「かたっくるしい前口上とかはナシだ。
『type:帝国』は『type:学園』に宣戦布告する。
ただ、それじゃあ鍛え上げられた帝国兵の一方的な戦いになるだろう。
だから俺は決めた。
帝国が勝ったら、俺は学園のあらゆる設備を閉鎖する。まぁ帝国市民には開放するがな。だが学園の生徒には一歩も入れさせない。敗者は敗者らしく諦めるこったな。ゲームであっても、そこは従ってもらう」
`^`)/
「配信!?」
なんだかんだ『Vコイン』が欲しかった僕は、また巨人を倒しに行った。黒巨人を倒した後、僕は『配信してるけど取材いい?』と聞かれた。←今ココ。
すなわち、配信者との接触だ。
「配信。配信って言った?」
「ん?あ、あぁ」
紫色の配信者は、僕から一歩距離を置いた。
コメント
<なんだコイツ>
<可愛いな>
<キラッキラだな>
<ラメ?>
<ブレザー×パーカー×美少女。いい!>
「あ、それがコメント欄なの?」
紫色の配信者の背後に、ずっと映しっぱなしのシステムウィンドウがあって文字が高速で流れていた。
「で、あれがカメラ?へー。画像的にはRPGみたいに背中を映すんだね」
システムウィンドウの横には球体が浮遊していたので、指を指して聞いてみた。
「あ、あぁ。どうしてそんなことを聞くんだ?」
よくぞ聞いてくれました。
「僕、どうしてもV-tuberになりたいんだ。このゲームを始めたのもそれが理由。ゆくゆくは特定のゲームの語りたい系V-tuberになりたいと思ってるんだよね」
夢を語るのは初めてだが、何故だかスラスラと言えた。紫色の配信者さんは納得したような表情をすると、ニヤッと笑った。
「思ってる以上に厳しい世界だぞ?」
コメント
<デビューしたら絶対推す。可愛い>
<夢追人(ゆめおいびと)か。キラキラしてんね>
<ほんとキラキラしてるよな>
<リアル魔法少女と言われても俺は信じる>
<ガゼルが兄の顔してるぞ>
<人の心に入ってくるの上手いな>
<そりゃあ、あなたは憧れです、って言われて嫌な風に感じる奴なんていないだろ>
「へぇ。ガゼルさんって言うんだ」
本物のV-tuberかぁ。なら聞こうかな?この際だし。
「ねぇガゼルさん。V-tuberってドコがスタートなのかな?」
「ん?」
「V-tuberになる資格とかってあると思う?」
「??無くないか?」
伝わらなかったみたい。もう少し説明がいるかな?
「でもさでもさ。僕は自分が何か足りないとずっと思ってるんだ。踏ん切りがつかないだけ、なのかな?」
分かる?こう、知ってるV-tuberがキラキラすぎて立ち入りにくい、みたいな?
「気のせいだろ。少なくとも、俺はV-tuberになるときそんなこと考えてなかったぞ」
「そうかなー」
コメント
<深い(全肯定)>
<深いか?>
<単純に自信が無いだけでは?>
<ああいう奴は意味とか考えて止めるタイプだ>
<まぁ悩むより行動だよな。V-tuberなら>
<それより、どうやって黒巨人を倒したか>
コメントで何かを見つけたガゼルさん(紫色の配信者)が、思い出したかのように聞いてきた。
「あ、そうだったそうだった。黒巨人を4発で倒すの見ちまったんだけどよ、裏技とかあるのか?それとも、その剣に秘密が?
