【悲報】転生したら暗殺組織の隊員にされた件【戸籍ナシ】 作:星ノ瀬 竜牙
「…………やっぱりか」
目を覚ました立花 棗は自らの左手に巻かれていた包帯を外して予想していたように呟く。
彼の視線の先には
ナイフでつけられた切り傷が一週間もしないうちに治ることなど、常人ではあり得ない。
「どうなっているんだろうな……俺の身体は」
棗は顔を顰めて己の左手を見る。少なからず自分の身体に細工をされているのだろう、という当たりはつけているとはいえこうも人間らしくない再生能力を見せつけられたら気持ちが悪くもなる。
「…………今は考えても無駄、か。調べるにしても襲撃犯の特定が終わってからだな」
そうぼやきながらも、棗はスマホを取り出し一人の人物に通話をかける。
「もしもし、棗です」
『山岸よ、千束ならまだ定期健診に来てないわよ』
「あー……すみません、あとで無理やり連れていくんで……って、そうじゃないや。
今日って俺の怪我の具合診てもらっても大丈夫ですかね」
『……? ええ、構わないけどどうしたの?』
「少し、確認してもらいたくて」
『……わかったわ、ミカさんには私の方から連絡しておくから昼ぐらいに来なさい』
「っす、ありがとうございます」
棗の言葉に何かを察した通話相手、山岸という女医は深くは触れずに予定を開ける。
『ついでに千束も連れてきてくれるとありがたいんだけどね』
「……それはーちょっと難しいかもしれないですね……絶対ついてこないんで」
『……でしょうね』
普段はそれこそ子犬のようにべったりと引っ付いてくる千束ではあるが、棗が山岸女医の病院に行くと分かればささっと離れて隠れようとすらするのだ。それを理解しているからこそ、二人で通話越しにため息を吐く。
「すみません、近いうちに連れてくるので……襲撃犯騒動が落ち着いたころには必ず」
『頼んだわよ、棗くん』
「うぃっす。それじゃあお昼ごろに」
棗は返事を返して通話を切ると椅子に座りこむ。
そうして気付かれないように再び左手に包帯を巻きなおすと……
「────さて、起こすか」
再び立ち上がると、別室で寝ている千束とたきなを起こしに行くのであった。
────
そうして昼ごろ、約束通りに山岸女医の病院に訪れた棗は彼女に包帯を外され左手の様子を診察される。
「────本当に異常なしね、棗くん」
「やっぱりっすか?」
「ええ、傷痕も残ってないし完全完治よ。……本当に信じられないわよ」
「ですよねぇ……俺も正直驚いてますし……」
山岸女医の言葉に棗は困ったように肩をすくめる。
「はっきり言って、あなたの治癒能力は異常よ。軽傷とはいえそれでもナイフを握ってできた傷。
……頬の銃弾のかすり傷はすぐに治るのはおかしくなかったにしても、そっちがこんな短期間で治ることはまずないわ。
これだけ驚異的な治癒能力があるとしたら、それはあなたの身体のどこかに異常……もしくは欠陥があるとしか考えられない」
「だけど、それ以外の可能性もある。でしょう?」
棗は付け足すようにそう告げる。あくまでそれはただの医者の山岸としての意見だからだ。
「……そうね。さっきまでのは普通の医者としての意見。ある程度色々知ってる私からの意見を述べれば……アンタ、なんか埋め込まれてるとしか思えないわよ?」
「…………結論はやっぱそうなりますか」
リコリスを多く診て、そのうえで千束の担当医を務める山岸だからこそ、考えつく可能性だった。
立花 棗もまた錦木 千束のように何か身体に埋め込まれているというその可能性。
改めてそういう知識がある人物に言われてしまうと予想は確信へと変わっていく。
「千束の心臓を知ってるからこそ、言えることね。……もうあの子の心臓のことは知ってるんでしょう?」
「ええ、数日前に……ですけど」
「……ほんと、あの子。アンタには隠し事ばっかりね」
「お互い様なのでそこら辺は咎められませんよ」
呆れた物言いになる山岸に苦笑いを浮かべる棗。お互いかなりの数の隠し事をしているのだからそこら辺で怒ることはできないのである。
「このことはリコリコのみんなには伝えるの?」
「いえ、しばらくは控えようかなと。まだ確証もないですし……リコリス襲撃犯のこともあって、無用な混乱は避けたいですから。落ち着いて調べ終えたら言うつもりです」
「……そう、それならこのごたごたが落ち着いたらすぐにしておきなさい。隠し続けてると辛くなるだけよ」
「肝に銘じておきます」
先達の意見、それを蔑ろにはする気はないのだろう。棗は山岸の言葉にこくりと頷いた。
「まあとりあえず、見た目は大丈夫でも油断は禁物だからしばらくは包帯してなさい。
