楼杏の屋敷前
純「洛陽時代から思っていたが、質素な屋敷を取るんだな・・・。」
純(まあ、これが楼杏なんだけどな・・・。俺達曹家の屋敷だと、楼杏程ではなかったけど見た目慎まやかだったし、俺の進言で少し防衛機能を兼ねた屋敷だったんだけどな・・・。)
そんな事を思いながら屋敷の使用人に取り次いで貰い、入ったのだった。
楼杏「純さん!」
純「楼杏。」
そう言い、互いに抱き締め合い、口付けをした。
楼杏「何の用かしら?」
純「練兵の帰りに少し立ち寄った。非番に関わらず、済まないな。」
楼杏「構わないわ。わざわざありがとう。」
そして
楼杏「誰か!」
使用人「殿、お呼びですか?」
楼杏は使用人を呼んで
楼杏「酒と肴を用意してくれないかしら。純さんと酒を酌み交わすの。」
と言った。しかし
使用人「それが・・・」
楼杏「どうしたのかしら?」
使用人「今の俸禄は、官渡と河北四州の平定で戦死した兵の子供の援助に・・・。俸禄は暫く来ず、酒や肴を買うお金がありません。」
と使用人は言った。
楼杏「ならば・・・」
すると、楼杏はある箪笥から衣服を取って
楼杏「この衣服を質に入れて、酒と肴に交換すれば良いわ。」
と言った。
使用人「しかし・・・」
楼杏「行きなさい。」
そして、使用人は衣服を持って質に入れ、酒と肴を買った。
楼杏「どうぞ。」
純「・・・楼杏。」
楼杏「どうしたのかしら?」
純「急な来訪であったにも関わらず、自身の衣服を酒と肴に換えてまで俺をもてなしてくれるとは、心を打たれた。お前のその細やかな気遣いに一献、捧げよう。」
楼杏「そんな、大袈裟よ。あなたは主、私は臣下。臣下が、主をもてなすのは当然。私は、当たり前の事をしたまでよ。」
楼杏「私があなたに従ったのは、昔からの仲だけではないわ。その武勇と軍才で、水火に苦しむ人々を助けるのを協力しようと思ったからよ。」
その言葉に
純「皇甫義真はやはり皇甫義真。大義に徹し、些かも揺るぎない。」
と褒めた。
楼杏「ふふっ、褒めすぎよ。」
そう言い、互いに一献飲んだ。
純「そういえば、あれからあの商人はこの屋敷に来たか?」
楼杏「いいえ。あの日以来、この屋敷に来てないわ。」
純「そうか・・・。」
すると
純「楼杏、済まなかったな。」
と純は楼杏に謝罪した。
楼杏「えっ!?」
これには、楼杏は驚いた。
純「あの日、感情に任せてあの商人に怒鳴ってしまって。賄賂を断るにしたって、アイツが優秀な商人なら、あんな言い方はマズかったなって・・・」
楼杏「別に構わないわよ。曖昧な態度を見せたら、ずっと誤解されるもの。」
楼杏「現に、最初に賄賂を送ってこられた時、私は黙って、あの商人を突き返した。だけど、その意味を完全に誤解していた。」
純「ああ。賄賂の額が不足していたって勘違いしてたな。」
楼杏「ふふっ、だからあれで良いの。私こそ、あの日純さんにつまらないものを見せてしまって、申し訳なかったわ。」
楼杏「それに、あなたがあんなに怒る姿を見たの、初めてだわ。今回私の屋敷に訪問したのは、その為ね。」
純「ああ。本当に済まなかった。けど、お前とは洛陽時代から知っている。だから、あの態度には腹が立って・・・」
純「お前が侮辱された気がしたんだ・・・。それで遂・・・」
すると
楼杏「・・・ううん、本当に良いの。私、とても嬉しかったわ。」
楼杏は嬉しそうな表情をしながら、純の頬に手を添え
楼杏「それだけ、私の事を大切に思ってるのよね・・・。それが伝わって、とても嬉しかった。それと同時に、益々あなたの事を愛したわ。ありがとう。」
そう言って
楼杏「んっ・・・。」
純に口付けをした。それに純も
純「楼杏・・・。んっ・・・。」
楼杏に口付けをした。そして、お互い抱き締め合い、寝台に倒れ込んだ。
純「楼杏・・・。」
楼杏「純さん・・・。」
そして、そのまま一夜を過ごしたのであった。