マイルームに移動しようとして、どうやって移動しようか迷っていると目の前にアイコンが現れた。FUO2のUIがそのまま目の前にあるとか面白い光景だな。
ユリクリウスとはその場で一旦別れを告げ、マイルームに移動を選択。ついでにマイルームへの入室制限を『制限なし』から『フレンド&チームメンバーのみ』に変更する。この状況で制限なしのままにして、足を踏み入れられるのは勘弁。
マイルームに移動するを選択すると、一瞬でマイルームへワープした。うわ宇宙の技術凄い。変な酔いとか全くしないし……地味にマイルームって広いな。
課金で最大まで拡張しているから、大きな部屋が6つある。全部ピンクで目に悪い。しかし内装は後で変更するとして、この大きな部屋が6つもあるのは快適だな。キッチンやシャワー、バスタブなどの家具は個人的な趣味で置いていたけど、置いていない人はどうするんだろう……?
そして個人的には気になっていた存在、サポートロイドと面会する。
「お久しぶりです、マスター。久しぶりにクエストの素材集めを任せに来ましたか?」
「うわ出た」
最初の部屋の左側の扉を開けると、そこには限界まで背を縮めて限界まで胸を大きく設定したロリ巨乳がいた。装備が禍々しいのは、ドロップした装備をそのまま付けているからだな。ドロップした装備と、そのドロップした装備を加工しアップグレードした装備、性能は全く違うがどちらも同じレア度だ。
そしてサポートロイドのステータスは装備品のレア度で決まるため、ドロップした装備、通称『ドロップ品』を装備させている。
最近は目にすることもなかったサポートロイドだけど素材を集めて来てくれるから優秀な機能ではある。NPC枠としてクエストで連れまわすことも出来るし、初心者の頃はお世話になった。まあ脱初心者になると完全にキャラクリを楽しむためだけの存在になるけど。
このサポートロイド『コッペパン』もロリ巨乳の美少女であり、綺麗な緑色のチャイナドレスを着ている。髪型は地味に高かった『お団子ヘアS:赤』だし、アクセサリーの『シニヨン』はガチャで出た奴だが、売れば数千万ゴールドを手に入れられるものを使用している。うん、自分の趣味が良く出ている。
「コッペパン、地球人が大量にタキオン船団へ拉致されたことについて、状況説明は出来るか?」
「少々お待ちを。サポートロイド専用ネットワークに繋ぎます。
……申し訳ございません、あまり答えられそうにありませんが、マスターのご質問にお答えします」
コッペパンにちょいと質問をすると、その情報は回覧出来ませんでしたという回答がほとんどだったが、少なからず情報を得ることは出来た。
・地球からタキオン船団に拉致された人は合計で316万6762人。
・サーバー番号が船団番号に置き換わっており、自身のいたサーバー1は船団番号1番に置き換わっている。
・船団は全部で30あり、サーバー番号に対応している。
・1つの船団に10万人程度の人となるよう、調整をしている。調整対象者はゲームプレイ時間が短い順。
・現在は大いなる闇が一時的封印されてから10年が経過している。つまりは第7章で主人公が命を落としてから10年が経過している。封印が解かれる時期は分からない。
主な情報は上の5つだが、なるほどつまり今この船に10万人の地球人がいるということか。ロビーにいたのは1万人程度だったとのことで、あの規模のロビーが20個はあるとのこと。その内の10個を使って地球人への歓迎セレモニーを行ったということだな。
……歓迎は、していたかな?まあゲームの中の世界に取り込まれたとしか思えないこの状況、素直に喜べる人は相当な奇人変人だろう。ちなみに自分は喜んでいる内の一人だし、恐らくユリクリウスも内心キャッキャしている。ユリクリウス、この手のラノベは大好きだったしな。
しかも、自分達の位置的には300万人のうちの上位1500人が確定している。というか自分は鯖内で最高クラスの防御力だ。特化型には数値上負けるが、タフ(HP盛り)とカチ(各種防御盛り)の組み合わせたこの装備、よっぽどのことが無い限り倒れない。というか、最近はHPが半分に到達したことがない。
とりあえずサポートロイドにセクハラの類をしても良いのかドストレートに聞くと、基本的にはサポートロイドにも人権があるからダメとのこと。「ただしマスターになら良いです」と言われた時には襲いそうになったけど。その大きなおっぱいに顔を埋めたかったけど鋼の理性で自重した。
……うん、これ上位プレイヤーにとっては至れり尽くせりの環境だな。サポートロイドなんてよっぽどのプレイヤーじゃない限り、好感度カンストまでは使っているだろう。序盤、中盤の金策や資源集めには必須の存在だし、フレンドがいないぼっちソロプレイヤーは終盤までサポートロイドにお世話になっていると聞く。
さて、このあとどうしようかと考えていると『フレンドのユリクリウスが入室しようとしています』という表示がされる。ゲームでは勝手に入れるが、流石に現実だとガバガバセキュリティじゃないか。入室を許可すると、ユリクリウスがスーツ姿になってマイルームに入って来た。
