兄!」

 

柳琳「お兄様・・・」

 

これには、皆揃って純に言った。

 

純「・・・。」

 

純は複雑そうな表情を浮かべたが、曹嵩の顔を見て

 

純「感謝致します。」

 

拱手し言った。

それを聞いた曹嵩は

 

曹嵩「下がれ。」

 

と一言言った。

 

 

 

 

 

純「姉上!」

 

外に出た純は、華琳を呼んだ。

 

純「お待ちを。助けていただき、感謝致します。」

 

拱手してお礼の言葉を華琳に言った。

 

華琳「いえ、礼には及ばないわ。」

 

これに、華琳はそう返した。

 

純「ところで、先程の事でよく分かんない事があるのですが。」

 

華琳「何が分からないのかしら?」

 

純「その・・・栄華や他の皆が跪いて俺の助命嘆願をしても父上は受け入れなかったのに、姉上の意見はお聞きになった。それは何故ですか?」

 

この疑問に

 

華琳「栄華もそうだけど、皆どう言えば上の者の心に届くか分かっていないのよ。私はよくお父様と一緒に仕事していたから、よく分かるわ。」

 

華琳はそう答えた。

 

純「成程・・・。なら姉上、俺に代わって父上に頼み事を・・・」

 

これに

 

華琳「まだ何かあるの?」

 

華琳は呆れ顔で聞くと

 

純「いやいやいや、姉上ならお分かりでしょう?謹慎の件です。あの者の前で百回額づこうが構いませんが、まるまる三ヶ月も、兵の調練はおろか、狩りにも出かけられないというのは、気が滅入りますよ。」

 

純はそう言った。

それを聞いた華琳は

 

華琳「フフッ・・・あはははは!」

 

笑いだし

 

純「ははは!」

 

純も笑い出したが

 

華琳「この馬鹿!」

 

純「っ!?」

 

そう一喝し

 

華琳「なんて欲深いのよ、あなたは・・・。その願いは、例えあなたでも聞き入れられないわ。」

 

去ろうとしたが

 

純「お待ち下さい姉上!後生です。お助けを。聞いていただければ、俺、一生姉上に尽くしますよ。」

 

純は華琳の腕を取って、拱手しながら言った。

 

華琳「純。あなたはお父様のお気持ちが少しも分かっていないのね。」

 

この言葉に

 

純「どういう事です?」

 

純は疑問の表情を浮かべながら尋ねた。

 

華琳「言っておくけど、お父様はあなたを大層気に入っているわ。しかも今日の行いは、お父様がやりたくても出来なかった事。よくあの者を殺したわね。お父様は怒ったふりをして内心喜んでおいでよ。」

 

と華琳は疑問に答えた。

 

純「本当ですか?」

 

華琳「ええ。」

 

純「そんな事とはつゆ知らず・・・父上に申し訳ない。」

 

華琳「ふふっ・・・それでこそ純ね。お父様が謹慎処分を下したのは、あなたを鍛える為よ。」

 

華琳「お父様は考えておられるわ。必ずあなたを、全軍の総帥に据えると。その力を持っており、必ず期待に応えてくれるとね。」

 

それを聞いた純は

 

純「っ!」

 

驚きのあまり、固まってしまった。

 

華琳「どうするの?それでもまだ私に口添えを?」

 

それを見た華琳は、純にそう尋ねると

 

純「いいえ。処分の前に・・・兵の様子を見て参ります。」

 

純は少し声を詰まらせながら言い、その場を後にしようとした。

その際、純は華琳の前に跪き、手をつき三拝し、拱手して去って行った。

 

華琳(純・・・私とお父様は信じてるわ・・・。あなたなら必ず、この教訓を糧に成長してくれる事を・・・)

 

華琳(そしてきっと・・・衛青と霍去病を凌ぐ天下に誇れる名将になれる事を・・・)

 

その後ろ姿を、華琳は姉の顔を浮かべながら見ていたのだった。

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

華琳(あれから、純は成長した・・・。けど・・・まだまだ敵は多いわ・・・)

 

華琳(お父様・・・必ずや、天下を一つとし、新時代を築いてみせます・・・!)

 

そう、華琳は決意を込めた顔を浮かべ、泉下の曹嵩に言ったのであった。

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