<全『v戦』ユーザーに対してお知らせです。
『type:学園』のロードがログインしました。
よって『type:学園』のロード補佐の有する全権限を剥奪。ロードに返還させます。
また、3ヶ月後の2700年3月4日から『type:学園』は非戦闘区域からの除名、今からの『type:学園』に対する宣戦布告が可能となりました。
また、全てのロードが揃ったため近日『第1回目のイベント』を開催します。お楽しみください。
以上、運営からの連絡でした。
これからも『v戦』をよろしくお願いします。>
一斉送信された運営からのメールによって、『v戦』をプレイしていた人間の半分(残りは大体メールを読んでいない)に衝撃が走った。
そもそも『type:学園』とはなんぞやという話だが、まずこのゲームは必ずキャラメイクの時点で所属するクラン(国家みたいなもの)を選ばされる(沙耶は黒玉によって選ばせてもらえなかった)。
そこで選べるクランの1つに『type:学園』がある。
この『type:学園』は、現代ファンタジー風な都市型学園を本拠地とするクランで、学校っぽい施設ならほとんど内蔵している(体育館や卓球場、教室や階段教室など)。しかも教室ごとに何人もの教師NPCが配置されていて、例えば自習室なら教師NPCを通してAIによる個別指導が受けられ、体育館でバスケをすれば正確なデータを見せられ精度を見極められ、図書館の蔵書数は恐らく世界有数だったりと、『学ぶ』の一点に関しては一切の妥協を捨てた造りがされている。
そんな受験チートを与えてくれるのが『type:学園』だが、システムの設計上クランごとに1人のロードが配置される。『type:学園』のロードの場合、全ての設備の制限・開放が選択できるという強権を持っている。
ロードがその気になれば施設の全閉鎖も可能で、そんなことをされたら受験で利用している人達は大打撃を受ける。だからこそ『type:学園』にいる未成年の多くが、運営からの連絡を見て戦慄した。
「一体どこにいるんだよ!」
『type:学園』の職員室(司令室)で、若い男が椅子を蹴っ飛ばした。
「んな奴いるか普通!自分がロードだって分かったら、普通連絡ぐらいするだろ!」
「まぁまぁ、そうカッカしなさんな」
2つ目の椅子を蹴りそうな男を、壮年の男が座りながら声でなだめた。
「いずれ来るハズだよ。流石に3ヶ月間自分がロードだと気づかないなんてドジをやらかす人は、そうそういないさ。常識的に考えてね」
「確かに」
壮年の男の隣に座っていた小学生くらいの子供が賛同する。
「じゃあもしログインしてすぐ止めるような奴だったらどうすんだ!俺らはロード無しで合戦かよ!」
その言葉に、職員室は静まり返った。
『type:帝国』のロードがそうだが、ロードというのは一騎当千の将に成長すると言われている。そんな将来有望な人材が永久封印というのは、痛すぎる打撃である。
「それは流石に無いんじゃないかにゃ?ロードについて調べたら、その責任の重要性はビッシリ書いてあるだろうし」
猫耳のカチューシャをした少女が発言すると、さっきの小学生ボーイが口を開いた。
「その重圧で押し潰されなきゃいいけどね。なにせロードがヤラれたら『type:学園』は陥落するんだから」
VRMMOである以上、もし守城戦をするのなら明確な勝ちのラインが必要になってくる。このゲームでそれは、守城側のロードのHPが0になったときである。そしてもし合戦が始まってもロードが不在の場合、守り側が強制的に負けとなる。
そして負け、すなわち『陥落』した場合には負けたロードの権限が全て勝ったロードに移る。つまり、『type:学園』が陥落した場合、個別指導NPC他諸々が全て余所のロードのものになってしまうことになる。
もし『type:帝国』のロードに渡ったなら、『type:帝国』のロードは勉強嫌いで有名なため結果は想像に難くない。全閉鎖&『type:学園』の非戦闘民の追い出しが始まるかもしれない。少し転んだら、VRMMOなど加虐ばかりなのだ。
「えっ!!!!ちょっ、ちょいちょいちょい!」
突然座っていた青年が叫んだ。
「『type:帝国』が宣戦布告したって!!!ほら!メール!メール見て!!!」
職員室が騒然となり、各々がシステムウィンドウからメール画面を開き、言葉を失った。
『type:帝国』はまさに実力主義。PKが合法で、詐欺もバレなければシステムの警告も無く実行可能。ロードの暗殺まで可能と何でもありの無法地帯だ。VRMMOでも飛び抜けて新鮮な体験ができるクランなため、『type:学園』並みに人口が多いのも特徴だ。しかも『type:学園』に所属するプレイヤーのほとんどが勉強やらをしに来た人達。とても戦力と数えていい部類では無く、実力差は明白だった。
「今すぐロードを見つけて鍛えなければ!」
「俺も!必ずロードを見つけてやる!兄ちゃんのために!」
「仕方なかろう。私も」「うむ。我も」
「全員、総力を上げてロードを見つけよう!絶対に、絶対に『type:学園』を守ろう!」
おう!、という幾つもの声が職員室に響いた。
`^`)/
下手したら一日中V-tuberの動画を見ている僕だが、今日は違う。V-tuberに成る一歩として、VRMMOにログインしているのだ。
そして語りたい系V-tuberになるのなら、お目汚しな動きはできない。むしろ玄人を唸らせるぐらいでなければいけない、というのがV-tuber観察歴7ヶ月(浅い)の僕による所感だ。だから強くならなければならない。ではどうするか。
まずは空中で指をフリック。システムウィンドウが出てくる。ポチポチすれば、外部のネットに繋がる。そして!
v戦 最強
で検索!探すのは攻略サイト!そう!僕は今からカンニングする!
