【悲報】転生したら暗殺組織の隊員にされた件【戸籍ナシ】   作:星ノ瀬 竜牙

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リコリス・リコイル 新作アニメーション決定おめでとうございます。

まさかこんなに早く続編が決定するとは思わなかったのでびっくりしてます。
……拙作もいい加減完結に向けて投稿せねばということで投稿です。


怪物と君影草

「なるほど……心臓とナノマシンね。

 ……兄弟のあの身体能力は、アンタの仕掛けのおかげってワケだ」

 

 真島は己の拠点に拘束した吉松シンジと対面しながらそう笑う。

 

「あのアランリコリスや、兄弟との関係性は大体は分かった。

 とんだ悲しいすれ違いだな。アンタの言葉や行動で、結局アイツらは望んだ形とは違う方向に成長したんだからな」

 

 罪なヤツだな。と真島はシンジを睨みつけながら皮肉交じりに嘲笑する。

 

「ま、アンタのおかげで俺は命拾いしたわけだが……同情するぜ、兄弟にも、あのアランリコリスにもな。こんなヤツが命の恩人だなんて、俺は死んでもごめんだしな」

 

 狂った思想はごめんだ。真島は己が持つ梟のチャームをぷらぷら、と揺らしながらそういえば、と思い出したように吉松 シンジを見つめながら問いただそうとする。

 

「思い通りにならなかったからって、手を出すのはルール違反じゃなかったか?」

 

 才能ある者に支援はする。だが、その才ある者に意図して接触するのはアラン機関の決まりにおいては違反行為なのだ。

 吉松 シンジはその点において幾度となく破っている。立花 棗、錦木 千束への接触、そして錦木 千束の心臓の破壊。事が知られれば吉松 シンジは間違いなくアラン機関から追放されるだろう。

 

「ふむ、君の言うことは最もだ。だが……錦木 千束(かのじょ)が道を違えたのは私の失態だ。その責務を果たすだけだとも」

 

「へェ……じゃあ、俺も殺すのか?」

 

「まさか、君は優秀なアランの寵児(チルドレン)さ。真島くん。

 ……戦争における才能、実に素晴らしいじゃないか。銃は千丁で足りたかな?」

 

「恩着せがましいんだよ」

 

 吉松の言葉が癪に障ったのか、机に置いていた酒の空き缶を薙ぎ払って拳銃を真島は突きつける。

 

「俺もアイツらと同じだぜ? 思うがまま、自由に生きてる。だから気分次第でアンタをぶっ殺すかもしれねえ。いいのか、それでも?」

 

「構わないとも、アランの理想を果たせるのなら……その命すら惜しくはないさ」

 

「ハッ、気持ち悪いな。アラン機関(お前ら)は。……やっぱDAと同じだよ、お前らは。コソコソ裏から我が物顔で手前勝手なお正義サマで世界を支配してやがる。DAを潰したあとはお前らだ……アラン機関」

 

 心底気に食わなさそうな顔で、真島は吉松を睨みつける。次はお前だ。と直接的に告げた。

 

「本丸は……どうせ語らねえだろ。こっちで好き勝手に探らせてもらう。

 ──うちには優秀なマイハッカーがいるしな」

 

 真島はDAを、そしてアラン機関を潰すために動くだろう。その流れは決して変わらない。

 

「君か、千束か、あるいは棗くんか……」

 

「あ? 何が言いてえ?」

 

「なに、誰が生き残るか……という話だよ。アラン機関(私たち)は誰でも構わないんだ。殺しの才能を持つ者が、世に出てくるのであればね」

 

「イカれてんな。お前」

 

 ……そのためのコイツか。と嫌悪感を滲ませながら真島は吉松が持っていたブツのひとつ……注射器を見つめる。

 その注射器は、立花 棗が以前刺されたモノと同じ形状のものだった。

 

 ────

 

 注目を浴びている。というのは、一発で分かる。

 ……当然と言えば当然だ。俺はどうしようもないぐらいにこの組織において目立つ存在だ。

 

「……しかし、何処に行っても視線を浴びるというのは些か落ち着かないな」

 

「そう思うのなら、その格好をどうにかすればいいだけだろう」

 

「……どのみちだろう。この髪と目のヤツは俺しかいないしな」

 

 赤服の少年が指摘するようにこちらを見る。コイツは君影草(リリベル)のファーストの1人であり……そして、かつて俺と共に任務に当たっていた1人だった。十年前はセカンドだったはずだが……

 

「……いつの話をしている、十年も経てば俺とて昇格ぐらいはする」

 

「それもそうか、それでもまあ……相変わらず……不愛想だな、お前は」

 

