V-tuberになりたい。
僕は何となくそう思い始めた時から、何となく準備を始めた。配信を眺めたり(凄そうなのは分かるがよく分からない)、切り抜きを見たり(V-tuberとは何がスタートか分からない)、炎上するV-tuberを見守ったり(批判される覚悟が自分に無いのは分かった)、V-tuberのやっているゲームを見てプレイングの上手さを肌で感じたり(しかしチャットに書き込む勇気は無い)。無い無いずくしでもう色々と分からなくなった僕は、VRMMOのゲーム機を買った。
は?と思うかもしれないが待って欲しい。V-tuberの中には単一のゲームをやり込んで解説している人がいるのは知ってると思う。そういう風に、語り尽くせないくらいのゲーム愛があれば、少しだけでもV-tuberに近づけるのではないかと思ったのだ。
V-tuber以前に業界を舐めるなという意見も分かる(受け止める覚悟は無い)。しかし僕にはV-tuberしか無いと思っている。下手でも恥でも、一歩踏み出すしか無いと思ったのだ。許して欲しい。
そんな訳で、最近流行りのVRMMOゲームを買った。ヘットギアというのだろうか。とにかく頭にアルミの塊を着けて、いざVR空間へ。
そういえば、言ってなかったがゲーム機は買ったがゲームディスク(?)、取り敢えずハードは買ったがカセットは買っていない。やるのは基本プレイ無料の『VRMMO×戦略系ストラテジーゲーム』とかいうやつだ。開発元不明の変なゲームだが、まぁ面白いらしいからVRMMO初心者の自分にはコレ(基本プレイ無料)でいいかなと思って選んだ。
ハード(ヘットギア?)が駆動音を響かせると同時に、僕の視界が真っ白になり、気づくと真っ白の空間にいた。
「・・・これが、始まる前のキャラメイクのやつか」
「そうだよ」
僕の独り言に、誰かが反応した。振り返ると、黒い球体がフワフワと浮遊していた。
「・・・NPCさん?」
聞いてみると、「そんなとこかな」と言ってきた。
そんなとことは?
「ようこそ。『VRMMO×戦略系ストラテジーゲーム』へ。長いからV戦って略してね!」
公式で略語を流行らそうとするのは難しいと聞いたが、これを作った会社は上手くやっているのだろうか。
「どうも」
「うむ!では、君の望みを聞こう!」
?
「はい?」
ここはキャラメイクの場では無かったのだろうか。
「だーかーら!君の望みだよ!何かあるだろ?ハーレムを作りたいとか、勇者になってチヤホヤされたいとかさ!」
・・・・・・特には無いのだが。というか、初手がコレなこのゲームって大丈夫なのだろうか。
「・・・・・・取り敢えず、VRMMOには慣れようかなとは思ってるけど、」
「そういうのじゃなくて!ほら!何か!捻り出して!」
そういうのじゃない。願い・・・・・・。願い・・・願い・・・。
「ほらほらほら!ほらほらほら!ほーらほーらほらほらほら!」
まぁ、赤の他人でしかもNPCだからいいか。
「V-tuberになりたいです」
「・・・・・・はい?」
あまりに急かされるものだから正直に答えたら、驚かれた。泣こうかな?泣こうか。
「・・・だから、V-tuberに」
「ちょっっっっっち待ってね!」
黒色の球体が高速で僕から距離を離すと、落ちていた本を広げて読み始めた。そして30秒くらいで戻ってくると、開口一番大声で言ってきた。
「分かったよ!V-tuber!略さないとヴァーチャル○チューバーのことだね!了解だよ!」
「あ、はい。多分それです」
「君はそのぶいちゅーばーに成りたいんだね?」
「・・・・・・まぁ、はい」
「本当になりたいんだね?」
「・・・はい」
「四肢がもげてもなりたいんだね?」
V-tuberってそんな過酷な業種だったっけ?