だって仕方ないじゃん!ゆくゆくは検証班ぐらいのガチ勢を目指すにしても、先人の教えはやっぱり聞くべきだし!ほら、(リアルの)教授も、発表する前に関連の論文を読んでナウい情報は洗っておくべき(今更する話?となるらしい)って言ってたし!
そんな訳で、ふむふむ。
どうやら、プレイヤーはキャラメイクタイム(仮称)の時に自分の所属する『クラン(国家てきなもの)』を選ぶのが普通らしい。そして僕の所属する(選ばせてもらえなかった)クランは『type:学園』という場所を本拠地にしているらしい。そしてクラン同士のバッチバチの合戦がこのゲームの醍醐味らしい。そんで『type:学園』は青がイメージカラーらしく、僕も含めてアバターの服のどこかに青色が現れるみたいだ(ネット調べ)。僕の場合は髪もだね。
で、問題の最強育成。
調べていくかんじ、トッププレイヤーはいるものの育成はバラバラらしく、どれが一番強いというのはまだ決まっていないらしい。ふむ。先駆けV-tuberの芽はまだ死んでいないようだ。
ならばと僕は
v戦 序盤 攻略
で検索した。はい。躊躇はありませんでした。まる。
ふむふむ。どうやら、兎狩りがいいらしい。経験値がいいみたい。しかし周回必須(←あるある)らしいのでパス。強くなる前にゲームを嫌いになったらV-tuberにはなれない。多分。なので手頃なのを探す。正直釣りでもゲームはゲームなので楽しめそうなのだが、どうやら兎狩り以外の経験値はしょっぱいみたいだ(PKは別)。
ふむ。どうしようか。
どーちーらーにーしーよーうーかーな。北か。確か北は森だったっけ?
`^`)/
街を出て森に入り、モンスターを探す。都会っ子なのでこういう森には慣れておらず何度も躓いたが、とりあえず進む。森とかで出るガチな虫はゲーム的に出ないので、安心安全な道のりだ。振り返ったら巨大なクモがいる、なんてのは無いだけでこのゲームは神だと思う。神システムだ。
腰には初ログインの時から差してあったレイピア(多分)があるので、モンスターが出てきたらコレで刺すつもりだ(虫以外)。虫なら一も二もゼロも無く逃げる。僕は芋虫が嫌いだ。ついでに蝶も苦手だ。なんならカブトムシも触れない。・・・僕は森に入ったことを今更ながらに後悔した。
少し歩くと、遠ーーーくの方にモンスターを見つけた。
5メートルぐらいの、全身真っ黒の巨人だった。
「・・・・・・・・・」
『徘徊ボス』というものを知っているだろうか。その名の通り、フィールドを徘徊するボス級のモンスターのことだ。主に腕試しやレベル上げに使われる。ただ初見は大体死ぬか苦戦するのが通例だ。
うん。このまま隠れて素通り、
というのが普通のプレイヤー!!!!!!
だが僕はV-tuberになる。そして動画配信者となるなら、行くしかないね!!!!!レベル1だけど!
なんだかアガってきた。やってみせろよ、と頭の中で声が響いている。いけるかもしれない(錯覚)。
徘徊ボスを見かけたらダッシュで駆け寄るチンパンジーと化した僕は、ものの数分で黒巨人の足元までやってきた。
どうやらコイツには目が無いみたいで、足元でうろちょろしても攻撃してこなかった。ふむ。勝ったな(錯覚)。
見上げてみると、詳細なステータス欄が表示された。
ネームドモンスター『黒ゴリ』。
《解説》→その名の通り黒いゴリラ。巨人ではない。そう思ったのならそれは錯覚だ。クリティカルが無い上に遅いが、防御がバカ高いから注意しろ。
HP 500
STR 800
DEF 1000
Dex 0
SPD 20
INT 0
MDF 0
LUCK 0
だって。なんだか強そうだ。DEF1000ってことは成人男性の10倍か。どれくらいだろ。
ササーッと近づいて腰にある細剣を抜き、足の指を突いてみた。
1×《クリティカル》×2《絶クリティカル》×2《目覚めの極意》×4
変な文字が(配信のコメントみたいに)視界を流れたと思えば、突いた部分にシャランッという音とともに光った。あれがVRMMOゲーム特有の、ダメージエフェクトというやつか(初心者)。・・・ダメージ、入ったの?
「・・・・・・DEF1000を超えたってこと?」
巨人もようやくコッチを向いた。効いてる、のかな?
フェンシングの技とか型を知らないので、細剣でチクチク刺す。その度に
1×《クリティカル》×2《絶クリティカル》×2《目覚めの極意》×4
というのが視界を流れているが、ダメージがあるのはこれのせいだろうか。
巨人の反応が遅すぎて全然攻撃しこなかったので、ひたすら刺した。
チクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチク。
すると巨人がよろめき、電子音とともに光となって四散した。次いで謎の音楽。視界には『Level Up』の文字。
・・・・・・レベルが8になった。