痛み止めの塗り薬も出しておくわ。……もし出血がまた確認出来たらすぐに来ること。いいわね?」
「ありがとうございます」
山岸に薬を処方された棗は受け取り、帰宅準備に入るのだった。
────
一方その頃、喫茶リコリコではクルミが弄っているパソコンを千束が覗いていた。
「……地下鉄襲撃犯とリコリス襲撃犯は例の銃を使っているみたいだな」
「例の……?」
「千束たちが頼んでいた偽の時間を掴まされた取引のだよ」
「ああ、じゃあもしかしてあの時
「うっ……あ、ああ……それ、はドウカナ……?」
クルミは心当たりがあったのだろう、ぎくりと身体を跳ねさせ視線を逸らす。
そう、その偽の取引があった時のDAのハッキングをしたのは他でもないこのクルミ……つまりはウォールナットであった。
「うん……?」
「アー……もうちょっと調べてみる……」
不思議そうに見つめてくる千束から誤魔化すようにクルミはパソコンに視線を戻す。
「それにしても……どうやってリコリスを連中は識別してるんだろ?」
「さぁな……まだ何とも言えないが、ボクと棗の見解は……その制服がバレてるんじゃないかって感じだぞ」
「……お? おお、なるほど。確かに、私らの制服って色はともかくデザイン共通だもんね」
クルミに見られて、千束はなるほど。と合点がいったように頷く。
「……連鎖的に識別されたっていうのはあるとみて構わないと思う。味方だと一発で識別できるように統一するのは良くあることだが、こういう時には不便だな。リコリス」
「まあ、こうしないと任務じゃ混乱のもとだからねー」
彼女たちリコリスが着ている制服は都会での迷彩服としての機能。つまり女子高生が銃を持っているとはだれも予想しないことの心理をついた代物だ。
そして、共通のデザインを使うことで、敵味方の区別をつきやすくするほか、一般市民から見れば同じ学校の学年違いやクラス違いを連想させるようにもしているのだ。
だがそれはあくまで一般市民から見ればの話。裏社会に生きる犯罪者たちからすれば、リコリスが制服を着ていることで認識できるのは同じデザインの制服は自分たちを殺しに来る敵だということ。
なまじ今まで、リコリスに処理された犯罪者たちは誰も生き残ることがなかったために、そういう発想に至ることはなかったのだろう。
だからこそ、クルミの言葉は新鮮でありそれと同時に納得がいく内容でもあったようだ。
────
「ただいまー」
「あら、おかえり棗くん。怪我どうだったのよ?」
「ん~? もう左手使ってもいいとは言われましたけど念のためまだ包帯はつけておくことと、塗り薬も渡されました」
夜中にレジ袋を手にしながらリコリコに帰ってきた棗。
その様子を見たミズキが棗に結果を聞いて、それを報告する。
「あ、これ帰りについでで買ってきたお酒のつまみです。よかったらどうぞ」
「お、気が利くわねぇ。ありがたく受け取っておくわ」
「それと店長、これ診察結果です」
「わかった、後で目を通しておこう」
チーズ鱈をミズキに渡し、ミカに診察結果の書類を渡しながらふと、座敷で唸っているたきなが視界に入る。
「……お前は何唸ってんのたきな」
「え? あ!? お、おかえりなさい棗さん!!」
棗に話しかけられ慌てて反応するたきな。
どうやら真剣に悩んでいたらしく、棗の帰宅に気付いていなかったらしい。
「いや気付いてなかったんかい。……それで、なに悩んでた?」
「ああ、いえ……その……どうやっても勝てないんですよ、千束にじゃんけんで」
「「「ああ……それで……」」」
たきなの悩み事を理解できたのか、ミカ、ミズキ、棗の三人は声を揃えて納得した様子を見せる。
「……最初はグーの某ドリフの人が編み出した形式でやってるもんな。お前」
「え、いやそれは無理でしょ」
「……だな、それでは千束には勝てん」
「は? どういう……?」
棗の言葉に同意するように頷くミカとミズキをみてたきなは困惑したように三人を見る。
「千束が相手の服や筋肉の動きで、次の行動を予測しているのは知っているだろう?」
「グーから始めると、次の手を変えるかどうかを読まれるのよ」
「……変えないとわかればアイツはパーを出すし、変えるとわかったらチョキを出せばアイツは絶対に負けない」
「えっと……つ、つまり……?」
「千束と引き分けになれるのが三割、勝つ確率はゼロだ」
「…………マジですか?」
「「「
たきなは三人の説明を聞いて顔を引き攣らせながら砕けた口調で問いかけ、それに同意するように三人は頷いた。
「まあつまり、千束に勝ちたいなら最初はグーじゃなくて最初の勝負で勝つしかないのよ」