「……ふん、余計なお世話だ」

 

 かつかつ、と歩きながら司令室の前にやってくる。……まあつまり、コイツは案内だったのである。

 

「くれぐれも司令に手は出すなよ。その時飛ぶのはお前の首だと思え」

 

「────まさか、手を出すときはお前たちも道連れだとも」

 

 いっさいの慈悲なく鏖殺だ。それ以外のやり方を知らないとも言えるが。

 

「チッ……司令、ヤツを連れてきました」

 

『入りたまえ』

 

 言われるがまま、司令室に入る。そこにはやはりというべきか、虎杖司令が立っていた。

 

「こうして実際に対面するのは久しぶりだな、棗くん。……壮健そうでなによりだとも」

 

「御託や談笑は不要です。現在の状況は」

 

「ふ、任務には忠実か。それでこそだが。……現在、リコリスが真島一派の拠点を制圧。しかし拠点はもぬけの殻だった」

 

「また、後れを取った……ということですか」

 

「結果だけを見ればそうなる。だが、ヤツの目的は判明した」

 

 目的、つまり真島のやろうとしていることだろう。ヤツの性格だ。大方、意気揚々とリコリスにやろうとしていることを一部は開示したといったところか。

 

「目的は?」

 

「延空木の破壊だよ」

 

「なるほど……」

 

 因果なものだ、それはつまり十年前の再演を行おうとしていることになる。

 なによりまだ、あの塔はオープンしていない。狙いはオープンセレモニー当日か。634mの塔を爆弾でへし折る。……オープンセレモニーにきている住民は勿論、重鎮への被害も相当になるか。

 

「過去の再演だけは阻止せねばならん。そして、上層部はリコリスだけでは不安視もしている」

 

「……そのためにリリベルを動かす可能性がある、ということですね」

 

「そうなるな。ゆえに、君に課す役目は一つ。リリベルの全ての指揮を担え」

 

「…………それはまた」

 

 大きく出たものだ。ある種の裏切り者である俺に、リリベル全ての指揮をしろと。

 

「どうした、不服かね?」

 

「……いえ、ただ裏切り者でもある俺に指揮権を担わせるのは如何なものかと」

 

「たしかに、普通であれば正気の沙汰ではないだろうな。

 だが……君と私は既に交渉済みだ。であれば疑うことはないとも。それに、君ほど優秀なリリベルも存在はしないからな」

 

 どの口が、それは交渉ではなく脅迫だろうに。

 俺が裏切れば……千束達を殺す気の癖に。やはり殺すべきか、と俺の思考によぎるが……ふと、千束の顔が過ぎり、その思考をかき消した。

 

「……理解しました。では、任務に当たるにつき……今回対応するリリベルの経歴を全ていただいても?」

 

「構わんよ、既にこちらに揃えてある」

 

 虎杖司令は、タブレットをこちらに手渡す。なるほど、ここにあると。

 実際に拝見すれば、そこには確かに他の隊員たちの経歴や実績……スペックすら載っていた。これだけあればある程度の作戦は練られる……が……

 

「虎杖司令」

 

「任務に参加するリリベルたちとの模擬戦の場、だろう? 君が欲しているのは」

 

「……その様子では既に整えているといったところですか」

 

 さすがにお見通しか、と肩をすくめる。

 俺が欲しいのは実際の戦闘でのデータだ。そのうえで作戦を練りたい。そのためには他のリリベルと実際に交戦するのが手っ取り早いのだ。

 

「無論だとも、君の今の実力を拝見するうえでもこれ以上ない機会だ。

 既に準備は終わっている。……あとは、君が参加の意思を示せばいいだけだ」

 

「……分かりました、ではそのようにお願いします」

 

 俺は、虎杖司令の言葉に頷き返し……模擬戦を行うことに決めた。

 

 ────

 

「さて、この場に呼ばれたお前たちは既に知っているだろうが……俺は立花 棗。コードネームは灰色(アッシュ)。周知の通り、裏切り者だったヤツだ。わけあって原隊したがな」

 

「「「…………」」」

 

 沈黙。まあ、当然だろうな。裏切り者の俺が何故というのもあるだろうし……どうしてここにいるのか、という疑問もあるだろうな。

 

「……まあ、お前たちの疑問は最もだろう。なぜここにいるのか、なぜ呼ばれたのか。それは簡単なことだ。俺がお前たちの隊長になって、お前たちを指示することになった。それだけだ。……で、なにか質問があるやつはいるか?」

 

 俺の説明に、1人のリリベルがこちらに視線を交わす。先程虎杖司令のもとまで案内していたファーストリリベルだった。

 

