VRMMO×戦略系ストラテジーゲーム   作:不知火勇翔

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5話 V-tuber『キズナ』

in 薄暗い部屋。

 2人の男女が腰を下ろし、話し込んでいた。

「まさか、沙耶と接触できるとはね」

 女は微笑むと、男を抱き締めた。

「君だけは記憶を返してあげたんだ。しっかり頼むよ」

「・・・なぁ。ルナのことはどうするんだ?アイツまだログインしてないだろ?」

「ルナちゃんならいずれ来るでしょ?」

「・・・・・・まぁ、そうか。『守護天使』が放っておかないか」

 

 

`^`)/

 

 

 チャンネル名は『ガゼル.ch(フューリエ所属)』。

 登録者数万人のV-tuberで、結構な大物だった。それだけに僕が色々喋ったアレは切り抜かれていた。うそん・・・。

 リスナーの僕に対する受け止めは色々だったが、大方がチーターで定まっていた。・・・確かに僕も16倍はチートだと思うので、ぐうの音も出ない。ちくせう。全てはあの黒玉のせいだ。

 黒玉の意味深発言については考察班の掲示板へと持っていかれたが、まぁソースが不明なためガセ扱いされていた。結局は次のコメントに期待、という擁護がなされた。

 最終的には僕がチーターだという情報だけが残ったワケで。どうやら僕のV-tuberデビューはまだまだ先になりそうだ。

 ちなみに『フューリエ』というのは『箱名』、ガゼルさんが所属する企業の名前らしい。箱の人だったんだね。

 

 

 

 とりあえずログイン。

 今日は2日目。予定も特に無いので順当にレベル上げをしようと黒巨人の所へ行くと、全身紫色のガゼルさんが待ち構えていた。

「よう」

「・・・・・・ガゼルさん」

 ふと例の切り抜きが頭をよぎり、僕は頭を下げた。

「その。昨日は興奮してて、いきなりログアウトしたし、その、本当にごめんなさい」

 VRMMOではあまり敬語を使いたくないのだが、今回は本当に反省しているので敬語で謝った。

 確かにどこからがV-tuberかは悩んでいたが、配信中にする質問ではなかった。

「あぁ。いいっていいって。俺も含めて、人間最初はあんなもんだ」

「・・・そっか。ありがと」

 一応許してもらえたので一安心。そう言えばとガゼルさんの背後を見ると、システムウィンドウも球体のカメラも無かったので一安心。待ち伏せの理由について尋ねることにした。

「・・・それで、待ってたみたいだけど。僕に何か用?」

 聞くと、ガゼルさんはニヤリと笑った。

「取引だ。お前は黒巨人を倒した方法を教える。その代わり、俺は今開催されている『イベント』について出回ってない情報を教える。どうだ?」

 黒巨人を倒した方法?《クリティカル》なら、多分真似は無理じゃないかな。

「・・・僕のやり方は真似できないと思うよ?」

「それでもだ。リスナーへの解説もやりたいしな。・・・あれだ。チーター扱いは嫌だろ?」

 僕のことを思って、ってかんじかな。良い人だ・・・。

 何故かガゼルさんなら教えても大丈夫、と思えたので、僕は取引に応じた。

「・・・ステータスウィンドウを見た方が早いかな」

 僕は空中でフリックしてシステムウィンドウを出すとステータスの欄をガゼルさんに見せた。

「黒玉ニキがね、Luck値をイジったみたいでもう5桁に届きそうなんだ。だから確定《クリティカル》×2と《絶クリティカル》×2と《目覚めの極意》っていうskillで×4で、僕の攻撃力が常に16倍されたから、多分黒巨人を倒せたんだと思う」

 説明が下手なのは許して欲しい。ガゼルさんを見ると、ガゼルさんは目を丸くしていた。やっぱりチートだよねー。

「いや、驚いたな。マジか。沙耶だから弱いとは思わなかったけど、これほどか。コレ鍛えたらボスもワンパンできんじゃねぇか?」

 沙耶だから弱いとは思わなかった???

「ねぇ、「よし決めた!」、何?」

 僕が聞く前にガゼルさんが叫び、そして小柄な僕を俵のように担ぎ上げた。

「え、ちょ、」

「沙耶。とりあえず約束は守る。イベントの全部を教えてやるからな!しっかり捕まってろ。『光の空。空を裂く月。神話の景色は再誕する』。飛行魔法『ガルーダ』!」

「ちょ、ガゼうぁ!?」

 

 

`^`)/

 

 

 ずっと戦うことから逃げてきた。

 競うことが嫌とかじゃなくて、こう、やり取りが嫌なのだ。勝ち負けで悔しがったり、辛くなったり、泣いたり。

 皆が笑顔になる。そんな選択肢があったら私は飛びつくだろう。でもそんな選択肢なんて無いから、私は争うことから逃げてきた。

 私が弱いというのなら、そうなのだろう。

 でも、そういう生き方があっても良いと私は思う。

 

 

 