「じゃんけん、ぽん! で一気に勝負を決める、先手必勝こそが千束相手で大事なわけだ」
「相子になったらもう勝てないし、ましてや相子から始めたら一生勝てないわよ~?」
「………………大人げないですね、千束」
「「「
たきなは大きなため息を吐きながら呟き、三人は再び同意するように頷いた。
「……というか、知ってたなら教えてくださいよ、棗さん」
「言おうとしたらアイツその都度ガムテープで口塞いでくるし言えなかったんだよ……」
「……あの行為はそういう理由だったんですか」
ジト目で睨むたきなに心の底から申し訳なさそうに顔を逸らす棗。
しばらくの同棲生活の間で行われていた千束による棗の口塞ぎの理由が思わぬところで判明して苦笑いを浮かべてしまった。
「組長さんのところに配達行く……あ、棗おかえり! ……って、なによ、四人揃ってこっち見て?」
黄色のポンチョを着た千束が従業員用のドアを開けて顔を出す。
それを四人は呆れたような目で見つめていた。
「「
たきなと棗は千束の不思議そうな顔に、すっと視線を逸らしてなんでもないと返す。
多分今バラすと面倒くさいことになると判断したのだ。
「いいから、はよ配達行ってきなさいよ」
「すぐ支度します」「俺も準備するわ」
「ああ、大丈夫! 制服がバレてるんじゃないかーってクルミが」
「……リコリス制服が、ですか」
「まあ、確かに共通デザインが裏目に出たんじゃないかってのは俺とクルミで睨んでたからな」
「そうそう。そんなわけで、これなら~? ぜったーい? バレな~い!」
黄色のポンチョをくるり、と一回転して見せびらかす千束。
「私服じゃ銃は使えないんだぞ?」
「警察に捕まっちまえ」
「んなことは分かってるわい。下にちゃんと着てますぅ~!」
「ぶっ……」
ミカとミズキの言葉にポンチョを捲り、赤い制服を千束は見せつける。
棗は少し顔を赤くして視線を逸らした。
「って、なんで棗は顔逸らすの」
「その捲り方はよろしくねえよダボ……」
「へ? …………ッ!? ば、ばか! エッチ! 変態!」
棗の言葉に一瞬固まるも、どういう意味なのか察した千束は顔を赤くしてポンチョを戻して棗を睨みつける
「はぁ!? お前がやったんだろうが!?」
「別にそういう意図でやってませんー! そういう連想する脳内真っピンクな棗が悪いんでしょお~?」
「うっせえ! お前もその想像に至った時点で同類だわ脳内桃色お花畑娘!!」
「ああん? 言ったなコノヤロー!! 表出て決着つけるかあ~?」
「おう、上等だわ。近接戦で勝負付けたろうか」
「あー! 自分有利な方でやろうとしてる! せこい! 女の子相手に大人げない!!」
「お前だって近接以外じゃ自分有利だろうが!! 人のことで文句言ってんじゃねえよ!!」
「あ?」「あ"ぁ"!?」
バチバチと火花を散らし、喧嘩腰になる千束と棗。
それを見て、また始まったか……と頭を抱えるミカと見せつけやがって、ケッ! と妬ましそうに睨むミズキ。
「お二人とも、夫婦喧嘩はその辺りにしてください」
「「誰が夫婦だっ!?」」
「いやおめーらだよ」
たきなの言葉に反抗する二人を見てミズキがジト目でツッコミをいれる。
「……とりあえず私も上着を着用して同行しますね」
「あ、それは大丈夫! モーマンタイ! たきな、今日の夕飯楽しみにしてるね♡」
「……なら、俺がバイクで連れて行こうか?」
「いいって、別に組長さんのところそんな遠くないし。徒歩でいくから! 心配し過ぎ、チンピラぐらいなら対処できるってば! 私は介護されてるおばあさんじゃないの!」
「わかったよ……」
二人の気遣いはありがたく受け取っておくが、迷惑をかけすぎるのも千束としては申し訳ないのだろう、断りを入れたため、たきなと棗は渋々と下がる。
「ほんじゃ、行ってきまーす!」
「「「「いってらっしゃい」」」」
そうして千束が外に出ていくのを見届けてしばらく……
「千束、遅くないでしょうか」
「いやいつも通りでしょ」
たきなの言葉にミズキがツッコミをいれ
「……千束、遅くないか?」
「いつも通りだぞ、棗くん」
「……うわ、マジじゃん」
棗の言葉にミカがツッコミを入れて、たきなと棗は時計を見るがそんなに時間が経っていなかったために何かあったと判断できるラインではなかった。心配性な二人である。
そうして二人揃ってカウンターの椅子に座り落ち着こうとした直後だった。
「うわあああああああ!?!?」
奥の押し入れから悲鳴が聞こえたかと思えば青い狸のごとく、ゴロゴロと転がり出て慌ててタブレットを持ってくるクルミ。
「どうした!?」
「あああああ!!?? み、みみミかみじゃない! 見てくれこれ!!」
