許都
劉備の死は、許都にも届いていた。
華琳「そう・・・劉備がね・・・」
司馬懿「はっ。先の戦による怪我が元で・・・」
華琳「・・・そう。」
司馬懿「・・・曹操様?」
華琳「・・・ああ、ごめんなさい。」
司馬懿「いえ・・・何をお考えになっておりましたか?」
華琳「・・・ええ。純の事よ。」
華琳「あの子、今何をしているのかしら?」
司馬懿「曹彰様は、今屋敷に籠っておいでです。時々庭にてお持ちの剣を振るったりしておられます。」
華琳「・・・そう。屋敷の周りにいる兵は、全て純の直属の兵なのは知ってるわね?」
司馬懿「はい。如何致しましょう?」
華琳「決まってるでしょ。全ての兵に守りを解くよう命じなさい。」
司馬懿「・・・御意。」
そう命令され、司馬懿はその場を後にした。
純の屋敷
その頃純は、屋敷の庭にて、太刀を振るっていた。
純「はっ!ふっ!はあっ!」
その立ち振る舞いは、まるで一種の舞の如く流麗だったが、どこか辛そうな顔だった。
その姿を
秋蘭「・・・。」
稟「・・・。」
秋蘭と稟は今にも泣きそうな顔で見ていた。
その時
剛「純様!」
剛が現れ
剛「本当に、これは一体どういう仕打ちなのですか!!」
そう怒鳴った。
純「剛・・・」
秋蘭「剛・・・」
剛「曹操様のこの仕打ちはあまりにも酷すぎます!!」
剛「勝って戻ったにもかかわらず、位を授かっただけで軍の統率権を失い、形だけの位になりました‼︎まるで飾りです!!」
そう、怒りの声をあげていた。
純「姉上を責めるな。全ては、あの時軍の立て直しと言って撤退をした俺が悪いんだ。」
それに純は剛にそう言ったのだが
剛「司馬懿は純様と比べて、戦の功は然程無いのに、何故ああも口を出すのか!!」
剛「純様のは、決して過ちでは無いにもかかわらず、敢えて大きな過ちだと大ごとにする!!」
剛「曹操様の考えが読めませぬ‼︎」
純「黙れ!!」
剛「曹操様は愚かな主!!そのお側にいるのは讒言をする奸臣!!」
剛「このままでは、あなたは不名誉な最期を迎えますぞ!!」
剛の怒りは収まらず、そう純に怒りに身を任せて言った。
それを聞いた純は
ドガッ‼︎
剛「っ‼︎」
剛を殴り
純「馬鹿な事を言うんじゃねー‼︎良いか‼︎これ以上、姉上の悪口を言えば、この俺が許さねーぞ!!」
純「お前の首を斬って、姉上に送るぞ!!」
そう怒鳴った。
秋蘭「剛・・・お前は知っているのか?純様は・・・先の戦で、なぜあの時無理して益州を攻めなかったか・・・ずっと後悔して、華琳様に詫びの文を書いていたのだぞ。」
稟「剛殿・・・あなたのお気持ちは痛い程理解出来ます。しかし・・・純様の友でもあるなら、お気持ちを察してあげて下さい。」
剛「っ!!」
純「・・・全ての罪は俺にある。これで許せとは言わねー。」
純「だが・・・将兵は、俺にとって皆家族同様だ。そいつらには、働きに報いてそれ相応の恩賞を授けるように頼む。」
純「だから・・・これ以上姉上を責めないでやってくれ・・・」
そう言われると
剛「・・・」
剛は何も言えなかった。
その頃
司馬懿「そなたら、この屋敷の守りを解くようにと曹操様のご命令だ。」
司馬懿が、純の屋敷を守備している兵に守りを解くよう命令した。
曹彰軍兵士A「お断り致す。」
しかし、兵はその命を拒否し
司馬懿「・・・何故だ?」
曹彰軍兵士A「我らは曹彰様と共にあります。たとえ曹操様のご命令でも、我らは従いません。」
そう毅然と返した。
周りの兵も、同じように毅然とした態度だった。
これに
司馬懿「・・・そなたら、命に背いた罪で首を刎ねられたいか!」
司馬懿はそう脅したが
曹彰軍兵士A「ほお・・・?斬れるなら斬ってみろ!」
曹彰軍兵士B「そうだ!やってみろ!」
兵士は怯む事無く、そう返した。
これには
司馬懿「クッ・・・!」
司馬懿は何も出来ず、そのまま引き返してしまった。
純「何か騒がしいと思ったら、お前ら・・・」
すると、純が呆れ顔で言いながら現れた。
「「「曹彰様!!!」」」
「「「我らどうなろうとも、曹彰様と共に!!!」」」
これに、兵士は皆拱手してそう声を揃えて言った。