 指を丸めて手を顔の近くに持ってきて。

 にゃん。

 ・・・・うん。誰も見ていないとしても、これは恥ずかしい。

 次の配信は猫配信なのだが、色々とヤバそうだ。

 ここは高原。

 踏み慣らされた一本道で、1人悶える私の名前は『キズナ』。ピンク髪にミディアムボブのV-tuber。高校生の時から動画配信サイトで活動していて、今では一定数の人気を得ている。主にメンヘラキャラとしてだが。

 今日はレベル上げのために、高原に来ている。

 配信業を生業にしている以上、同じような配信者でもなければ基本つるまないようにしているので、今日は1人だ。

 という訳で道すがら猫配信の練習をしていたら、遠くの方から何かが近づいてきた。

「げっ!?人じゃねぇかアレ!」

「うっわ!タゲ移しになっちゃうよ!」

「そこのピンク髪ぃ!早く逃げろ!」

コメント

<初っ端からドタバタで草>

<蜂の巣に突っ込むとかバカなの?死ぬの?>

<ゲリラ配信始まったと思ったらバッタバタで草>

<蜂との追いかけっこ耐久って何だよ(笑)>

<あ、チートさんちーっす>

<ちーっす>

<おい。まだチートと決まった訳じゃねえだろ>

<ガゼルだって十分チートだしな。何だよ。MP五桁って>

 なんなのだろうか。

 紫色の青年と青髪ブレザー×パーカーの女の子が猛ダッシュで近づいてきた。背後には、巨大な蜂の軍勢。

 面白そうだと感じた私は後ろを向き、2人と併走して聞いてみた。上げてて良かったSPD。

「どうして蜂から逃げるのですか?」

 倒せばいいのに、と思って聞いたら半ギレで青髪ちゃんが答えた。

「一体なら倒せたんだけどねぇ!それともやる!?この細剣で!」

 青髪ちゃんの腰を見ると、確かにその細剣ではリーチも足りなそうだし斬れないしで大変そうだ。

「・・・どうして蜂に追われているのですか?」

「ガゼルさんが蜂の巣に突っ込んだからだよ!」

「すんませーん!」

 青髪ちゃんが糾弾して、紫色が走りながら謝った。ちょっと面白いなこの2人。

「ほんと何なの!?意気揚々と飛行魔法使って、落下地点が蜂の巣とかほんとバカなんじゃないの!?」

「だからゴメンて!謝ってるじゃねぇか!あいた!ちょっ、刺されたって!」

「あ、確かに毒状態になってますね」

 紫色の青年の、頭上にあるHPバーが紫色になっていた。

「毒ぅ!?え、死ぬのか俺!?」

「死にますね。あと40秒くらいかな?」

「40!?」

「というか『飛行魔法』また使えないの!あの『ガルーダ』とかいうやつ!」

「無理だ!ボス逃げ対策として『飛行魔法』にはインターバルがあるんだよ」

「つっかえ・・・・・・」

「お前今使えないって言ったな今!もし沙耶がV-tuberとしてデビューするなら俺は先輩になるんだからな!?いいのか!?コラボとかしてやらないぞ!?」

「器がちっさい先輩だね」

「悪かったな!げっ!?もう体力半分じゃねぇかよ!」

 VRMMOなので身体的な疲れとかは無いが、2人は色々と酷い顔をしていた。涙目だし。

 私はポーチから『毒消し小瓶』を取り出して、見せた。

「ここに『毒消し小瓶』があります」

「えっ!?くれ!」

コメント

<くれ(笑)>

<小学生でももっとマシな交渉するぞ>

<それくらい切羽詰まってるってことだな>

<てか、あのピンク髪ってキズナ様じゃね?>

<え、あの皇女?>

<間違いない>

<カメラ仕事しろし>

「誠意が足りませんねー(ハート)」

 からかってみると、紫色が凄い変な顔をした。

「・・・くぅださい」

「また小学生みたいな・・・」

「まだ誠意が足りませんねー♪」

「あの、楽しんでもらってるところ申し訳ないんすけど、くれませんかね。もうHP真っ赤なんすよワイ」

 マジレスされたのでHPバーを見ると、確かに残り5秒くらいで全損するレベルだった。仕方ないのでイジワルは止めて、素直に『毒消し小瓶』を渡してあげた。

「あざです!(ゴクゴク)。はい全回復!」

 『毒消し小瓶』は毒で減った分も治る『毒消し』なので、紫色のHPは全回復していた。

 なんだか楽しくなってきたので、私は提案した。

「ついでに後ろの蜂は私が処理するので、お返しは期待してますよ」

「えっ、」

 私は服の各所に隠していたナイフを10本出し、一斉に投げて全ての蜂を処理した。

「えっ、」

コメント

<はっや>

<流石は皇帝の妹だな>

<瞬殺かよオイ>

<普通にスゲェ>

<3本でもスゲェのに・・・>

<10本投げるのに1秒もかけなかったんじゃないか?>

<バケモノだ・・・>

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