慌てた様子のままクルミはタブレットの画像を四人に見せる。
「これは銃取引の時のDAのドローン映像だ!! 殺されたリコリスはこの四人!! これが犯人に流出して顔がバレてたんだよ!?」
そこには被害にあい殺された四人のサードリコリスの顔がはっきりと写っていた画像があった。
「はぁっ!? なんでそんなもんが流出してんのよ!?」
「まさか……あの時のハッカーか?」
「DAにハッキングしたやつか!」
「DAもまだそのハッカーを特定できていないようですし、まずいのでは!?」
四人は焦ったように顔を見合わせて、タブレットの画像を見直す。
「アンタの仲間じゃないの!? さっさと調べなさいよ!」
「うぐ……そ、それは……」
食い気味に問い詰めるミズキに思わず言葉が詰まり、クルミは目を逸らす。
当然そんな態度を見せられたら、ミズキは訝しむ。
「なによ?」
「……あのときの、ハッキングは……ボクがやった」
「「はぁ!?」」
「どういうことだっ!?」
驚愕する四人、ミカが慌ててクルミに問い詰める。
そう、あの日の銃の取り引きのタイミングでDAのラジアータをハッキングしたのはウォールナット、つまりクルミだったのである。
それが原因で銃千丁が失踪し、たきなはトカゲのしっぽ切りとして左遷されたのだからとんでもない話だ。
「い、依頼を受けてDAをハッキングしたんだ! その
「ちょっと……じゃあ、アンタが武器をテロリストに流した張本人ってわけ!?」
「それは違う!! 指定の時刻にDAのセキュリティを攻撃しただけだ!!」
叫ぶように問い詰めるミズキに食い気味で否定するクルミ。彼女とて悪気があったわけではない。
真実を知りたいというその強い探求心が結果として悪い方向に向かってしまっただけなのだ。
「そうですかぁ! おかげで正体不明のテロリストがぁ? 山ほど銃を抱きしめてたきなはクビになりましたけどぉ!?」
「もういい! やめろミズキ!」
「映像はそれで全部なんですか!?」
小言を言うミズキを制止するミカと、情報の数をクルミから聞き出そうとするたきな。
その時クルミはふと、辺りを確認して1人……千束が居ないことに気付く。
「おい、千束はどこだ!?」
「え? 先ほど配達に行きましたが……」
「全部じゃ、ないんだ……!」
そう言い、クルミが見せた画像は千束と棗がたきなと揉めていた……沙保里さんを護衛したときのものだった。
それはつまり……標的には千束も含まれているということにほかならない。
いち早くその事実にたどり着いた棗は拳銃とナイフを手にして、即座に外に出る。
「────クソッ!!」
「棗さんっ!?」
「俺は先に千束の所に行く! 絞田組のところならそう遠くはないはずだ!
たきなは準備が終わって千束と連絡がついたらすぐにこっちに来てくれ!」
「わかりました! 後で合流します!! お気を付けて!!」
インカムを耳につけ、ヘルメットを被りながらたきなに指示を出す。
その後エンジンをかけ、棗はすぐにバイクを出して追いかける。
(千束……死ぬなよ!!)
『もしもしもしもし~?』
「千束! 敵はお前を狙ってるぞ!」
『へ? って、ちょいちょいちょいちょいちょい!!』
ミカのスマホに車の走行音とぶつかったような衝撃音が流れる。
「千束!? 千束!!!!」
「なんかすごい音したよ!?」
「私もすぐに組事務所に向かいます!!」
たきなは制服に着替え終え、リコリス鞄を背負うと即座に外に出て棗の後を追うように走り出す。
「クルミはすぐに千束を探せ!!」
「わかった!!」
クルミはミカの指示に頷き、即座に押し入れに戻り、絞田組事務所までドローンを飛ばす。
────
『どうだ! 今回は被害ゼロだろ! 文句はないだろ!!』
「わかったわかった、いい作戦だよ。ハッカー」
千束を轢いた犯人の男は、インカム越しに聞こえてくる声に相槌を打ちながら
彼女の身体を蹴って転がす。
「あ? こいつは……へぇ、なるほどな」
男の視界に彼女がつけていた梟の首飾りが入り何かを確信したように頷く。
その直後、轢かれた……かのように見せかけていた千束が着込んでいたポンチョを投げつけ、犯人の男の視界を遮る。
「お、らぁ!!」
「っ!?」
「がぁっ!?」「うげっ!?」「がふっ!?」
即座に反撃するように千束は周囲の男の配下と思わしき連中に弾を撃ち込み、逃げだす。
「チッ!! 追え!!」
「あー! ちくしょう! ポンチョ盗られたぁ!!」
『おいおい! 目の前まで追い詰めたのに! 僕のせいじゃないぞこれは!!』
「…………あ? なんだこれ?」
