異世界のジョン・ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~   作:?がらくた

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第33話 イーサンとソフィの過去 その1

仮眠を取って目覚め、テントから外を眺めると、何やら騒がしい。

近くの冒険者に訊ねたところ、どうやら夜間に悪魔から襲撃され、多くの死傷者が出てしまったようだ。

現着した王国の兵士が傷ついた冒険者を運ぶ様子から、事態の深刻さを実感し、私は急いで冒険者の出で立ちへと着替える。

こうしてはいられない、私も彼らの治癒に当たらねば。

傷ついた者がいないか辺りを捜索すると、管理区域の中央付近で激しく口論するのが耳に届く。

―――イーサンとユウだ。

 

「お願いします、イーサンさん!」

「契約の内容は、あくまで魔毒竜の卵の破壊。悪魔の討伐など含まれていない。なら俺が貴様の要求に応える義務は生じないな」

「確かにそうですが……貴方は王国の冒険者が亡くなっても、何とも思わないんですか!?」

「ああ、弱者が殺されるのは自然の道理。故にここにいる連中の命は、俺にとって等しく無価値だ。どうせ助けても、またすぐに逝く。ならばここで殺してやるのも悪くない」 

 

この状況で冒険者を放置はできないが、彼らの発言も気にはなる。

私は笹の葉型の耳をピクリと動かし、聞き耳を立てた。

 

「貴方の価値観はよくわかりました。なら、1つだけ言わせてもらいます」

「なんだ。下らん発言なら、その顔面を吹き飛ばしてやる」

 

前置きをし、ユウは彼にまくしたてた。

 

「他の人々がなんといおうと、僕は貴方を英雄とは認めない。人々の危機を傍観する英雄などいないのと一緒だ!」

「……黙れ。弱小冒険者風情が調子に乗るな。今この場で八つ裂きにしてやろうか?」

 

凄むイーサンは水晶を片手に、睨みつけた。

だが格上の彼にもユウは臆せず、距離を詰めていく。

火花を散らす両者の瞳は、互いだけを映し出し、自らの理念を貫く意志が漲っていた。

 

「僕はソフィさんから、魔毒竜にまつわる地獄の過去を聞きました。気が済むならやればいい。でも亡くなられた親友のノアさんは、今の貴方を見てどう思うでしょうね」

「貴様が軽々しく、その名を呼ぶな!」

 

周囲一帯を破壊せんと、水晶は激しく明滅した。

悪魔を倒すのが先決の状況で、人間が言い争うのは、魔毒竜殲滅戦と瓜二つだ。

魔毒竜討伐の二の舞を、踏むわけにはいかない。

私は飛び出すと彼らに今すべきことを、頭に叩き込む。

 

「やめるんだ、2人共! 4柱の悪魔が逃走したらしいな。私はユウたちに同行し、悪魔を追う。イーサンは管理区域に悪魔共が戻ってこないか、防衛をしてほしい。君は王国最強……いや、大陸最強の冒険者なんだ。守り切ってくれると信じているよ」

 

ヒートアップする彼らに告げると、イーサンはバツが悪そうに渋々頷く。

なんとか場をやり過ごし、私が安堵の溜め息を漏らすと、ユウは頭を下げて、平身低頭謝罪した。

 

「ソフィ、こいつらに深入りするな。いつお前に薄汚い欲をぶつけるか、わかったもんじゃない」

「イーサン、君の発言は彼らへの侮辱だ。でも心配してくれているんだね。気をつけてくるよ」

「お前たちにも、1つ忠告しておいてやる」

 

淡々と云うと冷徹な眼で一瞥し

 

「人の本質は死の淵で見られる。お前らの馴れ合いも一皮剝けば醜い素顔を覗かせるだろう。せいぜい悪魔討伐の目的を見失わぬことだ」

 

嫌味ったらしく、一行にアドバイスを残した。

物言いに腹を立てたハリーは

 

「おい、さっきから馬鹿にしてやがるのか。悪魔の前の前哨戦を……」

 

喧嘩腰で応じたが、青年が腕をハリーの前に伸ばし制すると

 

「ありがたく受け取っておきます。さ、いきましょう」

 

とだけ伝え、その場を後にした。

冷たく、鋭く、人の欠点に嫌悪を募らせるイーサンの一言一言が、私に忌まわしき過去を思い出させた。

 

 

 

その後、なんやかんやあって、こいつら全員死にました。

 

異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~

完結




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