【悲報】転生したら暗殺組織の隊員にされた件【戸籍ナシ】   作:星ノ瀬 竜牙

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箸休め回兼原作3話の裏のイッチの話です。

フキちゃんとサクラちゃんの出番はありません。
イッチは立場上向こうに行けないので許して


Every man is the arvhitect of his own fortune

「棗さん、レジ締め終わりました。誤差なしでズレもありません」

 

「おう、お疲れ様。今日は終わりだし帰ってもいいぞ」

 

「はい、そうさせていただきます」

 

 レジ締めを報告し、たきなは支度を始める。

 

「えー、ちょいちょい! たきなもボードゲームやろうよー! 棗もさー!!」

 

「パス、俺は今日はそういう気分じゃねえ」

 

「私も遠慮しておきます」

 

 リコリコでは恒例行事として閉店後のボードゲーム大会が行われている。

 常連客も集めてやるちょっとしたお祭り騒ぎだ。

 

 近頃はクルミも混ざってやっていたりする。

 

「というか、ふつーに考えてもメンツがおかしいでしょ。勤務中の刑事がなんで一緒にボドゲやってんすか」

 

「いやー、ははは」

 

「棗くん、それは言わないお約束だよ」

 

 刑事の阿部さんが誤魔化すように笑っているのを見てため息を吐く。

 普段はめちゃくちゃ優秀だし鼻が利くタイプの人なのになぁ……と棗は頭をぽりぽりと掻く。

 

「たきなちゃんもたまにはおいでよ~?」

 

「……結構です」

 

「おじさん多すぎなのかな?」

 

「恥ずかしいんでしょ、お年頃よ」

 

「まあ店で遊んでいる我々の方がおかしいんだけどね」

 

 表情一つ変えずに断り、更衣室に向かうたきなを見て少し残念そうにする常連客だった。

 

「お前は、混ざってきたらどうだ?」

 

「そうすれば、DAに戻れますか?」

 

「……無理だな」

 

「なら意味がありません」

 

「ああ、そう……焦るなよ、井ノ上さん」

 

「あなたになにが……!」

 

 棗のその言葉は地雷だったのだろう。たきなは激昂したように、殴りかかろうとし……そのまま棗に手を掴まれて阻止される。

 

「期待に応えようとするのは良い。けど、それで自分が苦しむのは本末転倒だぞ。俺はそれを良く知ってる」

 

「なにを……」

 

「まあ、なんだ。お前はまだ子供なんだ。少しは年長者を頼れってことだよ。井ノ上さん」

 

「っ……あなただって子供のくせに……」

 

 余裕そうな笑みを浮かべる棗に苛立ったのか、たきなはそんな事を呟く。

 

「はは、生憎一足先に成人してるんだ。タバコも吸えるし酒も飲めるぞ。

 ……悩めばいい。悩んで悩んで悩んで。最後に自分の答えを決めればいい。それからでも遅くないさ」

 

「……棗さんの言っていることはわかりません」

 

「……そうか、まあ……いつか分かるさ。お前は優しいからな」

 

 たきなの頭をぽんぽん、と撫でて棗はミカのいる厨房の方へと向かうのだった。

 

「……分かるわけ、ないじゃないですか」

 

 あの日、当てる気はなかったとはいえ機銃を使うという独断行動をした自分が……優しいと思えるはずもなかった。そうして少しモヤモヤした気分になっているところで、千束がやってくる。

 

「たきなー!」

 

「なんですか?」

 

「たきなもゲームやろ? ね?」

 

「……もう帰るので」

 

「あ、じゃあ明日は!?」

 

「明日は定休日ですよ、着替えるので閉めますね」

 

「あー、そう! だから明日も集まってゲーム会をするんだけど……」

 

 バタン、と更衣室の扉を閉められても尚誘おうとする千束を見かねて、厨房から棗と共に様子を見ていたミカが声をかける。

 

「千束」

 

「はーい?」

 

「健康診断と体力測定は済ませたのか?」

 

「え……? あー……えっと、いや……まだ、だけど……あんな山奥まで行くのだるいしー……」

 

「は? お前ライセンス更新済ませてねえの? リコリスなのに何やってんだ?」

 

「えー、だってぇ……」

 

 千束が目を逸らしながらそんなことを呟くものだから、棗は信じられないモノを見るような顔をしてミカは頭を抱えた。

 リコリスにとって、ライセンスの更新は絶対だ。それがなければ車の運転も銃の使用も全てが犯罪行為とみなされる。

 

「明日は最終日だぞ? ライセンスの更新に必要だろう。仕事を続けたいなら行ってきなさい」

 