純「お前らの気持ちには感謝する。だが、姉上をこれ以上困らせるな。良いな?」
そう、純は兵にそう言ったのだった。
司馬懿(ううむ・・・ここまで結束が強いとは・・・)
司馬懿(ここで守りを解き、時期を見計らって曹彰を暗殺に見せかけて殺し、曹操を操って大陸を統一した後に私自ら曹操を殺し、天下を取るつもりだったのだがな・・・)
司馬懿(国境の兵も、難しいだろうな・・・)
この時、司馬懿は胸中でそう思っていた。
実を言うと、彼は表向きは忠実な臣下として華琳に仕えているのだが、その心中は途轍もない野心を秘めており、自らが天下を取ってこの大陸を支配する考えを持っていたのだ。
その為に、覇者たる素質を持っている者に近付き、実権を握り機が熟したら自ら天下を取るための行動を開始する事を考えていた。
司馬懿(ううむ・・・)
そう心の中で唸りながら、司馬懿は歩いていたのだった。
桂花「華琳様!純様から全軍の統率権を取り上げたのは本当ですか!?」
その頃、桂花が華琳の元に現れてそう尋ねた。
華琳「・・・ええ。したわ。」
桂花「何故そのような!?」
華琳「私の将来の為よ。このままじゃ、私の立場が危うくなるわ。司馬懿の意見を汲み入れて、純を大将軍の昇格と大司馬の兼任をさせる代わりに全軍統率権を剥奪したのよ。」
桂花「しかし華琳様!!我が全軍の将兵が従うのは純様です!!そのような事をして、将兵に大きな悪影響を与えかねません!それに、このような事を喜ぶのは諸葛亮ただ一人です!!」
華琳「黙りなさい桂花!!」
桂花「華琳様!!司馬懿という男をこれ以上信じてはなりませぬ!!」
華琳「桂花!!これ以上言うなら、許さないわよ!」
桂花「っ!」
華琳「下がりなさい!!」
桂花「っ!・・・御意。」
これに、桂花は何も言えず、下がった。
暫くすると
栄華「お姉様・・・」
栄華が、華侖と柳琳と共に現れた。
華琳「あなた達、何の用かしら?」
この言葉に
栄華「お兄様の事ですわ。」
栄華は毅然とした態度で言った。
華琳「・・・言いなさい。」
栄華「お姉様。今我らは、逆賊を討ち滅ぼし、覇道を成し遂げんとする時です。にもかかわらず、お兄様を大将軍に昇格させ、大司馬も兼任させておきながら全軍の統率権を剥奪なさるとはどういう事ですの?」
華琳「・・・私の将来の為よ。あの子は、将兵の間でも人望厚く、全将兵を従えているわ。加えて、数々の特権も持っている。」
華琳「今のあの子の力は危険だわ。下手したら私に牙をむく恐れがある。だから、統率権を剥奪したのよ。」
栄華「お兄様はそのような事を考えるお方ではありませんわ!お姉様、今すぐ統率権を元に戻し、お兄様を復帰させて下さいまし!!」
華侖「華琳姉ぇ。それじゃあ、純兄ぃが可哀想っすー。」
柳琳「お姉様・・・私も姉さんの意見に同感です。これではお兄様が不憫です。」
そう、栄華達がそう訴えても
華琳「いいえ。これは決定事項よ!」
華琳は耳を貸さなかった。
すると
栄華「・・・そうですか。分かりましたわ・・・」
栄華はそう呟くと短剣を取り出し
華琳「っ!?」
栄華「お兄様にもしもの事あれば、お姉様を刺し、私も死にますわ!」
そう強く言った。
華侖「栄華!?」
柳琳「栄華ちゃん!?」
華琳「やめなさい、栄華!!」
栄華「私にとって、お兄様が全てなのですわ!!お兄様が笑ってない世など・・・ましてや、お兄様がいない世なんて・・・私は・・・!」
栄華「それを作るお姉様は・・・!」
そう、いつでも華琳に突進する構えを見せた。
華侖「やめるっす栄華!!」
その時、華侖が真っ先に栄華を抑え、短剣を取り上げた。
栄華「何をするんですの、華侖さん!!」
華侖「ここで華琳姉ぇを殺しても意味ないっすよー!!やめるっすー!!」
柳琳「姉さん・・・!お姉様、栄華ちゃんを下がらせます!しかしお姉様・・・今暫く、良くお考え下さい!」
栄華「柳琳さん!何をなさいますの!!華侖さんも!!お離し下さいまし!!」
そう言い、柳琳は華侖と共に栄華を抑え、下がったのだった。
華琳「・・・。」
これに、華琳は一人頭を抱えたのであった。