あ、勿論言いたくなかったら話さなくていいからな?」
「コレ?」
ガゼルさんが僕の腰にある水色の細剣を指差してきたので、僕は鞘ごと腰から引き抜き、カメラからも見えるように見せた。
「これは、名前なんだっけ。『銀、銀、、」
コメント
<沙耶君!それは『銀麗の鳳剣』だよ! by黒玉>
<なんだなんだ?>
<どうした>
<『銀麗の鳳剣』。とある名工が作った宝剣で『世界の鍵』。『正史』では『引き金』君が所有していた一振りのコピーだよ! by黒玉>
<なんだコイツ(笑)>
<変な奴おりゅ>
<草>
<ソース出せソース>
<ソースと言われてもね。私の作品なんだけど by黒玉>
コメントが荒れてたので見たら、黒玉を名乗る奴が大暴れしていた。
「あ、この人ってあの黒玉?」
「知ってるのか?」
「うーん。まぁ、キャラメイクの時にね・・・」
忘れもしない。キャラメイクタイムでの蛮行。通報はしたが、このガワは気に入ってるので正直感謝してはいる。
僕がキャラメイクタイムで起きたことを話すと、ガゼルさんは首を傾げた。
「そんなことあるのか?」
コメント
<つまり沙耶のガワは黒玉ニキが作ったのか>
<有能>
<それなら沙耶のママが黒玉ニキか>
<あの・・・普通にキャラメイクに干渉したという事実に突っ込んでいい?>
<ほんそれな。普通有り得ないだろ>
<『V戦』って列国が手出しできなかったんだろ?>
<まさか黒玉ニキは運営側?>
<可能性的は一番高い、か?>
<そうだよ('^') by黒玉ニキ>
<黒玉ニキ!?>
<えっ、マジで運営側!?>
<イベントって1つだけなの?>
<ロードって何のためにあるんだ?>
<VRMMOで身分の格差を作るのはどうなの?>
<待て待て。まだ信用するな>
<そうだぞ。普通ないだろ>
「凄いコメントが荒れてるね」
「なぁ。今って俺の配信だっよな?黒玉ニキに乗っ取られてねぇか?」
コメント
<なら、沙耶君の質問には答えようかな!何かあるかい? by黒玉>
<沙耶君!>
<沙耶君頼んだぞ!>
<完全に黒玉ニキのこと信用してて草>
質問?むむむ。あー、なら。
「じゃあさ。剣にあった《封印》のこともそうだけど、まず『正史』って何なの?」
《封印》を聞く前に、まずはコッチだろう。
コメント
<君の頼みでもソレは言えないな(汗)。他には無いかい? by黒玉>
「言えないってどういう・・・」
コメント
<意味深なことを・・・>
<流石は運営側。客引きを分かってらっしゃる(皮肉)>
<『正史』?>
<精○?>
<おいやめろ>
<『正史』って確か都市伝説だろ?>
<何の話?>
<解説ニキ頼む>
<この『V戦』にはシナリオがあるって噂があってな。ストーリーじゃなくてシナリオ。ワイもよく分かってないんだけど>
<????>
<考察始まった?>
<ここは考察チャンネルだったのか>
<《封印》?>
<ダメだ。分からないことが多すぎる>
「『正史』、か。それは俺にも関係があるのか?」
ガゼルさんがコメント欄に聞いた。
コメント
<ガゼルは『type:幽霊船』のロードだもんな>
<ロードの採用理由にも『正史』とやらが関係してるのか?>
<そもそも『正史』が分からない件について>
「え、ガゼルさんってロードなんだ」
『ロード』とはクランごとに置かれたクランのトップのことで、クランに関する多くの権利を持つと攻略サイトに書かれていた。要するにクランを率いる凄い人だと認識している。
「まぁ合戦以外で出番なんて無いんだけどな」
コメント
<基本自由だもんな、『type:幽霊船』って>
<逆に制限されても困る>
<それな。マジでロードって何のためにいるんだよ>
<他のプレイヤーを制限する権限をただの1プレイヤーに持たせる運営って異常だよな>
<そこだけは不満。ビジュアルは最高なのに>
<てか、黒玉ニキ解説はよ>
<はよはよ>
<考察班ぇ・・・>
勢い良く流れるコメント欄を、2本の赤い帯が流れた。投げ銭機能、スーパーチャット(略してスパチャ)とかいうやつだ。多分。
<¥10000 もう16時だね by黒玉>
<¥10000 沙耶君、時間じゃないのかな? by黒玉>
言われて時間を見たら、午後4時だった。
「あ、マズ・・・」
「どうした?」
あの子が帰ってくる。
「その。配信、お邪魔しました。またお会いましょう」
僕はガゼルさんの言葉を待たず、システムウィンドウから『ログアウト』のボタンを押した。