「う"ぇええ……そこは先生の方で上手く言っといてよ~! 先生の頼みなら聞いてくれるでしょ、()()()()()()ー!」

 

 その言葉はたきなにとって聞き捨てならない言葉だったのだろう、着替え途中だというのに脇目も振らず、更衣室の扉を開けて問いかけた。

 

「司令と会うんですか!?」

 

「ぶっ────!?」

 

「うおバカ服ゥ!! ん……!!」

 

 千束が驚異的な反射神経で更衣室の扉を勢いよく閉めて、ミカと棗を睨みつける。

 

「……ん"んッ……!」

 

「ぴゅ~……♪」

 

 男二人、別に見てませんよ? という表情で視線を逸らしていた。

 

「私も連れていってください」

 

「うわ着替えるのはっや!?」

 

 そして次に更衣室の扉を開けたときにはリコリス制服に身を包んだたきなが居た。

 高速で着替えていたのである。

 

「……お願いします」

 

 深々と頭を下げるたきなを見て三人は顔を見合わせる。

 棗は肩をすくめてミカに視線をやり、ミカは千束に視線を向けて頷いた。

 二人の考えをなんとなく察したのだろう、千束は仕方なさそうに笑って……

 

「……わかったよ、たきな。一緒に行こ?」

 

「……ありがとうございます」

 

 たきなのお願いを了承するのだった。

 

 ────

 

「ふぅ……」

 

 翌日、【CLOSE】とかかれた札を下げた玄関の隣で一服、煙草を吸う青年の姿があった。

 

「銘柄はなんだ、棗くん」

 

「んぉ? ……おやっさん、別にないですよ。そういうの拘りないんで、買う時の気分で決めてます」

 

 玄関を開けてやってきたのは店長のミカだった。

 一応形的には成人を迎えている棗は時々こうして煙草を吸う。勿論、千束やたきなには気付かれないようにだが。

 それを知っているのは、ミズキとミカぐらいである。最近ではクルミも知ったが。

 

「一本、貰ってもいいか?」

 

「いいですよ、ちょっと待ってくださいね」

 

 棗は服のポケットに突っ込んでいた煙草の箱を取り出して、一本抜くとそのままミカに渡す。

 

「すまんな、わざわざ」

 

「気にしないでください。あ、火要ります?」

 

「貰おうか」

 

「うっす。……はい」

 

 ライターを取り出すと、そのまま火をつけてミカの咥えている煙草につける。

 

「……ふぅ、初めてだな。棗くんとこうして並んで吸うのは」

 

「あー……そうでしたっけ。確かに店長が吸ってるところは見かけませんもんね」

 

「さすがに店が開いてるときは吸わんからな」

 

「俺もですよ、他の人に迷惑はかけられませんから」

 

 二人揃って煙草を吸う姿はどこか絵にもなるように思えるほど様になっていた。

 

「……はぁ」

 

「たきなのことか?」

 

「……さすがおやっさん、お見通しっすね。まあ、心配だってのはあります。

 異動……事実上の厄介払いをされた場所にわざわざ行くってのは少し思う所はあるんですよ。

 それに、今の彼女はひとりぼっちだ」

 

「……そうだな」

 

 何処にも居場所がない。帰るべき巣を失った雛鳥。それが井ノ上 たきなの今の姿だった。

 リコリコにも、DAにも……きっと今の彼女は帰ることができないのだろう。

 

「居場所になってやれたら、と思うことはありますけど……そういうのは俺の柄じゃないですから」

 

「そうか?」

 

「そうっすよ。柄じゃないです」

 

 そうは思わんがな、とミカは棗を見て思う。千束にとって帰るべき場所はリコリコだ。

 それは以前から変わらないのだろう。だが……彼女が本当に居たい場所が何処なのか。それをミカは薄々と感じているからこそ、そう思っていた。

 

「……にしては、そんなに心配していなさそうだな」

 

「まあ、そこは……うちのムードメーカーなリーダーがいるので」

 

「千束か」

 

「俺よりも上手く丸め込むとは思いますよ、千束は」

 

「そうだな……千束はそういう娘だ」

 

 二人にとってその信頼は確かなものだ。千束という少女への信頼であり、理解度の高さでもあるのだろう。

 

「だから、まあ……心配はしてますけど、そこまで深刻なことにはならないとは思ってます。

 あれで、たきなも良い子ですからね」

 

「……だな」

 

 棗の言葉に嘘はなかった。彼はよく周りを見ている。それをミカは知っているからこそ、同意するように頷いていた。

 

「……雨止みますかね」

 

「二人が帰ってくる頃には晴れているさ」

 

「……そうだといいっすね」

 