「・・・覚悟とかはまだですけど、はい」
「君の夢はよーく分かった!よし、土壌はちゃんと用意してあげようかな!」
「土壌?」
「ステータスだよ。成長補正ってやつ。このゲームではステ振りとかは無くってね?レベルアップによるステータスの上昇は基本的に選べないんだ!だから皆、成長補正アップの装備とかを求めて周回するんだけど、君はとあるステータスの上限を無くしてあげようと思うんだ!」
「・・・・・・あの、今ってキャラメイクの時間ですよね?自分で、選ぶ場所ですよね?その、勝手に決められてもらうと・・・」
長く喋れられると、会話をシャットアウトしてテンションが戻る経験が一度はあると思う。それが僕の中で起きたので、僕は急に冷静になって聞いた。すると、この黒い球体は平然と言ってのけた。
「あぁ、そんなの(キャラメイクタイム)は私が横取りしたよ!君のためにね!」
いや何故?というか、それってV-tuberてきにどうなの?成長補正の改竄って、普通に改造チートと同じでは?
「いやー苦労したよ!ネット回線から君のギアを探すのにはね!さて、チートと合わせてキャラの外見もコッチが決めておくね!」
「えっ!?それV-tuberとしては死活問題なんだけど!?」
「大丈夫!悪くはしないから!というか素人の君より僕の方が断然凄いのができるだろうし、まぁ楽しみにしてよ!よし!大体決まったかな!じゃあね!よい旅を!」
言葉と共に強烈な眠気が襲ってきて、僕はそのまま意識を手放した。
`^`)/
目蓋を開く。そして周囲の確認。
レンガが敷き詰められ、舗装された道。黒光りする街頭。電柱は無く、見えるのはレンガ造りの建物ばかり。時刻は夕方、夕焼けの赤い色がレンガ造りの建物を赤く染めている。中世ファンタジーとかいうやつなのだろうか。とにかく、そんなかんじだった。
気になったのは、道行く人が全員若く、また全員が何かしら青い服を着ていることだ。ここは青色が尊ばれる宗教なのだろうか。
取り敢えずVRMMOが初なので、まず案内板を探そうと思ったが、遅れて此処がゲームだと再認識した。
つまり、憧れのメニューウィンドウが見れるということ。
素早く空中をフリック。出ない。
「・・・?」
改造の弊害かと内心ヒヤッとした瞬間、時間差でシステムウィンドウが現れた。
ステータスウィンドウというのは、要するにゲームのオプション画面(パソコンの設定ウィンドウ形式)だ。
「・・・何故に時間差・・・」
許すマジ、あの球体。と、テキトーなことを考えながら、出てきたウィンドウに目を落とす。
まず一行目には名前。
『沙耶』の二文字。僕の本名がしっかり載っていた。おい・・・。続いてステータス。1つを除き、全てが65。VRMMOでは成人男性の平均がステータスの100ぐらいらしいので、まぁ妥当な数字だ。ただLuckの部分だけが4桁を超えていた。あの球体がイジったのがLuckだとすぐにピンときたが、Luckならまぁゲームを普通に楽しめるかとホッと一安心。
取り敢えずウィンドウを消し(×印を押したら消えた)、あと確認するのは1つだけ。外見だ。
周囲を見回すが、鏡らしきものは無かった。
そのため視線を下げ、目視で確認した。
見えたのは萌え袖(は?)。スカート(は?)。パーカーのような、ブレザーのような青い上着。・・・なるほど。鏡を探そう。
僕はステータス65をフルに活用して全力疾走。途中何故かメキャッ、というタイルを叩き割ったような音が聞こえたが無視。ショーウィンドウにガラスを見つけると、自分の姿を映した。
そこに映っていたのは、水色の髪をした美少女(中身は男)だった。
・・・・・・とりあえず通報した(黒玉を)。
`^`)/
その日、運営から全プレイヤーに対してメールが一斉送信された。
<全『v戦』ユーザーに対してお知らせです。
『type:学園』のロードがログインしました。
よって『type:学園』のロード補佐の有する全権限を剥奪。ロードに返還させます。
また、3ヶ月後の2700年3月4日から『type:学園』は非戦闘区域からの除名、今からの『type:学園』に対する宣戦布告が可能となりました。
また、全てのロードが揃ったため近日『第1回目のイベント』を開催します。お楽しみください。
以上、運営からの連絡でした。
これからも『v戦』をよろしくお願いします。>