「特にはない、お前が優秀だということは俺たちは理解しているからな。

 ただ、この集まりが何なのかだけは聞きたいところだ。大方予想はつくがな」

 

「……ふむ、それもそうだな。ここにお前たちを呼んだのは単純な話だ。

 今のお前たちの実力を知りたい。だから、これから俺とお前たちで模擬戦をする」

 

 その言葉に複数人……セカンドとサードのリリベル達がザワつく様子を見せる。動じていないのはやはりファーストの連中か。……見知った奴らもいるし、まあおかしくはないが。

 

「1人でか?」

 

「1人でだ。少なくともお前たちに遅れをとるほど俺は弱くはない」

 

「「「─────」」」

 

 それはある種の挑発だ。お前たちが群れを成した程度で負けるほど俺は弱くないという挑発。

 ……ここで煽った上で完膚なきまでに叩きのめす。そうすることで俺の実力は理解できるだろうし、アイツらの本気も多少は把握できる。その意図を汲んだファーストリリベルがその喧嘩を買うように言葉を交わす。

 

「いいだろう、後悔しないことだな。灰色の切り裂き魔(アッシュ・ザ・リッパー)。後で泣きを見ても俺は責任をとらんぞ」

 

「するつもりはないとも、少なくとも俺が勝つからな」

 

「言っていろ。……あの時のリベンジ果たさせてもらうぞ」

 

「ハッ、吠えるじゃないか。いいぞ、遠慮せずに来るといい」

 

 そこからの言葉は不要だろう。かつてと同じように、虎杖司令が提示するルールに則り……俺は真島案件に派遣される予定のあるリリベル全員を相手取った。

 

 結果は……まあ言うまでもなく、余裕の全勝だったが。

 

 連携は少なくとも俺が所属していた頃よりは遥かに洗練されていたし、実力も間違いなくある。それが分かっただけ収穫だろう。

 

「……さて、これで俺の強さも理解して貰えたと思うが……先にお前たちには言っておこう、最悪のケースの場合でしかないが……その場合俺たちリリベルは真島案件で動くことになる。そのために、お前たちの今の実力とどれだけ連携ができているのかを把握しておきたかったんだ」

 

「……はぁ……はっ……それ、で……結果はどうなん、だ……!」

 

 息も絶え絶えのまま、ファーストのヤツが睨みつけながらコチラを見つめる。

 ……まあ、俺だけ涼しい顔して立っていたら恨みがましい目で睨んでくるのも仕方ないか。

 

「まあ合格だよ。お前たちの強さも分かった。これなら真島案件での作戦立案も容易くなる。お前たちが相手取るのは真島一派だけじゃない、派遣されることになる時は……確実にリコリスを相手取るということにもなる。

 ……彼女たちは個人主義だ。俺たちが団体主義であるようにな。個人個人の実力で言えばおそらくリコリスの方が上になることもあるだろう。だからこそ、連携の強みをお前たちは活かさないといけなくなる。その強みも俺を相手取ることで理解できただろう?」

 

「……ぼろ負けだったし強みも何もなくない?」

 

「確かに……ほとんど手も足も出なかったし……」

 

 なるほど、確かに最もだろう。セカンドやサードのリリベルの言葉に少し頷く。

 だが……やはりと言うべきか、ファーストの連中はそうは思っていないようだな。

 

「……少なくとも1発は被弾させられた、それだけで充分な強みだ。コイツ相手なら尚更な」

 

「……その通りだよ。俺自身謙遜するつもりはない。俺なら一個小隊程度、軽く殲滅できるしな」

 

「嫌味でもないし事実なのがムカつくな、お前」

 

「ちょっとした意趣返しだよ。化け物扱いするならそれぐらいの事実は受け入れることだ」

 

「チッ……」

 

 舌打ちをするファーストリリベルに対して、ケラケラと笑ってやる。

 そう、余裕の勝利ではあったが……それでも脇腹に俺は確かに被弾させられたのだ。それができるヤツは基本的にいない。千束でもできるかと言われたら……『最初から全力の棗に被弾させる? そんなの絶対無理に決まってるでしょうが!?』とでも言われそうだ。

 

「さて……今後の方針だが、基本的にはいつも通りだ。連携を中心とした訓練を行う。

 リコリスが未然に真島達の企みを防ぎ切り、任務が来なければ御の字だが……個人的な見解としてはおそらく俺たちは動くことになるだろう。

 だからこそ、お前たちにはこう言っておこう。励めよ。俺たち君影草の本懐を成すためにも訓練には決して手を抜くな。いいな?」

 

「「「了解ッ!」」」

 