部下に指示を出した直後、インカム越しの文句をたれる声を聞きながら
撃たれた部下の身体に付着していた赤い結晶を手に掴み、困惑したような姿を見せる。
その赤い破片は千束の非殺傷弾が着弾したときに拡散される赤い粉の正体だった。
逃走劇を繰り広げる千束と襲撃犯。
ハッカーが襲撃犯にいる以上、千束に隠れる場所はなかった。
「はぁ……はぁ……って、ん?」
「は! また吹っ飛ばしてやる!」
「ああもうしつこいなぁ!!」
部下の運転する車から身体を出して男が銃を構えて自分を狙っているのを理解した千束はしびれを切らして後ろを振り向き愛銃を構える。
「なにっ!?」
男の射撃を千束はいつものように予測して避けた直後、反撃のために連射し車のガラスを割った後に主犯格と思わしき緑髪の男の頭に非殺傷弾を撃ち込む。
「がはっ!?」
その着弾の衝撃で車から手を離した男は地面に叩きつけられて勢いよく転がっていく。
「アンタが一連の襲撃犯?」
「……ひでえ、じゃねえか」
起き上がり振り向いた男の頭は地面に叩きつけられた影響か血だらけだった。
「うっわ……」
それを見た千束はドン引きしながらホールドアップするように拳銃を突き付けて、男の後ろに回る。
……普通であれば、この時点で男は手を挙げて反撃はできなかっただろう。
だが、男は先ほど知ってしまった。錦木 千束には殺意がない。殺す気がないことを。
ならば、ホールドアップに従う必要はなく。
「ぺっ!」
「うわっ!?」
千束の両腕を掴んだ男は、先ほど拾った赤い破片をかみ砕き、唾液と共に赤いインクに戻していたのだろう。
それを千束の目に吐きかけることで、彼女の視界を奪う。
「ハハッ! 引っ掛かりやがった!」
そのまま男は、千束の制服を右手で掴み、殴りかかる。
「いっ!?」
「いいぞー! 真島さーん!!」
「やっちまってください!!」
少女をいたぶる姿を見つめ、配下の男たちはヤジを飛ばす。
「ははは! ゴム弾じゃなく!」
「あぐっ!?」
「実弾にしときゃ!!」
「うぐっ!?」
「良かったなぁ!!?」
「がはっ……!?」
真島、と呼ばれた緑髪のパーマの男は千束を殴り飛ばし、自分の所持していた拳銃を手に取ると、千束に突き付ける。
「いたたた……ぁ……」
それは、錦木 千束でも回避不能の距離。ましてや殴られてふらついている現状では避けることなどできない。
つまり……死を確信できる状況だった。
(ああ……これ、ダメかも。ごめん……って、なんで今棗の顔が過ったんだ私……?
……って、今更か。好きだからだもんね。こうなるの)
千束は反撃の隙を伺いながらも死を覚悟する。その時、ふと彼の顔が過って思わず失笑してしまう。
そんな彼女の心境もお構いなしに、男……真島は銃を突き付けたまま千束が首にかけている梟の首飾りについて問い詰めようとする。
「なあ、
「……は?」
「それだよ、それ」
「っ……これ、は」
言葉に詰まり、千束が押し黙ったその時────
「なんだっ!?」
「ッ!?」
バイクのけたたましい騒音と共に、何者かが乱入する。
「……随分と、俺の大切な人をかわいがってくれたな。テロリスト」
「ぁ、なつ、め……?」
バイクを乗り捨てて乱入したのは、立花 棗。その人だった。
────
拳銃を真島に突き付けたまま、棗は千束のそばに近づく。
視界が戻ったのであろう真島は棗の顔を見て、子供のように目を輝かせる。
「おいおいおいおい……マジかよ、マジか!」
「……最悪だ、お前のツラを
「その髪色……目つき、やっぱりお前か。
生きてたとは嬉しいぜ。随分と久しぶりだなぁ? 灰色さんよ?」
「……その声、やはり生きていたか。戦争屋」
「おいおい、んな知らない人みたいな扱いすんなよ……なァ、兄弟?」
「同じにするな、俺はお前たちのような無法者じゃない」
「……はい、いろ…………?」
棗と真島の会話を耳にした千束はどういうことかと棗の顔を見る。
少なくとも、錦木 千束はそれを知らない。立花 棗が灰色と呼ばれていることを彼女は一度たりとも聞いたことがない。
「おいおい、バランス考えろよ? お前はこっちじゃなきゃ釣り合わねえ。だろ、
「ぇ……アッシュ……って……」
その名前は、知っている。錦木 千束はその名前を知っている。
かつて、アッシュと名乗った少年と……錦木 千束は幼い頃に出会っている。
「棗、今のどういう……」
「……話はあとだ、たきながこっちに向かってる……アイツの援護を待って逃げるぞ」
「……わかった、あとでちゃんと聞かせてよ?」
小声で話す二人だったが、棗にそう言われて渋々と引き下がりたきなの援護を待つように伺う。
