VRMMO×戦略系ストラテジーゲーム   作:不知火勇翔

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これを踏まえた上で、最後の敵を見てほしいです。


9話 イベント最終日

 うんち、というフレーズがダメと言われたので話題を戻した。

「残存戦力が26人。残りのイベントは明日の6時間だけ。敵は最低でもボスレベルが1体以上、か。ヤバいね」

「ですね」

 

 

「隣、いい?」

 

 

 緑色の髪の女の子が、僕達3人に話しかけてきた。

「配信してるけどいいか?」

 ガゼルさんが代表して聞くと、お姫様は首を傾げた。

「配信?」

「ほら、ここにシステムウィンドウがあるだろ?」

 ガゼルさんがコメント欄を指差したが、お姫様は首を傾げた。

「?なにも無いけど」

 NPC(人口知能搭載)だからかな?

「あー、そうか。何でも無い」

「何?何かあるの?」

「いや、悪かった。忘れてくれ」

「・・・そう」

 お姫様はキズナさんの隣にドカッと座った。

「足は大丈夫なの?」

「えぇ。魔法で治してもらったわ」

 

「青髪の人。さっきはありがと」

 

 

 ボソッと呟くように放たれた感謝の言葉。僕はとりあえず「どういたしまして」と言った。

 そして無言が降りた。

 ライバー(V-tuberのこと)は配信を無言にしないよう心がけている生き物だが、今回は特別。お姫様は何かを言いたくて、わざわざ僕らの輪に入ってきている(多分)。なので、お姫様待ちだ。

「・・・・・・命を賭けるアナタ達に言うのもどうかと思うけど、言っておかないといけないことがあるの」

「なに?」

「・・・この行軍は、とある薬草を求める旅って言われたでしょ?あれは真っ赤な嘘。本当は、・・・グスッ」

 お姫様が泣きを始めた。よく分からないままキズナさんが背中をさすると、お姫様は続けた。

「・・・弟が、グスッ、病気なのよズルッ。薬草ごときじゃ、治らない・・・」

 涙ながらに語ったのは、救われない話だった。

 お姫様の弟、王様の二男が不治の病にかかって苦しみ続けていること。もう余命が少ないこと。そして今回の行軍は伝承にあった『北の秘薬』なる薬の材料を求める旅らしいが、『北の秘薬』自体が作り話らしく、王様はしかし諦めきれずに兵を送ったらしい。兵が帰ってこないのを承知の上で・・・。

 だから兵士を合わせても40人しかいないこの状況でも、行軍を続けるらしい。

 ラノベなら主人公がダンジョンとかから秘薬を取ってきて万事解決だが、今回はどうだろうか。

コメント

<想像以上にしんどくて草>

<・・・グスッ>

<最初はお姫様可愛いぐらいに思ってたけど、事情を知ったらそんな目で見られなくなったな・・・>

<VRMMOなのにストーリー重くない?>

<普通無いな。斬新だ>

<帰るつもりの無い兵士か・・・。メンタルどんななんだろう>

<慈悲は、無いのですか?>

<無いね!お姫様の『スティア』が大人になって、2度諦める物語だからね! by黒玉>

<黒玉ニキ!?>

<2度?>

 さて、この状況。弟を諦めるしかないお姫様に向かって、皆なら何を言うだろうか。

 同情するにしても、僕には弟を失った経験など無いので、安っぽい同情になる。それで何かが変わるだろうか。

 薬が何とかしてくれるはず。そんな無責任なことは絶対に言えない。親族の死とは想像以上にキツいものだと思う。

 散々悩んだ僕は、全部すると決めた。

「お姫様。お姫様は目の前のことに集中しましょう。今は薬を探している最中です。薬で無理なら諦めましょう」

 薬にはあまり期待させない。やったのは引き延ばし。でも人間に大切なのは時間だと僕は思う。

「・・・グスッ。・・・うん。」

コメント

<そうやな>

<まだ諦めるには早いか>

<黒玉ニキ!頼んだぞ!>

<今からでもストーリーねじ曲げろ!>

<やってみせろよ!>

<なんとでもなるはずさ!>

<黒玉ニキ?>

<おーい>

 

 

`^`)/

 

 

 多分、『ライバー側の視点』が分からなかったんだと思う。何のためか、リスナーとの関わりとか、一体感とか。そういうのが分からなくて、怖くなって足が竦んでいた。

 でもお姫様を見ていると、弟のために涙を流すお姫様を見ていると、全てを脇に置いて行動したお姫様を見ていると、なんだか悩んでいるのが馬鹿らしくなってきた。

 何がV-tuberの始まりか。

 免罪符を探す僕には大切なことだけど、気持ち次第な気がしている。V-tuberに成りたいと憧れた瞬間にはもうV-tuberへの道をスタートしているというか。

 変なことを言ってるのは分かっているつもりだ。だけど聞いて欲しい。

 多分、今の僕に必要なのは『感情を優先する力』だ。『先を見ない力だ』。そして多分、『笑う力』だ。

 

 

`^`)/翌日

 

 

 天気は良好。体調も万全。いざ出発!