「いい返事だ。……さて、長話は俺も好きじゃないし今日はこのぐらいにしておこう。なに、困ったことがあれば聞きにぐらいは来るといい、俺も訓練以外じゃそこら辺で暇を持て余してぶらついているだろうしな。ファーストだから、とか……序列とか、灰色だとか、そういうのは気にせずに接してくれると助かるよ」

 

 ───────

 

 立花 棗がそうして模擬戦用のシミュレーションルームから出ていった後、1人のリリベルがぼそりと呟く。

 

「……あれが最強のリリベルか……なんというか……次元が違ったな」

 

 文字通り、次元が違った。たった1人だけ。戦闘能力は何もかも規格外だ。勝てるイメージが浮かびすらしない。そういう存在だった。

 

「……当然だろう、アレは文字通り怪物だ。他のリリベルやリコリスと比較できるようなもんじゃない」

 

「そういえば、先輩は……あの人と知り合いなんでしたっけ」

 

「……一時期、チームを組んでいただけだ。ああ、いや……お前はその頃は東京支部(ここ)にはいなかったんだったな」

 

「はい、なので……イマイチ、あの人がどういう存在なのか感覚で掴めないというか……強いのは理解したんですけどね」

 

 そう、次元が違うと呟いたリリベルは彼が活躍していた当時、東京支部には所属していなかった。彼が活躍していた時期を知っているのは今いるリリベルの中でも半数居るかどうか、といったところだろう。何せ10年以上も前の話だ、真実かどうかも怪しいと思っているリリベルも少なからずいるはずだ。

 

「100%」

 

「え、なんですか急に確率の話をしだして」

 

「……あの男の、灰色の任務の完遂率だよ」

 

「──マジですか?」

 

「ああ、嘘じゃない。しかもここにひとつ言葉が加わる。……単独での任務が大半だ」

 

「それはまた……」

 

 レベルが違う話で……とセカンドであったそのリリベルはファーストリリベルの少年の説明に苦笑いを浮かべていた。

 任務の完遂率が100%、つまりどの任務であれ成功してきた存在ということだ。リリベルはリコリスでは対処しづらい武装組織を相手取ることが多い。それらを単独で制圧を済ませたこともある、ということが立花 棗の規格外さを窺い知ることができる何よりもの実績だろう。

 

「最も、アイツの場合……それを誇ったりはせんだろうが」

 

「え、そうなんですか?」

 

 電波塔でも活躍した英雄の1人らしいですし、勿体ない。と口に出すとファーストの少年は少し眉を顰める。

 

「……アイツが単独で派遣される任務は、達成困難なものが大半だ。

 ラジアータが計算した任務成功率が最も低い事案に派遣される。それを完遂させることは確かに凄いことだがな。……ラジアータが任務成功率を低く見積もる時はだいたい……」

 

 ──その前にリコリスかリリベルが派遣されて失敗したパターンなんだよ。

 

 その言葉に、セカンドの少年はなるほど……と理解した。

 

「──人質が増えたことによるリスクですか」

 

「そうだ。当然、俺たちもリコリスも……犠牲は厭わない。死ぬことは当然だし、足でまとい、情報漏洩の可能性になるようなら自決もするだろう。だがそれらの手段を奪われ、完全に人質として取られることもある。

 ……そういう事案で、アイツは武装組織はもちろん……リコリスやリリベルの処分にも当たっていたんだよ」

 

「……仲間殺しですか。あの噂はある意味では真実だったってことですね」

 

 根も葉もない噂だと思ってたんですけど。とセカンドの少年は口に出す。

 彼もまた東京支部に憧れを持っていたし、灰色と呼ばれた最強のリリベルのもとで活躍したいという思いも抱いていたのだ。もちろん、仲間殺し程度でその尊敬の念が消えることはない。それどころか確かにそれは誇れないな。と納得すらしてしまった。

 

「人質になった時点で、俺たちはもちろんDAの存在が明るみになることは防がないといけない。そういう事例の時、当然アイツは動いていた。時には……既に尋問の後で息絶えていたこともあるらしい」

 

「うへぇ……多少はこたえますねそれ……仲間の死体を見るのはやっぱ勘弁ですよ……」

 

「……まあ、俺たちならその程度で済んだだろうな」

 

「……? あの人は違ったんですか?」

 

 ファーストのあからさまに自分たちと立花 棗は違う、といったような言い回しに首を傾げる。

 

「ああ、根っこの部分がアイツはどこまでも……一般人(ふつう)だったんだよ。人を殺すことを嫌悪し、恐怖し、躊躇する。そういう何も知らない一般人と同じ感性だったんだよ、あの男は」

 