「にしても……アランのリコリスと、あの灰色が一緒に行動するとはな? バランスは取れてねえが……おもしれぇな、お前ら」
真島はそう笑い、棗とお互いの頭を狙って銃を突きつける。
「こっちにこいよ、灰色。お前は俺と同類だ。自覚してんだろ? あの電波塔で嗤ってたもんな、お前は」
「黙れ、お前が何と言おうと俺は────」
真島の言葉に嚙みつくように叫ぼうとした棗。
直後真島の拳銃に銃弾がヒットする。そして金属音と共に勢いよく真島の手から拳銃が弾き飛ばされた。
「な、に!?」
「ッなんだ!?」
「ぎゃあっ!?」「が!? あ、足がァ!?」
「どっからの狙撃だ!?」
急所を的確に外されたうえで無力化された連中と、辛うじて車に回避した配下の男たちはどこからともなく飛んできた銃弾に警戒する。
そして、その正確な射撃が誰のものか理解していた千束と棗は一斉に走り出す。
「千束!」
「わかってる!!」
その道中で、千束のストライクウォーリアーを拾った棗は彼女に投げ渡す。
それを手に取った千束は棗と共に、射撃で牽制して時間を稼ぐ。リコリコの赤い車がやってきたのを確認したからだ
「チッ……!」
「走るぞ!!」
真島は即座にどこからも弾が当たらない位置に隠れる。その隙をついて、ミズキが運転する車まで全速力で逃げる千束と棗。
「千束、棗くん! 乗るんだ!!」
「と、りゃあ!!」
後部座席に乗っていたミカがドアを開けて、手を伸ばす。
そのまま後部座席に千束が先に飛び込んだのを確認し棗は威嚇射撃を続ける。
「ッ、たきな!」
「棗さん!」
威嚇射撃を終えて走り込んできたたきなを見て棗は手を伸ばす。
そのまま彼の手を掴んだたきなは
「せぇのっ!」
棗に引っ張られる形で後部座席に放り込まれる。
「むぐっ……!?」「せ、せまい……!」「詰めてくださ……!」
棗が座れないからこそ慌てて席を詰めようとしたミカたちだったが
「ッ!」
その隙をつくように一人の男がこちらに向けて狙い撃とうとしているのに
「棗ッ!?」
「先に行け! あとで乗り捨てたバイクで追いつく!!」
棗は自らを囮にするつもりなのだろう、そう叫び敵に威嚇射撃を続けながら離れる。
「クッ……すまん、棗くん! ミズキ! 出せ!!」
「待って先生! 棗が────きゃあ!?」
そのままミズキがアクセル全開で車を飛ばして逃げようとするが、
それを妨害するように、無人操作の軽自動車が突っ込んでくる。
「やっば! みんな掴まって!!」
上手く、車を掠らせたミズキはそのまま更に速度を上げて逃げようとする。
当然、連中は追いかけようとするがそれを棗が射撃で牽制して防ぐ。
「こっちだクソども!」
「真島さん! どうしますか!?」
「二手に分かれろ!! 俺はアランリコリスを追う! ハッカー! その車は俺が使う!!」
棗は陽動するように挑発するが、それを真島は冷静に対処して二手に分かれさせる。
「クソッ……! やっぱりあの男相手じゃ簡単にはいかせてくれないか!!」
配下の男が数名、棗の方に向かってくるが本命の千束を狙う真島は車を使って追いかけようとする。
そして、千束たちを狙うように一人の男がミサイルランチャーを構えたのを
「ッ……!! 当たれ……!」
「がぁっ!?」
その射撃は正確に男の手を撃ち抜き、麻酔弾の効果で手元が狂った男は狙いを外してミサイルを撃ち込む。
そのミサイル弾の軌道は千束たちの乗る車から逸れ、真島が乗ろうとしていた軽自動車に着弾する。
「は────?」
ミサイル弾は見事に軽自動車に着弾し、近くにいた真島は爆発に巻き込まれて海の中に吹き飛ばされる。
「逃がすな追え!」
「逃がすかよ、クソガキ!!」
「────ッ!?」
走って逃げようとした直後に、一人の男の拳銃に横腹を撃ち抜かれる。
「く、そ……!」
腹を押さえて必死に逃げ、そのまま棗は柵を乗り越え────ドボン、と海の中に落ちる。
「なつめぇえええええ!?!?」
「落ち着け千束!!」
「離して先生!! 棗が!! 棗っ!!!」
それを車から目撃して、悲鳴を上げるのは千束だった。
慌てて彼女は車から降りて助けに行こうとするが、ミカに捕まり引き留められる。
「今狙われているのはお前だ!! お前がここにいる限り、逃げる棗くんも狙われ続ける!!」
「でもっ────!」
助けに行かないと、そう言おうと千束がしたところで、たきなが千束の肩を掴み顔を真っすぐに見つめる。
「落ち着いてください、千束!」
「たき……な……?」
「私が棗さんを助けに行きます! 予備の車は!?」
「あるわよ! まずはそこまで飛ばすわ! そこで降ろすけどいい!?」
「構いません! お願いします!