 ぽつぽつ、と降り続いている曇り空を見上げながら棗は煙を吐く。

 そうして少しの間沈黙が続き……

 

「棗くん、あれから千束とはどうだ?」

 

「ぶっふぉ!? ゲホッ!? げっほっ!? い、いきなり何言ってるんですかおやっさん!?」

 

 沈黙を破ったミカの爆弾発言に、棗は驚いて咳き込み大慌てでミカの方を見る。

 

「なんだ、進展なしか?」

 

「進展もなにも……俺と千束はそういう仲じゃないでしょう!?」

 

 この人何言ってんだ、と棗はミカに困惑した表情をみせる。

 

「なんだ、たきなから聞いたぞ? 仲が良すぎないかと」

 

「はぁ!? 何言ってんだあの子も!? そんなわけないでしょうが!? 確かに信頼してますし背中を預けるぐらいには信用もしてますけど! そういう関係じゃないですよ!!」

 

「……お似合いだとは思うんだがな」

 

「お似合いって……そもそも……俺と千束じゃ釣り合いませんよ。

 ……それにあの娘はちょっと、俺には眩しすぎます」

 

「……棗くん」

 

 少し儚げに笑う棗に、ミカは何とも言えない表情をみせる。

 そう、あまりにも……錦木 千束という少女は眩しすぎる。誰にでも元気で明るい姿を見せて、他人の命を何があっても奪おうとしない少女。リコリスという立場にあるまじき精神性ではあるが、それこそが彼女の美徳であり……なによりも、眩しいのだ。

 

「俺は彼女の横に立つには汚れすぎてますから」

 

 立花 棗はあまりにも人を殺し過ぎた。

 時折夢に出るのだ、殺した人の顔が、見捨てた仲間の顔が。見殺しにしてしまった人の顔が。

 それを見る度に気持ち悪い、吐き気はする。だが……一度たりとも胃の中のものを戻したことはない。

「まあそう思われて当然だ」と、何処かで割り切ってしまっている自分がいるのだ。

 

「だから……この手で、千束の手を握ってやる事は俺には到底できませんよ」

 

 時々、真っ赤に染まったように錯覚する自分の手を見て握り締めながら棗はそう笑う。

 

 確かに立花 棗は、死や殺しに嫌悪感を覚えはする。だが、必要とあらばそれらを許容してしまえるほどには……慣れてしまったのだ。汚れること、殺すこと、命を捨てることに。

 そんな自分に、千束の手を握ってやれる資格はない。

 ……そしてなによりも。

 

死人に好かれたい人なんていないでしょうし」

 

「棗くん?」

 

「ああ、いや。こっちの話です。気にしないでください」

 

 上手く聞き取れなかったミカは聞き返すが、棗は誤魔化すように笑った。

 ……一度死んだ人間に、居場所などあるわけがない。そしてなにより……この身体(しょうねん)の居場所を奪ったのは他でもない自分なのだ。そんな人でなしが彼女の手を握ることなどできるはずがない。

 

「本当に、似合わない」

 

 折れた電波塔を見ながら青年(しょうねん)は煙を吹かせて寂しそうに笑う。

 

「棗くん」

 

「柄にもないこと、すみません。ただまあ……俺も、千束に兄みたいに慕われるのは嫌いじゃないんですよ。だから、このままでいいです。それに、千束にお似合いの素敵なヤツはいつか見つかりますよ。俺よりもっとすごいヤツが。例えばそれこそ、アイツと同じアランチルドレンとか」

 

「……私はそうは思わないがな」

 

「俺がそう思ってるんでそれでいいんですよ」

 

 棗はそう言い、普段のようならしい笑みを浮かべる。ニヒルな笑みだ。

 それは彼なりの踏み込むな。という合図でもあるのだろう。ミカはそれを知っているからこそ、これ以上は何も触れなかった。

 

 そうして二人で煙草を吸っていると、パシャリ。とシャッター音が聞こえる。

 

「リコリコイケメンズ、ダンディーな煙草ふかしっと」

 

「は!? ちょ、ミズキさんなにしてるんですか!? 消してくださいっ!!」

 

「いやよ、せっかく貴重な写真が撮れたんだもの。これをリコリコのSNSにあげて客層を増やしてイケメンを呼び込むのよ!」

 

「目的それかよ!? ちょっ! 消してください! 俺そういうキャラで売ってないんですよ! 消し……消せよっ!! なんでこういう時だけすばしっこいんですかアンタ!? 消せこの酔っ払い!!」

 

 ミズキとスマホの取り合いという攻防を繰り広げる姿を見て、ミカは呆れたように笑う。

 