「おう、もう着替えてるのか」
「流石に着物は目立つからな。シアリーの制服で良いかなとも思ったけど、スーツで良いだろ」
「自分も着替えるわ。
……女性用だけどダッフルコート赤で良いかな」
「男性用持ってないならトレードするぞ?」
「いや、これは女性用でも男性用でもあまり変わらないだろ」
というわけで自分も赤色のコートに着替えるが、ごつい見た目に反して中は快適だ。動きやすさも変わったようには感じないので、バスタオルや水着でも普通に戦闘は出来るということだろう。
「で、どうする?俺は一度クエストを受けようかと考えてるけど」
「ステータスの確認が終わったら自分も行くわ。惑星ドゥームズの自由探索とかで良い?」
「お、良いな。あそこの敵は攻撃パターンがワンパターンだし、2番目の惑星だから推奨レベルも低いしな」
FUO2は、各種の惑星で大いなる闇の手先である『シャドウ』という名の敵を倒して原住民と仲良くなったり、敵対していくゲームだ。中でも惑星ドゥームズは鬼族の惑星で、角の生えた鬼が沢山いる。
そして一部の陣営は闇の手先に洗脳されており、常時戦争中である。どこもこんな惑星ばかりだが、この惑星ドゥームズは昔の日本がモチーフになっており、和風建築物が立ち並ぶので一度ぐらいは実物を見てみたい。
というわけでまずはステータスチェック。転生物お決まりのステータスチェックのお時間である。ステータスオープンと叫ぶ必要はなく、FUO2のUIからキャラクター情報を選択して見る。
キャラクター名:クロワッサン
種族:ヒューマン
メインクラス:ソードマンレベル120/サブクラス:ナイトレベル120
【基礎ステータス】
HP:1100+500
MP:100
近接攻撃:660
射撃攻撃:460
魔法攻撃:360
技術:650
近接防御:680
射撃防御:570
魔法防御:550
メイン武器:光燐剣アカツキノヴァ+99
カテゴリ:ソード
近接攻撃:1898
スロット1:HP吸収Ⅲ(攻撃する度にダメージ量の1%分HP回復、上限50)
スロット2:堅牢なる力(ガードスタイル時、ダメージ量10%減)
スロット3:解放されし力(クリティカル率20%UP、クリティカルダメージ8%UP、MP消費20%減)
スロット4:活力増幅(HPが多いほど能力を獲得する。HP500につき1個。全10個)
スロット5:ガーディアンソウル(HP100、MP10、全能力100UP)
スロット6:オールステータスアップⅩ(全能力100UP)
スロット7:ガードブースター(HP100、全防御能力100UP)
スロット8:HPタフネス(HP150UP)
スロット9:スタミナⅩ(HP100UP)
スロット10:オールガードステアップⅩ(全防御能力100UP)
防御ユニット1:ガーディアンボディ+10
カテゴリ:ボディ
HP:200
MP:10
近接防御:350
射撃防御:350
魔法防御:350
スロット1:自然の恵みⅢ(MPが3秒毎に1回復)
スロット2:堅牢なる力(ガードスタイル時、ダメージ量10%減)
スロット3:妙技Ⅲ(クリティカル率25%アップ)
スロット4:不動の心得(静止時間1秒毎にMP3回復)
スロット5:ガーディアンソウル(HP100、MP10、全能力100UP)
スロット6:オールステータスアップⅩ(全能力100UP)
スロット7:ガードブースター(HP100、全防御能力100UP)
スロット8:HPタフネス(HP150UP)
スロット9:スタミナⅩ(HP100UP)
スロット10:オールガードステアップⅩ(全防御能力100UP)
防御ユニット2:ガーディアンアーム+10
カテゴリ:アーム
HP:200
MP:10
近接防御:350
射撃防御:350
魔法防御:350
スロット1:自然の恵みⅢ(MPが3秒毎に1回復)
スロット2:堅牢なる力(ガードスタイル時、ダメージ量10%減)
スロット3:妙技Ⅲ(クリティカル率25%アップ)
スロット4:不動の攻勢(静止時間1秒毎に攻撃力0.4%上昇/上限120%)
スロット5:ガーディアンソウル(HP100、MP10、全能力100UP)
スロット6:オールステータスアップⅩ(全能力100UP)
スロット7:ガードブースター(HP100、全防御能力100UP)
スロット8:HPタフネス(HP150UP)
スロット9:スタミナⅩ(HP100UP)
スロット10:オールガードステアップⅩ(全防御能力100UP)
防御ユニット3:ガーディアンレッグ+10
カテゴリ:レッグ
HP:200
MP:10
近接防御:350
射撃防御:350
魔法防御:350
スロット1:自然の恵みⅢ(MPが3秒毎に1回復)
スロット2:堅牢なる力(ガードスタイル時、ダメージ量10%減)
スロット3:妙技Ⅲ(クリティカル率25%アップ)