……千束、必ず私が棗さんを助けます。大丈夫です、棗さんが強い人なのは……千束も知ってますよね?」
「……うん、ごめん……ありがとう、たきな」
たきなに優しく諭され、幾分か冷静さを取り戻す千束。
ミズキは即座に、予備の車を置いてあった駐車場まで車を走らせるとそこでたきなを降ろす。
「……たきな、棗をお願い」
「はい、必ず連れて帰ります」
「……頼んだぞ」
ミカと千束に頼まれ、たきなは頷くと予備の車の運転席に乗り込みすぐにエンジンをかける。
「クルミ」
『見つけてる、今そっちの車のカーナビに棗のいる場所を送る。いそげよたきな。意識があるとはいえ、まずいかもしれない』
「わかっています……!」
クルミの警告に頷き、たきなはアクセルを勢いよく踏み即座に棗のもとへ向かうのだった。
────
「ごふッ……ああ、クソ……まずったな……」
海から港に這い上がり、横腹を押さえ、そこから血を流しながら重たくなった身体をゆっくりとひきずって貨物が積まれている場所まで歩く。
ぽた、ぽた、と海水と血を流しながら歩く姿は痛々しいというほかなかった。
「当たったところが……わ、るかったな……これ……」
貨物コンテナでできた十字路に逃げ込んだ棗は、コンテナにもたれかかり座り込む。
「……そんな……さけばなくて、も……わかってる……ゲホッ……」
まるで誰かに耳元で叫ばれているようなことを呟きながら、棗は止血をしようとするが……
「あぁ……これ、かい、すいのせい……で、むり……か……?」
手元がふらつくだけでなく、布が濡れていたせいか血が止まる気配が一切なかった。
これ、本格的にまずい。棗はそれを確信しながらもゆっくりと呼吸をする。
「それは……た、しかに……ごめ、ん……だ……」
そこまで口にしたところで、棗は意識を奪われるように……目を閉じた。
────
夢を見ている。
「ねえ、どうしてぼくがえらばれたの?」
「それはね、君が特別だからだよ」
「……とく、べつ……?」
それは誰かの幼い頃の記憶だろうか。……それを俺は知らない。
「ああ、君には神様から与えらえた
靄のかかって顔が見えないスーツの男性のノイズ混じった声を聞く。
そんなことを、言われた記憶がある。────俺は知らない。
「……そっか……じゃあ、ぼくはいらない!」
「……なぜだい? 君は世界を救えるんだよ?」
「だって、ぼくはきゅうせいしゅになりたいわけじゃないもん! ぼくがまもりたいのは────」
「……そうか、それはとても素敵なことだね」
「えへへ、そうでしょ! ■■おじさん!」
名前を呼んだ気がした。だけど、その声はノイズが混じって上手く聞き取れない。
その人は、少年の頭をなでていた。知らない。だけど────
「────ねえ、どうして? 」
その火の海を。
────火の海だけは。俺は知っていた。
────
「……さ……さん……なつ……!」
声が、聞こえる。誰かが語り掛けている気がした。
ああ、起きないと。……ゆっくりと目を開ける。
「なつめ……! ────棗さん!」
視界の先には黒髪の少女がいた。誰なのか、知っている。
彼女は────
「ぅ、ぁ……た、きな……か……?」
「……棗さん……! これ、わかりますか……!」
たきなは指を三本立てて、その数が分かるか確認する。
「……さん……ゆび……」
「……! よかった……」
正確に答えた棗に、ほっと胸を撫でおろして……たきなは安堵の表情を浮かべる。
「止血は済ませました。このまま車に運びます……肩を担ぎますね?」
「……たの、む」
たきなに棗は肩を担がれ、ゆっくりと車まで運ばれる。
「降ろしますね……?」
「ああ……」
車の後部座席におろされ、棗はそのまま座席の上で横になる。
「ちさと、は……だいじょうぶか……?」
「はい、無事です。千束も、ミズキさんも、店長も……私も」
「……そう、か……よかった」
「少なくとも、私の足は掴まれていないはずです。リコリコに帰るまでは安全だと思いますから……ゆっくりと休んでください」
「ああ……そう、するよ」
たきなにそう言われて、棗はゆっくりと深呼吸しながら目を閉じる。
「……そう、だ……たきな」
「……なんですか?」
シートベルトをして、車のアクセルを踏みながらたきなは棗に呼ばれて反応を返す。
「ありがと、う……たすかった……」
「……私も、たくさん棗さんには助けられています。おあいこ……いえ、まだ返せてません」
「そうか……な、ら……それまで……生きてないと、なぁ……」
「……ええ、そうですね」
棗が目を閉じたまま笑みを浮かべたのをバックミラーで確認し、
たきなはくすりと微笑み、棗と共に、リコリコへと帰還するのだった。
────
「ん……んん……」
(なんだ……? なんか、手……握られてる……のか……?)