「……本当にお似合いだよ。君と千束は」

 

 その姿は以前、ミズキと攻防を繰り広げていた千束とあまりにもそっくりだった。

 

 ────

 

「というわけで、定休日ボードゲーム会スタートしまーす」

 

「「「「イェーイ!!」」」」

 

 夕暮れ時、棗の一声と共にボードゲーム大会が始まり、参加者たちは大声で盛り上がる。

 

「棗くん、今日はノリノリだね?」

 

「そういう気分の日なので。今日は遊び惚けます!!」

 

「おお……清々しいわね」

 

 堂々と宣言した棗に数人から拍手が上がる。

 

「ん? そういえば漫画家、お前締切今日までじゃ……」

 

「言わないでクルミちゃん」

 

「……進捗どうですか?」

 

「棗くんまでやめてっ!?」

 

 ドッと店内で笑い声が広がる。現実逃避でゲームに参加していた漫画家の伊藤に対しての指摘が原因である。

 そこでふと、時計を見て棗はミカに問いかける。

 

「店長、そういえば千束の健康診断って」

 

「ん? ああ、そろそろ終わってるはずだ」

 

「了解。んじゃあ、千束に連絡いれときます」

 

 棗はスマホを取り出すと、

『ボドゲ大会始めてます。

 今日は長いことやる予定だから間に合いそうなら連絡よろ。

 P.S.俺も今日は参加します(`・ω・´)』

 と千束にリコリコグループSNSで送信し、

 ついでに参加メンバー数人と撮った写真を添付する。

 

 そしてすぐに、ピロリン。という着信音が入る。

 

「……いい笑顔じゃねえか、二人とも」

 

『二人で行くぜ(`・ω・´)』

 というメッセージと共に、電車の中で撮ったのであろうたきなと一緒にピースしている写真が送られてきた。

 

「えーご報告です。千束ちゃんとたきなちゃんがー?」

 

「お?」

 

「ボドゲ大会参加します!!」

 

「「「「おおおおおお!!」」」」

 

 棗がそう大声で報告すると、更に店内が盛り上がる。

 特にたきなは初めての参加だからこそみんな賑やかになり始めていた。

 

「店長、じゃあ俺全員分の和菓子作るので買い出し行ってきます」

 

「いいのか、棗くん」

 

「せっかくのたきなの初参加なんです、少しぐらい賑やかにしても文句は言われないですよ」

 

「よっ! 太っ腹!!」

 

「さすがはリコリコのイケメン店員!!」

 

「だからそれ誰が言ったんすか!!」

 

 何処からかとんできた野次に棗がツッコミを入れれば更に笑う声が店内に響く。

 

「じゃあ、そんなわけで。買い出し行ってきます!」

 

「いってらっしゃーい!」

 

「あ、伊藤さんは早くネームを終わらせといてください。終わらせるまでボドゲ大会参加禁止です」

 

「棗くんまで編集さんと同じことを!?」

 

 ガーン! とショックを受けた伊藤を見て笑い声が再び響く。

 その様子を見届けて、棗は玄関を閉める。

 

「……お、綺麗な夕日」

 

 雨が上がり、眩しくなるほど綺麗に照らされた橙色の夕焼けを棗は見つめる。

 

「っし、じゃあさっさと買い出しに行ってきますか!」

 

 ぺちん、と頬を叩いて棗は買い出しに向かうのだった。

 

 

 ────

 

「っしょっと……棗ー。ここにお皿置いといても良い?」

 

「いいぞー。洗っとくからそこ置いといてくれ」

 

「はーい」

 

 千束は皿を片付けながら棗に声をかける。ボードゲーム大会も終わり、清掃作業に入った段階だ。

 そんな中、テキパキとある程度作業を終えた段階でたきなが棗を見て声をかけるかかけまいか。と悩んだ表情をしていることに千束は気付く。

 

「あ、たきな! 私、座布団片付けとくから棗のお皿洗い手伝っといてー!」

 

「! はい、わかりました」

 

 気遣うように千束は席を外し、棗とたきなを二人きりにする時間を作ったのだった。

 

「あの、棗さん」

 

「ん? ああ、井ノ上さんか。そこに食器は置いといてくれ。洗っておくから」

 

「いえ、()()から棗さんを手伝うようにと」

 

「! ……わかった、じゃあこっち来てくれ」

 

「はい、お邪魔します」

 

 些細な変化ではあったが、たきなが千束を呼び捨てにしていたことに気付いた棗はくすりと微笑み、場所を少し開ける。

 そうして二人で食器洗いを始めるが……しばらく沈黙が続く。水の流れる音と、食器を洗い拭く音だけが厨房に響く。

 

