純の一件で疲れていた華琳。
華琳(幼い頃・・・私は純と比べられてきた・・・)
華琳(将兵を率いて先頭に立ち、戦場を駆け抜ける才は全く持ってないと・・・)
華琳(けど・・・私は・・・純のような武勇と軍才が無くても・・・お父様のお陰で自分の才に気付いた・・・)
華琳(私には・・・王の器があると・・・)
華琳(だから私は・・・あの子に劣等感を抱かずに済んだ・・・)
華琳(一緒にいるだけで・・・安心できたし、対等になれるって思ってた・・・)
華琳(けど・・・あの子が戦で功績を立てれば立てるほど・・・どんどん覇気が強くなってきて・・・あの子を御する自信が無くなってきた・・・)
華琳「いつだったかしら・・・あの子が怖くなったのは・・・?」
そう、考えつつ呟いた。
その時
使者A「只今戻りました。」
益州との国境の兵に許都へ撤退するように使わした使者が戻ってきた。
華琳「・・・そう。撤退はさせたかしら?」
この問いに
使者A「はっ。皇甫嵩殿、張遼殿、夏侯惇殿、程昱殿らが申しますには、『撤退すれば、劉備が亡くなり敵に大打撃を与えたが、諸葛亮はその隙を見逃す筈が無いと。どうか、ご検討いただきたく存じます。』との事です。」
そう使者は言った。
これに
華琳「何ですって?検討しろ?馬鹿な事を言わないで!!」
華琳「劉備は亡くなり、力を大いに消耗した敵が北進するというのかしら!」
華琳「私に逆らった口実よ!今すぐその四人を斬りなさい!」
華琳はそう怒鳴った。
その時
??「いい加減にしなさい、華琳!!」
華琳「っ!?」
とある女性が華琳の前に現れた。
その者は
華琳「お母様・・・」
華琳の生みの母だった。
華琳「お母様・・・最近苛立つ事が多く、つい逆上しました・・・」
華琳母「華琳。あなたは・・・父のご遺言を忘れたのですか?」
華琳「っ!」
華琳母「戦の事、将兵の事は純に委ねさせるように。あなたは領国内の事を考え互いに力を合わせなさいと。」
華琳母「あなたはそれを忘れ、臣下の巧言を聞き入れ、将兵から人望厚い純を冷遇すれば、皆の気持ちは離れてしまいます。」
華琳母「純の支えが無ければ、今のあなたは無いのですよ。」
華琳「お母様・・・」
華琳母「確かに純は・・・最近のあの子は益々風格が出て参りましたし、一段と覇気も強くなりました。」
華琳母「しかし、どんなに出世しても、あの子の気持ちは昔から何も変わっていません。兵士の事だけじゃなく、常に曹一門の事、あなたの事を守ろうとしております。」
華琳母「華琳・・・あなたは、純の事が嫌いですか?顔も見たくないのですか?」
この問いに
華琳「嫌いではありません!!」
華琳「純は・・・あの子は・・・私にとってたった一人の大切で可愛い弟なのです!あの子にもしもの事があったら・・・私は・・・!」
華琳は涙を流しながら答えた。
華琳母「なら・・・仲直りしなさい。」
華琳母「あなたが理想を叶えるには、主君と臣下の心を一つにする事ですよ。」
華琳母「純とは・・・仲違いしてはいけません!必ず、それを敵に突かれ、滅ぼされますよ。」
これに、華琳の母はそう諭したのだった。
それを聞き、華琳は目の光が戻り、純の屋敷へ向かった。
純の屋敷
純の屋敷に向かった華琳。
曹彰軍兵士A「これは曹操様。我が閣下に何かご用で?」
これに、純の屋敷を守っている兵は、通さないように槍を構えた。
華琳「純に会いたいわ。通してくれないかしら?」
そう言うと
曹彰軍兵士A「たとえ閣下の姉君であろうと、讒言を真に受け、我が閣下を虐げる者に会わせるのは御免被ります。」
兵士はそう言い、華琳を通さなかった。
華琳「それは分かってるわ。全て私の過ちである事も。けど、許して欲しいとは言わないわ。けど今は、純に会わせて。」
これに、華琳は怯まずそう答えた。
それを聞いた兵士は
曹彰軍兵士A「・・・良いでしょう。しかし、もし閣下の御身に何かあれば、あなたであろうと許しは致しませぬ。」
そう、華琳に言い、通すのを許した。
そして、屋敷の中に入り、暫く待っていると後ろから誰か来る気配がしたので振り返ると純が歩いて来て
純「拝謁致します。」
と拱手して言った。
それを見た華琳は
そっ
純「姉上?」
純を抱き締めて
華琳「ごめんなさい、純。今回は、全て私が間違っていたわ。」
と涙を流しながら謝った。
そして、抱擁を解き
華琳「私とあなたは、腹違いとはいえ、同い年の姉弟。あなたは、私のお母様を実の母の様に大事にしてくれたわね。」
華琳「かつてお父様が亡くなった時、あなたは率先して臣下の礼を取って皆を纏めてくれて、多くの戦にも勝利してくれた。あなたがいなければ、私は志半ばで命を落としていたわ。」
純「・・・っ。」
そう優しい声で純に言った。
華琳「亡きお父様は、今際の際にこう言い遺したの。『戦の事は全て純に任せ、お前は国の事を考えて互いに力を合わせ、助け合い、大業を成せ』ってね。」
純「・・・っ!」
華琳「あなたは私にとって、皆にとってかけがえのない存在よ。今回の事は、本当にごめんなさい。」
華琳「お父様の遺言に背いてしまったわ。あなたに謝罪するわ。」
そう言い、華琳は拱手して頭を下げようとしたが
純「姉上!主君たる者、そう頭を下げては・・・!」
純は慌てて華琳を止めた。
華琳「純・・・。」
すると、華琳は純の手を取って
華琳「主君と臣下といえど、それ以前に私達は血の繋がった姉弟よ。私は人間だから、過ちも犯してしまうわ。けど弟として、私を許してくれないかしら?」
そう言った。それを聞いた純は
純「姉上、それ以上・・・何も仰らないで下さい!」
と華琳に言った。
華琳「では将兵の統率権をあなたに譲るわ。これより、大将軍大司馬大都督として、全兵馬を率いなさい。」
この言葉に
純「はっ!」
純は跪いて拱手した。
そして、華琳は純の屋敷を後にし、司馬懿を呼んだ。
華琳「司馬懿。純に、将兵の統率権を戻したわ。」
これに
司馬懿「っ・・・何故なのです!?」
司馬懿は驚きの声を上げた。
華琳「私は純を・・・弟を信じるわ。たとえ誰でも、純を貶める発言をする者は許さないわ!」
華琳「けど司馬懿。あなたはこれまで私に仕えて手柄もあるわ。それで、純に傘下に入りなさい。」
華琳「純の下で、益州平定の力になりなさい。」
と、華琳は上の者に相応しい堂々とした雰囲気で言った。
司馬懿「・・・御意。」
これに、司馬懿は頭を下げ拱手したが、その顔は酷く歪んでおり
司馬懿(どういう事だ・・・?何故こうも仲が戻った・・・?)
司馬懿(クソッ・・・!計画を変えねばなるまいな・・・)
そう心の中で呟いた。
華琳(成程・・・この司馬懿・・・誰かの下で満足するような者では無いわね・・・)
華琳(こうして冷静に見ると、それが良く分かるわ・・・)
この時、華琳は司馬懿の野心を察したのであった。