棗は、意識が戻ったのか目を開ける。
見上げた天井は、知らない……病室のものだった。
「千束、か……?」
ベッドの上にいると理解した棗は周囲を見渡し、足元に視線を動かす。
そこには千束が手を握ったまま、眠っている姿があった。
目元は赤く腫れており、泣いていたのであろうことが伺えた。
「……泣かせちゃったか」
手をゆっくりと、千束から離すとそのまま彼女の白金の髪を優しく撫でる。
「……ん、んう……? な、つめ……?」
「……おはよう、起こしちゃったか?」
頭を撫でられた感触で、目を覚ましたのだろう。寝ぼけまなこなまま棗の方を見る。
……そうしてしばらく彼の顔を見て────
「………………棗ッ!」
「うぉおうっ!?」
がばっと千束は勢いよく抱き着いた。
「良かった……よかったよぉ……! なつめが、しんじゃうかと……おもって……それ、で……それでぇ……!」
「……ごめん、心配かけたな」
泣きじゃくりながら、涙声で喋る千束。その手と身体は恐怖に震えていた。
それに棗は気付くと、優しく抱きしめ返して彼女の背中をあやすようにさする。
「う、うぅぅ……ばかぁ……ほんとに、ほんっとに……しんぱいしたんだからぁ……!」
「ごめん……大丈夫、俺はここにいるから……な?」
「うん……」
千束が落ち着くまでの間、棗はずっと彼女の背中をさすり抱きしめ続けたのだった。
────
「もう動いても大丈夫だとは思うけど、しばらくは安静にすること。いいわね?」
「っす……迷惑かけてすみません、山岸先生」
まさかこんなすぐに世話になるとは棗自身思っていなかったのだろう、心底申し訳なさそうに謝罪していた。
「いいのよ、医者は怪我人や病人を診てなんぼなんだから。頼るべき時は頼りなさい」
「はい……ありがとうございます」
山岸に、怪我の様子を診られている横でたきなと千束はほっと胸を撫でおろした。
「……お二人とも、大事には至らなくて良かったです」
「たきなにも世話になったな、すまん」
「いえ、棗さんがご無事でよかったです」
「ほんとだよ、もう! すっごい心配したんだよ私!」
「ごめんってほんと……」
千束が私怒ってます! と露骨に頬を膨らませぷんすこと怒る様子を見て棗も流石に罪悪感があるのかいつもよりしおらしく謝罪していた。
「……千束の弱点は目、棗さんは……私たちでしょうか」
「いや誰だって目は弱点でしょたきな」
「……身内を傷つけられたら誰だって怒るだろ」
たきなのそんな小さく呟いた声に千束と棗は突っ込む。
「ふふ、アンタらいいトリオね」
そんな三人の仲のよさげな姿を見て山岸はくすっと微笑む。
「ええ……? そうっすかね……?」
「そこはそうでしょー! って自慢するところでしょ棗!」
「あいった!? 今そこ小突くのやめろ!?」
「あ、ごめん!?」
横腹を小突かれ、棗は痛がって普通に手で押さえる。今現在の棗の弱点であった。
「ねえ、たきなも棗も! 一緒に居れば安心だって分かったし……その……しばらく同棲続けない?」
「……そうですね」
棗の方をたきなはちらりと見る。それに気付いた棗はアイコンタクトを送って頷く。
「では、千束が私とのじゃんけんで勝ったら続けましょう! 棗さんもそれでいいですか?」
「ああ、いいぞ」
「お? おお? 二人とも強気だね? 全敗の記録を忘れたのかな~?」
「ええ、ですがそれは過去の話です」
自信満々な二人を少し遠くから眺める山岸と棗。
「言うねぇ? にしし! いくよー! 最初はグー!」
そこまで千束が言ったところで、たきなが食い気味に声を被せてくる。
「じゃんけんっ!」
「どぉうぇええ!?」
「ぽんっ!!」
それに動揺した千束はパーを、たきなはチョキを出す。じゃんけんの結果はたきなの勝ちで千束の負けだった。
「あああああ!?!?」
「よっし! よしよしよしよっし……!」
「はい、たきなの勝ちー」
負けたことにショックを受ける千束とガッツポーズし小躍りするたきな。
「棗ぇ! まさか教えたのぉ!?」
「ズルするお前が悪い」
「棗の鬼ー! 悪魔ー!」
あっけらかんとそう告げた棗に、千束はしばらく文句を言い続けるのだった────
立花 棗
重傷にはならなかった元リリベル。
かつて灰色というコードネームだった。
千束ちゃんを泣かせたことで罪悪感がマッハ。
錦木 千束
棗が海に落ちて一番取り乱した。
病室でしばらく泣いてずっと手を握ってた。
棗が死んだら……私……
井ノ上 たきな
今回の功労者。棗を助けて恩を1つ返す。
でも、まだ全部は恩を返せてませんから死なないでくださいね。
じゃんけんで勝って小躍り。
クルミ
多分戦犯。以前のハッキングがここで悪い影響を及ぼした。
たきなには謝罪したがまだ棗には謝れてないので
あとでちゃんと謝罪をしようとしている。
中原 ミズキ
今回の功労者その2。車で助けた。
正直棗くんが海に落ちたときは冷や汗とまらなかったわ。
ミカ
功労者その3
棗くんが海に落ちた時気が気でなかった。
けど冷静に対処した辺りやはり大人である。
真島
電波塔以来に出会えた御同輩にうっきうき。
バランスちゃんと取ろうぜ?なあ、兄弟。