「えっと……その、棗さん……昨日はすみませんでした」

 

「おん? あー……いいよ。俺も言い過ぎた。悪かった、井ノ上さん」

 

「いえ……」

 

 沈黙を破ってのたきなの謝罪を受け入れつつ、棗も言い過ぎたと謝罪をし返す。

 気まずい沈黙だ。思えば、たきなにとって立花 棗という青年は千束以上に謎多き人物だった。

 故に、何を話題にすればいいのか。と彼女は悩む。

 それを見かねたように、棗がたきなに話題を振る。

 

「……向こうで、良い事でもあったんだろう。井ノ上さん」

 

「え? ……ええ、良い事はありました」

 

「千束のおかげってところか?」

 

「……はい、千束のおかげです」

 

「不思議だよな、アイツ。気付いたら自然と打ち解けててさ。アイツに惹かれてる。

 なんというか……太陽みたいなやつだよ」

 

「そう……ですね。私もそう思います」

 

 棗のそんな言葉に、たきなは同意する。確かに、錦木 千束という少女はそんな人だ。

 そしてそんな風に彼女を語る棗の顔を、たきなは初めて見た。

 

「あ……」

 

 妹を見守るような、家族を自慢するような何処か慈愛にも満ちた優しい顔。

 ……そんな顔もするのか。とたきなは思わず目を丸くする。

 そしてなにより……その笑顔が、今日見た千束の笑顔にそっくりだったからか。

 たきなもまた、クスッと笑ってしまった。

 

「んだよ、俺の顔になんかついてたか?」

 

「いえ……千束と、棗さんはよく似ているな。と」

 

「えぇ……ぜってえ似てねえよ。誰があんなお気楽能天気か」

 

「ふふ、似てますよ。そういう所がそっくりです」

 

「どこがだよ……」

 

 困ったように顔を顰める癖に、口元のにやけ面は隠せてない辺りとか。助言の仕方とか、とてもそっくりだとたきなは思った。

 

「……たきな。でいいですよ、棗さん」

 

「どうした急に」

 

「いえ……私も千束と言い始めたのに、棗さんとだけ距離が遠いのもなんだか良くないと思いまして」

 

「……人をボッチの可哀想なヤツみたいな扱いするのやめない?」

 

「なんのことですか?」

 

「え、無自覚? お前切れ味鋭いな……」

 

「ナイフは持っていませんが……?」

 

 棗の言葉にきょとん、と首を傾げるたきな。彼の言い回しはどうやら通じていない様子だった。

 

「……はぁ……()()()、これからよろしくな」

 

「! はい、よろしくお願いします。棗さん」

 

 呼び捨てで彼が呼んだことに気付いたたきなは少し頬を綻ばせて改めて頭を下げていた。

 

「棗でいい。千束もそう呼んでるだろ?」

 

「いえ、そこはやはり年長者でしっかり者な棗さんには失礼な態度はとれませんから」

 

「……それ遠回しに千束のことアホの子扱いしてないお前?」

 

「……違うんですか?」

 

「違わないけど」

 

「ちょいちょいちょい! お二人さん!? 黙って聞いてたら何二人して私をアホ扱いしてんの!?」

 

 待ったをかけるようにカウンターから顔を出した千束がぎゃーぎゃーと抗議する。

 その様子を見て棗とたきなは顔を見合わせて首を傾げる。

 

「「え、違うんですか(のか)?」」

 

「違うわい!!」

 

 そうして三人で顔を再び見合わせて……誰からともなく、笑いだす。

 それは確かに、たきなが棗や千束と打ち解けた証だった。




立花 棗

中身も見た目も成人してるとはいえ思うところがある。
本当に俺はここに居ていいのかと考えたりもしばしば。
煙草は吸うけど特にお気に入りの銘柄とかはない。

あの子は俺には少し、眩しすぎる。


千束

おなじみヒロイン。
今日は検診ついでに模擬戦で知り合いを打ち負かしてきた。
スカッとしたよね、たきな!

私はアホじゃないわい!


たきな

色々あったけど千束ちゃんの言葉に
背中を押されてリコリコに居場所を見つけた。
スカッとしました。

本当に千束と棗さんは仲が良いですね。
微笑ましいです。


ミカ

リコリコ店長。最近パッパ化が著しい。
千束と棗にとっての父親みたいな人。
最近はたきなも娘っぽくなってきた。

お似合いだと思うんだがな、二人とも。


ミズキ

おなじみ残念美人。撮った写真は削除された。
俺も店長もヤニ吸ってる感じで売ってないんですよ!とは棗の談。

いいじゃない、私だって出会い欲しいのよ!
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