スロット4:不動の恵(静止時間2秒続くと、10秒毎に支援魔法がかかる)
スロット5:ガーディアンソウル(HP100、MP10、全能力100UP)
スロット6:オールステータスアップⅩ(全能力100UP)
スロット7:ガードブースター(HP100、全防御能力100UP)
スロット8:HPタフネス(HP150UP)
スロット9:スタミナⅩ(HP100UP)
スロット10:オールガードステアップⅩ(全防御能力100UP)
セット効果:ガーディアンセット(ボディ、アーム、レッグ)
HP150、MP30、全防御能力100UP
【合計能力】
HP:4150
MP:200
近接攻撃:3358
射撃攻撃:1260
魔法攻撃:1160
技術:1450
近接防御:3430
射撃防御:3320
魔法防御:3300
通常のFUO2プレイヤーのHPは、大体2000程度だ。基礎ステータスが約1000、装備の基礎ステータスで+300~500程度。それに特殊能力でHPを盛り、2000を超えると敵の大技を一回は耐えることが出来るから安定する。
しかしまあ、よっぽどの課金をしていないとこのスロット10まで埋めるのは至難の業となる。そもそも素材を10スロットにするのが苦痛な上、10%の次に10%を通し、更に10%を通すと中間素材が1個出来上がる。その中間素材を10個使って更に10%を通すと、最終素材が1個出来る。
これを10回繰り返してスロットの中身を厳選した最終素材を10個作るのだが、課金で手に入る成功率アップや失敗時素材返却保証アイテムを湯水のように使えないと最早やる気が起きないほどである。あとゲーム内通貨を大量に消費するので、ほとんどの廃課金もスロットは7や8で止めている。スロット9や10にまで到達しているのは、極一部の廃課金か変態だけだろうな。
また、各種防御ステータスも普通の人の1.5倍はある。これによりダメージ量自体が減っている上、高騰を続けていたスロット2専用特殊スキル「堅牢なる力」を贅沢にも4積みしている。もはや敵の大技でも二桁ダメージに抑えることが珍しくない異常事態にまで発展していた。
当然その分、火力はおざなりだがクリティカル率を基本の5%から100%まで強引に上げていることで火力特化型にも負けないほどのDPSを持っている。まあスロットを7ぐらいにまで拡張している火力特化型とかとは良い勝負をするというだけで、火力特化型でスロットを8や9まで拡張している人には負ける。
……カジュアル層は、まず3スロットを目指すように言われる。安いソウルに、ステータスⅤに、ステータスブースターを使って1部位で攻撃ステータスを200伸ばすことが目標だ。それには到達している上、クリティカル型に仕上げているんだから文句を言われたことはない。
一方のユリクリウスの装備は……あれ、他人の装備を見れなくなってるな。まあ良いや。ユリクリウスは火力特化型で、メインはアサシンだが武器は刀を使用する。一応スロット9まで拡張しているので変態の一人。ついでに言うと、TAで毎週上位に入賞するPSの持ち主でもある。
まあエマージェンシークエストで敵がわちゃわちゃし出すと耐久が並みのせいで死ぬが。そしてこの世界、蘇生アイテムがない。綺麗に蘇生アイテムだけアイテムバッグから無くなっている辺り、あれはご都合主義の塊なのだろう。というか一度死んだ人が体力半分で生き返るのは現実に置き換えられるわけないな。
回復アイテムの回復量も軒並み落ちているし、回復薬に頼るごり押しプレイは難しそうだ。だからまあ、簡単なクエストに行って感触を確かめる必要がある。
とりあえずはロビーに行くと、人の数は減っており各々自由に行動していたり、どうしたらいいのか分からず右往左往している人がいたが、自分達はまっすぐにクエスト受注カウンターへ行って惑星ドゥームズの探索クエストを受注。キャンプ船に乗り込む。
タキオン船団が、直接クエストを受注した惑星へ移動することは出来ないために、別の小さな宇宙船に乗り込んでクエストを受注した惑星へ移動する。そのための船がキャンプ船というわけだな。
「どうする?サポートロイドを連れていくか?」
「俺は要らないと思うが……まあ念のために連れていくか。推奨レベル21で苦戦するとは思えないけど」
「じゃあコッペパンとサタンちゃんで行くか」
パーティーは最大で4人だが、基本的にこういうクエストでサポートロイドを連れていく人はまずいない。ただ今回は何が起こるか分からないし、念のために連れていくことにした。
「よろしくお願いいたします、マスター」
「やっほー!サタンちゃんの登場だー!」
「あれ、サタンちゃんメイジに転職したの?」
「メイジ/ナイトで支援魔法と回復魔法だけを使う固定砲台にした」
「ああ、マルチメンバー12人の中に1人はいるとありがたい便利な奴ね」
この判断が、恐らく自分達の明暗を分けた。あっという間に惑星ドゥームズに到着し、降下しようとした直後、自分達の乗るキャンプ船は拉致され、全く別の惑星へとワープする羽目になった。