 だからこそ、壊れてしまったんだろう。と、ファーストの少年は嘆くようにため息を吐く。

 

「そんな感性のヤツが、任務とはいえ人殺しを許容し続け……そのうえで、何も知らない大勢の無辜の人々を守るためとはいえ、仲間を切り捨てる選択を何度もさせられたんだ。破綻するのは時間の問題だった」

 

 その破綻してしまったであろう瞬間を、彼は目撃してしまった。

 立花 棗が他者を殺す時に確かに笑みを浮かべた瞬間を、少年は見てしまったのだ。

 

「……英雄ってのは、綺麗なもんじゃないんすね」

 

「当然だろう、明るい話には必ず黒い裏はある。日本の犯罪率がいい例だろう。俺たちという黒い裏があって成り立っているんだからな」

 

「確かに……」

 

 リリベルである以上、殺すという選択肢からは逃れられない。だからこそ仕方ないという部分はあるんだろう。だが、こうして事実を知れば憐れみすら抱いてしまう。

 

「ただ、まあ……良い出会いがあったんだろうな、アイツ」

 

「……出会い、ですか?」

 

「……ああ、前のアイツからは想像できないほどに手を抜いている。

 ……模擬戦であっても、以前なら殺意全開で襲ってきてただろう。こちらが死ぬと実感できるほどの強烈なモノをな」

 

「え、今回ですら死ぬかと思ったのにそれ超えるんですか」

 

「超えるぞ、アイツは模擬戦であれ基本的に容赦はしない質だったからな」

 

 うへー……と嫌な顔をするセカンドを見ながら笑ってしまう。ある意味ではこいつらは運が良かったな、と。

 

 そして……おそらく、あの男を変えたのは……

 

「錦木 千束か……ここでもその名前が出てくる羽目になるとはな」

 

 あのころ、彼は惨敗した。非殺傷の弾を撃つリコリスに。立花 棗がその後に続き、そして失踪した。……更にその後のことは知っての通りだ。立花 棗は良い意味で錦木 千束に変えられたのだろう。

 

「先輩、なんだかあの人に嫌味ったらしい視線とか口振りみせてますけど……なんだかんだ甘いですよね」

 

「……否定はしない。少なくとも俺は幾度かアイツに命を救われていて感謝しているし、尊敬の念もあるからな」

 

 最も、アイツはそんなことを気にしてもいないのだろうが。

 

「ただ……それでも、俺にとってはアイツは超えるべき相手だよ。

 アイツは……」

 

 ──きっと誰よりも、リリベルに向いていない。

 

 だからこそ、最強と謳われていることが気に食わないし……今の現状を受け入れているアイツが気に入らない。

 

「惚気ですか?」

 

「……次余計なことを口に出したら殺す」

 

「え、こわ、なんですか急に」

 

 別に立花 棗に対してそんな変な感情は向けていない。ただ、超えるべき壁として認識しているだけだ。

 

「先輩もやっぱお人好しじゃないですか。噂に聞く錦木千束と一緒なんじゃないですか?」

 

「──よし、殺す」

 

「え、ちょ、先輩。あ、ちょっ……首を掴まないで、あっ、ヘッドロックは──」

 

 うぎゃああああああ!! という少年の断末魔がシミュレーションルームに響き渡ったのは余談であった。




立花 棗

その本質は何処までも善人でお人好しの普通の少年であった。
だが、彼の生きた環境がそれを許さなかった。故に、彼は人殺しの怪物になったのだ。

模擬戦は常に余裕で勝っているらしい。
口調は意図して変えている。
ほら、威厳とか色々誇示しときたいじゃん?とは本人の談。

ファーストリリベル

名前はない(というか考えてない)
原作ででてきたあの顰めっ面リリベルくん。

棗には何度も救われ、恩義は感じている。
ただ、それでも俺はヤツを超えるためにひたむきに努力するだけだ。

言ってしまえば、リリベル側の春川フキみたいな存在である。


虎杖司令

食えないたぬきジジイ。立花 棗の才を理解し育て上げた者。
模擬戦中の彼を見て「少し鈍っているのではないか?」とは思っている。
それが外的要因だということも大方予想はついている。


真島さん

吉松シンジとその部下、姫蒲を捕まえた。
DAとアラン機関絶対ぶっ潰すマン。

兄弟とアランリコリスには心底同情するぜ。
……ま、殺し合うだけだけどな。


吉松 シンジ

誰よりもアランの思想に殉ずれる者。
愛した者たちすらも、その理想の為ならば躊躇なく切り捨てるだろう。

彼は期待する。立花 棗に、錦木 千束に、真島に。
アランチルドレンとしての可能性を信じているが故に。
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