甘く見ていた。
「ブレスくるぞぉ!ぎゃああああ!!!」
「『セル』!クソッ散開しろ!」
「無理だ!後ろにはお姫さんがいる!」
「じゃああのブレスどうすんだよ!並みのプレイヤーなら一撃だぞ!」
「俺に任せてくれ!さっき一発耐えた!」
「よし!ならお姫様の方向は任せたぞ!」
あまりに敵が強すぎて、お互いを知らないであろうプレイヤー同士が大声で連携をとっていた。
敵は西欧タイプ(4足歩行)のドラゴン1匹。ブレスは広範囲かつ即死レベル。尻尾の薙払い一発で10人も20人もプレイヤーを脱落させるバケモノだった。
「沙耶!お前総ダメージいくらだ!?」
「100×16で1600!」
「バフかけたら2400か!なら防御は貫通できるな!」
コメント
<ヤッバ・・・>
<あの・・・これってゲームですよね?>
<慈悲は、無いのか?>
<無いよ! by黒玉>
<黒玉ぁ!!>
<何やってんだ黒玉ぁ!>
<いや無理だろ普通に!>
<大丈夫!多分! by黒玉>
<多分じゃねぇよワレェ!>
<いやVRMMOで阿鼻叫喚を作るんじゃねぇよ!>
<炎がリアルなだけに迫力が段違いだよバカ(大好き)!>
「リスナー集合!沙耶はあのドラゴンにダメージを与えられることが分かった!沙耶を安全に接近させる策を考えてくれ!」
ガゼルさんがリスナーさんに叫んだ。
爆弾の定数ダメージ300で湧くのが現環境だが、ドラゴンは防御力が1000、HPが20000。爆弾を70発当てないといけないため現実的ではない。しかし防御力1000を超える攻撃力を出せるプレイヤーが僕以外いないため、ほぼ一方的な蹂躙劇が今の状況だ。
僕の場合バフ(ステータスupの魔法)をかけてもらって、ようやく一撃辺りの超過ダメージが1400。なので16発攻撃を入れる必要がある。しかし僕自身の防御力は無いのと同じため、ドラゴンの攻撃を一発でも受ければHPが一瞬で0になる。普通にヤバい状況だった。
コメント
<・・・そんなのあるか?>
<・・・?>
<・・・>
<草>
「何か思いつけよーぉ!!!」
ガゼルさんが叫んだ。
今も1人また1人とプレイヤーが脱落していっている。まだ1日目の午前中だというのだから笑えない。
「私が弾きます」
今まで黙って何かを考えていたキズナさんが口を開いた。
「ブレス以外なら、なんとかします。その間に攻撃して下さい」
「なんとかってお前・・・」
ガゼルさんは怪訝な顔をしたが、キズナさんの真剣な目を見て、口を閉じた。
「分かった。キズナに賭ける。沙耶、いけるか?」
「勿論。いつでも良いよ」
「沙耶さん。私の後ろにいて下さい。そこが絶対領域です」
ドラゴンがブレスを吐き切った直後、キズナさんと僕は突撃した。ドラゴンが気づいてバックステップからの尻尾の薙払いをやってきたが、キズナさんは両手に握ったナイフで尻尾を上にカチ上げた。要するに受け流した。
「「「「なっ!?」」」
ここにいるプレイヤーの全員が唖然とした。
尻尾の薙払いには、プレイヤーを一撃で撲殺する力がある。それを流すというのは、どれだけの技量が必要なのだろうか。
ドラゴンが受け流されたと分かり尻尾を引くが、その数瞬で僕とキズナさんは今までに無いぐらい接近した。
すぐにドラゴンがバックステップで距離を離そうとしたが、遅い!
僕は無防備な足を袈裟斬りにすると、いつものように
1×《クリティカル》×2《絶クリティカル》×2《目覚めの極意》×4
の文字が視界を流れ、独特のエフェクトと共にドラゴンにダメージが入った。
「効いた!」
「沙耶離れろ!」
ガゼルさんの声でハッとして後退しようとしたが、遅かった。
前足の爪による近距離攻撃!回避不可能!
「任せて下さい」
僕とドラゴンの間にキズナさんが割って入り、ドラゴンの爪を右に流した。
「!?」
慌ててドラゴンの爪に剣を引っ掛けると、
1×《クリティカル》×2《絶クリティカル》×2《目覚めの極意》×4
の文字と共にダメージが入った。
「あと14発!」
ドラゴンは爪による近距離攻撃を諦め、跳躍からのバックステップを決めてきた。
「ブレス来るぞ!」
誰かの声。しかしこの距離は。
「任せろ!」
今度は名前も知らない盾兵が割り込んできて、火炎から守ってくれた。
「ありがとう!」
「ありがとうございます!」
ブレスが終わると僕とキズナさんは盾兵の後ろから出て、また突撃。ドラゴンは再びの薙払い。同じようにキズナさんがカチ上げ、隙が生まれた。しかも今回は頭上を通った尻尾に剣を掠らせたので後13発。
突撃。ドラゴンがまたバックステップで逃げようとして、しかし背後の木に引っかかって動きを止めた。
「今だ!」「やれぇ!」「いけぇぇえええ!!!」
多くの声が湧き上がった。
僕は羽が引っかかって動きを止めたドラゴンの腹に飛び込み、13回刺した。
チクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチクチク。
するとドラゴンの絶叫。イタチの最後っ屁が怖いので離れてガゼルさん達と合流すると、ドラゴンは爆散した。
湧き上がるプレイヤー。僕もホッと一安心した。
しかし。
「やるではないか」
地鳴りのような、野太い声。ドラゴンが爆散した所からそれが聞こえてきた。
再び緊張が走る。
「ふん。ロード3人相手に、流石に舐めすぎていたか。まさか三分の二を持っていかれるとは」
爆散した場所に、黒い騎士が立っていた。
平均的な中学生男子ぐらいの大きさの剣を形に担ぎ、全身は黒の西洋風な鎧。兜で顔を隠しているが、声からして恐らく男。
そして何よりも、現代社会ではあまり見ない威圧感を放っていた。
「嘘だろ・・・」
ガゼルさんが呟いた。
注視してステータスを見ると、
ネームドモンスター『火炎将ガジン』。
《解説》→竜の子孫だがその力は竜の100分の1にも満たない落伍者。今は人間界で庸平をしている。
HP 10000
STR 1000
DEF 0
Dex 200
SPD 100
INT 0
MDF 1000
LUCK 0
となっていた。
目を見張るのはDEF0という部分。つまり、僕なら5発で倒せる。倒せるがしかし、相手は人型だ。
「我が剣を越えてみろ」
・・・だそうだ。
コメント
<慈悲は、無いのですか?(二回目)>
<第2形態か。あといくつあるんだろ>
<やめろぉ!>
<流石に最終フォームだろ。まだ1日目だぞ>
<そうだなと言えない現実>
<最終フォームだよ! by黒玉ニキ>
<黒玉ニキぃ!>
<ついでにアイツの倒し方教えて!>
<教えるワケないじゃん。作ったのは攻略を楽しんでもらうためだよ by黒玉>
<そりゃそうか>
<一番言わない人種だったな>