 てなワケで計40人での行進が始まったのだが、いきなり道の先で誰かが待ち構えていた。

「なんだ?」

 プレイヤーの1人が疑問を口にした。

 黒いローブで顔が隠れているが、多分女。袖すらない服の、照る照る坊主みたいなソイツが口を開いた。

「お前達。娘を殺しに来たのだな?」

 怒りの込もった声が、黒騎士とはまた違った緊張感を与えてきた。

「許さんぞ。恩を忘れ、義を忘れ、あげく我が娘を殺すための軍を送るか」

「誰だよテメェは!」

「我は『星の魔女カタリナ』だ。義の魔女とも呼ばれている」

 魔女?

「魔女・・・か」

「魔女ってのがいるのか?」

 ガゼルさんが聞くと、お姫様は酷く驚いた。

「え、魔女を知らないの?魔女よ魔女!魔王より上の存在の!」

「へー。魔王がいるんだな」

 現在入れるマップは各々のクランのホームとNPCの街と、あとは森山川とかで魔王軍みたいな悪の組織とは会えないし知らない状況だ。いきなり魔王とか魔女とか言われてもね・・・。

「お前達に恨みは無いが、せいぜいあの愚王を恨みながら死んでいくがよい」

 『星の魔女カタリナ』が何かの呪文を呟くと、固まって周囲を警戒していた僕らに光が降り注いだ。

「『魔力盾』ぇ!!!」

 ガゼルさんが紫色の盾を展開して防いでくれたが、正直僕1人ならあのまま即死だっただろう。ヤッバ・・・。

「総員散開!!」

 誰かが叫んだので僕も散開すると、キズナさんもついてきた。なので2人で『星の魔女』とやらの背後に回ると、魔女はまた違う呪文を唱えた。

 すると地震が発生し、僕は必死に地面にしがみついた。そして地鳴りが大きくなっていき、やがて大地が裂けた。

「はぁ!?」

 散開していあ何人かが地割れに巻き込まれ、消えていった。

「お止めください魔女様!何故このようなことを!」

 お姫様が地震に耐えながら叫んだ。すると地震が止み、そして『星の魔女カタリナ』はお姫様に負けない大声で叫んだ。

「文句なら契約を守らなかった愚王に言うのだな」

「その契約とは何なのですか!」

「・・・・・・」

 魔女が固まった。

「・・・契約を知らない?いや、まさか。・・・愚王め」

 魔女はフワフワ浮遊すると、言った。

「情報の摺り合わせをしたい。代表者はいるか?」

「私が!」

 お姫様が、護衛を押しのけて前に出た。

「私はこの国の第3王女スティアです!『星の魔女カタリナ』様が一体何のようで私達を襲っているのか、理由をお聞かせ下さい!」

 

 

 

 

「・・・知れたこと。契約を破棄して我が娘を殺そうとする愚王の軍勢を潰すつもりだったのだ」

 王様と『星の魔女カタリナ』との間には契約があった。

 少し昔、王様は死にかけていた。そして魔女の娘もまた死にかけていた。なので『星の魔女カタリナ』は王様に提案した。

 王様の次男の命を対価にして王様を完治させる、という契約。王様はこれを呑んだため元気になった。しかし契約は達成されていない。次男が今床に伏せっているのは、次男の生命力を魔女の娘へ送り続けているためで不治の病とかでは無いらしい。

 で、その契約は魔女の娘が殺されれば不履行になるらしく、僕らをその刺客だと魔女は勘違いしたらしい。

「つまり、弟は助からないのですか!」

 お姫様が叫んだ。魔女は悲しげな目をしたが、無慈悲に「そうだ」と言った。

「王と魔女の契約は絶対だ。諦めるがよい」

 全ては父のせい、だから次男が死んだら父を恨め、と言われて納得できるほど人間はできていない。できていないハズなのだが、お姫様は長い長い熟考の末に。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった」

 と言った。

 これは命の選択だ。約束を破って弟を選ぶか、魔女の娘を思うか。どちらも同じ命と考えられるのなら、そういう決断もアリかもしれないが・・・・・・。

「・・・・・・いいの?」

 僕が聞くと、お姫様は膝から崩れ落ち、泣きじゃくった。

 

 

 こうして、最悪な気分のまま第1回目のイベントは終了した。

 

 

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